主に男女のデートシーンは厄介に手間取りました。
翌日、頼打地区・繁華街。
秋葉原や新宿といった東京の名所に負けず劣らずの人々が行き交い、それぞれの目的の場所へ向かっていた。
そんな人々を横目に駅前の出入り口にて、佇むのは二人の人影。
かたや普段着ているラフなモノより黒のジャケットにジーンズのズボンといったオシャレな服装を纏った夏川一登。
もう一人は、白を基調としたロングのティアード・スカートに紺色のジャケットを纏った優奈。
二人がここにやってきたのは、優奈の喫茶店New Amigoにて日常生活するため必要なものを買うためだ。
「「……」」
互いに傍らでいる形で黙り込む二人。
無理もない、再会して初めての二人だけの買い物……いわばこれは男女における『デート』というものだ。
いつもと違う格好を前に緊張して何も喋ることができない一登と優奈。
二人が黙ったまま数分が経った後、先に切り出したのは一登の方だった。
「ま、まるでその、で、デートみたいだな」
「まるでというか……デートそのものだよ、一登君」
「うぐっ、そ、そうだよな」
「……私とのデート、不満なの?」
「不満なんてものあるか! う、嬉しいに決まっている!」
「そ、そんな改めて言うことじゃないよ……もう、いこうよ!」
一登の言葉に若干顔を赤らめ、彼の手を引く優奈。自分も気恥ずかしさに頬に熱を帯びる実感をわかせながら、彼女になすまま連れて行かれる一登。
恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが綯い交ぜになった複雑な気持ちのまま、二人は手をつないで目的の店へと向かうことにした。
二人が足を運んだのは、とあるファッションショップ。
主に女子向けファッションを扱っているお店で、そこに足を踏み入れた優奈は一登を連れて入店をした。
「こ、ここって俺なんかが入っていいのか?」
「いいの! ほら、選んで選んで!」
嬉しそうにはしゃぐ優奈を見て、思わず笑顔になる一登。
当然と言えば当然だけど、優奈は自分と年の変わらぬ年頃の少女だ。
オシャレに気を遣う女子にとってこういったファッション売り場で喜ぶのは当然か。そんな例にも当てはまる彼女を見て、まるて自分の事のように嬉しくなってくる。
その一方で、優奈は手にした桃色のワンピースを手にして訊ねてきた。
「一登君! この服どうかな? 似合ってる?」
「ああ、似合ってるよ」
「そ、そっか……色々と試着してもいいかな」
「え、えっとその、優奈の見た目の良さだったらなんでも似合うと思うけどな」
「~~ッ!! で、できれば君に見てもらいたいの! わ……私の色んな姿を……」
優奈は一登に褒められた事を頬を赤らめながら背を向けると、いくつかの試着室へ入っていく。
一旦仕切られたカーテンの前で立たされる一登……暫し待っていると、試着室のカーテンが開かれる。
中から現れたのは、クリーム色を基調としたワンピースとミニスカと姿の優奈。
「か、可愛い……」
「えへへ……」
照れながら褒める一登から『可愛い』と言われて優奈は嬉しそうな笑みを浮かべた。
次に優奈が着替えたのは清楚なイメージの白いワンピースだった。
優奈はスカートの部分を両手で摘んでヒラリと回りながら見せてくる。
「これはどうかな、どうかな?」
「……綺麗。うん、綺麗だよ」
「もう、そんなに褒めないでよ。照れるって……」
一登が口にした『綺麗』という言葉に対して、耳が真っ赤になりながらそっぽを向いた。
褒めたはずなのに、何がいけなかったのか……慌てながら機嫌を取り戻そうとする。
だが何か言いかける前に試着室のカーテンを仕切られ、会話を遮られてしまう。
落ち込む一登は近くの待合用に置かれた椅子に座りながら暫し待っていると、カーテンが開かれる。
試着室から現れたのは、膝より上の短さを誇るホットパンツに肩だしルックという肌の露出が多い服装姿の優奈だった。
「ゆ、優奈……!?」
「こういう足を出すの、大胆だよね。イケイケに一登君と絡みたい私なんてどうかな」
「そ、そんな恰好じゃなくても俺は優奈とその、絡みたいです。はい」
「……むぅ、ズルいよ。それは」
顔を真っ赤にさせている一登の様子を見て、仕掛けたこっちまで恥ずかしくなってきた優奈。
そんな初々しい反応を示す一登と優奈の二人……そんな初々しく仲睦まじい様子を女性の店員は微笑ましそうに見守っていた。
その後、いくつかの私服を揃えてファッションショップを後にした一登達。
次に向かったのは、日用雑貨を売っている雑貨店であった。
二人が散策していると、まず目についたのはマグカップが売っているコーナーであった。
種々様々なマグカップが売っている中で、一登はある商品に目が止まる。
「ん……これって?」
「どうしたの?」
「いやさ、これ、見てみてくれ」
一登はそう言いながら手を取ってみせたのは、色違いのマグカップ。
片方は黒字に白い猫が、もう片方は白地に黒い猫がそれぞれ描かれている。
優奈は白い猫のマグカップを、一登は黒い猫のマグカップを手にすると、自然と笑いあった。
「ふふっ、お揃いのマグカップかぁー。なんだかいいね。猫さんで可愛いし」
「どうだ? これも買うか?」
「え、いいの? 悪くない?」
「全然、むしろ……これから一緒になるじゃないですか。同じもの一つや二つ、揃えていたっても」
優奈のきょとんとした仕草を見て照れくさそうにしながら一登は肯定した。
彼の言葉を聞いて優奈は嬉しそうな笑顔を浮かべ、大事そうにマグカップを握りしめる。
「ありがとう、大切にするね」
「……お、俺も大切に……します」
「もう、そんなに照れなくてもいいのに」
「だ、だってなぁ……」
思わず笑いを込み上げている優奈に、一登は嬉しさと恥ずかしさ交じりの気持ちで困り果てていた。
マグカップを買うと決めた後も、優奈が使う皿に歯ブラシやタオルといった洗面用具、女子に人気な小物類を手にして購入することにした。
そんな二人の初々しい様子を近くにいた店員は生暖かそうな視線で見守っていた。
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一登と優奈が繁華街で買い物を楽しんでいる頃、彼らの様子を遠くから彼らの様子を見ている者がいた。
ビルの屋上にある物陰に隠れて二人が楽しむ様子を腕を組んで観察していた。
「楽しそうで何よりだよ、ほんとにさぁ」
口元に苦笑を浮かべ、寄りかかっている壁から離れるとその男――【敵対者】は懐からライドジャイロを取り出した。
深緑を基調としたカラーリングのボール型の外見であるソレを握ると、【敵対者】は物陰から出て、地面を思いっきり蹴り上げた。
人々の目にもとまらぬ速さで駆け抜け、あっという間に別の屋上に着地し、すぐさま近くのビルへと飛び移っていく。
常人離れした跳躍をやりながら【敵対者】は一登達が歩く場所の近くへとやってきた。
「さて、こっからどうするか……おっ」
手をこまねいて何かないか探していた所、彼らが入った店を目撃する。
そこは頼打地区の中でも随一の大きなショッピングモールであった。
合計4階建てからなる大型商業施設でTVにも取り上げられていた話題の新スポット……【敵対者】はそこに目をつけると、そのショッピングモールへ向かう事にした。
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一登と優奈がやってきたのは、頼打地区の中でも随一の大きなショッピングモールであった。
二人にとっては初めてやってきた場所であり、中に入ると家族連れやカップルがよく見受けられた。
物珍しそうにしながら、二人は手を繋ぎながら散策していた。
「店、いっぱいあるんだな」
「そうだねー、一登君はどんなお店に興味があるの?」
「まず食い物には興味あるな。一応俺って喫茶店暮らしだからさ」
「ライバル店の料理を食べて、研究するってこと?」
「そこまで本格的じゃないけどな……」
「じゃあ、今日はここでお昼ご飯にしよっか!」
二人は会話の輪を弾ませながら、ショッピングモールの中を進んでいく。
やがて様々な飲食店が立ち並ぶフードコートに辿り着くと、大勢の人で賑わっていた。
席もほとんど埋まっており、二人がどこか開いてないか迷っている所、声をかける者がいた。
「おい、一登? 夏川一登じゃないか!」
一登は自身の名前を呼ばれて、声のした方へ振り向いた。
見るとハンバーガーショップのカウンターにて自分の知り合いである少年が勤めていた。
赤みがかった茶色の短髪の髪形とギラついた三白眼が特徴の少年……『吾郷 改』は他の店員に断りを入れて離れると、ずんずんと一登に近いて話しかけてきた。
「テメェ、こんなところにやってきやがって」
「改じゃないか。こんなところで何やってるんだ?」
「バイトだよ! 短期バイト! ここの店でちょいーと働いてんだよ!」
「ここでか?」
一登は改の言葉を聞いて、ハンバーガーショップの方を見やる。
そこには多才なメニューのハンバーガーが載っており、その中には一登自身が好きそうなメニューも載っていた。
「ああ、美味そう」
「へっ、そうだろう。お前好みのハンバーガーで胃袋目掛けてクリティカルヒットだよ!」
「そこまで言うならここで昼飯だ。優奈はいいか?」
「うん、大丈夫だよ」
「はっはー、そうか。なら二名様ごあんなー……い?」
改は積年のライバルとのやりとりで違和感に気付き、一登の周囲に見渡した。
今まで目に入っていなかったが、一登の傍らに立っている美少女にようやく気が付いた。
誰の目から明らかなほど目を見開き、一登に恐る恐る問いかける。
「おい、一登……そのお隣にはいるのは」
「ああ、そうだった。紹介するよ、彼女は優奈って言うんだ」
「初めまして、飛鳥 優奈です」
「あ、これはどーもども、自分は吾郷改といいます。そこの夏川一登打倒を目指して……じゃねえよ!? お前いつの間に彼女なんか作っていたの!?」
「「えっ……!?」」
吾郷のノリツッコミに対して、一登と優奈は顔を赤らめた。
無自覚ながらもカップルな事を指摘され、自分達がそのカップルなのだと自覚する。
よくよく振り返ってみれば、今までのやりとりも傍から見ればお付き合いしている男女のやりとりそのままだったなと思い出した。
今更ながら恥ずかしくなってきた二人の様子を見て、頭を抱えるのは改だった。
「マジか、マジで、マジだ!? 俺の知らないうちにカップル成立かよ!」
「だ、誰がカップルだ! こ、これからだよ!」
「あ、あの、恥ずかしいから言わないで!」
一登と優奈、そして改のやりとりを周りの人が不思議そうに見ていた。
その時だった、フードコート全体の照明が落ちて暗くなったのは。
元々建物の中央にある位置ため、外からの光が差し込まず完全に真っ暗になったフロアには困惑のどよめきが広がる。
異常な事態だと気づいた一登と優奈は寄り添い、周囲の様子を見渡す。
そこで気づいたのは、暗闇の向こうでこちらを見つめる謎の人影。
人影は一登達がこちらの姿を見つけたのを見つけると、すぐにフードコートから去っていく。
「一登君!あれ……!」
「……怪しいな。優奈、行くぞ」
「うん……!」
二人は互いに頷くと、人影を追ってフードコートから去っていく。
改は真剣な表情二人の姿を首傾げつつ見送りながら、その後店員として混乱を収めるためにフードコートに残ったのであった。
一登と優奈の二人が怪しい人影を追いかけると、人気のいない暗い駐車場に辿り着いた。
二人の目の前には、暗闇の中で一人の人物が背を向けて立っていた。
その人物は一登達がやってきたのを悟ると彼らに話しかける。
「感がいいな。流石はライドクリスタルに選ばれた変身者ってところか」
「……! ライドクリスタルの事を知ってるのか!?」
「一登君、あの人ってまさかあの時の……」
人影の言い放った『ライドクリスタル』という単語に一登と優奈は顔を強張らせる。
先日ライドクリスタルを狙ってきた怪人・ショッカーライダー……彼らの仲間ではないかと身構える。
怯えている二人を見計らってか、人影は両腕を上げた。
そこにはいくつものライドクリスタルが指先に握られており、一登と優奈は驚きの声を上げる。
「「ライドクリスタル!?」」
「おうよ。ついでにお前たちのライドクリスタル、頂きにきた」
そう言いながら、その男――【敵対者】は振り向いた。
そしてライドクリスタルを一旦仕舞うと、ライドジャイロを取り出した。
見慣れないアイテムに目を見張る一登達へ、自身の胸に添える形で構え、基部のスイッチを押した。
【Change Mode】
「装身」
【Ride Up】
電子音声と共に【敵対者】の姿は眩い光のエフェクトと共に変わっていく。
緑に輝く光がアーマーを形成し、身体に取り付いていく。
やがて変化を遂げて現れたのは、禍々しい赤い複眼を宿す緑の戦士。
生態と機械が入り混じったような外見に加え、腰部は三本の爪が球体を掴んだベルトのようなパーツ。
スマートなシルエットを携えて現れたその戦士は、自らのその姿を名乗り上げた。
「俺の名前は……そうだな、仮面ライダーを倒す者、
緑の戦士は『ライドキラー』と語り、両手を広げる仕草を行る。
対して優奈は驚き、一登が未知の存在に対して口にした。
「ライドキラー……!?」
「さぁ、掛かってこい。じゃあねえとどうなるかわからないぞ?」
ライドキラーは挑発ぎみた言葉を送り付け、一登と優奈はベルトを構える。
一瞬、一登は戸惑うものの心配そうに見つめる優奈を見て、再び変身する決意を決めた。
今まで買ってきた物を地べたに置くと、二人はジェイナスドライバーとライドクリスタルを構える。
【【JANUS-DRIVER】】
「「変身!」」
【ACCELE×MACH】
【RIDER FUSION】
二人の掛け声と共にライドクリスタルは装填され、数m先にライドボディが出現。
一登と優奈がライドボディに融合した後、漆黒のボディが赤と白に染まっていく。
【BLAZING ROAD】
変身を終えたジェイナス ブレイジングロードは武器である素手を構える。
対してライドキラーは手元に剣型武器を出現させると、それを掴んて矛先をジェイナスへ向けた。
「いくぞぉ!!」
「「ッ!!」」
ジェイナスとライドキラー、素顔を隠した2体の戦士は暗闇が支配する場所にて最初の戦いを始めるのであった。