迫りくる地獄の鋼魔、果たしてジェイナス達は勝てるのか?
【Nine war demons, already justice has fallen】
「――ヘルボーグ、ここに顕現」
突如目の前に現れた新たな敵・ヘルボーグ。
いかにも骸骨男と言うべき異質な風貌にジェイナスとライドキラーは静観を装って驚いていた。
「か、仮面ライダー……なのか?」
「いや、違う。あんなのが仮面ライダーなものかよ」
訝しむ様子のジェイナス――一登に対し、ライドキラーはハッキリした言葉で否定する。
一人だけ黙り込んでる反応を見せる優奈の事は気になるが、今はそれを追求するところではない。
その証拠と言わんばかりにヘルボーグが一歩ずつ近づいてきたのだから。
ヘルボーグはゆっくりとジェイナスとライドキラーへ近づくと、その手を自身の体に配置された骸骨型装甲パーツ・アビリティスカルへと軽く触れる。
触れられたアビリティスカルは空洞の眼に赤い光を灯らせておどろおどろしい電子音声を鳴り響かせた。
【Number 004・Boot On】
電子音声と共にヘルボーグの右手がグニャリと形状が変わり、大きな日本刀のような光輝く刀身へと変貌する。
変貌を遂げた手刀を構えて、ジェイナス達へ切りかかっていくヘルボーグ。
振り下ろされるいくつもの斬撃を避けながら、ジェイナス・ランサードパラディンは自身の武器であるランサードスピアで反撃を仕掛ける。
突撃槍からの鋭い突きを繰り出すが、それを見切ったようにヘルボーグは矛先を右手の刀身で弾く。
そしてよろめいたジェイナスへ自身の右膝を向けると、そこから砲門が展開されてミサイルを射出。
ゼロ距離から放たれた一撃によりジェイナスは爆炎に呑まれて軽く吹っ飛ばされてしまう。
「「うわあああああああ!!」」
直撃と爆風を受けて、ジェイナスは地面へと叩き付けられて勢い余って地面へと叩きつけられる。
そんなジェイナスを横目に、ライドキラーは腕のキラースラッシャーによる斬撃を叩き込もうとする。
だが、ヘルボーグは左手を向け、その指先に生み出された銃口を向けると、無数の銃弾が放出された。
「グッ!?」
咄嗟に体を翻して回避を試みるライドキラー。
機関銃の如き激しい弾幕を避けると、背部に備え付けてあった新緑色の棘を有した武装が展開される。
生体触腕ボット・キラーバインドを見せると、その鋭い触腕はヘルボーグへ向かっていく。
キラーバインドがそのヘルボーグを絡めとり、その動きを阻害する。
「捉えた!」
「ほう……?」
「――ぶっ飛べ!!」
キラーバインドは人間離れしたその膂力を用いてヘルボーグを空中へ持ち上げると、勢いよく投げ飛ばした。
下手な怪人の相手なら地面に叩き付けられただけで大ダメージを与えるであろうその投げ飛ばし攻撃は相手が未知の存在であるヘルボーグと言えど効き目はあるだろうと淡い希望を抱いていた。
――だが、次に発動したヘルボーグの能力がそれが杞憂ではなかったことを示した。
【Number 002・Boot On】
先程とは別のアビリティスカルを触れると突如足裏と背部から強烈なジェット噴射が放たれ、宙に浮かび始めた。
まるで戦闘機の如く飛び始めたヘルボーグはライドキラーに狙いを定めると強烈な突撃を仕掛けてきた。
「オラァ!」
ヘルボーグが繰り出したすさまじい一撃を真っ向面から受け止めるライドキラー。
暫しの拮抗の後、ライドキラーは地面に踏ん張ってその場に止まる。
圧倒的な膂力と凄まじいジェット噴射のぶつかり合いが少しの間続いた後、最初に変化を仕掛けたのは……ヘルボーグだった。
【Number 005・Boot On】
新たなるアビリティスカルに触れて電子音声が鳴り響いた瞬間、轟音と共にライドキラーの姿が消えた。
否、殴り飛ばしたのだ。ヘルボーグが繰り出した鉄拳がライドキラーに直撃し、いともたやすく遠くへ殴り飛ばしたのだ。
仮にも自分達をいなしたライドキラーが押し負ける光景にジェイナスは驚く。
「そんなっ!? あいつが倒されるなんて!?」
驚きの声を上げたジェイナス――一登の言葉を耳にして、ヘルボーグは顔を向ける。
「当然だとも。ヘルボーグが有する九つのアビリティスカルには九種類の能力を有している。そのどれもが、一人の仮面ライダー分の性能を秘めているのでね」
ヘルボーグはジェイナスに対し、自分自身に宿った力を語る。
思い返せば、最初の銃火器武装をはじめ、飛行能力や怪力を発揮していた。そのアビリティスカルによるものだと考えれば、アイツは使っていない能力が後六つも残っている事になる。
今まで以上に手強い敵だと悟ると、ジェイナスは対抗するための次なる一手を放とうとする。
だが、ジェイナスの体を動かそうとした時に"僅かな違和感"を感じ取った。
先程も感じ取ったラグとも言うべきそれが何なのかを気が付いたのは、――半身とも言うべき少女のか弱い声が聞こえてきた時だった。
「怖い……あの人が、いる……!」
「優奈?しっかりしてくれ!」
同じジェイナスとして変身している優奈の様子が先ほどからおかしい事に気付くと、一登は必死に呼びかける。
何かに怯えるように彼女は……恐怖で震える彼女と共に戦うのは、とても厳しい状況だと一登は悟る。
それでもこの場を切り抜けるしかないとジェイナスは判断すると、新たなるライドクリスタルを取り出した。
「レーザー、頼む!」
『仕方がない、分の悪い賭けレースだか乗ってやるぜ!』
【LASER・MATERIA-RIDE】
ジェイナスが握ったライドキャリバーにレーザークリスタルを装填。
電子音声と共に仮面ライダーレーザーが出現し、ジェイナスはそのまま乗るとエンジンを吹かして発進。
瞬く間に猛スピードで突進してくるジェイナス達に気付いたヘルボーグは避ける様子もなく、ただそこに佇む。
ジェイナスはレーザーと共に一層エンジンを吹かし、マフラー部分から炎が噴き出す。
【爆走!CRITICAL STRIKE!】
爆発的な加速度を発動させるレーザーの必殺技『爆走クリティカルストライク』。
それによって繰り出される一撃は普通の怪人でも致命傷に負いかねないほどの凄まじい一撃になるだろう。
――だが。
「フンッ!」
ヘルボーグは片手でジェイナスを乗せたレーザーを受け止めると、そのまま力づくで投げ飛ばした。
廃工場の天井を突き破って空高く飛ばされたレーザー……ダメージの負荷による消失は免れないだろう。
だが、投げ飛ばしたはずのジェイナスの姿がないことに気付くと、周囲を見回す。
視界に黄色と青の混じった姿を見つけた瞬間、新たなる電子音声が鳴り響く。
【CHALICE・MATERIA-RIDE】
電子音声と共に視界に捉えたのは、二人の仮面ライダー。
一人は仮面ライダージェイナス・ランサードパラディン、もう一人は黒と赤で彩られた仮面ライダー・カリス。
二人のライダーは体を回転させながら、必殺の一撃を叩き込もうとする。
【SPINNING DANCE】
必殺の錐揉み回転キック・スピニングダンス。
一瞬の隙をついて繰り出したそれに、ヘルボーグは直撃を許してしまう。
ドリルのような鋭い一撃を二度も食らって、宙を舞うヘルボーグ。
これならどうだ、と言わんばかりにジェイナス――一登は少しばかり安堵する。
だが、その瞬間を狙って、歪な電子音声が鳴り響いた。
【Number 006・Boot On】
その瞬間、ヘルボーグの全身が炎に包まれ、凄まじい程の火炎が噴き出した。
全てを焼き尽くさんとするその火炎放射はジェイナスとカリスへ迫り、二体のライダーを焼き尽くしていく。
カリスが炎に包まれて消えて、その場に残されたジェイナスは炎の負荷に耐え切れずに大爆発。
爆炎が消えると、その中から傷付いた一登と優奈の二人が飛び出てきた。
「ぐぅ!?」
「きゃぁっ!」
舞い上がった土煙を浴びながら一登は目の前に未だ立つヘルボーグへと目を向ける。
そこには膝をつきながらも未だに健在な姿があった。先程受けた一撃が予想外と言わんばかりに受けた個所を見つめていた。
「驚いたな、たった一人でもそこまでやれるとはな?」
「……!」
先程のジェイナスとしての行動を見抜かれていた事に一登は驚く。
優奈が呆然とした意識で動揺していたあの時、ジェイナスの行動権を無理矢理自分に移して戦っていた。
だが、その動きはいつものようなキレはなく、自分ですら劣っていると感じ取っていた。
思い当たる節ならある……いつもなら一緒に心を合わせている優奈と共に戦っていなかったからだ。
その優奈の元へ、ヘルボーグが歩み寄っていった。
「やぁ、優奈」
「ひっ!?」
ヘルボーグが発した挨拶の言葉にすら恐怖心を覚える優奈。
後退りしながらも必死に逃げる彼女に対し、ヘルボーグはまるで友人にでも接するかのように話しかけてくる。
「束の間の家出生活はどうだったかい? そこそこ楽しかったかい?」
「こ、来ないで……!」
「侵害だね。これでも迎えに来てあげたっていうのに……いい加減戻ろう」
ヘルボーグはやれやれといった仕草を見せた後、優奈へ向かって手を伸ばそうとする。
優奈は目じりに涙を浮かべながら見開き、一登が静止を叫ぼうとしたした瞬間。
――巨大な花弁型の赤い武装が、ヘルボーグへと襲い掛かった。
「ッ! これは!」
ヘルボーグが気づいた頃にはその花弁型武装――ライドキラーが繰り出した右腕に備え付けられた武装・キラーイーターに組み付かれる。
必死に捕縛から逃れようとするも、藻掻くヘルボーグへ目掛けてライドキラーの左腕による鉄拳が叩き込まれた。
「ハァッッ!」
破壊音。
ヘルボーグの頭部・ヘルヘッドスカルに罅が入るほど凄まじい音が響き渡る。
ライドキラーが叩き込んだその一撃は余程強い力で殴りつけたのか、彼自身の左手が罅割れ、その罅から血が流れ落ちてきた。
見るも痛ましいその光景に一瞬気を取られていた一登だったが、ライドキラーがとある『物』を投げつけてきた。
「おい、これ使え」
「おっととと!? ってこれは!」
一登は『それ』を受け取ってハッと我に返ると、急いで地面を蹴って優奈の元へと走る。
「優奈!」
優奈の元に急いで駆けつけ、彼女の腕を抱き抱えると、ライドキラーから受け取った物……赤と青の二つのライドクリスタルのうち、青いライドクリスタルをライドキャリバーへと装填。
【G3・MATERIA-RIDE】
電子音声と共に出現したのは、最初ライドキラーと交戦した時に登場した戦士・仮面ライダーG3。
彼はその手に重火器・GG-02 サラマンダーを握ると、その銃口をヘルボーグへと構えた。
引き金を引いて、放たれた戦車も一撃で吹き飛ばすほどの破壊力を誇るその対戦車榴弾は、ライドキラーによって身動きが取れないヘルボーグの体を捉えた。
爆発音。
廃工場の天井すら吹き飛ばすほどの爆風が吹き抜ける中、硝煙と土煙があたりを包み込んだ。
視界が覆われた状態の中、最初に響き渡ったのは……歪な電子音声だった。
【Number 003・Boot On】
周囲が崩れ落ちる天井や屋根、爆炎や倒壊し始めた建物が占める中で、周囲を探る何者かがいた。
舞い上がった黒煙の中からヘルボーグが出てくると、まるで周囲を探るようにその場を探っていた。
彼の視界には人間が対応するには余りにも膨大な周囲の情報データが展開されており、それらすべてを確認し終えると、落胆したかのような様子を見せた。
「ふむ、ここにはいなくなったか。あの一瞬で退散するなんてね。困ったものだよ」
砕け散った建物の残骸を踏み砕きながら、ヘルボーグは歩いていく。
まだ戦いは終わっていない。
連れ戻すべき彼女を見つけるまで、機械仕掛けな地獄の悪魔の追跡は終わることを知らない。