最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる 作:のこのこ大王
「さあ、今夜もお届けします!
水曜日の夜は、もちろんこれ!
【NEWS・LEGEND】のお時間がやってまいりました~!」
今やその豊富な知識でLEGEND関連の番組を次々任されている好感度人気No1女性アナウンサーは、今日も元気に声を張り上げる。
「皆さん、こんばんは。
司会の大館(おおたち) 次郎(じろう)です」
対してベテラン司会者は、低音ながら力強い声でしっかりと名前を言う。
彼もLEGEND関連の知識量から実況などにも呼ばれ始めており、2人ともLEGEND関連の仕事が増え続けていた。
「司会補助の
テンプレ挨拶から番組が始まる。
いつもはプロの試合やそれらについての情報、そして初心者向けのLEGEND講座などが番組の中心だ。
全国大会などイベントごとがあればそちらを放送すればいいのだが、イベントなど年に数回程度。
ほとんどは、こうした地道な番組作りとなっている。
しかし今回は、そうではない。
面白いネタが登場しているからだ。
「さて、皆さんは『Liberty』という言葉を知っているでしょうか?」
江口が意味深な感じで話始める。
「自由という意味の言葉なのですが、これが少し特殊なのです。何故なら単純な自由であれば『freedom』と呼ばれるためです」
モニターには、1人の女性の姿が映っている。
「『Liberty』とは『勝ち取った』または『解放』という意味を含む『自由』を意味する言葉なのです」
今日は、最近話題の『Liberty運動』と呼ばれるものの真相に迫りたいと思います。
そこで番組は、独自に取材をして彼女と出会いました。
彼女へのインタビューを含めて、ご覧ください。
こうして番組の放送は、編集されたVTRを流す段階となる。
VTRには、取材で遠出する際に必ず登場する新人女性アナウンサーが映っていた。
しばらく適当な話題とLEGENDに関する基礎知識・歴史が説明される。
そして番組も中盤となったあたりで、ようやく話は本題に入った。
「ある日を境に、有名な元プレイヤーや現在プロの選手だけではなく、学生までもが『Liberty』という言葉と共に『LEGEND』と発信し始めたのです。しかも女性選手限定」
新人アナウンサーは、ここでフリップを出して数値での説明をする。
明らかに『Liberty』という発信が増えていた。
「彼女達が何故『Liberty』『LEGEND』と発信するのか?そしてそれ以上を語らない彼女達は何が言いたいのか?ここで番組はある女性のインタビューに成功しました」
そこで最初に登場した女性が出てくる。
LEGEND最初期に選手だった女性だ。
「当時から協会と企業連は、酷いものでしたよ。選手のことなど考えても居ない。それは今の商業重視なLEGENDを見ても明らかでしょう」
彼女は、語り出す。
当初から選手よりも観客・ビジネスを重視してきた協会と企業連の方針。
それに振り回され続ける選手達やLEGENDという競技そのもの。
「そもそもスポーツである以上、誰もが等しく愉しめねばなりません。ですが今のLEGENDを見てそれが可能だと言えますか?」
会話の最中にルール改定によるアタッカー問題などの話が登場する。
それらにも彼女は反応した。
「こうして『面白くない』とか『ショービジネス』という考えで気軽にルールを変更するのです。それによってどれだけの選手が涙したことでしょう」
更に、別の女性が登場する。
彼女も有名な元LEGENDプレイヤーだ。
「私達は、今こそ声をあげなければなりません。選手の意見を無視し続ける協会や企業連に、今一度考えて貰うために」
VTRが終わると番組にはLEGENDの歴史とルール改定の大きな一覧表などが登場している。
そしていつの間にか有名なLEGEND評論家が追加されており、彼が中心となって今の話を補足したり持論を展開する。
評論家である彼も、協会や企業連の強硬姿勢に疑問を持っているようで、歩み寄る必要性を訴えていた。
更には、最近のルール改定でLEGEND強国と呼ばれる国々まで反発している話が登場し、番組ではその辺りの説明も入る。
そしてルール改定の何が問題なのか?や協会と企業連側から見たLEGENDと方針に関するメリット・デメリットなども説明された。
こうして特番のような内容のNEWS・LEGENDが終了する。
その直後から世間の反応が爆発的に加速した。
何故なら『何となく騒動は知っているが、よく解らない』という一般世論が圧倒的だったのだ。
そこにこうして丁寧に問題を説明する人気番組が放送された。
そしてようやく問題の内容を具体的に知った一般人達の無責任な協会や企業連への誹謗中傷が加速する。
これで一番困ったのは日本LEGEND協会だ。
あくまで問題の元凶は、国際LEGEND協会であり企業連合だ。
にも関わらず日本LEGEND協会への抗議の電話が鳴りやまない。
やがて世界中でも似たような番組による解説が入り、世論が激しい批判を繰り返す。
そこにルール改定でクレームを入れ続けた国々まで乗っかる形で世界規模の騒動となった。
流石に世界中の世論やスポンサーなどを敵に回す訳にもいかず、協会と企業連合は公式なコメントを発表。
自分達の正当性を主張しつつも『選手を第一に考えた方針をより重視する』として大幅な譲歩をする結果となる。
元々は『自由にLEGENDを愉しもう』という集まりだったはずの集団は、いつの間にか世界を動かしLEGENDの歴史をも動かした。
だが参加している選手達は、多くを何も語らない。
あくまで彼女達の目的は『自由なLEGEND』だ。
それらを求めて集まった集団は、それ以上を求めない。
今日も元選手や現役選手に新人など関係無く、彼女達は集まってそれぞれのLEGENDを愉しんでいる。
選ばれた人間のみが入ることを許された夢の国。
『Alice in Wonderland』
その招待状を受け取れる人間は、ごく僅か。
噂にすらなることがないほど秘密にされているお茶会。
そこに招待される次の幸運な人間は、誰になるのか?
それは『アリス』のみが知る。
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