何時までもジェイナスに倒される怪人達不安よな。
プルート、動きます。
某所。
そこでは仮面の男・プルートが目の前の大型モニターに映し出されていた先のジェイナスとの戦いの記録を見ていた。
強敵カニレーサーを得意のフュージョンチェンジによって打ち倒した光景。
スカイライダーと共にブラックバロンへ変貌したドロリンゴを倒す光景。
スーパー1と共にコマサンダーとバチンガルを打ち負かす光景。
かつての巨悪の尖兵をこうも倒す事にプルートはある種の関心を受けていた。
「ジェイナス、予想以上の成果とはなぁ……しかも、あの伝説の仮面ライダーに二人も協力の機会を得るとはな」
彼が注目したのは、ジェイナスの前に現れた二人の仮面ライダー。
スーパー1とスカイライダー、かつての巨悪と戦っていた英雄がこうして目の前に姿を現したことにある意味驚いていた。
過去の戦いを終えてから活動していなかった彼らがジェイナスを助けにきたのか……プルートは謎に思っていた。
「何故彼らがジェイナスを助けるのか、不思議だな」
「しかも自分達が確認してなかったライドクリスタルを渡しているか……それはそれでいい」
「だが、そろそろ優奈を……彼女を迎えに行かないとなぁ」
そう言いながらプルートは手を目の前へ差し向けた。
彼の指先に触れようとしているのは……一登と共にいる優奈の姿であった。
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喫茶店・New Amigo。
優奈は自室にて一登と共に学校で出された宿題の勉強をしていた。
小難しい問題に若干頭を悩ませている一登の様子を向かい側にいながら微笑ましい表情で見守っていた。
「うぐぐぐ……分からない」
「一登君も苦手な事あるんだね」
「数学とか理系は得意なんだけどなぁ」
「ほら、もうちょっと頑張ろうよ」
目の前の問題に苦戦を強いられる一登を見て、意外な一面を目にした優奈は何処か表情が緩む。
何時もの優し気な彼も、時折見せるカッコいい彼も素敵だが、眉のハの字にしながら苦手な問題に挑む一登も何処か魅力的に感じたからだ。
シャープペンシル片手に唸り声を上げる一登を優奈は優しい眼差しで見守っていると、部屋の外から自分達を呼ぶ声が聞こえてきた。
相手は悠二であり、内容は一登達へ誰かが会いに来たようだ。
「おい、一登。お客さんだぞー」
「ん? 俺にか?」
「誰だろう……? 一登君、行ってきて。私は一人で大丈夫だから」
「そうか。じゃあ行ってくる」
優奈に一言告げると一登は部屋から出て、喫茶店の方へと向かう。
店の奥から出てきてカウンターから覗くと、テーブル席と会話をする二人の女子の姿があった。
どちらも見知った顔であり、一登が顔出した所を見て二人は声を声をかけてきた。
「一登、顔出しに来たわよ」
「こんにちわ一登さん」
二人の女子……里子と珪花は一登へ挨拶の言葉を贈る。
学校でよく顔を合わせる同級生と後輩がやってきたことに少し眉を下げながら一登は挨拶を交わした。
「おう、二人とも。うちの店にいらっしゃい」
「お邪魔しております」
「喜びなさいよ一登、こーんな可愛いお客が来てやってんだからねぇ」
珪花は嬉しそうな表情を浮かべながら頭を下げ、里子はしたり顔で笑っている。
二人の手元には湯気が立っているコーヒーカップが置いてあり、カウンター越しに立つ悠二が差し出したものだと容易に想像ついた。
一登は自信満々な笑みを向ける里子へジト目を向けながら会話をし始める。
「まったく、自分で可愛いっていうか?」
「なによー、いいじゃないの。自己肯定感を高めるのも女子力磨きの一つなんだから」
「いいだろ一登? 実際二人とも可愛いのはそうなんだからさ」
「えへへ、八代さんのお墨付きなら悪い気はしませんね」
悠二の発言を聞いて珪花は顔が緩んでしまってにやけるのがとまらない。
なんせ悠二は一登の保護者であり身内だ。いわば親同然の彼に褒められるのは親公認と言ってもいい。
そんな嬉しそうにしている珪花達に対し、一登は訊ねた。
「というか、二人とも今日はお客としてきたのか」
「それもそうなんですが、少し一登さんやご意見番相談したいことがあってですね」
「一登、アンタって優奈と親しいわよね? あの子の好みを聞いてプレゼントしようかなって思って」
「優奈にプレゼント?」
里子の口にした『優奈のプレゼント』という言葉を聞いて一登は疑問符を浮かべる。
4月に入って既に中旬を過ぎた頃、特に彼女に関するイベントはなかったはずだ。
誕生日も当分先だし、彼女が何かの賞を取ったという覚えもない。
不思議な表情を浮かべる一登に対し、里子は呆れた表情を浮かべて言い放つ。
「アンタねぇ、親しい相手にプレゼント送って何か悪いわけ?」
「そっ、そうじゃないんだけど、なぁ」
「私達、日頃の感謝を込めて優奈さんにプレゼントしたいんですよ。あの人には結構お世話になってますし」
「まあ、いいんじゃないか? 優奈にプレゼントするなら多少力になるよ」
しかめっ面の里子に対し、事情を説明する珪花。
二人の訊ねてきた理由を聞いて一登は快く承諾をした。
「まず優奈は、そうだな……料理用具とかいいんじゃないかな」
「料理用具かぁ、いいかもね!優奈の料理、一度食べさせてもらったことあるけど、絶品なのよね!」
「ええ、そうなんですか!? いいなぁ、私も食べてみたいです!」
「優奈ちゃんに言ってもらえてばきっと作ってくれるぜ。むしろ一緒に作るのもありかもなぁ。俺もよくやってるよ」
一登と八代が話した優奈の料理の腕前を聞いて、里子と珪花は羨ましがる。
以前学校で優奈が持ち込んだ弁当を食べさせてくれたことがあり、その時里子は驚いた。
その時は優奈は一登と共に食べていたが、総菜パン片手に見守っていた時はどうしても羨ましく思えた。
……それが誰に対しての羨望なのか、誤魔化している自分に目を背けているが。
そんな里子の気持ちを他所に、一登は次の優奈が好きそうなものを上げた。
「あとはアメニティ用品なんか喜ぶんじゃないかな」
「アメニティ用品……ですか?」
「石鹸とかシャンプーとか、ああいうのよね」
「ああ、よくホテルとかであるアレだな。今まで男所帯だったから、リンスとか用意する必要あったんだよなぁ。まだうちに置いてあるのは少ないし、俺達じゃどれがいいか分からねえからなぁ」
「そうなんだよなぁ……里子、珪花、なんかいいの見繕ってくれるとありがたいんだが」
八代と一登はそう言いながら里子と珪花の顔を見る。だがそこに浮かべていたのは二人の何かに気づいたような表情だった。
先程まで悠々と話を聞いていた様子と比べ、まるで怪訝な表情へと変えて彼女達は無言の圧でこちらの顔を見ていた。
「「……」」
「どうしたんだよ、そんな怖い顔して」
「あの、一登さん達……なんで優奈さんのお風呂事情知ってるんですか?」
「というか八代さんも妙な事言ってたわよね、"むしろ一緒に作るのもありかもなぁ"って?」
二人の怪しんでいる様子と自分達しか知らなかった優奈の事情を指摘する言葉を聞いて、一登と八代はハッと我に返った。
そもそも優奈がこの店・New Amigoに転がりこんで生活していることは、一登の親しい友人である蒼汰や有栖、心矢のような店に関わる人間といったごくわずかの人間しか知らない事だ。
彼女が訳ありの事情を抱えている事はできるだけ話したくなかったが、まさかここで口が滑るとは思ってなかったため、一登は慌てた声を上げる。
「ええっ!? あっ、あー……それはその?」
「やっべ一登、どうしよう?」
「どうしようっておやっさん、俺にそんなこと言われてもなぁ?」
二人の追及に戸惑う一登へ八代は困った笑顔で訊ね、さらに困惑させていく。
別にやましいことがないが、優奈がNewAmigoで済んでいる事を知られるのは少しまずい。
そう思った一登はなんとか誤魔化す内容を考えようとしたが、そこへ店の奥から声が聞こえてきた。
「もー騒がしいなぁ、一登君どうしたの?」
一登達の喧騒を聞きつけて、優奈が店の奥から出てくる。
その姿を見て、里子と珪花の二人は目を見開いて驚いた。
「ゆ、優奈!?」
「なんで優奈さんがNew Amigoの奥から来たんですか!?」
「里子? 珪花ちゃん? 来てたんだ、いらっしゃい」
「ああ、お邪魔してます……じゃないわよ!?」
「なんで一登さんちにいるんですか!? あれですか、一登さんと共にひとつ屋根の下住んでるんですか!?」
朗らかに笑って出迎える優奈に対し、里子達二人は突っ込まんとする勢いで問いただしてくる。
二人の猪突猛進な勢いにタジタジになっている優奈を見て、八代はやれやれと言った表情で助け船を出した。
「そりゃあ彼女、ココに住んでるからだよ」
「「住んでる!??」」
「優奈ちゃん、ワケあって俺が保護者としてウチで面倒見ているんだ。事情が事情だけに公に言えなくてなぁ……だから他のヤツには言わなかった」
八代の語った言葉に里子達は口を塞いだ。
自分達の知らないところで優奈が抱えていた意外な一面に何も言えなくなったのだ。
一登はそんな彼女達二人を見て、声をかけようとする……だが、その前に里子が椅子から立ち上がり、席から離れはじめる。
「ごめん、急な用事思い出しちゃった……八代さん、一登、今日は相談乗ってくれてありがとう」
「り、里子さん?」
「ほら珪花も行くよ! お邪魔しちゃ悪いでしょ!」
戸惑う珪花を連れて里子は扉を開けて、NewAmigoから出て行った。
後に残されたのはカウンター席に置かれた自分達が頼んだ代金分のお金であり、一登と優奈は気まずそうに顔を見合わせた。
「え、えーっと……」
「私、里子と珪花にまずい事しちゃったのかなぁ」
「まあ、遅かれ早かれバレていたんだと思うが。変な風に誤魔化すよりはいいだろ」
八代が優奈が住んでいるという訳を話した理由を二人に語った。
確かに自分が抱えている事情を迂闊に話すわけには行かなかったが、だからと言って誤魔化すには相手が相手だけに気が引けた。
一登も優奈も言い出せない中、八代が責任を持って事情を説明をした……恐らく大人としての責任だろう。
それでも、と思った優奈は店の扉に手をかけた。
「私、里子と珪花ちゃんを追いかけてくる!」
二人にそう言い残しながら、優奈は扉を開けて走っていく。
それを見た八代は顔を一登の方へ向けて叫んだ。
「おい一登、お前も付いて行ってやれ!」
「いいのか? 店番は……」
「そんな事に気を使ってる暇あったら、さっさといけ!」
店番をほったらかしにしていいのか躊躇する一登を八代は背中を叩き、優奈の元へと向かわせた。
扉を開けて出ていく一登を見届けると、八代は溜息をついて頭に手を載せた。
誰もいなくなった店内で深い溜息をついた後、一人で愚痴る。
「たっく、仕方がないとはいえ悪いことしちゃったかなぁ」
八代は自嘲気味に笑いながら、自分が彼女達に呟いた事を考えていた。
まるで知りたくなかった事実を教えた事を悔やんでいるように。
~~~~~
頼打地区、とある公園。
園内にあるベンチにて珪花と里子は座っていた。
二人とも浮かない顔であり、特に里子に至っては何処か納得できていない表情を露にしていた。
珪花が心配そうな表情で恐る恐る訊ねる。
「里子さん、元気出してくださいよ。一体どうしたんですか」
「……アイツの家に優奈が、あの子が住んでいたなんて聞いてないわよ」
「そ、そりゃあ私だって驚きましたしショックですけどぉ……」
俯いている里子の言葉を聞いて、珪花は言葉を詰まらせる。
自分の意中の相手である一登の家にライバルが住んでいた事実を珪花自身も受け止めきれてないからだ。
自分でもショックを受けているが、それ以上に里子が堪えてそうに珪花はそう見えた。
「里子さん……やっぱり、まだ一登さんの事が」
「それは言わない約束でしょ、珪花」
「うぐっ……」
里子の約束という言葉を聞いて口籠る珪花。
二人だけの間に佇む何とも言えない空気が包み込む……そんな最中、気まずい空気を打ち破ったのは一つの人影だった。
ふと珪花が誰か来たのかと顔を向けて一瞥し、―――その瞬間顔が青ざめた。
珪花の様子に気づいた里子が同じく振り向くと、そこにいたのは……一体の人の姿をした異形だった。
「シャアアアア!」
「きゃああ!?」
「いやぁ!!」
里子と珪花が叫ぶのもつかの間、そのヤモリを彷彿とさせる異形の怪人は一瞬で二人へと近づくとその身柄を拘束する。
首を掴まれて身動きができないまま凄まじい握力によって二人は意識を失ってしまう。
謎の怪人によってその様子を丁度駆け付けた一登と優奈が目撃する。
「里子! 珪花ちゃん!」
「お前!!」
怪人へ向かってに走り出す一登。
だがそれを阻むように目の前で爆発が起き、間一髪のところで立ち止まる。
一体なんなのか、と優奈が射撃が飛んできた方向へ振り向くと……そこにいたのは、飛蝗を模した別の怪人。
二人が最初に出会った敵、ショッカーライダーだった。
「あれって、ショッカーライダー!?」
「なんでアイツらがまた……!?」
かつて倒したはず敵が再び姿を現した驚く優奈と一登。だがそれを他所に、ヤモリの怪人は里子と珪花を抱えて、大きくジャンプ。
ショッカーライダーの隣に着地すると、ヤモリの怪人は高らかに宣言した。
「仮面ライダージェイナスだったな……貴様達に用がある! お前達が親しくしているこの小娘達の命が欲しくば、頼打地区郊外の廃工場跡地へ追って来るがいい!」
ヤモリの怪人は二人にそう言い残すと、里子と珪花を抱えてそのまま姿を消した。
隣にいたショッカーライダーの姿もなく、あとに残されたのは連れ去られた二人を見ているしかできなかった一登達二人だけだった。