仮面ライダージェイナス   作:地水

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第4話:交差する疾風 中編

 頼打地区郊外、そこにはレオンハルトが都心部へ戻る道を歩いていた。

先程の不機嫌な表情からいくらか和らいでいるが、それでも眉間に皺を寄せたままだ。

あの二人……一登と優奈に関する情報は出なかった、次の身の周辺の手がかりでも探しに行こうかと考えていた。

 

「あーぁ……まったく納得いかないぜ」

 

ぶつくさと呟きながら歩道を歩くレオンハルト。

彼以外誰もいない歩道を、愚痴混じりに歩いていく。

 

―――その姿を遠くから見つめる者がいた。

ヘルメットで覆って頭部を隠したジャケットを羽織った男は、赤いサイドカーに跨って静かに監視を続けていた。

丁度彼が道の角を曲がった所に差し掛かり、姿が消えた所で歩き出した。

自身も差し掛かりレオンハルトの姿を確認しようとすると、―――先程曲がっていったはずの彼の姿はどこにもなかった。

 

「……!」

 

「へっ、驚いたか?」

 

「……ッ!」

 

ヘルメットを被った男が背後からする声に振り向けば、そこには背後に回ったレオンハルトが立っていた。

驚いている様子の相手にレオンハルトは何とも言えない表情で述べた。

 

「何の用だ? スカウトするんだったら生憎もう間に合ってるよ」

 

「ほう、察しがいいな。あの人達の言う通りの実力か」

 

「あの人達?」

 

男が口にした言葉に疑問を抱きながら疑問を浮かべるレオンハルト。

彼の様子を見て、男はヘルメットを外し、その素顔を露にした。

そこから現れたのは鋭い眼光を宿した男前な顔立ち……外国出身のレオンハルトから見れば、国籍は日本人と感じた。

だがその男の顔を見た瞬間レオンハルトは目を見開き、心底驚いたような表情を浮かべた。

 

「アンタはッ……!」

 

「正木五郎、ただのバイク屋のおやっさんだ」

 

「…………」

 

その男――『正木五郎』と名乗った人物に、レオンハルトは一瞬たじろぐ。

少しだけ逡巡した後、頭を掻きながら複雑な顔で五郎に訊ねた。

 

「あー、……そうか、そうかよ。で、そのおやっさんが何の用だ?」

 

「そうだな、元々コイツを渡すつもりだったが一つだ。お前が今相手にしようとする相手は一筋縄者いかないからな」

 

「ああん? コイツって……」

 

五郎の言葉を聞いて、視線を落とすと彼が跨っている一台のサイドカーが目に映る。

よく見ると独特なデザインが施されたそれはレオンハルト自身にとって何処か惹かれるようなものがあった。

彼がこのサイドカーに注目したことをうかがった五郎はニヤリと笑みを浮かべ、サイドカーの事を話し始めた。

 

「XF-Z、今からお前の相棒となるバイクだ」

 

「XF-Z……ハッ、気前がいいモンだな。ほぼ初対面の相手に愛機を渡すなんて」

 

「別にいいさ。お前ならこのモンスターマシンを扱えると思ってな。コイツの兄弟機ともどもよろしく頼む」

 

「たっく、しょうがねえ……って、おい待て? 兄弟機ってことはもう一つあるのか?」

 

レオンハルトは赤いサイドカー――『XF-Z』を物珍しそうに見ていると、五郎の『兄弟機』という単語を耳にして思いっきり顔を向ける。

予想以上のいいリアクションをしてくれるレオンハルトに五郎は不敵に笑いながら、スロット口から引き抜いたバイクのキーを投げ渡すと、座席から降りる。

投げ渡された物を上手くキャッチしたレオンハルトを見て、五郎は肩に手を置いて口を開いた。

 

「今のあの子達を傍で支えるのは俺達じゃない。お前のような今を生きる若者さ」

 

「……五郎の、おやっさん」

 

「またな。ソイツで何かあったらうちの店に来い。頼打地区に戻って正木五郎って名前を出せば教えてくれるから」

 

そう言いながら五郎はレオンハルトにXF-Zを託すと、歩いて何処かへと去っていった。

意味深な言葉について聞くことをしなかったレオンハルトは受け取った起動キーを見つめ、何かを意を決すると座席に座る。

そして装填スロットにキーを差し込むと、ブルンとエンジンが唸り声と共に震える。

ハンドルを握りしめ、クラッチに足をかけるとレオンハルトの駆るXF-Zは走り出した。

 

――これから出会う、『二人の仲間』が待つ出会いへ向かって。

 

 

~~~~

 

 

 頼打地区、海浜公園。

まだ肌寒い海の近くにて多くの人々がくつろぐこの場所、親子連れ、カップル、語らいあう友人同士。

多くの人々が平和を享受していた。

だがしかし、平和な子の一時を悲鳴がつんざいた。

 

「ピッケルシャーク!」

 

「カミソリヒトデ!」

 

海の中から現れたのは、二体の異形の怪人。

一体はサメとピッケルを融合した姿を持った『ピッケルシャーク』。

もう一体はヒトデと剃刀が融合した姿を持った『カミソリヒトデ』。

かつてとある男に倒されたはずの生物と機械の特徴を持つ怪人達は浜辺へと上がり、海浜公園へ迫る。

現代に蘇った異形の怪物達に人々は恐れ戦き、一目散に逃げ惑う。

 

「ヒィリー! 逃げ惑え! 悲鳴を上げろ!」

 

「シャシャシャシャシャ! 平和に浸かりきった貴様達に恐怖と絶望を教えてやろう!」

 

ピッケルシャークとカミソリヒトデの二体の怪人は自慢の武器がいた活かした右腕を振り回しながら、逃げる一般人に向かう。

途中で足がもつれて転び、逃げ遅れた幼い少女が二体の怪人が近づいてくる。

初めて見る異形の怪人達に恐怖で少女の身体が動けなくなり、目を付けた怪人達がその凶刃を振るおうとする。

 

「まずは貴様だぁ!」

 

「ひぃっ!?」

 

カミソリヒトデが振り下ろそうとした右腕の剃刀が少女へと迫る。

鉄や岩をバターの様に切り裂けるほどの切れ味を誇るその刃に切り裂かれれば一溜りもないだろう。

もう駄目だ……少女がそう思ったとき、一陣の風が吹いた。

 

【CHALICE・MATERIA-RIDE】

 

『ハァァァッ!』

 

「シーリー!?」

 

剃刀の刃を振り下ろそうとしたカミソリヒトデへ、風による不可視の矢が突き刺さる。

火花を散らしながら吹っ飛ばされる様子に、隣に立っていたピッケルシャークは驚いて矢が放たれた方向へ顔を向けた。

そこで目に映ったのは、こちらへと錐揉み回転しなが蹴りを放ってくる黒い仮面の戦士だった。

黒い仮面の戦士――ライドキャリバーによって実体化したカリスは自身の身体を回転させながらピッケルシャークを蹴り飛ばした。

 

『ハァァッ……!』

 

「ぐああああああ!?」

 

カミソリヒトデに続いて、遠くへと吹っ飛ばされるピッケルシャーク。

何が起きたのか理解が追い付いてない少女の方へカリスは地面へと降り立つ。

カリスは少女の方へ振り向くと、膝をついて手を差し出した。

 

『……歩けるか』

 

「う、うん」

 

『行け、ここは俺達が何とかする』

 

「あ、ありがとう!」

 

たどたどしい口ぶりながら感謝の言葉を述べた少女は安全な場所へと逃げていく。

その少女の背中を見てカリスの姿は消え、入れ替わるように一登と優奈が怪人達が飛ばされた方向へと走っていく。

砂浜へと飛ばされたピッケルシャークとカミソリヒトデの姿を見つけると、二人はライドクリスタルを構える。

 

「いた! いくよ、アクセルさん!」

 

【ACCELE】

 

「頼む、マッハ!」

 

【MACH】

 

「「変身!」」

 

【ACCELE×MACH】

 

【RIDER FUSION】

 

電子音声と共に出現したライドボディと一緒に二人は走り出し、赤い光と白い光となってその姿は重なる。

基本の形態であり高速戦闘を得意とするジェイナス・ブレイジングロードと変身を遂げると、自慢のスピードで一気に距離を詰めて怪人達へと殴りかかった。

 

【BLAZING ROAD】

 

「「ハッ!」」

 

「ぐはっ!? 貴様は一体!」

 

「まさか貴様が新しいライダーか!」

 

ジェイナスという新しいライダーの登場に驚くピッケルシャークとカミソリヒトデ。

彼ら二人の怪人はピッケルとカミソリと自慢の得物で応戦しようとする。

振り下ろされる得物を上手く咲けていくジェイナスだが、そこへピッケルシャークが大声で叫んだ。

 

「ピッケルフラッシュ!」

 

「なっ!?」

 

「きゃあああ!?」

 

ピッケルシャークのピッケルから放たれた眩いほどの電光を纏った電撃・ピッケルフラッシュ。

1万ボルトをも誇る電力を帯びたピッケルでの攻撃に、ジェイナスは思わず目を眩ませた。

その隙をついて、ピッケルシャークが繰り出したピッケルがジェイナスの眼前まで迫る。

 

「一登君、少し飛ぶよ!」

 

「ッッ!」

 

ピッケルシャークの一撃が決まろうかとした瞬間、ジェイナスの身体から爆炎が噴き出す。

まるで爆発が起きたほどの勢いの炎がピッケルシャークとカミソリヒトデへ襲い掛かる。

砂浜の砂が砂塵となって舞い上がる中、その中からジェイナスが出てきて、海へと飛ばされる。

大きな水飛沫を立てながら海の中へと倒れ込んだジェイナスはゆっくりと立ち上がる。

 

「いてててて……優奈、無茶するなよ」

 

「ご、ごめん……あの攻撃を避けるにはああするしかないと思って」

 

「俺はともかく優奈に何かあったら……!」

 

「それはお互い様だし、今は本当の意味での運命共同体って事で許して!」

 

ジェイナス――一登と優奈は戦いの最中にも関わらず軽い言い合いをしながら、態勢を立て直している。

一方で爆炎と砂塵が晴れて視界が見えるようになったピッケルシャークとカミソリヒトデは怒りを宿した目で睨みつける。

 

「ヒィリー……おい、貴様! 一人で何をぶつくさと言っているんだ!」

 

「奇妙なヤツだ! こんなヤツに負けてたまるか! いくぞ!」

 

一人で二人分の声を出しているジェイナスに対し、苛立ちを隠そうとしないまま水辺へと入って接近してくる。

対するジェイナスは咄嗟にアクセルとマッハのライドクリスタルを外し、代わりにギルスとカリスのライドクリスタルを装填した。

 

「「フュージョンチェンジ!」」

 

【GILLS×CHALICE】

 

【RIDER FUSION】

 

ジェイナスは赤と白を基調とした姿から緑と黒を基調とした野生的な形態・ワイルドハートに姿を変える。

両腕を激しく水面に叩きつけ、二人分の唸り声を鳴り上げ、二体の怪人へといった。

 

 

~~~~

 

 

海浜公園から少し離れた場所。

そこにはガニコウモルを引き連れたブラック将軍がジェイナスの戦闘を見ている光景があった。

仮にもゲルショッカーの怪人より優れているはずのデストロン怪人に一歩も引かない様子に、興味津々な表情を浮かべていた。

 

「ほう、デストロンの怪人相手にあそこまで張り合うとは……往くぞ、ガニコウモル」

 

「御意!」

 

ゲルショッカー怪人では敵わなかったが、今回はデストロン怪人相手にはそう容易くはいかないだろう。

あわよくば共倒れ、そうでなくても消耗しきったところを叩く……そう作戦を立てたブラック将軍は生前の部下であるガニコウモルと共に奇襲の準備に入ろうとする。

だが、そこへ彼ら二人に声をかける存在がいた。

 

「よぉ、天下に名を轟かすブラック将軍。ここにいたか」

 

「……!? 誰だ!」

 

突如第三者の声に自身の名前を呼ばれ、咄嗟に振り向くブラック将軍。

誰にも気づかれずに隠密でこの場所とやってきたはずなのに、どうやって見破られたのか。

声がした方向を振り向くと、そこにいたのは赤い瞳を宿した緑色の戦士。

その姿を見て、眉を顰めながら鋭い眼光を飛ばし、何者かと尋ねた。

 

「貴様は……!」

 

「ライドキラー、仮面ライダーを倒す者だ。お見知りおきを」

 

「ライドキラー……だと? 我らゲルショッカー以外にも仮面ライダーの命を狙うヤツがいるとはな、酔狂なことだ!」

 

ライドキラーの名乗りを聞いて、口角を歪ませて不気味な笑みを浮かべたブラック将軍は手に持っていた鞭を地面へと叩きつける。

それが合図となり、周囲から結晶兵士ミネラリオンが続々と出現する。

その数は数十体……周囲を鉱物の異形達に取り囲まれたライドキラーへ、ブラック将軍は叫ぶ。

 

「ライドキラー、貴様の相手はソイツらだ」

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……ざっと40か50か?」

 

「あの仮面ライダーの首を取るのはこのブラック将軍率いるゲルショッカーだ! 貴様はそいつらと遊んでいろ!」

 

ライドキラーにそう言い残すと、ブラック将軍とガニコウモルは瞬く間に姿を消した。

大方、ジェイナスの元へと向かったとライドキラーは悟ると、首を回す仕草をしながらミネラリオンを一瞥する。

 

「遊ぶつもりはないぜ。ブラック将軍……さぁてと、小石掃除といこうか! すぐに終わらせてやるからビックリ驚けよ!」

 

茶化した口ぶりを露にしながら、ライドキラーは自身の拳を以てライドキラーへと殴りかかっていった。

襲い掛かってくるミネラリオンを殴り飛ばし、蹴り飛ばし、投げ飛ばし……。

力溢れる豪快な技で蹴散らしていくのであった。

 

 

――片やジェイナス、片やライドキラー。

 

――別々の場所で戦う二人の戦いに"三人目の戦士"がやってくるのはもうすぐであった。

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