頼打地区にある郊外に建っているとある廃工場。
そこには鎖によって吊るされた里子と珪花の二人。
気を失った彼女達の様子を連れ去った本人が静かに見ていた。
「フン、このわしに人攫いの真似をさせるとはなぁ……偉そうな事をしてくれる」
「気に障りましたか? ゼネラルモンスター」
少し遠くから歩いてやって来たプルートへ視線を向け、二人を攫った本人が姿を現す。
軍服姿とヤモリの絵が刻印された眼帯が特徴的な高圧的な態度を取る男性――『ゼネラルモンスター』は、ギロリと睨み付ける。
「貴様が何を企んでいるかは知らんが、わしはわしのやり方でやる。指図は受けんぞ」
「ええ、そのつもりですよ」
ゼネラルモンスターから向けられた冷たい視線を何とも思わず、プルートは吊るされた二人へ視線を向ける。
気を失った里子と珪花に、プルートは仮面の下から漏れた溜息を吐いた。
「やれやれ、彼女の友人を狙わなければいけないなんて、我ながら嫌になる」
「フン……攫うならその目当ての女を狙えばいいものを」
「相方の彼が助けるに決まってるじゃないですか。そっちで失敗するより彼女を確実に来させるにはこっちの方がいいですよ」
「姑息な手だか有効だな。まあ、これで利用させてもらう」
プルートから返ってきた言葉にゼネラルモンスターは鼻で笑いながら、その場を去っていった。
残されたプルートは里子と珪花へと視線を向ける。
未だに意識を取り戻さない様子をただ静かに見ていた。
~~~~
廃工場の敷地内、その入り口。
そこには一登と優奈がクロスサイクロンに乗って廃工場へと訪れた姿があった。
座席から降りた二人は顏を見合わせて口を開く。
「ここ、だよね? あのヤモリの怪人が言っていた場所って」
「ああ……ここに連れ去られた二人がいるはずだ」
「二人とも無事なのかな。心配だよ……」
「……早く助けに行かないと」
心配そうな表情を浮かべる優奈を見て、険しい顔をする一登。
二人は恐る恐る敷地内へと足を踏み入れる。
周囲を警戒しながら奥へと進んでいく二人だが、誰かが襲う掛かる様子はない。
「静か、だね」
「誰かが襲ってくるわけでもないのか? 俺達を伺ってるのか?」
「でも、行かないと」
「助けないと、二人を」
優奈の言葉を聞いて、一登は拳を握りしめる、
やがて一際大きな廃工場の入り口が見えてきた。そこで見えてきた存在に気づき、二人の歩みが止まった。
入り口には一人の軍服姿の男が立っており、やってきた一登と優奈の二人の姿をギロリと睨む。
「ようやく来たか。仮面ライダー……」
「お前は一体……」
「我が名はゼネラルモンスター、かのネオショッカーの大幹部だ」
一登の問いかけにそう答えながら、軍服の男……『ゼネラルモンスター』は名乗り上げた。
その鋭い鉤爪状の義手となった左手を向けて、鋭い眼光を飛ばしてくる。
「お前達自身に恨みはない。が、仮面ライダーであれば敵の代わりはない」
「ちょっと待って! 里子と珪花ちゃんは無事なの!?」
「さてな、攫ったのは俺だがその後は知らんが引き渡した後だからな」
ゼネラルモンスターは優奈の言葉に興味なさそうに答えた後、地面を蹴り上げて左腕の鉤爪を以て襲い掛かる。
振り下ろされた鉤爪を一登と優奈は別れて避けると、まず一登が横蹴りを放つ。
放たれた鋭い蹴りをゼネラルモンスターは左手の鉤爪で受け止めて防御するが、そこへ優奈が忍ばせておいたライドキャリバーの繰り出した。
「てぇい!」
【BIRTH・MATERIA-RIDE】
ライドキャリバーにバースクリスタルが装填され、実体化した仮面ライダーバースがゼネラルモンスターの前に現れる。
その右腕にはワイヤークレーン型の武器・クレーンアームを構え、ワイヤーから伸ばしたフックをゼネラルモンスターの体に巻き付ける。
絡めとったゼネラルモンスターを吊り上げ、そのまま空高く投げ飛ばした。
『――フゥン!』
「ぐぉぉぉぉ!?」
耐える暇もなく投げ飛ばされてしまったゼネラルモンスター。
それを見て隙ができたと判断した二人はそれぞれの腰にジェイナスドライバーを装着。
一登はマッハクリスタルを、優奈はアクセルクリスタルをそれぞれ装填して叫ぶ。
【ACCELE】
【MACH】
「「変身!」」
【ACCELE×MACH】
【RIDER FUSION】
【BLAZING ROAD】
出現したライドボディへと飛び込む形で融合し、ブレイジングロードの姿へと変身を遂げるジェイナス。
ブレイジングロードの超高速能力で里子と珪花がいるであろう場所へ探り、一気に助け出そうとする。
だが、それを阻まんとしてきたのが、ゼネラルモンスターであった。
「させるかぁ! ――ゼネラルモンスター……本体!!」
自身の名を叫ぶと同時にその姿を変貌させていく。
黒い体に生えた黄色い突起物、そして特徴的なヤモリを模した不気味な顔。
ゼネラルモンスターが変身したヤモリの怪人『ヤモリジン』はヤモリの形をした右腕をムチに変えて、横薙ぎに振り回す。
「おりゃあああああ!!」
「「ぐっ!?」」
迫ったヤモリムチをジェイナスは何とか避ける。
縦横無尽に振るわれる右腕の鞭・ヤモリムチにジェイナスはバックステップで避けると、その姿を改めてみた。
「お前、あの時の……!」
「そうだ。オレがお前達の知人を攫ったのだ」
「里子と珪花ちゃんは何処なの!」
「言うと思うかぁ!!」
ヤモリジンはジェイナスの二人の言葉をぶっきらぼうに返すと、ヤモリムチを再び放った。
その手にライドキャリバーを生み出し、放たれたヤモリムチを弾くように振り上げる。
「「とりゃあああ!!」」
「なっ、なにをっ!?」
ライドキャリバーで振り下ろされるヤモリムチを叩き落し、一気に迫って横蹴りを飛ばす。
きつい一撃をお見舞いされたヤモリジンは睨み付ける。
目の前で一本の剣を構える新たなる仮面ライダーは自分という強敵を倒すために走り出す。
「てりゃあああ!」
「なんの、おりゃぁ!」
横薙ぎに放った斬撃を避け、ヤモリムチによる大振りな攻撃を繰り出す。
その攻撃を目の当たりにしたジェイナス――優奈は空いていた片手から炎を生み出し、地面目掛けて放った。
地面へ着弾して爆発が起こり、舞い上がった黒煙と粉塵がヤモリジンの視界を覆う。
「くぅ、ちょこざいなぁ!!」
ヤモリジンは自分の周囲を開かせるために右手を大きく振り回す。
右腕の動きに伝導してヤモリムチによって遮っていた物が掻き消えて視界が開ける。
だが、四方八方見てもジェイナスの姿は何処にもなかった。
「なにぃ、一体どこに!?」
いなくなったジェイナスを見つけようと周囲を見回すヤモリジン。
そこへバイクの排気音のような爆音が上空から聞こえてきて、思わず上を見上げた。
目で捉えたのは火炎を纏ったジェイナスの姿……彼はライドキャリバーへライドクリスタルを装填し、新たなる一手を繰り出そうとした。
【CROSS-Z・MATERIA-RIDE】
「クローズ、頼んだ!」
『今の俺は、負ける気がしねぇ! おりゃああああああ!』
実体化したクローズが繰り出した必殺の飛び蹴り『ドラゴニックフィニッシュ』がヤモリジンへと真っ直ぐ飛んでいく。
ヤモリジンは両腕を組んでクローズの一撃を耐えようとするが、そこへすかさずジェイナスが自身の火炎を纏った斬撃を叩き込もうとした。
「「キャリバーソードラッシュ!!!」」
キャリバーソードラッシュによる炎の一撃がヤモリジンへと迫る。
クローズのドラゴニックフィニッシュに拮抗する彼の喉元へと届こうとした瞬間……。
――突如、爆雷と放電がジェイナスとクローズへと襲い掛かった。
「「ぐあっ/きゃあっ!?」」
『ジェイナス!? のわっ!?』
何者かの攻撃によってクローズは光の塵となって消滅し、ジェイナスは地面へと叩きつけられた。
一体何なのかと顔を上げれば、そこには二人のショッカーライダーの姿があった。
いや、目の前の二人だけではない……いつの間にか後方にも3人のショッカーライダーの姿があった。
彼らの登場にジェイナスは驚きの声を上げた。
「こ、コイツらは!?」
「ショッカーライダー!? なんでまた……」
かつて倒したはずの敵を目の前にして驚きの声を上げるジェイナス。だが戸惑う彼らを他所にショッカーライダー達はすぐさま襲い掛かった。
繰り出される蹴りや拳による殴打になんとか対処しながら、距離を取ろうとするジェイナス。
突如水を差すように現れた援軍にヤモリジンは舌打ちを打った。
「プルートめ……余計なことを!」
ヤモリジンは脳裏に浮かぶ仮面の下に隠した憎たらしい表情のあの男の名を呟き、異形となった顔で歯軋りをする。
だが自分自身のやる事は変わらない……かつて一度目の生では成しえなかった【打倒仮面ライダー】。
一番首を狩るべく、ヤモリジンは大きくジャンプし、ジェイナスの行方を追いかけた。
~~~~
同じ頃、とある廃工場内部。
吊るされた里子と珪花はその重い瞼を開けようとした。
ゆっくりと開けて自分達の視界に入ってきた状況に、まず驚きの声を上げた。
「ふえぇ!? 何なのですかこの状況!? り、里子さん!? 里子さーん!?」
「落ち着きなさいっての珪花! 揺らすな食い込む食い込む!!」
軽くパニック状態になっている珪花を里子は必死に宥める。
鎖によって身動きができない状況に戸惑う二人……だがそこへ、何体ものの異形が現れる。
里子達には見覚えがある。春の入学式にて姿を見せた、
まるで監視役のように彼らは二人の様子を見ていた。
「ひえっ!?」
「け、珪花……あ、あれって!」
「入学式の時の変なのがなんでこんなところにぃ!?」
あの時遭遇した怪物との再会に里子と珪花は驚きの声を上げた。
ミネラリオンは別に手を出す様子もなく、表情があるのか分かりづらい顔でこちらの様子を監視している。
不気味な様子の怪人達に里子は怖がっていた。
「なんでこんな目に遭ってるのよ私達……」
「こっちはただでさえ優奈さんが一登さんの家でお出迎えされたことで傷心気味なのにぃ~!」
「珪花……ただでさえやばい状況だってのに、それを思い出させるんじゃいわよぉ」
珪花の口にした言葉を聞いて、余計に落ち込んでしまう里子。
正直言って、自分達が今巻き込まれた状況よりあの時受けたショックが大きい。
それくらい言っていいほど、自分達二人は余計に追い込まれていた。
「ふえーん……誰か、誰か助けに来てください……」
「そんな泣きべそかいても、変わらないわよ……」
今にも泣きだしそうな珪花に対し、里子は呆れたのようなセリフを吐いた。
でもその言う通りかもしれない。自分達二人は今あの怪物達に攫われた……その理由は分からないが、このままではどんな目に遭うか分からない。
里子は嫌に高鳴る胸騒ぎを抑えながら、思考を巡らした。
(このままじゃいけない、一体どうすればいいのか……)
(こんな時、一登ならどうするんだろうなぁ……って)
(呆れたなぁ……こんな時に限って、アイツの顔が思い浮かぶよ)
里子は巡らしていた思考を一旦止めて、一登の事を思い浮かべてしまう。
アイツなら無茶して私達を助けてくれる……何故かそんな確信を持っているのだ。
吊るされた里子と珪花をミネラリオンが逃げ出さないように監視する中、……その喧噪はやってきた。
「おりゃあっ!!」
突如壁を突き破って外から投げ飛ばされてきたのは、一体のミネラリオン。
廃工場内のミネラリオン達は無機質な表情で投げ飛ばされてきた方向へと視線を見やる。
突き破った壁の穴から何者かが入ってきた。
その男はニヤリと不敵に笑って、内部へ向かって足を踏み入れた。
「よぉ、見た目通りの堅物ども。学生二人攫って何してるんだ?」
「えっ!?」
「あなたは……!?」
ミネラリオンを投げ飛ばして侵入してきたその人物の姿を見て、里子と珪花は驚いた。
驚愕の余り、二人はその見知った人物の名を叫んだ。
「「八代さん!?」」
「あいよ」
二人を助け出すために廃工場へと現れた現れた侵入者――八代悠二。
彼は指を鳴らしながらミネラリオン達へ立ち向かっていった。