仮面ライダージェイナス   作:地水

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第3話:射抜け、強き心 中編

 東京、とあるビル群。

幾重にも立ち並ぶビルの屋上の一つにて地上を見下ろすように一人の男が立っていた。

漆黒の軍服を見に纏うその男は、平和を謳歌する人々を睨みつけている。

 

「フン、戦いを知らぬ腑抜け共め。その緩み切った怠慢、叩きなおしてくれる」

 

軍服の男はそういうと、片手を上げる。

すると、彼の背後に現れたのは異形の姿をした怪人達。

二種類の異なる動物の特徴を身体に取り入れている三体の怪人達は、漆黒の男の前へ姿を出すと、そのうちの一体が訊ねる。

 

「お呼びでしょうか」

 

「いよいよ動く時だ。存分に暴れてこい」

 

「「「キシャアアアア!!」」」

 

了承代わりの唸り声を上げると、三体の怪人達はそれぞれ飛び散っていく。

すぐさま彼らの手によって始まるであろう地獄を楽しみにしながら、軍服の男は歪んだ笑みを浮かべていた。

 

 

~~~~~

 

 

 NewAmigoから抜け出した一登と優奈は、ギルスクリスタルに宿る仮面ライダーギルスの言葉に従って対となるライドクリスタルの気配を探っていた。

丁度公園辺りに差し掛かったところ、息を切らしながら二人はいったん足を止める。

 

「一体どこにあるんだよ……いや、この場合いるほうがいいのか」

 

『むっ……どうやら気配が消えた。すまない』

 

「えぇ!? 急いで出てきたのにぃ~!」

 

ギルスの申し訳なさそうな言葉にがっくしと項垂れる優奈は近くにあったベンチに腰を掛ける。

むくれる彼女の様子に微笑みを浮かべながら一登も優奈の隣に座ると、彼女の持つギルスクリスタルへ向けて話し始めた。

 

「で、ギルス。アンタの感じたライドクリスタルの反応って何処から出ていたんだ?」

 

『あの(いえ)にいたときは反応が強かった』

 

「NewAmigoにいたときに? でも、あそこにあったのはあなた達ライドクリスタル達だけだったよね」

 

『誰かがライドクリスタルを隠し持っていた。ということもある』

 

「「ッ!?」」

 

ギルスの言い放った言葉に一登と優奈は戸惑った。

自分達仮面ライダーでもない、ましてやライドキラーでもないライドクリスタルを保有する『第三者』が持っていることになる。

たった一つでさえ強力なアイテムを自分達の知らぬ誰かが持っているのなら危険な事になるのではないか?

そう思った一登はギルスに訊ねた。

 

「ライドクリスタルって悪用されたりしないのか?」

 

『生憎と俺達仮面ライダーには意思もあるし心もある。気に食わない相手や嫌な相手には力を貸したりはしない』

 

「そ、そうなのか」

 

「なーんだ、それなら安心だよ」

 

ギルスに簡単には悪用されない事を告げられた一登と優奈の二人はほっと一息をつく。

全てのライダーは知らないけども、少なくともギルス達の様なライダーがいるならとりあえず私利私欲のために悪用するということはなさそうだと思った。

 

「でも、一登君。それならば何でギルスさんの相方さんは姿を現さなかったんだろう」

 

「それなんだよなぁ。少なくとも他のクリスタルを持ってる俺達に気付かないわけじゃないはずなんだが」

 

だが、そこで二人はふととある疑問が浮かぶ。

――なぜライドクリスタルを持つ自分達に対して、声をかけなかったのか。

他のライドクリスタルから信用されている二人には気づいていただろうに、何故ギルスと対となるライドクリスタルは存在を知らせなかった、もしくは隠したのか。

一登と優奈にはそれがわからなかった。

ともかく今この場には反応がない今、次にどうするべきか悩んでいる最中でふと一登はあることを思い出し、ギルスに質問をぶつけた。

 

「なぁ、ギルス。さっきお前達仮面ライダーには意思もあるし、心もあるって言っていなかったか?」

 

『確かに言ったが』

 

「なるほどな……もしかして、お前の相方は馬の合う誰かに巡り合えたんじゃないだろうか」

 

「『えっ!?』」

 

一登の口にした言葉にギルスと優奈は顔を見合わせ、一登の方へ顔を向ける。

意外な答えに辿り着いた一登は自分の顔をまじまじと見ている二人に説明する。

 

「ライドクリスタルの中の仮面ライダー達って俺達と同じ心もあるし意思もある。さっきギルスが口にした『気に食わない相手や嫌な相手には力を貸したりはしない』って事を考えるとさ、誰かを気に入ったり好きになったりするのじゃないか?」

 

「そっか、逆に言えば気に入った人とか好きな人なら力も貸したりするし、一緒にいたいから隠れるんだ」

 

優奈は一登の言った意味を理解して、頷いた。

ライドクリスタルに宿る仮面ライダー達は自分達と変わりなく心を持っている、意思を持っている。

最初にアクセルとマッハも自分達の願った意思を聞き届けて力を貸しているし、ライドキラーに相打ち覚悟で特攻した時もギルスが見かねて止めてくれた。

人間と変わりない心を持った彼ら仮面ライダー達……その一人であるギルスは浮かない表情で口を開く。

 

『お前達は変わり者だな……俺達はいわばかつての力ある者達を思いと記憶が形どった鏡像(コピー)だ。本物ならまだしも、力だけの存在である俺達に気にする方がおかしいぞ』

 

「関係ないよ。貴方達が本物の仮面ライダーって人達じゃなくても、私達に手を貸してくれて本当に助かってるし、とっても嬉しいの」

 

『嬉しい……だと?』

 

「だって、巡り合えた私達を助けてくれたのは他でもない……あなた達仮面ライダーだから」

 

感謝の言葉と共にギルスへ暖かな笑顔を向ける優奈。

あの時、悪魔の魔の手から救ってくれたのも、ジェイナスとして戦えているのも、アクセルやマッハ達ライドクリスタルの仮面ライダー達のおかげだ。

彼らには感謝したくてもしきれないほどの大きな気持ちが一登と優奈の二人にはあった。

二人の向けられている暖かな感情に流石のギルスも戸惑ってしまった。

 

『やめろ、その……少なくとも俺は、そんな物を受け止める人じゃあ』

 

『人の好意には乗った方がいいぜ? ギルスパイセンよ』

 

『…ッ! お前いつから聞いて……!』

 

『別に~? 素直になれないヤツはどこにもいるんだなぁぁー!』

 

一登の所持していらライドクリスタルの一つからホログラフ状のレーザーが出現し、優奈の笑顔にやられているギルスを茶化す。

ギロリと赤い双眸で睨まれながらもどこ吹く風で気にしないレーザー、そんな二人のやりとりを見て、一登と優奈は思わず噴き出した。

 

「「あっははははは!!」」

 

『さーて二人とも、ライドクリスタルの宝さがしゲームはいったん中断して、休憩すっか』

 

笑い声を上げる一登達を見て、レーザーが休憩を勧めてきたその時であった。

遠くの方で起きた大爆発と、そこから聞こえてくる悲鳴が二人の目と耳にに届いた。

 

「「ッ!!」」

 

『おいおい、どうやら休憩する暇もないみたいだな?』

 

唐突の日常が壊れる光景を目にしたレーザーは苦々しい声を上げる。

一登と優奈の二人は顔を見合わせて頷くと、ベンチから立ち上がって、すぐさま公園から出ていった。

 

 

~~~~~

 

 

二人が向かおうとしているその場所では、目に余る惨状が広がっていた。

横転した車から流れたガソリンが引火して爆発、辺りに燃え広がって火事が起き、建物は破壊され、一部の瓦礫が地上にいる人間達へ降り注いだ。

人々が我先に逃げ惑う中、その瓦礫に挟まれ身動きできない人間がいた。

 

「千世! 千世ったら! 大丈夫!?」

 

「梨絵! 私の事なんか構わず一人で逃げて!」

 

そこには瓦礫に足を挟まれ身動きのできない少女と、彼女を助け出そうとする少女がいた。

長い黒髪の少女・梨絵(りえ)は、足を瓦礫に挟まれて身動きのできない赤毛の長髪の少女・千世(ちせ)を助け出そうと必死だった。

まるで姉妹のように育ってきた仲である友達をそう易々と置いて逃げられるわけはなかった。

どうにかして瓦礫をどかそうとするも、女性の力ではたかが知れており、ピクリとも動かなかった。

それでも必死に親友を助け出そうとする彼女へ迫る『魔の手』があった。

 

「ほう、どうやら逃げ遅れたヤツがいたようだなぁ」

 

「アリアリアリィィィ~! マンモォォォォ!」

 

「「ッ!」」

 

梨絵と千世が顔を向けると、そこにいたのは見るにおぞましい怪物達だった。

一体は肩に渦巻き状の殻を背負ったチーターとカタツムリを混ぜ合わせたような容姿の怪人。

もう一体は昆虫特有の節足が四本も映えているアリとマンモスを混ぜ合わせたような怪人。

この場の惨状を作り上げた【チーターカタツムリ】と【アリマンモス】、二体の怪人は逃げられない少女達へ迫りつつあった。

 

「梨絵……!」

 

「千世……!」

 

近づいてくる怪物達に言い表せられないような恐怖を感じ、思わず目を瞑る梨絵と千世。

このまま自分達も……怪物に手にかかる寸前の若い少女二人の元へ、二人の人物が駆けつけた。

 

「おいおい、何の冗談だよ……なんであんなバケモンがいるんだよ!」

 

「知るかよジンさんよ! どっちにしろ市民を助けるのが俺達刑事の仕事だぁぁぁ!!」

 

「ゲンさんちょっとおい! ああもう、こりゃ参ったね!!」

 

現れたのはスーツ姿の二人の中年の男性達だった。

一人は頑固そうな見た目の黒髪の男性、もう一人は肩にツボ押し器をかけた調子のよさそうな黒髪の男性。

偶然にも居合わせた二人の刑事たちは、襲われそうになっている少女達を助けるべく、異形の怪人達へ飛びかかっていった。

 

「待ちやがれこのナメクジ野郎!」

 

「誰がナメクジだ! チーターカタツムリだ!」

 

「うるせぇ! この刑事・追田現八郎が目が黒いうちは悪事を働けると思うなよ!」

 

チーターカタツムリへ力任せのタックルを仕掛けた頑固そうな刑事――ゲンさんは、吹っ飛ばした後に懐から銃を向けて発砲。

放たれた銃弾は肩の頑丈な殻に当たるが、拉げた弾丸が地面へとコトリと落ちて、ゲンさんを驚かせた。

 

「俺の必殺カンフー、受けてみろや!」

 

「パオーン!? なめやがって!? このぉぉ!!」

 

「とっととと!? あぶねぇ……おわーっ!?」

 

もう一人の調子のよさそうな刑事――刃さんは独特な動きのパンチやキックをアリマンモスへお見舞いしていく。

歯向かってくる人間がやってきたの事を想定してなかったのか、油断して攻撃をまともに受けたアリマンモスは激怒して顔から生えている二本の大きな牙を伸ばした。

咄嗟に滑り込む形で刃さんは避けるが、後方にあった自動車はまるで豆腐に箸で刺すように車体を貫き、そのまま大爆発を起こした。

爆風に吹き飛ばされた刃さんはゲンさんの元まで飛ばされ、地面へと転がり込む。

 

「いってててて! なんなんだよアイツら、もう犯罪とかそういうの超えてるよ!」

 

「くっそぅ! 俺達に打つ手はねえのかよ!!」

 

目の前で事件を引き起こしている超常的存在とも言える怪人達に対して、刃さんとゲンさんは無念の気持ちをぶつける。

対してチーターカタツムリとアリマンモスは自分達を攻撃してきた刑事たちに標的を変えると、攻撃を仕掛けようと腕から生み出された光弾が狙いを定める。

 

「「消しとべっ!!」」

 

「「ぬおおおおお!?」」

 

「け、刑事さん!」

 

「いやっ!」

 

怪人達から放たれた光弾が目にもとまらぬ速度で二人に迫る。

刃さんとゲンさんは目を見開き、梨絵は自分達を助けてくれた二人の刑事へ名を叫び、千世は両目を覆う。

このまま為すすべなく、二人の市民の味方の命が消えるのかと思われていた……。

―――だが、それを許さない者がこの場に現れた。

 

 

【MACH・MATERIA-RIDE】

 

 

『あーらよっと!』

 

「ぬぉーっ!?」

 

「おぉぁっとっ!?」

 

一瞬、スロー再生のように世界が遅くなった。

燃え上がる火も、迫りくる光弾も、ましてや自分達の動きでさえも、まるで重力が圧し掛かったように遅くなり、身体を動かす事が困難になる。

そのどんよりとした謎の空間を、白い閃光が駆け巡り、刑事二人を抱きかかえてその場から離れた。

光弾は二人がいた場所をすり抜け、地面へと着弾して爆発した。

何が起こったのか、とゲンさんが顔を上げると自分達が謎の白い仮面の戦士に抱きかかえられている事に気付いた。

 

重加速(どんより)にもこういう使い方あるんだよね。ね、ゲンさん』

 

「って、えぇ!? だっ、誰だお前!? つーかなんで俺のあだ名を!?」

 

『なーに、袖振り合うも他生の縁ってヤツだよ。気にしないでくれ』

 

初対面のはずの謎の存在に親し気にされてゲンさんは戸惑った。

二人の謎のやり取りを繰り広げている最中、梨絵と千世の元へ駆けつける一人の少年がいた。

 

「キミ、大丈夫か?」

 

「あ、あなたは……?」

 

「俺のことはいいから。彼女を助けるぞ」

 

黒髪の中世的な少年……もとい、一登は梨絵に声をかけた後、千世を敷いている瓦礫をどけるべく掴んで力を入れた。

一登の存在に気付いたアリマンモスが再び伸縮する牙による攻撃を仕掛けようとするが、再び電子音声が聞こえてくる。

 

 

【ACCELE・MATERIA-RIDE】

 

 

『振り切るぜ……ハァァァ!』

 

「何!?ぐああああああ!!」

 

「ま、マンモォォォォ!?」

 

けたたましいバイク音と共に突貫してきた人型の形にも見える赤いバイクがチーターカタツムリ達に直撃し、そのまま遠くまではね飛ばした。

赤いバイクは急旋回をしながら停止すると、そのまま人の形へ変形した。

赤い仮面の戦士となった所を目撃した刑事たち……特に刃さんは驚愕の顔を浮かべた。

 

「ば、バイクから人になった!?」

 

『刃野刑事、彼女達の救護と避難を任せた』

 

「は、はい!って、なんで俺、従っちゃったんだ?」

 

赤い仮面の戦士に不思議な縁を感じた刃さんはゲンさんと共に一登達の元へ向かうと、一緒に瓦礫を動かしはじめる。

ようやく男性三人と女性一人でなんとかどかすと、梨絵は自由の身になった千世に抱き着く。

 

「千世っ!」

 

「梨絵、大丈夫だって……いててて」

 

「あの、彼女達を任せました」

 

「わかった……って、お前はどうするんだよ!?」

 

「おーい!? そっちは危ないぞ!?」

 

怪我をしている千世と彼女に泣きつく梨絵を刑事達に任せると、一登は怪人達を追って走っていく。

刃さんとゲンさんの二人の呼び止めようとする言葉にも気にせず消えていく姿を梨絵は見送っていた。

 

 

~~~~~

 

 

 街中のそれなりの広さを誇る広場へ飛ばされたチーターカタツムリとアリマンモス。

態勢を立て直す二体の元に現れたのは、ライドキャリバーを構える優奈と、走って駆けつけた一登の二人だった。

 

「一登君、あの子達は」

 

「ああ、無事に逃がした。後はあいつらだ」

 

合流した一登は優奈と共に見やる。

―――あの時、優奈がライドキャリバーに装填したマッハとアクセルのクリスタルでマッハ達を召喚、その間一登が逃げ遅れた一般人を助け、どうにか民間人から怪人達を引き離す事ができた。

まさか二度も愚弄されるとは思ってもみなかった二体の怪人は一登達を睨みつける。

 

「貴様ら……何者だか知らんが、よくも我らをコケにしてくれたな!」

 

「我々を何だと思ってるんだ! 踏みつぶしてくれるぞう!」

 

「どうやら相手はやるつもりのようだな……いくぞ、優奈!」

 

「うん、一登君!」

 

【【JANUS-DRIVER】】

 

臨戦態勢の怪人達を見て、一登と優奈はジェイナスドライバーを取り付ける。

二人の目の前にライドボディが出現すると、それぞれアクセルクリスタル、マッハクリスタルを装填。

そして二人の仮面ライダーの名前が鳴った後、一登達は大きく叫んだ。

 

【ACCELE】

 

【MACH】

 

「「変身!」」

 

【ACCELE×MACH】

 

【RIDER FUSION】

 

【BLAZING ROAD】

 

鳴り響く電子音声と共に二人の姿が光となって消失……赤と白の二つの光は、ライドボディと重なって漆黒のボディを赤と白が彩る姿へと変えていった。

ジェイナス・ブレイジングロードへ変身を終えた後、目にもとまらぬ速さでチーターカタツムリとアリマンモスの二体へ飛びかかっていく。

 

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