仮面ライダージェイナス   作:地水

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第5話:蒼穹の翼 中編

 城南大学附属高校の入学式が始まる数時間前、某所。

自身の拠点に立つプルートは、一つのクリスタルを掲げて見ていた。

 

「今回はずいぶんと大人しいものですね。あなた」

 

それは無色透明のエナジークリスタルではなく、黄色に輝き内部には家紋によく似た紋章(ライダークレスト)が刻まれたライドクリスタル。

それは自分達が手に入れ確保したライドクリスタルの一つである。

本来ならアクセル、マッハといった様々なライドクリスタルがプルートの手元にあったが、飛鳥優奈の騒動のどさくさに紛れて起きた争いが原因で多くの物を失った。

回収できたものは数少なく、プルートが手に持っているものはその一つ。

エナジークリスタルで復活した改造人間達で戦力として事足りていたが、それでもジェイナスと張り合うにはまだ足りない。

そう思ったプルートは、ライドクリスタルの試験投入をやることに決めた。

 

「さて、実験をやってみるか……準備はいいかな?」

 

「構わん。さっさとやりやがれ」

 

そう言いながらプルートの前に現れたのは、ドロドロとした溶けた体を持つ不気味な姿の怪物。

ネオショッカー軟体怪人・ドロリンゴ……今回の刺客として差し向けられようとした怪人だ。

その軟体によって他人に化けることができる事が特徴のドロリンゴにプルートはライドクリスタルを放り投げた。

ドロリンゴの前まで飛んでいったその瞬間、黄色と赤の光が周囲一帯を照らす。

光はドロリンゴにまとわりつき、その姿を別の姿へと変えていった。

 

「――ふっはっはっはっは! 馴染む! 実に馴染むぞ! 体中にライダーの力が溢れてくる!!」

 

やがて光が収まると、そこに立っているのはドロリンゴではなく、一人の仮面の戦士。

漆黒のアンダースーツに南国の果物を模した黄色の鎧を纏った騎士を思わせるその姿に、プルートは仮面の奥で目を細めた。

ドロリンゴが変貌を遂げたその仮面ライダーというべき戦士にぽつりと呟きを模わす。

 

「成り代わったのか、それとも本当に【変身】したのか……はてさてどっちか」

 

「何をぶつくさと言っている? これならお前の言っていた仮面ライダーに勝てるんだぞ!」

 

「ああ、こちらの独り言ですよ。気になさらないで」

 

プルートの口にした意味が分からない言葉に怒鳴り声をあげる変貌したドロリンゴ。

――凡そ、多少は力が反発するかと思ったが、すんなり怪人の力に馴染んだことに心の中で疑問を持っていた。

ドロリンゴを資格ある者として認めたのか? それとも別の要因でもあるのか?

可能性のある理由を思考しながら、プルートはその場で佇む事になった。

 

 

~~~~

 

 

時間は戻り、城南大学附属高校・体育館。

そこに集まった在学生・新入生を交えた生徒と教員達……皆が見つめているステージへと一人の人物が登り上がる。

白髪交じりの壮年の男性はマイクを手に持つと、その口を開く。

 

「この高校へと入る新入生のみなさん、おはようございます。城南大学附属高校をはじめとした小中高一貫の責任者である岡村真彦です」

 

壮年の男性――『岡村真彦』は優しい眼差しで見渡すと、社交辞令としての挨拶を続けていく。

真彦の言葉を聞いて種々様々な反応をする新入生達……そんな様子を、一登達在学生は静かに眺めていた。

保護者席にいるレオンハルトも腕を組みながら静かに警戒をしている。

 

(……あいつらは何処かで来る。正直こんな記念すべき日を手ぇ出さないならそれに越したことはないんだがな)

 

新入生の誰もがこの高校の入学に喜びを噛み締めている……その祝い事を邪魔させるわけにはいかない。

責任感と決意を胸に秘めて周囲を警戒していると、登壇していた真彦の話が終わる。

 

「……では、私の話は終わります。長らくご清聴ありがとうございました」

 

自分の話を聞いてくれた人たちに深々と頭を下げ、ステージ下へと降りようとする。

だが、外へ聞こえてきた喧噪をレオンハルトの耳が捉えた。

何かあった、と思ったレオンハルトは急いで出てくると……鉱石の怪物達が警備員を蹴散らしている光景だった。

投げ飛ばされる警備員を倒した怪物達・ミネラリオンの姿を見てレオンハルトは舌打ちを打つ。

 

「チッ、こんな時に!」

 

舌打ちをうちながらレオンハルトは地面を蹴って跳躍、ミネラリオンの一体を蹴り飛ばした。

まずはどうにかして体育館から下がらせないと……レオンハルトはミネラリオン達と対峙すると、独学で学んだ構えをとって殴りかかっていった。

 

一方で、体育館の外から伝わってくる喧噪に中の人たちが気づき始める。

一登と優奈も抜け出すレオンハルトの姿を見かけて何かあったのではないか? と、思って抜け出そうとするも、クラスメイトや他の生徒達が邪魔になって動けないでいた。

 

(くぅ、皆が邪魔で……どうやって抜け出せばいいんだ?)

 

(早く、早く向かわないといけないのに……)

 

早く向かわないとと焦る二人。

だがそこへ体育館の扉を蹴破りながら現れたのは、一体のミネラリオン。

結晶の体でできたその異形の怪物を目にして、誰かか悲鳴が上げた。

 

「きゃああああああああ!!!」

 

「「!?」」

 

ミネラリオンの乱入に一登と優奈は驚愕。

体育館へと乱入してきたミネラリオンは鉱石を叩く音を両手の指を動かして鳴らし、ゆっくりと生徒達へと迫る。

生徒達教員達は一気に下がるが、一人だけ腰を抜かして立ち上がれない女子生徒がいた。

ミネラリオンの進行上に入る彼女を見た一登と優奈は急いで助け出そうと人混みをかき分けて向かおうとする。

その間にもミネラリオンが鉱物の体によって構成された腕を上げ、狙いを定める。

 

「ひぃ!?」

 

女子生徒が短い悲鳴を上げて顔を恐怖に染めた。

誰もがいきなりの出来事に身動きができない今、ミネラリオンの振り上げた腕が女子生徒へと目掛け、振り下ろされる……。

 

「待ちなさい!」

 

――だが、振り下ろされようとしたミネラリオンの腕を誰かが両手で受け止める形で阻止された。

それによって阻害されてよろめくミネラリオン。

その間を縫って、一人の男子学生がスライディングしながら女子生徒を抱きかかえる。

 

「おい、大丈夫か? 立てるか?」

 

「は、はい!」

 

襲われていた女子生徒を他の生徒に任せたその男子生徒……もとい、吾郷改はミネラリオンを蹴り飛ばした人物を見る。

そこに立つのは咲いた花のように独特の構えを持つ自分の恩師・真理愛の姿だった。

先程、ミネラリオンの腕を蹴って受け止めたのは彼女であり、鋭い視線でミネラリオンを睨んでいる。

相手の出方を伺っている今、隣にて並び立った改に対して名前を叫ぶ。

 

「吾郷君!」

 

「たっく、嫁入り前の身なのによーやるぜ。真理愛先生」

 

「嫁入り前は余計よ! いいからこの不審者をどうにかするわよ!」

 

「オーライ、石だか何だか知らないがやってやろうじゃねえか!」

 

人ならざる相手にも関わらず、真理愛と吾郷はミネラリオン相手に立ち向かっていく。

ミネラリオンの大雑把に振ってくる硬い腕を真理愛が何らく受け止め、その隣からボクシングのステップで迫った改が顔面目掛けて掌打を叩き込む。

教師と生徒という奇妙な二人で怪物を抑え込んでいる……自分の先生と学友が健闘している奇妙な光景を見て優奈が呆けていると、すぐ傍にやってきた一登に手をつかまれる。

 

「か、かずとく……」

 

「しっ、静かに……誰にも気づかれずにいくよ」

 

「う、うん」

 

皆が事を好機と察した一登と優奈はこっそりと抜け出して、体育館から抜け出す。

喧噪がある方向へと向かってみると、そこではミネラリオンと戦うレオンハルトの姿が見えた。

ミネラリオンが誇る異常な防御力に苦戦しながらも、体を組み合わせて関節技を繰り広げている。

 

「おっらぁ! 殴るのがダメならこっちはどうだぁ!?」

 

パンチやキックが効かないと判断したレオンハルトは関節技によって応戦をしており、怪物相手に有利に進める人間がいることに一登は引きながら感心していた。

 

「あ、ある意味すごいな」

 

「うん、……じゃなくて、一登君! 変身だよ!」

 

「お、そうだった」

 

【【JANUS-DRIVER】】

 

「カリス!」

 

「ギルスさん!」

 

一登と優奈はそれぞれのジェイナスドライバーをつけて、ギルスとカリスのライドクリスタルを装填。

こちらに気づいてミネラリオンが襲い掛かろうとするが、間を割って入る形でライドボディが出現。

ライドボディがミネラリオンを応戦しながら、二人は叫んだ。

 

「「変身!!」」

 

【GILLS×CHALICE】

 

【RIDER FUSION】

 

【WILD HEART】

 

一登と優奈がライドボディへと融合し、仮面ライダージェイナス・ワイルドハートへと変身を遂げると、野獣のような構えを取りながらミネラリオンへと飛び掛かっていった。

両手によるひっかき攻撃や、ドロップキックをミネラリオンを蹴散らしていき、ようやく駆けつけてきたジェイナスの姿を見てレオンハルトが名前を呼ぶ。

 

「来てくれたか、ライダー!」

 

「「ああ!」」

 

「よっしゃあ、じゃあお片付けの時間といこうじゃねえか!」

 

ジェイナスの参戦によりレオンハルトは勢いづけ、ミネラリオンと再び応戦しようとする。

新しく入ってきた新入生と高校を守るため、自分達と過ごす学友と先生達を守るため。

ジェイナスはレオンハルトに続いて走っていき、ミネラリオンへと再び攻撃しようと図った。

 

だがそこへ、聞きなれない電子音声をジェイナスは捉えた。

 

 

【バナナスカッシュ!】

 

 

「「ぐあっ!?/きゃぁ!?」」

 

 

聞こえてきたその瞬間、棒状に形作られた漆黒のオーラがジェイナスへと直撃する。

謎の攻撃を受けて地面へと転がるジェイナスにレオンハルトは驚き、攻撃が放たれた方向へと顔を向けた。

そこにいたのは、こちらへと向かってくる仮面の戦士。

 

漆黒のアンダースーツの上から纏っているのはバナナを模した黄色の鎧。

バナナを模した両角を持つ兜の仮面に、腰部には錠前型のアイテムがセットされたベルト。

その片手には実が露になったバナナを模した突撃槍を持っており、先程それで攻撃したことを伺える。

 

その姿を見て、まず口を開いたのはジェイナスだった。

 

「なんだ、あれ……」

 

「仮面、ライダー?」

 

「へっへっへ、驚け仮面ライダー! 貴様達を倒すためにこの俺ドロリンゴは変身したのだ!」

 

下卑た笑い声を上げた謎の仮面の戦士の言葉を聞いて、レオンハルトは『ドロリンゴ』と名乗った事に眉を顰めてとある情報が脳裏に思い浮かぶ。

 

――ネオショッカーの改造人間・ドロリンゴ。

巨悪によって生み出されたアメーバのように不定形の体を怪人はどんな姿にも化けられるという能力を持っているという。

 

もしもこいつがドロリンゴなら、またショッカーやゲルショッカーの怪人達を蘇った仲間かもしれない。

だがしかし、それでも疑念は残っている……なんで怪人が見知らぬ姿になっているのか。

そう思ったレオンハルトはドロリンゴが変貌した仮面の戦士に発破をかけた。

 

「テメェ、変身の言葉を勝手に使ってるんじゃねえ! どうせ姿形だけを真似た偽物だろう!」

 

「なんだと!? もはやアーマードライダーバロンの力は俺のものだ! この力でライダーを倒す!」

 

レオンハルトの言葉にイラつき、自身の名を口にする変貌したドロリンゴ……否、『アーマードライダーブラックバロン』。

するとジェイナスの元のあったアナザーアギトクリスタルが光り輝き、手に取るとアナザーアギトの声が聞こえてきた。

 

『どういう理屈か走らないが、どうやら姿形だけはバロンのようだな』

 

「アナザーアギトさん?」

 

「アイツの姿の事知ってるのか」

 

『あれは、仮面ライダーバロン。気高さと力強さを兼ね備えたライダーだ。だが、そう簡単に誰かに力を譲る性格ではないはずだが』

 

アナザーアギトの説明を聞いて、ジェイナスは顔を上げる。

バナナを模した槍・バナスピアーを構えながら迫ってくるブラックバロンが見えて、咄嗟に立ち上がってバックステップで避ける。

片腕をチョップヘッドによる鉄の鮫でバナスピアーの突きを受け流し、ドリルシェルで胴体を蹴り飛ばした。

 

【CHOP】

 

【DRILL】

 

「ぐぅ!? 貴様!」

 

【CHANGE】

 

「お前、どこで仮面ライダーの力を手に入れた!?」

 

「答えなさい!」

 

自身の右腕にチェンジアローを生み出して、ブラックバロンを狙い撃つジェイナス。

放たれた矢を打ち落とし、ジェイナスの目の前まで距離を詰めたブラックバロンはバナスピアーを振りおろす。

 

「くらえぇ!!」

 

「「ぐあぁ!?」」

 

ブラックバロンの振り下ろす槍の一撃にジェイナスのボディから火花が散る。

間髪入れず二撃、三撃と繰り出される攻撃が炸裂していく。

ジェイナスに変身する一登と優奈と比べても圧倒的な戦闘技術にレオンハルトは驚く。

アレでは負けてしまうと思って助太刀に行こうとするが、ミネラリオンが邪魔をして身動きができない。

ミネラリオンの砕けない体に苦しめられながら、レオンハルトは叫ぶ。

 

「ライダー! ぐっ!?」

 

ミネラリオンの一体に首を掴まれ、ギリギリと締められる。

このまま力を込められては窒息か、首を折られるかでは……レオンハルトがそう思った時、叫び声が聞こえてきた。

 

 

「とりゃぁ!」

 

 

何者かによってレオンハルトの首を掴んでいるミネラリオンの腕を蹴り飛ばす。

しかし、奇妙な事にミネラリオンの腕は砕け散り、レオンハルトの首にミネラリオンの手がついたままになる。

咳き込みながら首についている手を外すと、レオンハルトは自分を助けた人物の姿を確認する。

見るとそこに立つのは白ジャケットを身にまとった若々しい容姿の青年であり、襲い掛かるミネラリオンを捌きながら応戦していた。

青年はミネラリオンを取っ組み合いながらレオンハルトへ向けて口を開いた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「あ、アンタは……」

 

「ミネラリオンはライドクリスタルの力を宿す者か、ミネラリオン同士じゃないと硬質結合物を砕けない」

 

青年はそうレオンハルトに言葉を残すと、取っ組み合っているミネラリオンを別のミネラリオンへと投げ飛ばす。

ぶつかり合った二体のミネラリオンは砕け散り、その体はまるで砕けたガラスのように結晶として飛び散った。

あれほど苦戦していたミネラリオンがいともたやすく砕け散る光景を見て、レオンハルトは見開いた。

結晶兵士の倒し方を披露した青年は残ったミネラリオン達をレオンハルトに任せると、ジェイナスの元へと向かっていった。

ブラックバロンによって追いつめられるジェイナス、その両者を割って入るように振り下ろされたバナスピアーを蹴り飛ばした。

 

「ハァ!!」

 

「ぐぅ!? 何者だ!?」

 

「――仮面ライダーの姿になっても、お前は変身できていないようだな! ドロリンゴ!」

 

ブラックバロンをドロリンゴと呼び、殴り飛ばして距離を取った青年は傷ついたジェイナスの前に立った。

鋭い眼差しを向け、ライダーを騙るブラックバロン……否、ドロリンゴの姿を見抜く。

その一方で、青年の姿を見たブラックバロンは驚きの声を上げた。

 

「な、何故貴様がここにいる!?」

 

「ライドクリスタルを持ってるのは、お前だけじゃないってことだ」

 

余裕綽々でそう言いながら青年はとあるものを取り出す。

それは青く輝きを放つ、蝙蝠の紋章が入ったライドクリスタル。

それを見てジェイナスは声を上げる。

 

「ライドクリスタル!?」

 

「アメリカのロサンゼルスで飛んでいた()を回収した。いずれ力が必要になる君たちのために」

 

「私たちのために?」

 

「まあね、さぁ、受け取ってくれ」

 

青年はジェイナスへ向けて青いライドクリスタルを投げ渡し、受け取るのを見届ける。

そしてブラックバロンへ再び向き直った後、深く深呼吸を吸って構えを取る。

――その腰部には、風車のついた銀色ベルトが既に装着されていた。

 

 

「いくぞ、――スカイ変身!」

 

 

青年が叫んだ瞬間、ベルトから放たれた光によってその姿を変えていく。

緑色と橙色のボディ、黒い手袋と黒いブーツ、頭部を覆うのは蝗を模した緑のマスクに赤い複眼。

腰部の銀色のベルト・トルネードに備えつかれた風車が輝き、首に巻かれたまだら模様が入った赤いマフラーがなびく。

 

――ジェイナスの前に現れたのは、一人の仮面の戦士。

何処となく最初に戦ったショッカーライダーに似ているが、彼が醸し出す雰囲気が【何か違う】と感じ取った。

新たなる仮面の戦士の登場に、ブラックバロンは怒りの言葉を吐いた。

 

 

 

「忌々しい、そこまでわれらの邪魔をするか……、――筑波洋、仮面ライダー!」

 

 

 

青年の名は、『筑波洋』。

仮面を纏ったその名は、『仮面ライダー』。

 

今ここに、忘れ去られたはずの伝説の仮面ライダーがジェイナス達の前に現れた。

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