何気に描きたかった、日常回。
時系列的には『悪夢と夢を語る朝』の登校シーンの直後のこと。
新キャラも登場しますわよ。
それは、とある日のこと。
頼打地区のとある工事現場、そこでは建設員が逃げ惑っていた。
この場から離れようとする人達。それを追いかける謎の異形の姿があった。
水晶のような鉱物でできた身体を持つその怪人はゆっくりした足取りで建設員の後を追う。
我先にこの場から逃げようとする建設員の中で若い男性が石ころに躓き倒れてしまう。
「ぐあっ!? ……はぁっ!?」
何とかして立ち上がろうとするも鉱物の怪人が逃げ遅れた男性に手を伸ばし、首を掴み上げる。
首を圧し折らん勢いで絞める力を強め、男性の顔は次第に青白くなる。
「かぁっはぁ……!?」
このまま窒息死か、それとも首を圧し折られて死ぬのか……男性が走馬灯を思い浮かべようとしたその時だった。
鉱物の怪人の腕を蹴り上げる炎の足が視界をよぎったのは。
「「ハァァァ!!!」」
バリィン、とガラスが砕けるような音と共に、男は地面へと倒れこむ。
咳き込みながら何が起きたのか、と振り向けば、自分を守るように背を向けて立つ一人の仮面の戦士がいた。
鉱物の怪人に向き合いながら、仮面の戦士は男に逃げるように叫んだ。
「アンタは逃げろ、ここは俺た……じゃなかった、俺が!」
「あ、ああ!」
男は返事を返した後、立ち上がって逃げていく。
それを見届けた仮面の戦士――ジェイナスは鉱物の怪人を一瞥する。
これまで出会ってきた相手とは異質な印象を持つその水晶の怪人は、ジェイナスを視認すると襲い掛かってくる。
打ち砕かれた腕を硬質の刃として伸ばすと、ジェイナスへ斬りかかる。
振り下ろされる刃をジェイナスは避けながら対応していると、近くにあった物置の上に降り立つ影があった。
「フン、ここにも出たか。仮面ライダーよ!」
「お前は……あの時の!」
ジェイナスが顔を向ければ、そこにはあの時逃がした蝙蝠と蟹の怪人・ガニコウモルの姿があった。
ガニコウモルは鉱石の怪人と戦いあうジェイナスを見て、左手の鋏で指しながら告げた。
「ソイツは結晶兵士ミネラリオン! 我らが新たなる兵士よ!」
「ミネラリオン!? それがコイツの名前……ぐっ!」
ジェイナス――優奈の驚く言葉と共に、結晶兵士・ミネラリオンが鋭く尖らせた右腕から結晶の破片を射出。
火花を散らしながらジェイナスへと直撃し、爆風と共に吹っ飛ばされてしまうジェイナス……これならば、と口元をほくそ笑んだガニコウモルが静観していると、電子音声が聞こえてきた。
【LASER・MATERIA-RIDE】
「「―――ハァァァァ!!」」
「飛ばすぜ二人とも!」
爆風の中から出てきたのは、ジェイナスを乗せた黄色いバイク姿の仮面ライダー。
―――仮面ライダーレーザー
真実と虚偽の狭間で自身を信じて乗りこなす相棒と共に前線を駆け抜けた爆速の疾走者。
レーザー・バイクゲーマーレベル2を駆るジェイナスはライドキャリバーを構え、ミネラリオンへと突撃。
最高速度まで加速するレーザーを運転しながら、ジェイナスはライドキャリバーを振り上げる。
「「キャリバーソードラッシュ!」」
すれ違いざまにミネラリオンへ叩き込まれる必殺の斬撃『キャリバーソードラッシュ』。
数十メートル後方へジェイナスの乗るレーザーが急停止した後、ミネラリオンの身体は斬られた箇所からずり落ち、地面へ倒れこむとそのまま爆散した。
ガニコウモルはミネラリオンを撃破したジェイナスを睨みつけると、そのまま空へと舞い上がる。
退散していくガニコウモルをジェイナスは追跡しようと再びレーザーのハンドルを握ろうとした。
「優奈、このまま追いかけるぞ!」
「うん、わかっ……」
【~~♪~~♪】
『……って誰のケータイだ!?』
エンジンを吹かそうとした所へ、携帯電話による着メロが鳴り響き、レーザーが思わず突っ込む。
するとジェイナス……正確には優奈の意思で手が動き、ジェイナスの
変身前と同じやり取りで耳に当てると、電話から聞こえてきたのは悠二の声だった。
『おう、優奈。今どこにいる?』
「? えっと、一登君と一緒にいます」
『おう、そうか。ところで今さっき届いたぞ。早く連れて帰ってこいって一登に言え!』
「えっ、本当ですか!? わかりました!」
悠二からの連絡を受けて、嬉しそうな声を上げるジェイナス――優奈。
通話ボタンを切った後、ジェイナスはふるふると肩を震わしながら……喜ぶ声を上げてガッツポーズを見せた。
「やった!」
「?」
『優奈っち、何を喜んでるんだろうか……?』
クエスチョンマークを浮かべるジェイナス(一登)とレーザー。
二人の様子を他所にジェイナス(優奈)は隠せない喜びの様子を見せていた。
~~~~~
翌日、城南大学附属高校にて。
一登の在籍している教室、ホームルームにて担任の梅花真理愛が登壇する。
「はい、ホームルームを始めます! 起立、礼、着席!!」
真理愛のハキハキとした挨拶を共に行う一登のクラスの生徒達高校生1年生。
席に着いた所で真理愛はにこやかな笑みを浮かべて一同に告げた。
「さて、ここでこの教室に新しい仲間が増えます」
「「「おー!!」」」
「では紹介します、入ってきて」
生徒たちが興味津々に待っていると、真理愛の言葉と共に教室の扉が開かれた。
―――入ってきたのは、この高校の制服を纏った一人の少女。
栗色の長髪にはしばみ色の瞳を持った愛らしい顔つきという、この学校においても類まれな容姿を持った美少女が現れ、先程まで湧き上がっていた教室は彼女の容姿端麗に見惚れ静寂に包まれる。
そして真理愛の隣になった彼女は生徒たち一同へ向けて、花のような笑みを向けて挨拶をした。
「今日からこのクラスに入ることになりました転校生の飛鳥優奈です。皆さん、よろしくお願いします」
この瞬間、胸をときめかすような笑顔を向けた美少女転校生――飛鳥優奈に教室の一同は歓声の声を上げた。
ものの一瞬で彼女一色に染まった様子を見て、蒼汰と有栖は唖然とし、一登は苦笑いを浮かべながら昨日の出来事を思い出していた。
~~~~~
昨日、喫茶店NewAmigo。
夕食の時間にて悠二から打ち明けられた事に一登は驚きの声を上げた。
「ハァ!? 優奈が俺の高校に通うだって!?」
「おう、優奈ちゃんの制服が出来上がったから明日通うことになるぞ」
「いや待て待て! そんな話聞いてないぞ!?」
「だってお前には黙っていたからな。驚かせたくてよ」
悠二は悪びれる様子もなく、茶碗の中の白飯をかき込む。
仮にも家の者である自分にすら大切な人を学校へ編入させることを黙っておくのか……いやそれよりも、と一登は箸を握りながら問い詰める。
「優奈にだって元の学校があるし、それに転校手続きってこんな短期間にできるものなのか!?」
「それがね、俺のコネで出来ちゃったんだよなぁー。いやぁ、言ってみるもんだなぁ!」
「どんなコネを使ったら数日で転校させることができるんだよ! おやっさんの知り合いは権力でも握ってるのか!?いつからだ!? いつから企んでいた!?」
「お前が優奈ちゃんと再会して翌朝」
「見逃すほどの高速ビジョンだよ!」
戯けた態度をとっている悠二に一登は捲し立ててツッコミをいれていく。
そんな二人の様子を眺めていた優奈は、今回のオカズのアジフライを箸で器用に切り取りながら口にしたあと、今にも掴みかからんとする勢いの一登へ声をかけた。
「ねぇ、一登君」
「なんだよ優奈」
「明日から同じ学校に行けるね」
「………」
優奈が向けた嬉しそうな笑顔を見て、少しの間見つめたのち、一登は先程の勢いは急におさまり静かに座る。
ーーーどうやら、意中の相手の可愛さには敵わないらしい。
二人の同居人のやり取りを見て、悠二は白い湯気が立つ湯呑みの緑茶を啜るのであった。
~~~~~
話題騒然となった朝のホームルームから時間が経ち、休み時間。
優奈の周りには話題の彼女を興味津々な生徒達が集っていた。
「飛鳥さんって以前はどんな学校いたんですか?」
「飛鳥ちゃんって何が好きなの? 俺はね、和菓子が好きでさ、特に風都饅頭が一番好きで!」
「つかぬ事聞きますけども、飛鳥さんって何か部活動やっていますか?まだ未所属ならば是非ともゲームクリエイティ部にですね……」
「えっと、待ってね。一つずつ答えるから」
数人のクラスメイト達に囲まれて質問攻めに遭っている優奈を傍らに見ながら、一登は有栖に迫られていた。
「一登! あなた知っていたんですか!?」
「知っていたって、何が……」
「あの時の女の子が転校生としてやってくるって事を事前に知っていたのでは!?」
「……なーんでそう思うのですか? 有栖さん」
「飛鳥優奈がここへ来たとき、あなた彼女と仲良かったではないですか。アレはどう見てもただならぬ仲じゃないですか」
ただならぬ剣幕で迫る有栖に、ジト目になりながら返していく一登。
何故ここまでムキになってるかは分からないが、有栖に追及されるのはまずい。
どうやって誤魔化そうかと考えていると見かねた蒼汰が助け舟として話しかけてきた。
「そこまでにしておきなよ有栖。一登が困ってるじゃないか」
「で、でも蒼汰……色々とおかしいですよ。こんな時期に転校生なんて」
「確かに気になるけどね、一登も一登で優奈ちゃんことを詳しく知ってるわけじゃないしさ」
「…………」
蒼汰の口にした何気ない言葉に一登はふと考えにふける。
確かに優奈は『大きな家の人間で、実家の怪しい研究に関わっている人間が怪物に変貌した光景を見て怖くなって逃げた』という経緯が一登の認識だ。
その他になにがあって起きたのかは優奈に怖い想いを思い出させたくないため聞いてはいない。
どっちにしろ、一登は彼女自身が打ち明けるまで待つつもりだ。
そんな真剣な考えを巡らせる中、元気そうな声が一登の耳に届いた
「はいはい、そこまでにしないよ皆。転校生が困ってるじゃない」
「「「えーっ」」」
「ほらほら、散った散った! 転校生の相手はあたしが引き受けるの先生に頼まれてるから」
質問攻めにされていた優奈をクラスメイト達から助けたのは一人の女生徒。
こげ茶色のボブカットと童顔が特徴的なその少女は、優奈に向けて手を出しだした。
「ありがとう、えっと……」
「
「洲崎さん、よろしくお願いね」
「里子で呼び捨てでいいよ、代わりに私はあなたのことを優奈って呼ぶから」
ボブカットの少女……洲崎里子は優奈の手を握り、握手を交わした。
互いに笑顔を向けあう二人の姿を一登は静かに見ていた。
~~~~~
その日の昼休み。
教室から離れて校内を案内する里子と、彼女についていく優奈。
様々な教室を案内を終えて、里子が優奈に話しかけてくる。
「どう? 慣れた? この学校に」
「ううん、まだまだだよ。この学校って設備とか凄いよね」
「そりゃそうよ。この学校って色々と伝説が多いからねぇ。有名人とか、部活とか」
「ふぅん、そうなんだ」
前の学校でも見たこともない場所を案内され、ちょっとした探索気分を優奈は味わう。
うきうきと楽しんでいる優奈へ里子は背を向けながらさりげなく訊ねた。
「ねぇ、優奈ってさ。かず……夏川君とは知り合いなの?」
「えっ……」
里子の言葉を聞いて優奈は思わず足を止める。
彼女は自分の歩みを止め、まるで白状するかのように会話を続けた。
「見ちゃったんだよね、私。授業中にアイコンタクトしてる所をね」
「ああ、アレね。実をいうとね、私、一登君とは幼馴染なの」
「一登、くん……幼馴染か。アイツのねぇ」
優奈の『一登君』という呼び方と『幼馴染』という関係性をかみしめる様に優奈は口遊む。
そして振り向いて優奈の方に向くと、にんまりとした笑みを向け、指を指した。
「気をつけなさいよ、アイツって意外と女の子にモテモテんだから」
「えぇ!? か、一登君ってモテるの!? 知らなかった……!」
「そりゃもうアイツに惚れてしまった人なんて少なくとも3~4人は知ってるし、その上アイツって朴念仁もいい所よ! きっと泣かされて大変なことになるわよ!」
「うぅぅ……一登君、キミ一言もそんな事言ってなかったじゃない~!」
一登の意外な事実を受けて、ショックを受けた優奈はその場にへたり込む。
そこへ、廊下の先から一登が走ってやってきた。
「ここにいたのか、優奈、里子」
「ああ、一登。ようやく先生の用事終わったの?」
「まあな。優奈の案内してくれてありがとな」
「いいってことよ。そーれーよーりー、機嫌治し頑張りなさいよ」
里子は一登にそう言いながら、彼の背中を力強くたたいた。
少し痛がりながら何のことだと一登が思っていると、ようやく立ち上がった優奈が近づくと、がしりと肩を掴んできた。
唐突の出来事に一登は驚き、対して優奈は真剣な表情を向けながら口を開く。
「……一登君、お話があります」
「なんだよ、急に改まって」
「―――君は自分がカッコいいって事を自覚して!」
「ええっ!?」
「再会してから思っていたけど、十分魅力的なんだよ! そこを十分に分からせてあげるからこっちに来てっ!!」
「おい待てって、ちょっ、優奈!? 優奈さーん!?」
ただならぬ雰囲気の優奈に引っ張られながら、一登は彼女と共に廊下の向こうへと消えていく。
きっと、ぷりぷりと怒りながらタジタジになるんだろうなと里子は予想しながら、―――優しい笑みで眺めていた。
―――一・期・一・会
―――優奈の学園での物語は、これからは始まる。