ジェイナスとドクトルG率いるロイミュード軍団が戦っている頃。
一登達三人が入ってきた廃墟とは別の場所にて、とある人物が足を踏み入れた。
その人物は鋭い視線で、目の前にある建物を睨む。
「先に入ったようだな、彼らは……」
その人物は目の前にある建物に入ると、巧妙に隠されていた扉を開き、すぐさま内部に入る。
地下へとつながってる通路を高所から飛び降りて着地すると、すぐさま走っていく。
長い通路を抜けてその先にいたのは、他の通路で待っていたロイミュード達。
通路の侵入者を視認すると、まるでゾンビ映画に登場するゾンビのように遅い歩みで襲い掛かり始める。
侵入者は襲い掛かってきたロイミュードの1体へ接敵すると、その振り下ろしてきた腕を掴む。
「トォ!」
『!?』
捕まれた腕を勢いよく引っ張り、思いっきりロイミュードを投げ飛ばす。
投げられたロイミュードは余りある膂力によって壁へと叩きつけられ、一瞬の一撃で再起不能に追い込まれてしまう。
続いて襲い掛かってきたロイミュードが侵入者へを襲い掛かるが、それをひらりとかわすとお返しと言わんばかりのハイキックが迫る。
「ハァ!」
『ッ!?』
痛恨の一撃がロイミュードの胴体へと炸裂し、空中で何度も回転しながら硬い床へと叩きつけられる。
生身でロイミュードを圧倒する侵入者の異様な強さに残ったロイミュード達は身構える。
ただものではない……そう悟った時、侵入者が一言だけ叫んだ。
「――来い!」
侵入者は両腕を前に出して構えを取りながら、ロイミュード達へ立ち向かっていった。
向かう先はジェイナスたちが戦っている秘密基地へ。
~~~~
レオンハルトの前に現れた緑の仮面の戦士……仮面ライダーブレン。
彼はその手に持ったメガネグラスブレードを振るい下した。
『ッ!!』
「あっぶね!?」
レオンハルトは咄嗟に横へ転がる形で振り下ろされた刃を避ける。
床へと当たった刃は、箸を入れられた豆腐のごとく鋭く斬られた跡を残す。
その光景を見てレオンハルトは冷や汗をかいた。
「マジかよ!? 怪人相手でも手一杯だっていうのに!」
『今は回避に専念しろ、当たればひとたまりもない!』
「わかってる!!」
ハートが叫んだアドバイスに従ってブレンの振るう剣戟を避け、咄嗟に距離をとる。
目の前に立つ仮面ライダーブレンは的確な攻撃を繰り出していく。
その攻撃を何とか紙一重で避けた後、レオンハルトはハートへ叫ぶ。
「おい、さっきアイツの名前呼んだそうだけど!」
『アイツはブレン、さっき言っていた俺の友達だ』
「んじゃあアイツが!? だがなんで襲い掛かっているんだ!?」
『恐らく、目の前に立つのは無理矢理抽出された力を実体化させたもの……さっきのロイミュードの複製体と同じだ!』
上段から振り下ろされたメガネグラスブレードを掴み、レオンハルトはブレンと取っ組み合う。
こちらは拳銃を持っているが、相手は怪人すら倒す未知の戦士・仮面ライダー。
得物を持っている以上、迂闊に使わせるのは危険だと判断すると、今まで行動とうって変わって危険な行動に出た。
『ッッ!』
「おらぁ脳味噌、武器なんて捨ててかかって来いよ!」
全身を使ってブレンの持つメガネグラスブレードを抑えるレオンハルト。
どうにかして武器を奪おうとするが、流石に相手は仮面ライダーで簡単には手放してはくれない。
このまま二人の均衡が続くかと思われていた時、肩に止まっていたハートが叫んだ。
『ッ!! 離れろ!』
「なっ!?」
突如ハートの操るシフトハートロンがレオンハルトの前に飛び出し、強烈な赤い光を放ってその体を突き飛ばした。
すると、ブレンがメガネグラスブレードを握る手を離し、手刀として振り下ろそうとした。
――――その手には毒々しい液体が垂れて下がっていた。
「ッッ!?」
――毒手。
掠れば一溜まりもない一撃を目にして思わず身構えるレオンハルト。
だが、その前に身を乗り出した人影がブレンの毒手を受け止める者がいた。
レオンハルトがその受け止めた男の名を叫んだ。
「ハートッ!?」
『ぐっ……これを人間に食らうのは、ヤバいからな』
そう言いながら、ブレンの毒手を受け止めた男……実体化したハートロイミュードは立って耐えた。
あの時、ハートロンを
人間であるレオンハルトを毒手を喰らうのは致命的になりかねない……そう判断したハートは身代わりになったのだ。
毒手の一撃を受けたハートロイミュードは膝をつき、彼の傍にレオンハルトが駆け寄る。
「お前、大丈夫か!?」
『大丈夫、とは言い難い。こうして実体化しているのも結構無理しているのでな』
「そこまでして俺を……!」
『友達を取り戻すためだ。このくらい、安いものだ……』
自分をかばったハートロイミュードにレオンハルトは苦悶の表情を浮かべた。
ハートロイミュードは異形の顔で笑いかけたような表情を浮かべたまま、全身が粒子状の光となって消え、その場にはシフトハートロンが残された。
レオンハルトはシフトハートロンを握りしめ、今にも襲い掛かろうとするブレンを睨み付ける。
「決めたぞ、俺は……ハート、テメェの友達をぜってぇ助ける!」
『……ッ』
レオンハルトから放たれた凄みを感じ、一瞬怯むブレン。
だがすぐに毒手に攻撃をレオンハルトへと繰り出そうとする。
――――その時であった、響き渡るように聞こえてきたのは。
「装身、ハァ!!」
緑の閃光が通路の方から漏れ出し、新たなる戦士が姿を現した。
禍々しい赤い複眼、生態と機械が入り混じったような外見に加え、腰部は三本の爪が球体を掴んだベルトのようなパーツ。
スマートなシルエットを携えて現れたその戦士にレオンハルトは驚いた。
「お前は……!?」
「ライドキラー、俺の事はそう呼べ」
「ライドキラー?」
「お前はライドクリスタルの下に行って回収しろ。コイツは俺が相手をする」
そう言いながら緑の戦士――ライドキラーは己が拳を向けてブレンへと応戦を図り始めた。
ブレンの毒手をうまく手捌きしながら対処し、確実に拳を当ててダメージを与えていく。
その様子を横目で見ながら、レオンハルトはライドクリスタルが内蔵された奥の大型装置の下まで向かった。
装置は今も動いており、迂闊に取り出せそうにない……下手をすれば大怪我を負いかねない。
そう状況判断したレオンハルトへシフトハートロンから声が聞こえてくる。
『俺を使って、装置を壊せ。レオン』
「ハート……!?」
『お前の体を依り代に、俺の力を引き出す……負担も大きいから一発勝負だ、いけるか?』
「上等!」
ハートの訊ねた言葉にそう答えるとレオンハルトはシフトハートロンを握る手を強める。
すると傍らにハートロイミュードの
後方へと拳を引っ込めたレオンハルトの動きに連動するように、ハートロイミュードも拳を引っ込めて構えた。
そして、大型装置目掛けて両者は拳を振り抜いた。
『「ハァッ!!」』
繰り出されたストレートパンチは大型装置へと炸裂し、物の見事に打ち壊した。
破壊された際に放り出されたライドクリスタルをレオンハルトは無事にキャッチする。
その際にライドクリスタルからハートとは別の誰かの声が聞こえてくる。
『―――まったく、人間というのは無謀で無鉄砲で時として無計画な事をしますね』
「あん?」
『だけど、そんな貴方達だからこそ今回は助け出されたんでしょうね』
レオンハルトがライドクリスタルを見てみると、クリスタルは緑色に光り輝いていた。
その声がハートが言っていた『ブレン』と分かった後、シフトハートロンがライドクリスタルに吸い込まれるように消える。
それと同時に手に持っていたライドクリスタルは緑色から赤い色に変わっていく。
完全な力を取り戻したかのように内部の紋章が浮かび上がり、今度はハートの声で発し始める。
『ありがとう、俺の友達を助けてくれて』
「ああ」
『残すはブレンの力を形どったアイツだ』
レオンハルトが振り向くと、ライドキラーが仮面ライダーブレン……もとい、ブレン複製体と同等に戦っている光景だった。
振り放たれるブレンの必殺技・ライダー毒手を触れずにライドキラーは躱していくと、バックステップでレオンハルトの下までやってきた。
傍らに立つと、どこからか取り出したをレオンハルトへと受け渡した。
見てみるとそれはリボルバー部分が何らかの装填口のついた大型拳銃型の武器であった。
「これを使え」
「お、おい、これって?」
「ライドブラスターだ。それにクリスタルを装填しろ」
「コイツにか?」
レオンハルトはライドキラーに言われた通りに大型拳銃型武器『ライドブラスター』へとハートのライドクリスタルを装填口に入れた。
開いたリボルバー部分を閉じて、電子音声が鳴りながらブレン複製体へと狙いを定める。
【HEART/RIDER-BULLED】
【BLASTER-BURST】
「いっけぇ!」
レオンハルトは引き金に指をかけて引くと、ライドブラスターの銃口から赤い閃光が放たれ、ブレン複製体へと貫いた。
ライドブラスターによる砲撃『ブラスターバースト』を受けて見事な風穴を開け、ブレン複製体は火花を散らしながらその場で爆炎を上げる。
まるで勝利の狼煙のように炎を上げる光景を見て、レオンハルトは驚きの声を上げた。
「俺が、倒したのか?」
「ああ、お前と、お前を認めたライダーの力のおかげでな」
ライドキラーはレオンハルトに言い残して、一人勝手に去っていく。
レオンハルトは呼び止めようとするが、その前に多大な疲労感が襲い掛かり、その場で倒れ伏した。
最後に見えたのは、去り行くライドキラーの大きな背中だった。
~~~~
ところ変わって、ジェイナスとドクトルG率いるロイミュード達の戦いはジェイナスの優勢に回っていた。
超高速移動の能力を駆使して四人を相手取り、ヒット&アウェイ方法で翻弄している。
「「ハァ!!」」
『『『グァ!?』』』
炎を纏ったジェイナスの拳によって、吹っ飛ばされる3体のロイミュード達。
後方に立っていたドクトルGは盾を構えてジェイナスの攻撃を防ぎ、刃の如く鋭い視線を向ける。
「ええい、仮面ラーイダめ! なんという強さだ!」
「「一人じゃないからね、俺/私達は」」
「くそっ、口も達者か! だったらこれだ!」
ジェイナスに言葉によって切り返されたドクトルGは全身に力を籠める。
体内から溢れ出す力が彼の姿を凶悪な姿へと変えていく。
甲殻類を思わせる黒と黄土色の巨躯に、左腕は蟹の鋏に変貌し、頭部は銀色のレーザー射出装置となっていた。
ドクトルGが変貌したその怪人は高らかに名乗り上げた。
「これが我が強化された姿、カニレーザー!」
ジェイナスの前に姿を現した蟹怪人『カニレーザー』は変貌を遂げると同時に、頭部からのレーザー光線を繰り出した。
咄嗟に避けようとするジェイナスだが、それより先にカニレーザーのレーザー光線が肩に直撃した。
灼けるような痛みが襲い掛かり、ジェイナス――一登と優奈の二人は悲鳴を上げる。
「「ぐあぁ!?」」
「ぐぅ、あのレーザー……厄介だな」
「肩に当たっただけでこれじゃあ、まともに当たったらひとたまりもないよ」
咄嗟に柱の物陰に隠れ、カニレーザーの光線攻撃を耐え凌ぐジェイナス。
だが、隠れていた遮蔽物の柱はレーザーによって貫かれてしまい、風穴が開いてしまう。
このままでは危ないと悟り、レーザー光線に貫かれる寸前に一気に部屋の中を駆け巡った。
「フン、当たらなければどうということはないと言いたいか!? だったらこれでも喰らえ!!」
カニレーザーから放たれたレーザー光線が放射状に伸び、部屋全体に降り注いだ。
雨のように降り注ぐ光線と隔離されたこの部屋では逃げ場は何処にはない。
ジェイナスの頭上へと襲い掛かり、部屋全体を焼き尽くしていく。
自分のレーザーを受けてしまえばひとたまりもない……そう思ったカニレーザーはニヤリと表情を浮かべた。
「フッ、苦戦させられたのは事実だが、やられるときはこうもあっさりとはな」
カニレーザーは焼き尽くされた部屋全体を見回しながら、一人勝利の予感に浸る。
配備していた三体のロイミュードも巻き込まれて破壊されたのか姿が見えない今、もうこの場にいる必要はない。
そう判断したカニレーザーはこの部屋から去ろうとするが、そこで気配に気づく。
「むぅ?」
【REFLECT】
聞きなれない電子音声が聞こえた後、そこへ放たれたのは強烈なレーザー光線。
思わぬ反撃が来るとは知らなかったカニレーザーはその光線を食らい、大きく吹っ飛んでしまう。
「ぐああああああああ!?」
「「――――時間差、攻撃だ……!」」
そこに立っていたのは、ワイルドハートの姿になったジェイナス。
レーザー光線を食らう直前の時、咄嗟にフュージョンチェンジを行い、モスリフレクトの反射バリアによって防いでいたのだ。
そして油断した所へカニレーザーに向けて彼自身が放ったレーザー光線を文字通り"反射"したのだ。
仮面ライダーですら当たればひとたまりもない一撃をまともに受けたカニレーザーは甲殻の体はひび割れてふらついている。
「お、おのれぇぇぇぇ……これぞ、矛盾か!」
「一登君、今だよ!」
「ああ、いくぞ優奈!」
「「フュージョンチェンジ!」」
【KNIGHT×BARON】
【RIDER FUSION】
【LANCERD PALADIN】
電子音声と共に、ジェイナスの姿はワイルドハートからランサードパラディンへと変化した。
ランサードスピアを構え、そのままドライバーのスイッチを押して構える。
【RIDER FINISH】
「「ソニックビクトリー!」」
助走をつけながら床を蹴り、天井ギリギリまで飛び上がったジェイナスはアーマードウィングが体全体を包み込み、ドリル状の形となった。
カニレーザーは最後の抵抗として光線を放とうとするも、それを阻害するように出現したバナナ型のエネルギーオーラが防ぐ。
やがてレーザー光線を掻い潜ってドリルとなったジェイナスが突貫する。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉおお!? おのれラーイダ、一度ならず二度までもぉぉぉぉおお!!」
ジェイナスのソニックビクトリーによる突貫によって、カニレーザーは貫かれ、その場で爆散。
何とかしてカニレーザーを倒したジェイナス……だが、彼らの懸念は別にあった。
「優奈、レオンハルトを助けに行くぞ」
「うん!」
先に奥へと向かったレオンハルトの事が心配となり、ジェイナスはこの部屋を後にして奥へと向かっていくのであった。
その姿を別の通路から覗き見ていたライドキラーが見守っている事も知らず。
「どうやら、こっちは俺の助けは必要なかったようだな」
ジェイナスが奥の部屋へと向かったのを確認すると、ライドキラーは一足先に秘密基地から出るために出口へと戻って行った。
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廃墟の入り口、そこから脱出して一登達三人の姿があった。
その後、最奥の部屋で発見したレオンハルトを発見し、何とか介抱すると彼は目覚めた。
その手には謎の戦士・ライドキラーが受け渡したライドブラスターと、ハートの力を宿したハートクリスタルが握られていたのであった。
秘密基地から脱出したレオンハルトは手元にあるライドブラスターとハートクリスタルを見つめる。
「たっく、こんなもの託しやがって」
「それって一体なんなんだ?」
「ライドブラスター、ライドキラーってやつが託しやがったんだ」
「ライドキラー……!?」
レオンハルトの口から放たれたライドキラーの名前を聞いて、一登は顏を強張らせた。
その隣では優奈が一登の服の裾を掴み、不安な自分を安心させるかのように彼の腕にしがみ付く。
二人の様子がただならぬ事を感じ取ったレオンハルトは頭を掻いてフォローを入れる。
「たっく、ライドキラーとやらにも何か問題抱えてるようだな、お前ら」
「「……」」
「わかったよ。今は深くは聞かない……話したいときに話せよ。二人とも」
そう言いながら、一登と優奈に背を向けてレオンハルトは愛機の下へと向かっていく。
二人がどんな複雑な顔をしているのかは知らないが、片手に握っているハートクリスタルを見た。
ハートクリスタルは赤い心臓の如く力強く輝いていた。
「頼むぜ、相方」
『ああ、新しい友達よ』
片や助けられた者。
片や立ち塞がった者達。
両者と相対したライドキラーの謎に翻弄されながら、三人は愛機のバイクに乗りながら帰路につくことになった。