時系列的には『BEGINS・ROAD』→『悪夢と夢を語る朝』→『襲撃者・その名はRide Killer』→『君のためのバケットサンド』の後になります。
個人的に気に入っている新キャラ、登場だ!
早朝、頼打地区の弓道場。
そこで一人弓矢の撃つ練習をしている若い少年がいた。
金髪碧眼という日本において少し変わった出で立ちながら、数十メートル先の的の中心を真っ直ぐと見つめるその姿はまさに現代の射手とも言えよう。
少年は狙いを定め、張り詰めた弓の弦を手放した。
「……!」
弓から放たれた矢は目にもとまらぬ速度で真っ直ぐと飛んでいき、ダァンと的へ突き刺さった音が鳴り響いた。
突き刺さった場所は中心より少し右……自分が狙っていた場所よりズレていた事に少年は眉を顰めた。
「中心より少しズレたか。まだまだ精進しなければな」
『……少し力んでいるな。力を抜け』
「またお前か。毎度毎度口出しするな」
『生憎性分なものでな。心矢、悪くしたのならば謝る』
物陰から男性の声が発せられ、金髪の少年――『紅道心矢』は振り向きながらため息をついた。
目の前にいる相手に向けてきつい言葉を向けた後、自身の相棒である弓を下ろし、会話を続ける。
「そもそもお前一体何なのだ? 一応喋ることはできるみたいだが」
『出会った時に名乗ったはずだが?』
「それでもお前のような存在をすぐにでも信じられるか」
『まあ、それもそうだな』
そう言いながら物陰から浮かび上がったのは、人の形をした異形のシルエット。
角のようにも触覚のようにも見える突起物が頭から生え、頭部には赤く輝く複眼が物陰から覗かせていた。
まるでTVの中に出てくるような怪人のような姿をした『話し相手』に特に驚く様子もなく、心矢は今度は苛立った口調で訊ねてきた。
「なんでお前がオレを必要とするのか分からない。だが宛てもない誰かを探すってのは無理なんじゃないか?」
『……いや、
「たっく……わかったよ。手がかりがあるだけならまだ望みはありそうだな」
『ありがとう、心矢』
感謝の言葉を贈ると、話し相手である異形の影は心矢の前から消えていった。
心矢が気難しい顔をしながら異形の影が立っていた場所へ向かい、物陰に立てかけてあった自身の荷物を取ると、道場から出る身支度を始める。
荷物である大き目のリュックと弓を包み込んだ風呂敷を担ぎ、心矢は道場から出ていった。
~~~~~
襲撃者・ライドキラーから襲撃を受けて二日後。
喫茶店・New Amigo……一登の部屋にて、一登と優奈は勉強用に置かれた一つの小さな机を挟んで座っていた。
その机の上にはいくつものライドクリスタルが置かれていた。
マッハクリスタル。
アクセルクリスタル。
ギルスクリスタル。
レーザークリスタル。
アナザーアギトクリスタル。
合計5個のライドクリスタルが鎮座し、二人は穴が開くほどに見つめていた。
「あの時、あのライドキラーが持っていたクリスタル。理由はともあれ手に入れたのは幸いだった」
「うん、そうだね。でもあの人、ライドクリスタルをまだ持ってるよね」
「あの時ヤツが使っていた
「……取り戻しに来るのかな。このクリスタルを」
一登と優奈が話しながら思い出したのは、ライドキラーの言葉。
―――テメェらがそこまでの覚悟持ってるなら、暫くはそいつらを預けておく
ライドキラーが言い残して去っていった言葉を察するに、またもや自分たちの前に現れるかもしれない。
自分達にとって未だにこのクリスタルが何をもたらすのは分かってはいないが、それでもお互いを守るため必要なものだと何となく理解できる。
今すべきことなのはこのクリスタルの事を知る……そう思った一登と優奈は、まず優奈が先に口に出した。
「一登君、私達はまだこのクリスタルの……仮面ライダーの事を知らないよね」
「ライダーの力の事を知っておくべきだよな」
「彼らの事を聞ければ、今私達の置かれている状況が分かるかもしれない。じゃあ……アクセルさん、マッハさん」
ライドクリスタルのライダー達に訊ねる事を提案した優奈はライドクリスタルのうち、アクセルとマッハのクリスタルを手に取ると彼らに話しかけてみる。
彼女の呼びかけに答えるかのように机の上にホロクラム状でできた2~3㎝ほどの身長のアクセルとマッハの姿が浮かび上がった。
『どうした?二人とも』
『なんだい? 俺達の事でも聞きたいのかい?』
「実はそうなんだ。アンタ達仮面ライダーが一体何者なのか、知りたくて」
「教えてください、仮面ライダーってなんですか?」
自分達仮面ライダーの事を知りたがっている一登と優奈の見て、アクセルとマッハは顔を見合わせる。
そしてまず話を切り出したのはマッハの方であった。
『仮面ライダー。時代や場所によっては呼び名や意味合いは違ってくるけど、そのどれもが【異端の力をあえて受け入れ、それを正義のために行使する者たち】ってところだな』
『俺もマッハも、ドーパントやロイミュード……倒すべき怪人と同様の力を使って、弱き人々のために戦ってきた』
「怪人達と同じ……じゃあ、お前達は怪人と同じ力で戦っているのか」
アクセルが発した聞きなれない名称と共に聞こえた"怪人"という言葉に反応を示す一登。
確かに、同じ力ならば異形の怪人達に対抗はできる。
言わば目には目を歯には歯を、というヤツかもしれない。
常人ならざる力だからこそ、あの時ショッカーライダーを圧倒できたのかもしれない。
一登の言葉にマッハが反応を示した。
『まあね、でもって俺達が宿しているこのライドクリスタルは、こことは違う別の世界で戦っていた仮面ライダー達の記憶や記録、力の残留が集まって結晶化したものなんだ』
『通称"異次元記憶結晶体"……ライドクリスタルはいわば、歴代の仮面ライダー達の想いを形どったものだ。かつて戦った【本当の俺達】程ではないが、そのどれもが常人より凌駕した力を宿している』
「そうなんだね。じゃあライドクリスタルとドライバーで変身するジェイナスって……」
『詳しい事は流石にわからんが、優奈たちの変身する仮面ライダージェイナスは二つのライドクリスタルを最大限に活かせるように作られたライダーシステムだと俺は予測する』
仮面ライダーの力を宿すアイテムによって変身するジェイナスの事を指摘を告げた優奈に、アクセルが答えた。
アクセル達ライドクリスタルに宿すライダー達も詳しいことは分かってはないが、凡その予想がつく。
そこで次の疑問を一登は真面目な顔で口にした。
「俺はアクセルとマッハ、二人のライドクリスタルを見て疑問を持っていたんだ。何故ジェイナスは一つでも強力なクリスタルを二つで変身するのかって……」
「あっ! 確かに、アクセルさんとマッハさんで変身できるのってなんでだろう?」
「もしかしたらライドクリスタルにも、所謂相性ってのがあるんじゃないかと思って」
『よく気づいたな一登。俺とアクセル警視殿の力で変身するあの姿・ブレイジングロードはとっても相性がいいのさ』
マッハの言葉の中にあった最初に変身したジェイナスの姿・ブレイジングロード……高速移動と炎熱能力を有するあの形態だけでもあの
もしかしたらブレイジングロードと同じように他のライドクリスタルによる他の形態があるのなら、ジェイナスは強くなれるのかもしれない。
そう思った一登と優奈へアクセルが説明を口にする。
『ジェイナスは対となる相性のいいクリスタル同士で別の形態に変身できる。現に俺達のブレイジングロードがそのいい例だ』
「じゃあ、ここにあるライドクリスタルがあれば新しい姿に変身できるの?」
それを聞いた優奈は疑問を呟いた。
すると机の上に置いていたライドクリスタルが光り、今度はホログラム状のレーザーとアナザーアギトが浮かび上がった。
『残念ながらソイツはノれねぇな。ここには新しい姿に変身できそうな相棒はいないんだよ』
『俺達と対となるライドクリスタルは、あのライドキラーの方に付いていったままだ』
「えっ、そんな……」
『落ち込むなよ、優奈ちゃんよ。あの青いのと赤いの……G3とギャレンって言うけどな、どちらかと言えばライドキラーの意見に賛成していたんだ。放っておけないからお前達へ付いていった俺達と違って、あの二人は仮面ライダーとして危険な目に遭うお前達を許しておけなかったんだ』
レーザーの口にしたライドキラーのG3とギャレンの意思に一登と優奈は戸惑った。
俺達が戦うことに反対するライドクリスタル――ライダーがいることに。
生半可の覚悟で彼女と共にこの道を選んだわけじゃないのに、それでも自分達の事を認めていないという事に複雑な心境を持ってしまった。
命を奪ってしまった自分達の覚悟を否定するのか……そこへアナザーアギトが声を発する。
『あいつらがお前達の覚悟を認めないからと言って、お前たちはその歩みを止めるわけじゃないだろ?』
「「……」」
『そもそもジェイナスという仮面ライダーはライドクリスタルの強大な力を変身者が二人あるからこそようやく成り立つものだと俺達は考える』
「……アナザーアギト」
『だからお前達がお前達である限り、俺達は力になる。過ぎた力で誰かが犠牲になるのはこりごりだからな』
「……優しいんですね。皆さん」
アナザーアギトをはじめとしたライダー達の優しさに涙ぐむ一登と優奈。
彼のほかにもアクセル、マッハ、レーザー、そしてギルスもいる……彼らがいれば、次の戦いもなんとかなるだろう。
希望的な観測であるが、そう思っていた二人。
そこへギルスのライドクリスタルが光り、ホログラム状のギルスが浮かび上がった。
『……』
『おい、どうしたのだ? ギルス』
『なんか感じ取ったのか?』
突然出てきたギルスにアナザーアギトとレーザーは訊ねる。
その言葉に対してギルスの発言に一登と優奈は驚いた。
『―――いる、近くに俺と対になるライドクリスタルが』
「「えっ!?」」
『すぐ傍だ』
「「わかった!」」
一登と優奈は机の上のライドクリスタルを懐に突っ込んで納めると、急いで部屋から出いていった。
ドタバタと階段を降り、喫茶店の内部へと出てきた二人は急いで外へと出ようとする。
そこへ、一登を呼び止める声があった。
「おい、一登? そんなに慌てて一体どうしたんだ?」
「こ、紅道先輩!?」
一登が振りむけば、カウンターの向こうの調理台で作業をしているのは金髪碧眼の少年。
一登より少し年上に思える彼……紅道心矢はNew Amigoのロゴが入ったエプロンを身に着け、慣れた手つきでサンドイッチの作業をしていた。
カウンター席に座っているお客さんに注文の品であるサンドイッチを差し出すと、カウンターから出てきて一登と優奈の元へと向かう。
「たっく、最近妙に変だと思えば急に騒ぎ立てやがって」
「あの、その、紅道先輩……」
「最近何してるか知らんが、おやっさんに迷惑かけさせるなよ? オレの雇い主でもあるからな」
不敵な笑みを見せる心矢に一登は引きづった笑顔を見せながらタジタジになる。
普段とは違う一登の表情を優奈は彼の背中に隠れながら見ていた。
(一登君、こんな表情もするんだ……なんだか得した気分だな)
「……って、一登、隣の女の子誰なんだ?」
一登の後ろに隠れる見慣れない女の子を見つけ、心矢はその存在に気付いて訊ねてくる。
背中に隠れている優奈を隣に立たせると、一登は心矢に紹介を始めた。
「えっと、こっちは優奈。この前再会した俺の知り合いで、幼馴染……です」
「初めまして、飛鳥優奈です。一登君がお世話になっております」
「俺は紅道心矢、城南大学付属高校の二年生で一登の先輩だ」
心矢は優奈とのあいさつを交わすと、彼女の姿をマジマジと見つめ始める。
栗色の髪、ヘイゼル色の瞳、整ったかわいらしい顔立ち。
ロングスカートに手首まで袖のあるブラウスというゆったりとした可愛らしい服装と、それで隠れながらもメリハリのあるプロポーション。
そして何より目立つのは彼女のもの優しい雰囲気。
ふぅんと納得したような声を上げると、一登に向けて悪戯めいた笑顔を向けた。
「そうか、君が吾郷のヤツが言っていた一登の彼女か」
「か、彼女……!?」
「一昨日の連絡で妙にうるさかったからよく覚えているよ。まったく、羨ましいもんだよ」
まるでからかうように笑う心矢に一登は顔を真っ赤にさせる。
隣では優奈が黙り込んで下に俯き、自分の手を絡ませて握っている。
恥ずかしいのだと理解した一登は弁解の言葉を告げた。
「ま、まだです! 優奈とはその、まだ、恋人とか彼女とか、そういう親しい関係じゃあ!」
「まだってことは……いずれはするんだな?」
「それはその、ノーコメントで……」
「やるって決めてるようなもんだぞ、それ……」
「うぐっ……」
心矢のツッコミの矢が深々と一登の胸に突き刺さった。
この紅道心矢という男、弓道部に入っており中々の腕前でエースとして第一線として大会に名を馳せている。
一方で趣味は料理ということで、アルバイトとしてこのNewAmigoの厨房の一端を任されている。
彼とは親しい関係ながら、こうもいじられるとは思ってもみなかった一登は優奈の手を引いて外へ向かおうとする。
「と、とにかく俺達これから用事があるので……店番、頼みました!」
「い、行ってきます!!」
「おぉ、デート楽しんで来いよ。それくらいの時間は稼いでやる」
出ていく一登達を最後までからかいながら見送った心矢。
一登と優奈はそそくさと早歩きでNew Amigoから離れる中、優奈が切り出してきた。
「か、一登君……」
「な、なんですか」
「そこは彼女って明言して欲しかったよ」
「……ちゃんと正式に告白してからじゃダメですか」
「うぐっ、ズルいなぁ君は……!」
「ズルいのはそっちじゃないか」
二人は心矢の『からかいの言葉』に悩ませながら、ギルスの言っていた『相棒のライドクリスタル』の気配を探しに出かけていった。