相対するジェイナスとライドキラー。
素顔を隠した戦士達は互いに向かって駆け出し、ぶつかり合った。
まず繰り出したのは拳を構えたジェイナスだった。
「「ハァッ!!」」
「よっと!」
高速から繰り出された不可視の一撃を放つジェイナス。
だがライドキラーはそれを見切って難なく避けると、お返しと言わんばかりに剣撃を叩き込んだ。
「トリャァ!」
「「ぐぅ!?」」
「ダウンするなよ、まだ始まったばかりだからな!」
ライドキラーは挑発気味に言い放つと、今度は突きによる斬撃をジェイナスに叩き込もうとする。
迫る切っ先を何とか身を翻して躱し、ジェイナスはブレイジングロードの超高速移動を用いてその場から姿を消した。
いきなり目の前から姿を消した相手にライドキラーは不思議がる。
「消えた? いや違うな、姿を消したように見えて……本命は!」
ライドキラーは考えるそぶりを見せ、身構えながら周囲の様子を探った。
周囲から伝わってくるのは、駆け巡る熱気と僅かな足音。
まるでレースカーが競い合うサーキット場にいるような空間を彷彿とさせ、素顔を隠した異形の顔で笑いを堪える。
死角をあえて見せたその瞬間、丁度ライドキラーの左側から姿を現したのはジェイナスだった。
「―――見え見えなんだよ!」
「「グァッ!?」」
ジェイナスの蹴りを受け止め、そのまま投げ飛ばした。
思いっきり地面に叩きつけられ、そのままバウンドしながら外の方へと投げ出される。
照らされた太陽によって熱せられるのを避けるために車はほとんどない外の屋上駐車場へと倒れこんだジェイナスは何とか立て直そうと立ち上がる。
ゆっくりと歩きながら外へと姿をライドキラーに、ジェイナス……一登は呟く。
「コイツ……あいつらより強い!」
「一登君、来るよ!」
優奈の声と共に、ジェイナスは両腕を構えると拳に意識を集中させる。
二つの拳に炎が灯ると、それを勢いよくストレートパンチの要領で打ち放った。
飛ばされた火炎の拳がライドキラーがいる方向へと真っ直ぐ飛んでいく。
そのまま直撃しようとしたその時、ライドキラーは思いっきり踏みとどまり、そして思いっきり剣を持ってない腕を突き出した。
「オリャアア!」
バァン、と弾けた音と共に、火炎の拳はライドキラーの掌によって握り潰されてしまう。
驚くジェイナスだが、間髪入れず火炎の拳を振り放つ。
だが今度は剣を振り回して文字通り粉砕、鼻で笑う仕草をしながら再び剣を構えた。
「手品ならこっちもあるんだよ」
ライドキラーはそう言いながら剣に視線を落とす。
鍔部分には何らかの装填スロットが設けられているその剣……自身の持つライドクリスタルを取り出し、鍔部分の装填スロットに装填した。
「出番だ」
【G3・MATERIA-RIDE】
青いライドクリスタルを装填すると、電子音声と共に現れたのは一人の仮面の戦士。
青と銀の装甲を基調としたメカニクルな外見、オレンジ色の複眼を持つ銀色の仮面、左胸には警察の所属を表す桜の代紋のレリーフ。
―――その名は仮面ライダーG3。
警視庁で開発された特殊強化装甲服を纏った戦士であり、
立体映像というべき幻影の存在であるG3はライドキラーと重なり合うと、ライドキラーの剣から鉄線に繋がれたアンカーが生成され、それを思いっきり投げ飛ばした。
「食らいつけッ!」
「「しまっ!?」」
「―――どっりゃあああ!!」
ジェイナスの右腕に放り投げられたアンカーが掴むと、すかさずライドキラーはワイヤーを力強く引っ張りあげる。
あまりの張力にジェイナスは軽々と宙に舞い上げられた。
その瞬間を見計らってライドキラーは新たなるライドクリスタルを剣へ装填する。
【GARREN・MATERIA-RIDE】
「熱いの出せるのはお前らだけじゃないんだよ!」
赤いライドクリスタルを装填した後、現れたのは新たなる仮面の戦士。
緑の複眼とクワガタ虫の大顎を模した銀色の仮面、小豆色にも似た赤いボディに銀色の装甲、腰にはダイヤのスートが入ったバックル・ギャレンバックル。
―――その名は仮面ライダーギャレン
不死の怪物・アンデットを封印するべく生まれた仮面ライダーであり、自分の運命に翻弄されながらも強く成長した銃撃の戦士。
呼び出されたギャレンの幻影は手に持つ銃型武器・醒銃ギャレンラウザーをジェイナスへと構え、同じく剣の切っ先をジェイナスへと向けるライドキラーと重なり合った。
「キャリバァー……ソォォードラァァーッシュッッ!!」
ライドキラーが叫んだと同時に放ったのは、炎を纏わせた鋭い突き。
炎の剣撃はジェイナスへと飛んでいき、直撃した瞬間大爆発を起こした。
空中で爆炎が広がる中、黒煙を纏わせながら落ちるジェイナス。
アルファストでできた硬く冷たい地面へと落下し、変身している一登と優奈は苦悶の声を上げる。
「ぐあぁ……がはっ……」
「ぐぅ……かず、と……くん……」
ジェイナスのライドボディによって伝わる痛みが変身者である二人に対して伝達される。
初めて味わう痛みによる苦しみに一登と優奈は一抹の恐怖を覚え始める。
今にも痛みと恐怖で身体が動けなくなりそうな危うい状況へ、ライドキラーがゆっくり迫りながら声をかけてきた。
「力は強いが戦い方がなっちゃいねぇ。力を振り回されて本来の力を出し切れちゃいない」
「くぅぅ……」
優奈の苦しみの声がジェイナスから漏れる中、ライドキラーはジェイナスの首を掴んで無理やり立ち上がらせた。
そして締め付ける力を込めながら、ライドキラーは言葉をぶつけた。
「分かっただろ、仮面ライダーになったところで今のお前達じゃ敵である俺にすら刃向かうことすら敵わない」
「なにぃ……!?」
一登の驚きの声と共に、ライドキラーの赤い双眸がジェイナスを差し貫く。
仮面越しからでも伝わってくる【怒気】が一登と優奈の二人を怖がらせた。
「この世には理由のない悪意などいくらでも転がっている……それに気づけないで今日まで生きていたのなら戦う資格はねぇ」
「「……」」
「とっととライドクリスタルとドライバーを置いて元の日常へと帰れ」
ライドキラーは冷酷な言葉を口にしながら剣を振り上げる。
今のジェイナスの状態で剣を受け止めれば、一溜りもないのは明白だろう。
一登と優奈の二人は思わず目を瞑った。
そこで脳裏をよぎったのは、今日の出来事。
再び再会できた想い人との初めてのデート。
普通の男女のように待ち合わせして、買い物をして、楽しく談笑をする。
こんな風に毎日過ごせればいいなと二人は思った。
だが二人が一緒にいる限り、仮面ライダーとして未知の怪人達と戦わなければならない。
下手をすれば死ぬこともあり得るだろう。
それだったらいっそ、
―――その思考に陥った瞬間、二人は踏みとどまった。
このままでいいのか?
もう一度、彼女/彼を悲しませていいのか?
彼女/彼だけ後悔の重荷を背負わせて元の世界へ遺していいのか?
いいや、駄目だ。
せっかく、君と再会できたんだ。
ずっと君の傍で守るって決めたんだ……!
もう運命でさえ奪われたりするものか……!!
―――そう思った瞬間、体が動いた。
ザシュリと何かを刺し貫く音が屋上駐車場の屋上にて響き渡る。
だが、次に声を上げたのはライドキラーの方であった。
「何……!? お前ら……!!」
驚きの声を上げるライドキラー。
その視線の先には、
刺し貫いた剣を引き抜こうとするも、腕を掴まれて身動きが取れない。
予想外の行動に戸惑うライドキラー……一方でジェイナスは痛みに耐える声が響き渡っていた。
「「ぐぅぅ……あああっ……!!」」
「テメェ! 何を馬鹿なことをしてやがる!? 血迷ったのか!?」
刺し貫かれても離さないジェイナスにライドキラーは怒鳴りつけた。
だがジェイナスは剣を握ったライドキラーの腕を掴んだまま、呟くように声を発する。
「……もう、元には戻れないんだよ……引き返せないんだ……俺と、優奈は」
「何……!!」
「私も、一登君も、命を奪った。奪ってしまったんだ」
「……ッ!!」
一登と優奈の声を聴いたライドキラーは思わず声を漏らした。
二人の脳裏によぎったのは、あの時倒したショッカーライダー。
例え自分達が守ろうとした正しさあってとはいえ、命を奪ってしまった。
その後悔を、その先の決意を、否定されたくない。
そう思ったジェイナスは自身を刺し貫いている剣を腕ごと掴んで離そうとしない。
「仮面ライダーが一体何なのか、今の俺達は分からない」
「それでもこの力を誰かに渡すなんてできない」
「一度背負った罪も!」
「アクセルさんとマッハさんからもらったこの力も!」
「「俺/私達が受け継いだんだ!!!」」
二人の声が重なった瞬間、ジェイナスの全身から炎が噴き出し始めた。
まるで一登達の意思に呼応するかのように瞬く間に燃え上がっていき、ジェイナスごとライドキラーを燃やしつくしていく。
「なにぃッッ!? ぐぐぅっ!!」
「彼女と再会できたからこそ、俺は二度と手放したくない!否定させない!!」
「彼ともう一度巡り合えたからこそ私は……ううん、私達は抗う!」
「「俺/私達は、一緒に生きていたいんだ! うぁあああああああああ!!」」
一登と優奈の二人による雄叫びと共に急速に燃え上がる炎。
周囲ごとジェイナスとライドキラーを燃やし尽くしていく。
一本の大きな火柱が上がるほどの火力で自身ごとライドキラーを焼き尽くさんとした。
このまま両者が灰塵と帰すまで炎に焼かれるか……。
その時、深緑色のライドクリスタルが浮かび上り、声を発した。
『―――いい加減にしろ!!』
「「「……ッ!?」」」
声が耳に入った瞬間、爆炎へと突っ込む光のシルエットが見え、ジェイナスとライドキラーを思いっきり殴りつけた。
爆炎は掻き消え、中からジェイナスとライドキラーが飛び出して、屋上の足場へと倒れこむ。
ジェイナスが顔を上げると、そこに立っていたのは一人の仮面ライダーだった。
黒い身体に緑の生態装甲、赤い複眼と鋭い牙を持ったクラッシャーにカミキリムシを模した仮面、腰にはベルト状のパーツ・メタファクター。
―――仮面ライダーギルス。
不完全ながらも力ある者として覚醒してしまい、異能の力と自身の不幸な運命を味わうも闇に落ちず戦った野生なる戦士。
彼はジェイナスへ手を差し伸べて立ち上がらせると、変身者である二人に苛立った口調で言葉をぶつけた。
『まったく見てられん……身を削ってまで押し通そうとするなんて、正直褒められたものじゃないな』
「す、すいません……」
「でも、私の気持ちは本物です」
『あぁ……お前らの強い想いは筋金入りと見た。俺もお前らみたいな馬鹿は嫌いになれない』
ギルスは仮面の下で笑いながらジェイナスに告げると、ライドキラーに振り向く。
一方で自身の所有していたライドクリスタルの一つが仮面ライダーとして実体化した事にライドキラーは驚いていた。
「ライドクリスタルの中にあるライダーの意思が仮面ライダーの姿になったのか……?」
『すまんが、俺は彼らに力を助けることに決めた。意地でも無茶するこの二人をこのまま放ってはおけない』
「なっ……お前ッ!」
『言いたいことは分かる……安心しろ、彼らの面倒は責任を持って見ておく』
ギルスの告げた言葉にライドキラーは握り拳を作り、ジェイナス達の方へ迫ろうとする。
だがそれを遮るかのように、ライドキラーから黄色と深緑色のライドクリスタルが浮かび上がり、ジェイナスの方へと飛んでいく。
ジェイナスの手に収まった二つのクリスタル……そこから、二人の男の声が発せられた。
『たっく、若いねぇ。若すぎて思わず俺達もこっちに乗せられてしまうぜ』
『……俺も一介の医者として、見過ごしておけない。貴様らは危うすぎる』
「えっと、あなた達は?」
『俺は仮面ライダーレーザー、こっちはアナザーアギトだ』
『せいぜい大きな怪我だけはするな。この状態だとまともに手術はできないからな』
不思議がるジェイナス……優奈に対して、二人の仮面ライダー……『仮面ライダーレーザー』と『仮面ライダーアナザーアギト』は挨拶を告げる。
自身の所有しているライドクリスタルが三つも相手に渡り、ライドキラーは苛立った声を思いっきりぶちまけた。
「チッ、ああそうかよ……勝手にしろよ! この馬鹿ライダーどもが!」
「……アンタ」
「テメェらがそこまでの覚悟持ってるなら、暫くはそいつらを預けておく……あと、コイツも勝手に使え!」
怒鳴り散らす勢いで怒りを宿した声を巻き散らしていくライドキラーは先程まで使っていた剣を投げ飛ばす。
放たれた剣を掴む形でキャッチすると、ジェイナスはライドキラーの方へ振り向いた。
だが、既に彼の姿は屋上の何処にもなく、代わりに遠くの建物へ飛んでいく光景が目に移った。
何とか危機を脱したと思ったジェイナスは姿を元に戻すと、一登と優奈は地面へとへたり込む。
「なんだったんだ、あいつは」
「仮面ライダー……なのかな?」
「わからない……なんでこれを渡してきたのかも」
そう言いながら、一登は優奈と共に手に握っている剣に視線を落とした
白と黒で彩られたその片手剣……鍔部分の装填スロットでライドクリスタルをいれられそうだと二人は思った。
現にライドキラーはいくつか持っていたライドクリスタルを駆使して、見慣れないライダーの力を宿して使っていた。
不思議そうにライドキラーから渡された剣型武器を見つめていると、レーザーのライドクリスタルが浮かび上がって二人に説明をし始める。
『そいつは自在変剣ライドキャリバー、ライドクリスタルの力を引き出すために作られた現代の剣さ』
「「ライドキャリバー……」」
『ま、その真価を発揮するのは使ってみてからのお楽しみだな』
『よろしく頼むぞ。仮面ライダージェイナス』
レーザーとギルスの言葉が告げた後、実体化していたギルスはライドクリスタルに戻り、他のクリスタル共に二人の手元に収まった。
新たに手にした三つのライドクリスタルと、ライドキラーから渡された武器・ライドキャリバー。
二つの新しい力をもらった事に戸惑いながらも一登と優奈はゆっくりと立ち上がり、その場から後にした。
~~~~~
その後、買い物した物を忘れずに回収した二人はそそくさとショッピングモールから離れて繁華街を当てもなく歩いていた。
あのまま現場にいれば、屋上駐車場で起きた"謎の火事事件"の重要参考人として警察に事情聴取をされデート所ではなくなっていたかもしれない。
自分達の起こした事とはいえ面倒事には巻き込まれたくなかった二人は逃げる事にした。
ショッピングモールに残した改には申し訳ない気持ちを持ちながら、ありつけそうな昼食の場所を探していた。
一登は優奈と手を握りながら、話し合っていた。
「優奈……これからあんなヤツと戦わなくちゃいけないんだよな」
「うん、きっとまた私達の前に現れると思う」
「厄介なことになったなぁ……でも、まあ大丈夫か」
「きっと、私達ならいけるよ」
「とりあえずさ、食べられそうな所見つけるか?」
「そうだね、一登君との初めての外食は何になるのかな」
難しい真剣な顔からいつしかにこやかな笑顔に変わり、笑いあう一登と優奈の二人。
行きかう人混みの中に手を繋ぎあいながら紛れて消えていった。
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同時刻、東京郊外の発電所。
暫しの間電力低下を引き起こしたという未曽有の事態にてんやわんやと混乱する施設を見下ろしながら、一人の人物が見降ろしていた。
漆黒の軍服を纏い、鋭い視線で見降ろしているその男は一人呟いた。
「ふむ、確かに電力は頂いたぞ。我らが同胞復活の贄としてな」
男はそう言いながら踵を返して、立ち去ろうとした。
その傍らにはいくつもの爛爛とした赤い眼光が輝かせていた。
漆黒の男は共にこの世へ蘇った達と共に闇の中へ溶け込むように消えていく。
―――次に狙うのは、ライダー、貴様の血だ