軌道エレベーター・望月、周辺宙域。
漆黒の闇が広がるその空間に、漂う隕石に紛れて一つの影が忍び寄っていた。
「フッフッフ……ついに辿り着いたぞ」
謎の存在は隕石に隠れ、前方に佇む存在を見ていた。
視線の先にあったのは、軌道エレベーター・望月。
これから自分を襲撃する場所であり、思う存分暴れろと言われた場所だ。
自身の右腕に内蔵された武器が唸りを上げて、粉砕しろと囁いてくる。
口元を歪な形に変わり、"その存在"はゆっくりと迫っていく。
「待っていろ、仮面ライダー! まんまと呼び寄せられた貴様を倒し、俺が強い事を証明する!」
自らが生前果たせなかった野望を抱きながら、その人ならざる異形は望月へと迫っていくのであった。
望月の中にいるであろう城南大学附属高校の生徒を使って、"仮面ライダー"をおびき寄せるために。
~~~~
一方、軌道エレベーター・望月の宇宙ステーション内部。
そこでは城南大学附属高校の生徒を局員達が案内していた。
ある生徒は宇宙服を身に纏って宇宙遊泳の空間を楽しみ、ある生徒は職員と共に実験を行い、ある生徒は先程回収されたスペースデブリだったモノの展示など、色々な催し物がされていた。
その中で一登と優奈は足を運んだのはステーション内部に設けられたカフェスペース。
テーブル席に座る彼らの目の前に差し出されたのは珈琲が入った宇宙パックだった。
「ほら、飲んでみろよ」
「これって、珈琲ですか?」
「ああ、この宇宙ステーションで育てられた植物の一つから取った豆、それを焙煎して作ったものだ」
そう言って宇宙パックを差し出した本人である石動はニヤリと口元を釣り上がらせた。
宇宙パックの中に入った珈琲を不思議そうに見つめながら、一登と優奈はストロー越しに飲む。
口の中に広がるブラックの珈琲特有のほろ苦い味が広がり、喫茶店で出されるアイスコーヒーと同様のものだった。
宇宙で育った植物で作られたとは思えない味に一登は舌鼓を打つ。
「おいしい、ちゃんとした珈琲だ」
「そうだろ?こんなハイテク最先端な場所に見えて、実は豆から拘ってるからなぁ」
一登の言葉を聞いてにやけた石動は懐から取り出したのは、中に珈琲豆が入った小瓶。
カラカラと豆がぶつかり合うを鳴らしながらその小瓶を二人に見せた。
どうやら自信作のようで、満面の笑みを見せながら石動は話を続ける。
「いいだろ? いずれはこのcielo Nasicaで出すつもりだ」
「
「まあね、空の上にあるからcieloなんだ。ちなみに元になった店は美空……ああ、娘に任してあるんだ。piccolo nascitaって名前でね」
優奈に尋ねられながら石動は自分の娘の存在を口にして話の輪を咲かせた。
そんなこんなで宇宙の喫茶店・cielo Nasicaでの宇宙原産珈琲の試飲会を楽しんだ二人は店から出ていき、重力によって空間を浮かびながら通路を進んでいく。
壁際に備え付けられた移動用レバーを掴み、一登が優奈の手を握りながら進んでいくと、とある部屋へ目についた。
そこではRV-9が真理愛と共に生徒達からの質問を受け答えていた。
「では、有栖さん。挨拶と」
「こんにちわ、私は有栖・U・ランドです。では、質問させてもらいます。RV-9さんは何処で生まれたのですか?」
「そうですね、宇宙技術開発機構・OSTOが中心となって設計基礎を作り上げ、難波重工で内部フレームを生成、そして株式会社飛電インテリジェンスが自分の心や精神となるAIを内蔵しています」
「難波ステッキで有名な難波重工に、あの飛電インテリジェンスのAIを?」
「かの二つの会社の技術提供のおかげで私が生まれたました」
質問者の有栖の問いかけにRV-9は流暢な口調で応対した。
彼の口から放たれた有名企業が関わってできたのかと驚く生徒達。
その次に有栖の隣に座っていた蒼汰が手を上げて訊ねる。
「氷室蒼汰です。RV-9さんが僕達城南大学附属高校の生徒を招いたのは何故ですか?」
「それは真理愛師匠の弟子だからです」
「師匠? 真理愛の弟子、というと……?」
「彼女こと梅花真理愛は赤心少林拳師範代でもあり、私はその弟子という間柄なんですよ」
RV-9が告げた意外な事実に、その場にいた生徒達と、興味を持って立ち聞きしていた一登と優奈も驚いた。
自分の担任でもある真理愛が物凄い格闘術の伝道者とは知らなかったのだ。
しかし、腕っ節の強い吾郷を言う事聞かせたり、ミネラリオンへ勇敢に立ち向かって渡り合ったりと、今までの彼女の行動を見ると何となく合点がいく。
真理愛がれっきとした武道の達人だと判明してざわつく中、珪花が手を上げた。
「あの、一年の綾瀬珪花って言います。何故真理愛先生を師匠と呼ぶのでしょうか?」
「元々の発端は自分が未知の惑星に棲む宇宙生物から身を守るために色々と格闘術を模索した結果、赤心少林拳に辿り着いたのです」
「赤心少林拳、ってどういった拳法なんですか?」
「そこは私が答えましょうか。赤心少林拳は中国の少林拳って武術がベースになっている流派でね……」
赤心少林拳の事について熱く語りだす真理愛に、一登達含めた生徒達はタジタジになりながら聞いていた。
彼女が並々ならぬ熱意をもってして自分の身に着けた拳法について話していると、一登達はRV-9がこちらへ視線を向けている事に気づく。
一体なんだろう……そう感じた一登と優奈の携帯端末に着信が入る。
どうやらメールのようで、内容を確認すると一通のメールが着信されており、内容はこうだった。
―――『君達と話がしたい』
~~~~
一同の説明会を終えて、RV-9は一人会場で残っていた。
そこに会場へとやってくるは、一登と優奈の二人の姿。
振り向いて二人の姿を確認すると、RV-9は話しかける。
「夏川一登君と飛鳥優奈君だね」
「ああ、その通りだが」
「RV-9さん、なんで私達をここへ呼んだのですか?」
彼の前に立ち一登は答え、優奈が訊ねた。
二人が恐る恐る様子を伺う姿を見て、RV-9は人差し指を立てながら答える。
「君達の事は少しばかり知っている。なんでも、ライドクリスタルを集めているそうだね」
「「ライドクリスタルの事を知っている!?」」
RV-9が口に出した"ライドクリスタル"という言葉に驚く二人。
彼らの驚愕した表情を見てRV-9は言葉を紡いで説明をしていく。
「何故私がその事を知っているのか。というのも、私の友が言っていたんだ。"いずれライドクリスタルを集めている奴らがこの私の前に現れる"と」
「友達、ですか?」
「おかしな話かな? 私のような一体のロボットが友達を語るなんてね。だが実際にいるんだ。面白い友達がね」
不思議そうに見ている優奈に対してRV-9は笑い声にも似た高い声音を発しながら語っていった。
その姿はまるで友人の事を語る人のように、楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
最初は警戒していたが、とてもじゃないが自分達の戦っている敵だと思っていたが、そうではないと判断した一登達は思い切って質問をぶつけた。
「どうして俺達がそうだと気づいたんですか?」
「君達からライドクリスタルの反応があるから、そうかと思ってね。実際に君達がそうだと会って確信した」
「ライドクリスタルの反応って、そんなこともわかるのか?」
「ああ、ライドクリスタルの発見したときのデータはココに記録しているからね」
そう言いながらRV-9は自身の側頭部を軽く叩く仕草を行った。
彼の言葉を聞いて、二人は手に持っていたアクセルとマッハといったライドクリスタルを取り出す。
天井から差し込んだライトによって淡く光る赤と白の光が差し込むそれを見て、RV-9は目を細めるように複眼の光が僅かに光る。
「なるほどな。君達が持ってるなら、ちゃんと話せるな」
「あの、教えてください。あなたにライドクリスタルの事を教えてた人って?」
「ああ、それはな……」
優奈に投げかけられた質問にRV-9が素直に答えようとした矢先……。
突如施設内を揺れるような振動が伝わり、同時にRV-9に通信が届く。
『V-9、大丈夫か!?』
「ええ、こちらは無事です。何があったのか報告を」
『正体不明の何者かが望月を襲っている! 俺達は生徒達の避難誘導で手一杯だ! 距離も近いお前に確認任せられるか!?』
「了解、今すぐ向かいます。……すまない、どうやら急用だ。後で話そう」
通信を終えたRV-9は部屋から出ていき、まるで地上にいる時と変わらぬ床に足をつけて廊下を走り向かっていった。
一体何があったのか、と思った一登と優奈は自身が持つライドクリスタルが輝き、異変が起きたのだと悟ると、二人も遅れてRV-9は後を追っていく。
やがて二人が大きい待合室に足を踏み入れると、RV-9が未知の敵と相対していた。
彼の目の前に立つのは、機械の体を持った一体の怪人。
何処となく独楽の風体をしたその怪人は高らかに名乗り上げる。
「コマサンダー!!!」
黄色い体に尖った頭を持つその怪人『コマサンダー』は右手と一体となったハンマーを振り回し、周囲の椅子やテーブルを破壊しながら暴れまわる。
謎の襲撃者コマサンダーを前にRV-9は止めに入るために近づき、殴り掛かる。
「止めろ貴様!」
「離せ! 俺は仮面ライダーに用があるのだ! 出てこい、仮面ライダー! コマサンダー様が相手になってやる!」
「ぐっ!?」
振り下ろされるハンマー・コマハンマーが直撃し、軽く吹っ飛ばされるRV-9。
宇宙の無重力を駆使して何とか壁に着地をすると、吹き飛ばした本人を睨みつけように複眼を光らせる。
「ぐっ!?」
「そうだ!コマサンダーは強いのだ!仮面ライダーより強いのだ!」
「そう来るなら……Change:Electronic Hand」
RV-9がコマンドコードを音声入力すると同時に、構えた両腕が電撃を纏った青い腕へと変わった。
一気にジャンプをしてコマサンダーへと近づいたRV9は鋭い手刀を繰り出す。
「ハァ!!」
「なにぃ!? ぐおおおおおお!?」
稲妻を纏った手刀をコマサンダーへと浴びせ、少し怯ませた。
大柄なボディにひとすじの切り傷をもらい、コマサンダーは驚きの声を上げる。
「馬鹿な!? オレのウルトラスチールボデーに傷を!?」
「ココは人々が夢と希望を形にした第一歩の場所だ。手荒なことはやめてもらおう」
「くぅ、貴様! よく見れば貴様、アイツによく似ているな! 気に食わん!」
いつぞやの『自分を倒したかの敵』と酷似した相手に激高し、コマサンダーは再び殴り掛った。
振るい下された殴打をいなし、RV-9はお返しと言わんばかりに鋭い鉄拳を繰り出す。
まるで本物の鍛え上げた拳法の一撃がコマサンダーを捉えて、確実にダメージを蓄積させていく。
「せぇい!」
勢いよく放たれたRV-9の一撃がコマサンダーを貫こうと迫った。
この一撃で目の前に立つ怪人は倒される……そう思って見守っていた一登と優奈の二人だったが、そこで異変が起きた。
何処からともなく、RV-9へ目掛けて針が飛んできてきたのだ。
「ッ!?」
咄嗟に避けてバックステップで回避するRV-9。
鋭く尖った針は柱に突き刺さり、RV9は飛んできた方向へ振り向いた。
そこにはコマサンダーとはまた別の、独特の雰囲気を纏った怪人がそこに立っていた。
橙色の体色にスズメバチの思わせる外装のその怪人は、手に持ったニードルガンを構えて名乗り上げる。
「俺の名は、バチンガル! ドグマ帝国のバチンガルだ!」
そのスズメバチの怪人『バチンガル』はそう名乗ると、RV-9へニードルガンを構えて再び攻撃をし始めた。
突如現れた怪人が繰り出す迫りくる針の弾丸を回避していくRV-9……だが、そこへ態勢を立て直したコマサンダーが襲い掛かってくる。
「俺を忘れるんじゃない! コマハンマー!」
「ぐぅ!?」
「邪魔をするな! ジンドグマの怪人が!」
「なに!? いだだだだだだ!?」
乱入してきたコマサンダーに苛立ったバチンガルはニードルガンの引き金を引き、コマサンダーをも巻き込んでRV-9を銃撃してきた。
放たれた針の弾丸はRV-9とコマサンダーに直撃し、火花を散らす。
バチンガルの攻撃を受けて吹っ飛ばされたRV-9は、目の前に立つ二体の怪人達に視線を移す。
そこに立つのは、この望月に襲ってきた二体の怪人……片やジンドグマ、片やドグマ帝国の名を背負った怪人達に聞き覚えがあった。
かつて人類を支配しようとしていた巨悪の一つであり、元は一つの国であり組織であった。
だが、思想の違いから"ドグマ帝国"と"ジンドグマ"に分裂し、そして人類の脅威として襲い掛かった。
"とある男"との壮絶な死闘の果てに二つの組織は倒され、歴史から忘れ去られたと聞いていた。
だが、こうして目の前に蘇り、この望月に強襲を仕掛けてきた。
二体の強力な怪人達は仲違いしながらも自分達に襲い掛かって来たのだ。
コイツらを目的は不明だが、どっちにしてもこの望月を破壊させるわけには行けない。
そう思ったRV-9は傷を負った体に鞭を打ちながら、再び応戦をしようとする。
RV9のその姿を見て、一登と優奈は顔を見合わせた。
奇しくも現れたバチンガルとコマサンダーという二体の怪人の登場に、あの時固めた決意を口にする。
「一登君! いこう!」
「守るぞ、優奈!」
【【JANUS-DRIVER】】
一登と優奈の二人はジェイナスドライバーを装着すると、すぐさま自分達の持っているライドクリスタルを構えた。
一登はバロンクリスタルを、優奈はナイトクリスタルを、それぞれジェイナスドライバーへと装填。
そしてすぐさま合図を口にした。
【BARON】
【KNIGHT】
「「変身!」」
【KNIGHT×BARON】
【RIDER FUSION】
【LANCERD PALADIN】
出現したライドボディと融合し、ランサードパラディンの姿へと変身を遂げたジェイナス。
手元に呼び出したランサードスピアーを構え、RV-9を苦しめるバチンガルとコマサンダーへ立ち向かっていった。