とある山道、クロスサイクロンとFX-Zが道路を駆け巡って走っていた。
ハートが有するシフトハートロンによって導かれながら目的地へ向かう一登・優奈・レオンハルト。
今一同がいるのは東京・頼打地区から少し離れた山中……冷たい風が体に突き抜ける中、優奈は一登に質問を投げかけた。
「ねぇ、一登君。このままでいいから話。少しいいかな」
「なんだ? どうした?」
「あのハートさんって人、なんで私達の方じゃなくてレオンハルトさんと一緒に行くことを選んだんだろう」
優奈が話題を切り出したのは、ハートがついていったのはジェイナスである自分達ではなくレオンハルトの方だった事。
ライドキャリバーを持つジェイナスならば必要時に実体化して思う存分に力を振るうことができ、相方であるライドクリスタルと合わせれば新たなる形態として活躍できるはずだ。
それなのに、ハートはレオンハルトと共に行動することを選んだ。
優奈にとってそれが疑問でならなかったのだ。
「どうしてだろう、私達が不甲斐ないから?」
「いや、マッハの事を考えるとあの人は実力は認めてくれているんだ。少なくとも俺達が頼りないってことはないと思う」
「じゃあ、なんで?」
「多分だけど、マッハやアクセル達が俺達を選んだように、ハートも認めたくて見定めようとしてるんじゃないかな」
優奈の問いかけに一登は自分の推測を語り始めた。
自分達がマッハ・アクセルといった仮面ライダー達のライドクリスタルに認められたように、ハートというライドクリスタルも認めようとレオンハルトを見極めようとしている。
一登の言葉を聞いた優奈は納得した表情を浮かべた
「そっか。じゃあ私達は暖かく見守っておこうか」
「そうだな、なんかちょっと悔しい気もするけどな」
「あ、期待していたんだね一登君。ハートさんが仲間になるんじゃないかって」
「期待していたというか、なんというか、まぁ……ちょっとは、ね?」
からかってくる優奈にたじたじになりながら、一登は照れくさそうにしながらクロスサイクロンの運転を続ける。
二人のやり取りの様子見ながら、苦笑気味に笑うレオンハルトは呟いた。
「まったく、奴さんを目の前にイチャツつくとはなぁ……」
シフトハートロンに導かれ、道路を抜けてとある場所にたどり着いた三人。
そこはとある廃墟であり、敷地内は草の根一つ生えていないほど荒れ地と化していた。
まるで幽霊でも出そうな雰囲気に優奈は恐る恐る訊ねた。
「ね、ねぇ、ここなの?」
『ああ、ここから脱出したのだ』
優奈の問いかけにハートロンの操るハートが答えると、レオンハルトの肩に止まる。
"肩に止まる鳥か何かか"、と言いたげなレオンハルトの視線を無視しして、説明を続けていく。
『ココはかつて、とある組織が使っていた秘密基地、それに通じている入り口の一つだ』
「こんなところが?」
『ああ、とても見える雰囲気じゃないのはわかるだろ?』
疑問を浮かべる一登にハートは答え、自嘲気味に聞き返してきた。
3人は逃げてきたという秘密基地を探るために内部へと入っていった。
廃墟内は埃や塵ばかりが散乱しており、とっくの昔に捨てられた場所だと想像がつく。
レオンハルトが先頭、その後に一登と優奈がついていく形で進んでいく。
肩になったシフトハートロンが光源代わりにヘッドライトで照らし、一登は背中に優奈がしがみ付いた状態で警棒付きライト(レオンハルトの私物)を持って周囲を探っていた。
「しっかし、いかにも幽霊が出そうなところだな」
「ッ!?」
「そうだな、こうも雰囲気があると出そうだよなぁ」
「ッッ!?」
レオンハルトと一登に反応して優奈が小さな悲鳴を上げる。
ぷるぷると震え上がる彼女の様子を見て、ハートロンを含めた3人は思わず立ち止まり、訝しげな表情でレオンハルトは優奈に訊ねた。
「おい、優奈。お前まさか幽霊が怖いのか?」
「な、何の事かしら?」
「ごまかそうとしてもその反応じゃあ無理だぞ」
「むぅ……」
ジト目でこちらを覗いてくるレオンハルトに、優奈は一登の背中に隠れながらむくれた。
二人の間に挟まれながら一登は苦笑いを浮かべる。
だがそこへ、カランと金属音が派手な音が響き渡る。
レオンハルトは物音がした方向へ振り向き、それを確認した。
一登も同じ方向へと振り向こうとすると、突然視界が覆われる。
同時に顔に襲い掛かったのは、2つのふにふとした柔らかな感触……人肌の暖かさとドクドクと聞こえる心臓の音が間近で感じられた。
――――それが優奈の豊かな胸元だと理解したのは彼女の震える声だった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……ゆるしてぇ」
「
「きゃっ!? か、一登君!!? ご、ごめん!」
「ぷっはっ……あの、その、怖がるのはわかるけど、お、お胸を押し付けるのはちょっと」
飛び上がってしがみ付いてきた優奈……そんな彼女を腕に乗せる形で抱きかかえながら、一登は真っ赤にした顔で注意を入れ込む。
流石に意中の女の子と、それも同年代より大きい胸に触れてしまったことによる羞恥心が一登を内心で動揺させた。
二人が何とも言えない桃色の空間を醸し出そうとしたところで、レオンハルトの声によって現実に引き戻される。
「ラブコメしてる場合じゃねえぞ二人とも!」
『来るぞ! 奴らの手先だ!』
レオンハルトとハートが睨む先にいたのは、何体にも及ぶ鋼鉄の体の怪人。
鈍い銀色で染まれた機械の体を有し、顏には蜘蛛・蝙蝠・コブラの意匠、胸部には銀色のプレートが備え付けられていた。
機械仕掛けの異形というべきその怪人達を目にして、大型拳銃を構えたレオンハルトはハートに尋ねた。
「なんなんだありゃ!?」
『我が友だったロイミュードだ。目の前のアレはオリジナルとは異なるいわば劣化した複製体といったところだが、それでも戦闘員の実力はある。気をつけろ』
「All Right! つまるところ全力でぶっ飛ばしていいんだな!」
ハートの言葉を耳にしたレオンハルトは引き金を引いて、ロイミュードの1体へ向けて発砲する。
大きな火花を散らしながら吹っ飛ばされる。
だが、他のロイミュードがぞろぞろと現れ、3人の方へと迫ってくる。
優奈をゆっくりと下しながら一登がレオンハルトへと叫ぶ。
「レオンハルト!これからどうする!?」
「二人ともいいか! こいつらが出てきたってことは間違いなく秘密基地とやらはあるみてぇだ! どうにかしてコイツらを切り抜けて向かうぞ!」
「だったらこれで!」
優奈はそう言いながら、ライドキャリバーとライドクリスタルを取り出し、装填口にセットする。
電子音声が鳴り響き、一登と優奈の前に一体の仮面ライダーが召喚される。
【BIRTH・MATERIA-RIDE】
『さぁて、お仕事開始だ!』
現れたのは、黒いアンダースーツに各部にカプセル状のパーツを身に着けた緑の装甲を纏う、バイザー状のマスクをとりつけた一人の仮面ライダー。
――――仮面ライダーバース。
欲望の権化に立ち向かうべく、現代科学によって誕生した造られし欲望の戦士。
呼び出されたバースは二枚の銀色のメダル・セルメダルを腰につけられたベルト・バースドライバーに2回装填する。
【CATERPILLAR LEG】
【DRILL ARM】
『オラァ、どいたどいたぁ!』
両脚部にキャタピラ型防具・キャタピラレッグを、腕にドリルのついた武装・ドリルアームをそれぞれ装着すると、バースはロイミュード達へ目掛けて突っ込んでいく。
キャタピラレッグによって加速した勢いを上乗せしたドリルアームによる一撃はロイミュード達を蹴散らしていく。
バースがロイミュード達を相手取っている様子を見て、優奈が叫ぶ。
「行くよ!」
「ああ!」
優奈の声に応じて一登が言葉を返し、バースが切り開いた道を進んでいった。
三人が走り去った後、バースがロイミュード達と応戦している喧噪が背中越しに聞こえてくる。
任意のタイミングで自動的にバースは実体化を解くことができ、攪乱には成功したことになる。
三人がライトを照らしながら進んでいると、内部の作りが変わった所を見つけ、そこへと入っていく。
まるで研究所にも開発工場にも見える異質な空間が広がっており、ここがハートが捕まっていた秘密基地だと察することができる。
恐る恐る入ると足を進める三人。その中でレオンハルトはハートに質問を投げかけた。
「ここがお前が逃げ出した所か?」
『ああ。俺の友がここに捕まっているんだ。名前は……』
「――来たな、侵入者共」
ハートの言葉を遮るように、一人の男の声が響き渡る。
そして一同の前に現れたのは斧と盾を持った鎧姿の男性。
男性は三人とハートの存在を確認すると、高らかに名乗り上げた。
「我が名はドクトルG! 貴様達仮面ラーイダを倒す者だ!」
「ドクトルG、……ハッ、デストロンの大幹部か!?」
「いかにも! 忍び込んだ貴様達に目に物を見せてやろう!」
レオンハルトの言葉に反応したドクトルGは斧を高く振り上げると、どこからともなく新しいロイミュード達が出現した。
その数は3体だけだが、異様な雰囲気をライドクリスタル越しに感じ取った一登と優奈はそれぞれをジェイナスドライバーを装着して、レオンハルトの前に躍り出た。
「レオンハルト、ここは俺と優奈で抑える!」
「あなたはハートさんの友達の所へ先に向かって!」
【【JANUS-DRIVER】】
「「変身!」」
【ACCELE×MACH】
【RIDER FUSION】
【BLAZING ROAD】
目の前に出現したライドボディへ一登と優奈が融合し、ブレイジングロードのジェイナスへと変身を遂げた。
変身を終えたジェイナスは一気に加速度を上げ、ロイミュード達へ飛び掛かっていく。
交戦し始めた所を見て、ドクトルGは斧を構えながら走り出した。
「戦え、仮面ラーイダ! 今度は負けぬぞ!」
「「くっ、コイツ生身で!?」」
自らも戦いの中へと飛び込んできたドクトルG。
彼から振りかざされる斧を振るい下されながらジェイナスは4対1の戦いを始めるのであった。
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ジェイナスとドクトルG達が戦いを繰り広げている頃。
レオンハルトはあの場から掻い潜って最深部まで来ていた。
最深部と思われるその部屋に辿り着くと、周囲を見まして状況を確認する。
「ここが、一番の奥の部屋だよな」
『ああ、ここまでくるとどこにアイツがいるのかがわかる。すぐそこだ』
「すぐそこって言うと……」
ハートに言われて前方へと視線を向けると、そこには人間大ほどの大きさの何らかの機械が入っていた。
その大型の装置は緑色に怪しく光を放っており、その中には輝きを失った宝珠が浮かんでいる。
それがライドクリスタルであるとレオンハルトは分かった。
「クリスタル!?」
『俺達は、俺の友達は奴らの装置の中で力を研究させられていた。内包されている情報を調べ、それであのロイミュード達が生み出されたんだろう』
「つまるところあのクリスタルを取り戻せば万々歳ってところだろうな!」
ロイミュードを生み出した要因の一つであるライドクリスタルを取り戻すべく、レオンハルトは大型装置へ近づこうとする。
だが、そこへ振り下ろされる刃にハートが気づき、叫んだ。
『レオン、避けろ!』
「あっぶね!?」
その声に気づいたレオンハルトは地面へ倒れ込む形へ避け、襲撃した人物を確認する。
そこに立っていたのは、緑色の装甲を纏った一人の戦士。
液晶がつけられている黒い大型バックルのベルト、背中から生えているマント、頭部には脳の意匠が入ったパーツと金色の複眼。
仮面を取り付けた戦士とも言うべき存在に、レオンハルトはある単語を思わず口にした。
「仮面、ライダー?」
『――やはりお前か、ブレンッッ!!』
『……』
レオンハルトの目の前に立つその仮面の戦士――仮面ライダーブレンは、手に持つ眼鏡を思わせるパーツを取り付けた武器・ブレンメガネブレードを振りかざす。
レオンハルトとハート、二人による戦いがここに始まろうとしていた。