最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第81話

 

 

 

 

 

■side:とあるS.L社の開発担当者

 

 

 

 

「これ、本当なのか?」

 

 思わず手元の資料を疑う発言をしてしまう。

 

「気持ちは解るよ。俺だって信じられない。ここまで変更されるなんてな」

 

 目の前の相手は、肩をすくめながらそんなことを言う。

 最近噂で聞いていた。

 LEGENDでまた大きな改変があるらしいという話を。

 その時は『まあ落ち着きがない』なんて言いながらコーヒーを飲んでいたものだ。

 しかし目の前にある資料は、それらが本当の話だということを示している。

 残念ながら完全に本物のようだ。

 

 確かに最近のLEGENDでは、ウチは苦境に立たされていた。

 非常に高い防御力を誇る『ガーディアン』と呼ばれる装甲の登場により、低威力武器は存在価値が無くなってしまった。

 そしてブースターとの併用によるブームのおかげで、爆発的にその存在感を示してくる。

 

 ウチは基本的に低威力ながら連射力の高い武器が多く、牽制を中心とした武器を生産してきた。

 だがガーディアンのおかげで、その牽制そのものに意味が無くなってしまった。

 そもそも牽制というものは『当たればダメージが入ること』が大前提と言える。

 しかしガーディアンは、その硬さのせいでウチの製品ではダメージが入らなかったのだ。

 そのためウチの武器をいくら撃ち込んで牽制した所で、ガーディアン相手だと相手は回避も防御もする必要がない。

 こうなってしまうと『ウチの武器を使う理由』が無くなってしまう。

 

 それに気づいた時には既に遅かった。

 選手達は、ガーディアンを購入するか高火力武器を生産している他社へと乗り換えていく。

 こうしてウチは一気に大幅にシェアを奪われてしまったのだ。

 

「だがこれでウチもようやく色々出来るだろうな」

 

「ああ、まったくだ」

 

 LEGEND用装備は、リアルとは違い多少データ的な違いが存在する。

 流石に丸ごと全てリアルと同じという訳にも行かない事情もある。

 そして競技であるため様々な制限も存在していた。

 

 だが今回届いた資料では、それら窮屈な制限が改善されていた。

 正直ここまで改変するとは思ってもみなかったのだが……。

 

 もう一度、資料を確認する。

 やはり本物であり、夢でもないようだ。

 

 国際LEGEND協会と企業連合は、かなり近い関係だ。

 そのため何か大きなことをしようとすると、こうして必ず資料が送られてくるのだ。

 

 今回の中身は、まさに『制限緩和』に関して。

 高機動重装甲ストライカーだらけになり、ガーディアンによって低火力武器が全滅。

 それにより似たり寄ったりの戦術・武装だらけになり面白味が無くなった。

 ゲームも単調になり、何より選択の幅がない。

 そしてアタッカーの待遇改善なども含まれている。

 

「……まあ都合の良い話だ」

 

 それもこれも全て自分達が蒔いた種じゃないか。

 当初からかなり反発があったのを強引に推し進めた癖に、今更それらの解決を俺達に求めるのかよと。

 しかしこれはチャンスでもある。

 

 ガーディアンというぶっ壊れを堂々と研究して、破壊する武器を作ればお金がもらえるのだ。

 今回の件で、ようやく一強状態に終止符が打てる。

 かなり前段階からの通達なのも、間違いなく開発に必要な日数を考慮した結果だろう。

 

「もちろん、現場で振り回される選手達には、同情するがね」

 

 2人で笑いながら各方面に連絡を入れる。

 今日から当面は、休日返上になるだろう。

 

 

 

 

 

 

■side:とあるブルーム社の開発担当者

 

 

 

 

 

「ほう、やっと修正する気になったか」

 

 若干遅いなと思いながらもその報告を聞いて、肯定的に頷く。

 我が社は、LEGEND初心者向けの装備を多く作っているメーカーだ。

 そのため威力よりも安定性などに重点をおいている。

 

 そんな我が社の製品は、最近流行の『高機動重装甲ストライカー』というものに駆逐されてしまった。

 いくら安定感のある高品質な装備を作ろうが、実際の試合では使えない。

 何故ならガーディアンとかいう制限ギリギリであろう装備のせいで、中途半端な威力の武器は全てダメになってしまった。

 おかげで我が社の売り上げも大幅に落ちてしまい、一時期かなりヤバかった。

 その時期を何とか切り抜け、主力の『初心者向け』が売り上げに大きく貢献し始めたと思った所でである。

 

 変更内容は、思わず笑ってしまうような内容ばかり。

 どうやらLEGEND協会も『ガーディアン』が『邪魔』なようである。

 主に火力面の制限が緩く、アタッカーに関しては装備面で大きく優遇されるようだ。

 

 まあ逆にそれ以外に方法が無かったのだろうなとも思う。

 まさかG.G.G社が、あそこまで尖ったものの開発を成功させるとは思ってなかったのだろう。

 これを破壊出来るだけのものを各社が用意することで『仕切り直し』をしたいみたいだ。

 もうそれならいっそ『改定そのものをなかったことにすればいい』のだが、彼らは決して謝らない。

 間違っても『失敗した』などという弱みは見せないだろう。

 

「どんな理由にしろ、面白くなってきたな」

 

 次はどんなものがブームになるのか。

 そして選手達は、どんな選択をするのか。

 技術者だからこそ、そういう所が気になってしまう。

 

「とりあえず全システムの点検を急がせよう。当面は忙しくなるぞ」

 

 そう周囲の仲間に伝えると開発チームは一斉に動き出した。

 

 

 

 

 

■side:とあるG.G.G社の開発担当者

 

 

 

 

 

「そんな馬鹿な!」

 

 協会からの資料を見て思わず叫んだ。

 今度予定されているらしい大幅改定を見ると明らかに『ガーディアン対策』と思われるものが目立つ。

 

 一時期は、その存在のせいで倒産の危機を招いた装甲だ。

 そして今や主力商品として世界中で飛ぶように売れる装甲でもある。

 

 霧島アリスによって生み出された『高機動重装甲ストライカー』という新しい概念。

 これにより躍進したのがガーディアンだ。

 かつて全ての攻撃を弾く圧倒的防御力を見せつけたはずが、最後の最後で零式ライフルによって全てを砕かれた不遇の商品。

 その非常に高い防御力が再注目された結果、やっと本来の機能を見せつけ大人気となっていた。

 

 それを今度は協会が制限を緩和することで潰そうとしているのだ。

 

「到底許せることではないっ!!」

 

 思わず声が出た。

 こっちは協会が決めたルールの範囲内でやってきたのだ。

 それを少し他よりも良いものが出来たら、即拒否しにかかるとかあり得ないだろう。

 こんなことを許せば独自技術を開発して新商品を作ろうという企業は居なくなってしまう。

 

 手元の資料を読めば読むほどガーディアンがよほど邪魔なのか、火力面の制限緩和が目立つ。

 明らかに露骨である。

 

「お前達は、引き続き情報を集めておいてくれ。私はLEGEND協会に行って詳細説明を求めてくる」

 

 周囲に指示を出すと、私は資料を片手に立ち上がる。

 そして数人の担当者と共にLEGEND協会を目指して移動するのだった。

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園2年 霧島 アリス

 

 

 

 

 

「おー、思い切ったねぇ」

 

 とあるルートから仕入れた情報に思わず私は声をあげた。

 LEGEND協会がまた大幅に何かやろうとしていると聞いて情報を集めていたのだが、予想以上のものが出てきた感じだ。

 色々な制限を緩和することで多様性を出そうとしている。

 しかしこれには違う側面も見えていた。

 

「まあガーディアン基準になっちゃうか」

 

 今年流行して爆発的に普及したガーディアン。

 コイツの非常に硬い防御力は、一部の武装を完全に存在価値ごと消し去ってしまった。

 そのせいでバランスが崩れたという主張が出始めたのも事実だ。

 

 それらをどうするのか?と思っていたのだが、まさか全体の制限を変更することで全て無かったことにしようとするとは。

 しかし実際、これをするとまた大きな流れが生まれるだろう。

 結局最後に影響を受けて振り回されるのも選手になってしまう。

 そこに関して思う所が無い訳でもないが、こればかりは仕方がないという部分もある。

 

 どちらにしろ現状のままでは、ガーディアンが強すぎてダメなのだ。

 そのためにメーカー各社に資料を回して反応を見つつ、試作品を出させて調整出来るかどうかを見たいって所かな。

 

 ある程度全体の動きを理解出来た所で、資料を閉じる。

 

「これは、各メーカー次第だなぁ」

 

 状況次第では、本当に大きく動くだろう。

 個人的にはどんな新しい武器が登場するのか、愉しみではある。

 

 

 

 

 




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