某所。
とある倉庫にて作業をするのは一人の男。
男はスパナやドライバーを手にして、目の前に佇む【ソレ】を前に情熱を込めた瞳で熱心に調整作業をやっていた。
窓の外から差し込む太陽の日の光が男の汗を照らし、その熱意は誰が見ても伝わるほどだ。
「……よし、完了した」
最後の点検を終えて、立ち上がった男は作業台に置いていた一つの球体を手に取った。
鈍く輝くその宝珠を見据えた男は語り掛ける様に一つ呟く。
「コイツを届けてくれ。きっと彼らに必要となるからな」
『……』
男の言葉を聞いた何者かは静かに了承する仕草を浮かべる。
そして手に持っていた銀色の球体は【ソレ】に備え付けられた装填口にセットされると、薄暗い部屋を光が照らす。
馬が嘶く様なエンジン音を響かせ、機械のボディを持った【ソレ】は旅立って消えていく。
一陣の風となって去っていくそれを見届けた男は一人でに呟く。
「すまんな、■■■……お前が心を鬼にしてでも彼らと戦うように、俺は彼らの助力をしたいのだ」
「俺は彼らへ遺された【アレ】を託す事に決めた。新しい時代に生まれた仮面ライダーとして」
その男――【敵対者】にライドキャリバーとライドジャイロを渡した【協力者】は誰にもいない一人で佇み、視線を作業台へ向ける。
作業台には工具の他に、一つの写真立てがあった。
そこに映るは若き日の自分と、かけがえのない仲間だった男が笑いあうかつての日。
【協力者】はその写真の思い出を糧として、次の作業へと入る事にした。
~~~~~
海浜公園付近の渚際。
海から押し寄せる波をぶちまけながら、ジェイナス・ワイルドハートが二体の怪人相手に奮闘していた。
相手はデストロン怪人と名乗ったピッケルシャークとカミソリヒトデ。
どちらも海洋生物の特徴を盛り込んでおり、水辺の戦いを得意としていた。
【CHOP】
「「ガルァァァァ!!」」
「ヒィリー!!」
火花を散らしながらぶつかり合うジェイナスの
当たれば岩や鉄すら粉砕する一撃必殺のピッケルを上手く捌き、攻撃の機会を見計らう。
だが、場所は砂浜と海の間にある『渚際』……地の利を得たピッケルシャークにとっては好都合だった。
「どうしたライダー! さっきの勢いはどうしたぁ!」
「「グルルル……!」」
「シーリー! 俺の事も忘れるなぁ!」
「ッ!!」
ピッケルシャークと相対するジェイナスの背後から声が聞こえてきて、振り向けばそこには後ろへと回って飛びかかろうとするカミソリヒトデの姿が……。
陸上でも高い跳躍力を誇る脚力で舞い上がったカミソリヒトデは、上空からの一撃を放とうとする。
文字通り一刀両断するべく、振り下ろされるカミソリヒトデの右腕……それを見たジェイナスは咄嗟に片足を上げた。
【DRILL】
「「グルアアアア!!」」
―――バキィィンッ!
「なにぃ!? シーリー!?」
ジェイナスの上げていた足のライブラウザーから繰り出したのは巻貝状のドリル。
それによってカミソリヒトデが振り下ろした剃刀の刃は狙いを削がれ、折れた渚の濡れた砂へと突き刺さる。
得物を折られたカミソリヒトデはジェイナスの相手を再びピッケルシャークに任せ、一旦距離を置いた。
「クソッ、ふざけた言動に対して強い……だが、我らデストロン怪人の恐ろしさを教えてやる!」
「剃刀の刃が……!?」
「再生した?」
不敵な笑いをするカミソリヒトデを見れば、右腕の剃刀の刃が瞬く間に元に戻る。
まるで再生能力に秀でた海星のように剃刀の刃が元に戻ったカミソリヒトデの光景にジェイナスは考え込む。
―――切れ味のいい刃、剃刀、なんでも粉砕するピッケル……。
何からひらめきそうなジェイナス、その隙を狙ってピッケルシャークが襲い掛かってくる。
「俺達を前に考えこむなんて愚かな奴だ! 死ねぇええええ!!」
「「……!!」」
【BIO】
その瞬間、振り下ろされたピッケルを避けてジェイナスは片腕のライブラウザーを突き出した。
そこから放たれた"バイオプラント"による幾多の植物の蔦が伸び、二体の怪人の視界を覆う。
蔦に行動を阻害され、カミソリヒトデ共々上手く自由に身動きができないピッケルシャーク。
しかし、唐突に蔦によって遮られた視界が晴れた。
「「――シャッ!」」
蔦のカーテンを切り裂くように振り下ろされたのは剃刀の刃。
振りかざしたその刃はピッケルシャークの右腕に取り付けられた彼の得物を簡単に斬り落とした。
咄嗟の出来事にピッケルシャークは声を荒げた。
「あぁぁあ!? 俺のピッケルがぁ!」
「なっ!? しまったぁ、折れた刃が
ピッケルシャークの惨状を見て、カミソリヒトデはジェイナスの手に持つ『それ』に気づいた。
その手に持っていたのは、先程砂浜に突き刺さったカミソリヒトデの折れた剃刀の刃。
先程の蔦のカーテンで視界を封じた隙にジェイナスが剃刀を回収、鉄すら切り裂くその刃を利用してピッケルシャークのピッケルを斬り落としたのだ。
再生能力を持つカミソリヒトデとは違い、ピッケルシャークには身体を元に戻すことなどできない。
自身の固有能力が招いたピンチにカミソリヒトデは焦り、一人でジェイナスへと襲い掛かろうとする。
「クソッ! よくもぉ!」
【CHANGE】
「「ハッ!」」
ジェイナスは上空へと飛び上がり、ライブラウザーから刃のついた弓・チェンジアローを展開。
カミソリヒトデが走り出そうとした瞬間、空気で出来た矢を放ち、斬り落としたピッケルを狙い撃つ。
その瞬間、破壊されたピッケルから1万ボルトもの電流が漏電……すぐ近くにいたピッケルシャークとカミソリヒトデの身体に海水を伝って高圧電流が駆けめぐった。
「「ぐああああああああ!!」」
雷電による眩い閃光が辺りを照らし、二体の怪人は黒焦げに焼かれていく。
例え常人より強靭な身体を持つ改造人間と言えど、高圧電流を浴びれば一溜りもない。
怪人達が身動きができない今、たたみ掛けるのはここだと考えたジェイナスはドライバーの上部ボタンを押した。
【RIDER FINISH!】
「「スピニングサジットクロウ!」」
ジェイナスが番えたワイルドサジットを放つ一条の矢による必殺技『スピニングサジットクロウ』。
一陣の旋風と化した一発がピッケルシャークとカミソリヒトデを刺し貫く。
風穴が空いた胴体がそれぞれ海の中へと沈むと、そのまま大爆発……大きな水飛沫を上げて、海水を巻き上げた。
何とか怪人達を倒したジェイナスは一息つきながら項垂れる。
「た、倒した……」
「それほど被害が出なくてよかったね」
「ああ、優奈。じゃあ誰かが来る前に帰ろうか……」
海浜公園を荒そうとしていた二体の怪人を倒したジェイナスは安堵の仕草を浮かべる。
後は野次馬といった一般人が来る前に砂浜から去らなければ。
ジェイナス……一登と優奈が話し合ってると、ふと彼らの後方の景色が歪む。
何らかの気配を感じ取って気づいた時、不可視の一撃がジェイナスへと迫っていた。
「優奈っ……!」
「えっ、きゃあ!?」
咄嗟に一登の意識によってジェイナスは地面を蹴って避けようと図るが、透明な一撃が右太腿に直撃。
ジェイナスのライドボディに駆けめぐる痛みが融合している二人の感覚へと襲い掛かり、苦痛の顔を歪ませた。
足を抑えながらも駆けめぐる痛みに思わずジェイナスから優奈の声が漏れる。
「ぐぅぅぅっ……足が!」
「フッ、その足ではまともには動けんだろう」
「ッ! あなたは……ブラック将軍!」
ジェイナスが顔をあげると、何もない空間から現れるブラック将軍の姿が目に映った。
仮面の下で睨みつけているであろうジェイナスをブラック将軍は涼しい顔で返すと、手に持っていた鞭を差し向け、鋭い眼光を飛ばす。
「それにしても恐ろしいものだ。新参者と侮ってはいたが、ゲルショッカーの改造人間より後期型の改造人間をこうも容易く倒すとはな」
「「ぐっ……」」
「そこまでわかった以上、俺も本気にならねばならない。このブラック将軍、いかなる手を使ってでも貴様を倒す……ガニコウモル!」
「ははっ! 仮面ライダー、覚悟!」
ブラック将軍が上げた声と共に、上空から迫りくるガニコウモルがジェイナスへと迫る。
片手のハサミを構え、首を取ろうとジェイナスへ飛んでいく。
このままでは……と、危機を感じたジェイナスは咄嗟に身構えようとする。
――だが、何処からか放たれた銃弾がガニコウモルを撃ち落とし、それは杞憂に終わった。
「ぐぁぁ!?」
「「……えっ?」」
「何、いったい誰だ!?」
撃ち落とされて砂塵を巻き上げながら転がるガニコウモル、拍子が抜けた声を上げるジェイナス、驚くブラック将軍。
そこへやってきたのは、通常のバイクよりも速い速度を上げながら走る赤いサイドカー――XF-Zを駆るレオンハルトだった。
途中で乱入者であるレオンハルトを迎え撃とうとするガニコウモルが襲い掛かるが、XF-Zによって容易く振り切られてしまう。
ジェイナスの隣にXF-Zを停車させると、レオンハルトが一瞥してくる。
「たっく、騒ぎを聞きつけてきてみれば……やられてんじゃねえぞ、ライダー」
「アンタは……」
「確か、この間の……」
「おぉ、実際に会ってみると男と女の声で喋るもんか。奇妙なモンだな」
ジェイナスから発せられる一登と優奈の声にレオンハルトは笑って感心すると、手に持った大型拳銃でブラック将軍とガニコウモルを牽制しはじめた。
視線は目の前の敵から外さず、銃弾を浴びせながらレオンハルトは作戦を告げる。
「いいか? 俺がもう一体の怪人を引き付けておくから、お前らはあの将軍様をやれ」
「えっ、でもアンタ……」
「お前じゃない、レオンハルト! 俺にはレオンハルトって名前があるんだよ!」
けたたましい銃弾が放たれる音を鳴らしながら、ブラック将軍とガニコウモルへの牽制を続けるレオンハルト。
彼の言葉を聞いたジェイナスは少し内心悩むが、自分が負ったダメージを考えると選択肢がない。
そう判断すると、この男・レオンハルトに向けてジェイナスは二人そろって喋った。
「「ブラック将軍は、俺達/私達がやる!」」
「ハッ、物分かりいいじゃねえか……それじゃあ、景気づけにこれだぁ!」
レオンハルトはそう言いながら、懐に忍ばせておいたモノをとり出すと思いっきり投げた。
真っ直ぐ飛んでいくそれをガニコウモルは確認すると、―――小型のグレネードだった。
直後、ブラック将軍まで届く程の爆炎が広がり、多くの砂塵が巻き上がる。
降り注ぐ砂塵の中からXF-Zが飛ぶ勢いで走り出て、その後を追うようにガニコウモルが追いかけてきた。
「ココまで来いよ! ブ男!」
「貴様ァ! ゲルショッカー怪人の恐ろしさを見せてやる!」
「ぐぅ……ハッ、ライダーは一体どこに?」
XF-Zとガニコウモルによる命がけのデッドレースが今開幕した今、何とか爆風から逃れたブラック将軍は周囲を見渡した。
そこには何処にもジェイナスの姿はない……倒すべき敵を見失ったと思った次の瞬間、バイクの爆音が聞こえてくる。
咄嗟に振り向いたブラック将軍が見た光景は、炎を纏ったジェイナスの姿であった。
【BLAZING ROAD】
「「ハァァァァ!」」
炎を纏いながらブレイジングロードへと変身したジェイナスはブラック将軍へと攻撃を仕掛ける。
ブラック将軍は咄嗟にジャンプして避ける事に成功すると、その姿を変化させていく。
蛭とカメレオン、二種類の動物が合わさった姿をした不気味な双眸が特徴的な異形の怪人――『ヒルカメレオン』に変貌し終えると、カメレオンの舌で反撃を試みた。
「キェェェー!」
「「ぐぅ!?」」
ヒルカメレオンの舌による反撃によって弾き飛ばされたジェイナスは近くの道路へと落ちる。
先程の不可視の一撃があのカメレオンの舌によるものだと分かったジェイナスは、足を引き釣りながら攻略法を考えていた。
透明化能力、舌による遠距離攻撃、そしてブラック将軍から放たれる歴戦の猛者という気配……今の自分達では一筋縄では敵わないとジェイナスは考える。
――だが。
それでもやるしかないと考えに至ると答えを出し、痛む片足に鞭打ちながら立ち上がると、徐々に迫るヒルカメレオンを見据える。
この強敵にどう立ち向かえばいいのか、戦いながら見出すしかない……一登と優奈はお互いの考えを合わせ、立ち向かおうとした。
その時だった、バイクの轟音が聞こえてきたのは。
ジェイナスとヒルカメレオンが音が聞こえてきた方向を見ると、そこにはこちらに向かってくる白い影があった。
一陣の風のように、吹き抜ける疾風のように、目にも止まらぬ速度でやってきたそれはヒルカメレオンを通り抜け、ジェイナスの下で止まる。
ジェイナスの前に現れたのは、白を基調とした大型のバイク。
重厚な車体に3連のマフラーが取り付けられており、二本の赤いラインが車体を駆け巡っている。
そのメーターに位置する中央部分にはライドクリスタルをセットできる装填スロットが設けられており、既にそこには銀色のライドクリスタルがセットされていた。
一体誰がこんなものを……そう思ったジェイナスに、銀色のライドクリスタルが光ってその疑問を答えた。
『お届け物だ。仮面ライダージェイナス』
「ライドクリスタル!?」
「おい、アンタは一体……」
『仮面ライダーバース、君達二人にこのクロスサイクロンを渡しに来た』
銀色のライドクリスタルに宿ったライダーはそう答えると、装填スロットから飛び出てジェイナスの手に手に収まった。
銀色のライドクリスタル――言うなればバースクリスタルを手にしたジェイナスは意を決すると、白いバイクに乗り込んだ。
その白いバイク――『クロスサイクロン』に跨ったジェイナスはハンドルを回し、ヒルカメレオンへと向き直る。
「「これなら……!」」
「くぅ、バイクだと? だが、たかが一機で何ができる!」
ヒルカメレオンは唐突に出現した激昂しながら、身体を透明化する。
姿を消したヒルカメレオンに対し、ジェイナスは一つのライドクリスタルをクロスサイクロンの装填スロットへと挿入。
【CHALICE・CYCLE-RIDE】
「カリス、運転任せた」
一登の言葉と共にジェイナスの駆るクロスサイクロンが黒い色のオーラに包まれ、同時にエンジンを唸らせながら走り出す。
一陣の風を纏って加速していくクロスサイクロン……ジェイナスの手には既に忍ばせておいたライドキャリバーがあり、そこにギルスクリスタルを装填する。
「ギルスさん! お願いします!」
【GILLS・MATERIA-RIDE】
ライドキャリバーの力によって実体化したのは、仮面ライダーギルス。
その頭部に備え付けられた感覚器官である二本の角・ギルスアントラーによって周囲を探る。
視覚、嗅覚、聴覚を最大限に活かし、周囲に潜むヒルカメレオンを探す。
そして『僅かに動く』何かの気配を悟り、腕からギルスフィーラーを伸ばし、勢いよく振り下ろした。
『そこだ!』
「ぐっ!?」
ギルスの繰り出した一撃によって透過能力を解除してしまったヒルカメレオン。
その強烈な一撃を掠った程度に留めたが、それでも透明化を見破られたのは痛手だった。
すぐさま景色に溶け込もうとするが、既に遅かった。
―――何故なら、物凄い速度で眼前に迫るクロスサイクロンと、ライドキャリバーを構えたジェイナスの姿があったからだ。
「「いっけええええええ!」」
「なっ!?」
―――一閃。
ジェイナスの必殺の斬撃・キャリバーソードラッシュがヒルカメレオンへと決まり、深々と斬り痕が刻まれている。
必殺の一撃を叩き込まれたヒルカメレオンはブラック将軍の姿へと戻ると、口角を吊り上げながら独り言を呟いた。
「そうか、貴様が相手にしてるのは、彼奴らだったか……」
「そう思えば、いろいろと合点がいく……まったく、おかしなものよ。運命というヤツは」
「いいだろう、仮面ライダー! この勝利、貴様にくれてやる……アイツとの戦い、再び地獄に戻って眺めているぞ!」
走り去るジェイナスを最後まで鋭い眼光を飛ばしながら見ていたブラック将軍は、そのまま倒れ、大爆発を起こしながら消失。
地面にタイヤ痕を刻み付けながらクロスサイクロンを停車させたジェイナスは息を切らしながら口を開いた。
「「はぁ、はぁ、……た、倒せた」」
「足に攻撃されて上手く動けなくなった時は慌てたな」
「そうだね。この白いバイク……クロスサイクロンが来てくれなかったらどうなっていたか」
ジェイナスは自身が乗るクロスサイクロンを撫でる。
心なしか喜んでいるようにも見える愛機に、ジェイナス……一登と優奈は微笑むのであった。
~~~~
一方、レオンハルトVSガニコウモル。
彼らの戦いはこちらも負けず劣らず激戦を極めていた。
大型拳銃で狙いすましながら撃っているレオンハルトと、硬い甲殻で弾きながら飛んで追いかけるガニコウモル。
どちらも命を懸けたデッドレースに互角の戦いを繰り広げていた。
「チッ、やっぱ普通の銃じゃ効き目がねえか!」
「いい加減諦めろ! 普通の人間がゲルショッカー怪人である俺に適うものか!」
「さてな、そいつはどうかな!」
道路を目にも止まらぬ速度で走るXF-Zを操りながら、別のマガジンを変えて銃撃を浴びせるレオンハルト。
ガニコウモルが繰り出す溶解粉末を上手く避けながら反撃を見計らう。
攻守共に優れている相手にどう攻略すればいいか……。
考えを巡らせ、巡らせ、巡らせて……ふと答えにたどり着いたのは愛機の存在。
今も爆走するXF-Zに備え付けられた『機能』に気付き、レオンハルトは不適な笑みを浮かべた。
「へっ、巡り会って間もないが早速頼むぞ!」
レオンハルトの言葉と共に速度をさらに上げるXF-Z。
法廷速度をとっくに振り切ったスピードにガニコウモルは必死に追い付こうとした。
将軍自ら出陣している今、この男を命を懸けてでも倒すつもりなのだ。
「チッ、舐めるなぁ!」
一気に飛行速度を上げてXF-Zへと迫るガニコウモル。
今にも飛びかからんとする勢いにレオンハルトは咄嗟にあるものを投げる。
投げられたのは先程と同じ小型のグレネード……爆発する前にガニコウモルは弾き飛ばす。
だが、弾いた瞬間に視界を覆うほどの閃光が包まれる。
フラッシュグレネードと判明したときには目が眩み、どこを飛んでるのか分からなくなって、勢いよく地面へと落下してしまう。
小細工をお見舞いされて悪態付くガニコウモル……そこへと迫るのはバイクの轟音。
「くらいなぁ!!」
レオンハルトはXF-Zのスピードを加速させたまま、突っ込んでいく。
その際XF-Zのボディから発せられた赤い光が包み込み、さらに走る速度が増していき、赤い閃光となったそれは、ガニコウモルへと直撃。
XF-Zの必殺の突撃『ライダーブレイク』を受け、ガニコウモルは大きく吹っ飛ばされる。
地面へと叩きつけられ、それと同時に大爆発が起きた。
空へと舞い上がる爆炎を他所にレオンハルトは停車させ、ふと視線を落として呟いた。
「たっく、とんだジャジャ馬だぜコイツは」
XF-Zを見てレオンハルトは呆れたような笑い声を上げた。
あの男から渡されたこの愛機と共に、この国に渦巻く戦うことを誓うのであった。
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ジェイナスとレオンハルト。
二人で一人の仮面ライダーとたった一人の人間によってブラック将軍達を倒した事実をライドキラーは受け止めていた。
既に倒して身体が消えていくミネラリオンを横目に、ライドキラーはジェイナス達がいる方向へと背を向け去ろうとした。
そこへ、ライドキラーのスーツに備え付けられた通信機から連絡が入る。
相手は自分がよく知る"相手"だった。
「どうした?」
『■■、例のライドクリスタルはこっちでも見つかりました』
「おお、よかったじゃねえか。どこでだ?」
『アメリカのカリフォルニア州・ロサンゼルスです。そこで【彼】が夜の摩天楼にて飛び回っていたそうなんです』
「そうか、いつ戻ってこれる?」
『こっちの用事が済めば、すぐには戻ってこれますよ。それまでにはそっちは頼みました』
「ああ、お前も無事でいろよ」
通信相手との会話を弾ませた後、通信は切れた。
懐かしい若い男の声を聞いて上機嫌になりながら、ライドキラーは去っていった。
~~~~
アメリカ、カリフォルニア州のロサンゼルス。
夜を迎えた今でも明かりのついたビルによって照らされるこの摩天楼を遠くから眺める者がいた。
人間ならざる外見、ライダースーツのような肉体、そして頭部を覆い赤い複眼の瞳が闇夜を照らしている。
まるでジェイナスともライドキラーとも似ているその異形の戦士は、片手に持った青い光を放つライドクリスタルを握りしめる。
「俺も会ってみるか。今の仮面ライダーに」
何処か楽し気な声を出しながら、男が風車を取り付けたベルトを操作し、地面を蹴って旅立っていく。
星々の照らされる摩天楼の大空に一つの流星が飛んでいった。
―――託された二つの風
―――次に巡り合うのは、一体何者か