仮面ライダージェイナス   作:地水

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第9話:ヘルボーグ、その深化 中編

 

 ヘルボーグから戦っていた場所から少し離れた位置に存在するとある人気のない廃墟。

 

そこには三人の人影があった。

一人は優奈、もう一人は一登。

一登は先程の戦闘で疲れ切った優奈を横になって寝かしており、スヤスヤと寝ている彼女の寝姿に少し安堵する。

 

「すぅ……」

 

「よかった。あの時は取り乱していたけど……」

 

一度は取り乱していた優奈が穏やかに寝ている姿にひとまず安心した一登は『あの後の事』を思い返す。

 

 

 

――時は遡り、場所は廃工場

 

召喚されたG3の攻撃によって周囲が火に包まれようとしたところ、一登は優奈を抱きかかえて退避しようとしていた。

だが、一瞬足がもつれてしまい、後ろから迫る炎に一登達は焼かれようとしていた。

 

「しまっ……!」

 

一瞬ヒヤリと嫌な冷や汗をかいた瞬間、抱えている優奈ごと一登を抱える持ち上げた者がいた。

いったい誰が抱えているのか一登が見上げると、そこにはライドキラーの顔があった。

一登は驚いて彼の名前を叫ぶ。

 

「お前!」

 

「しっかり掴まっていろよ!」

 

驚く一登に対してぶっきらぼうに伝えるとライドキラーは自身の背部のキラーブースターを吹かせ、そのまま激しく炎を噴射しながらその場を脱出した。

 

 

 

――そして今。

一登が視線を向けると、そこには自分達と共に此処へやってきたライドキラーが立っていた。周囲に敵の気配がないのか探って戻ってきた後、ライドキラーは口を開く。

 

「どうやらココなら休んでも問題なさそうだな」

 

ライドキラーはそういうと、近くの柱にもたれ掛かる。

相当痛手だったそうなのか、あの時ヘルボーグを殴っていた左手は血が流れた跡があった。

一登は不安と心配を覚えつつも、恐る恐る訊ねた。

 

「なぁ、ライドキラー」

 

「あん、なんだ?」

 

「こうして会うのは何度目かになるけど、オレと優奈はアンタの事を全然知らない。何者なんだ?」

 

一登はライドキラーへ問いかける。

だがライドキラーの口から返ってきたのは、ぶっきらぼうな言葉だった。

 

「そんなに知りたきゃ、推測ぐらい立てたらどうだ?」

 

「す、推測って……冗談はよせよ」

 

「ほら、当てずっぽうでも言ってみろよ。当たったらハワイにでも連れてってやるぜ」

 

戸惑う一登にライドキラーはケラケラと笑いながらからかいの言葉を飛ばす。

人を食ったようなつかみどころのない性格に一登が眉を潜めていると、優奈の声が耳に届いた。

視線を優奈の方へ向ければ、彼女がその瞼をゆっくりと開ける様子が伺えた。

 

「ううん……私、一体?」

 

寝ぼけながらも起きあがった優奈は周囲を見回した。

そこに目に入った一登……それとライドキラーの姿に驚きの声を上げる。

 

「ら、ライドキラー!?」

 

「おう、おはようさん。ずいぶんと疲れていたようだけどぐっすり眠れたかい?」

 

目を見開いて驚く様子の優奈に対して……恐らく、仮面の下で恐らく笑いながら訊ねるライドキラー。

最初の時の事を思い出しながら、警戒しながら起き上がって一登と共に優奈は訝しげに視線を向けている。

そんな彼女の視線を見て、ライドキラーはため息をついた。

 

「おいおい、そんな警戒する事はないだろう」

 

「あっ、えっと、その……ごめん、なさい」

 

「へっ、いいってことよ」

 

怯える優奈の様子を見て、軽口で返すライドキラー。

まるで見知った友人のように話す彼を見て、一登は何処か呆れた感情を持ちはじめる。

 

暫しの静寂を過ごした後。

一登にしがみつきながら落ち着きを取り戻した優奈へ、ライドキラーが訊ねてきた。

 

「お前さん、あのプルートとかいう奴の事知ってるだろ」

 

「……はい、知っています」

 

ライドキラーの言葉を聞いて優奈は少し迷った後、恐る恐る答えた。

彼女の絞り出すような声を聞いて一登は心配そうに見つめるが、それでもと言わんばかりに優奈は自分の知っていることを話していく。

 

「あの人……プルートは偽名で、本当の名前は地堂 冥司(ちどう・めいじ)……父の会社で働いていた人なんです」

 

「会社って、飛鳥コーポレーションのか?」

 

「うん……地堂さんは、クリスタル技術開発に関わっていた最重要責任者なの」

 

一登の言葉に優奈は頷く。

最初に出会った時の優奈が話してくれた事によれば、『怪しい研究をしていた』と『人間が怪物の姿になる』という衝撃的な内容。

今となってはそれらはライドクリスタルによるものだと判明して受け入れられているが……優奈はさらに話を続ける。

 

「一登君、覚えてるかな。人間が怪物の姿になったって言葉」

 

「ああ、覚えている。けどそれが?」

 

「……その怪物になった人間が、地堂さんなの」

 

「なんだって!?」

 

優奈の告げた事実に一登は驚きの声を上げた。

その反応を受けて優奈は拳に力を込めるが……それを見ていたのか、ライドキラーが質問を投げかけた。

 

「そんな奴がクリスタルの技術を独占して、何をしようとしてるんだい」

 

「……分からない。あの人はお金や人望のような欲には興味はなかったから私にはどういった人かわからなかったの」

 

「ふぅん、怪人を復活させてまでやりたい事ってなんだろうな。そのプルートさんはよぉ」

 

俯きながら答えた優奈の言葉を対してライドキラーは顔を背けて呟いた。

……と、そこであることに思い出した一登はライドキラーに訊ねることにする。

 

「そういえばライドキラー。あの怪人達について知らないか? 前にブラック将軍ってやつがショッカーとかゲルショッカーとか言っていたけど……」

 

「あん? ああ、そうか。お前達は知らないのか。知らずに戦っていたのか、ってのは言わないでおくよ」

 

ライドキラーはハッと気づかされたように神妙な面持ちを露わにする。

そして一登の問いかけに答えるように語り始めた。

 

 

「かつて、世界を裏から支配しようとしていた奴らがいくつもいた」

 

 

「ショッカー、ゲルショッカー、デストロン、GOD、ゲドン、ガランダー帝国、ブラックサタン、デルザー軍団、ネオショッカー、ドグマ帝国、ジンドグマ、バダン……そいつらは悪逆の限りを尽くした酷い輩だ」

 

 

「お前達が戦っていた怪人ってのは、そういう奴らが作り上げた尖兵だな」

 

 

ライドキラーから告げられた事実に一登も優奈も眼を見開いて驚くしかなかった。

ショッカーをはじめとした悪の組織……そんな存在が過去に存在し、人々の脅威になっていた事。

そんな人類を脅かす存在が過去に巣食っていたことをショックを受けた優奈がぽつりと零した。

 

「……知らなかった。そんな存在があったなんて」

 

「そりゃそうだ。もう40年以上の前の話だからよ。生まれていないお前達が知らなくて当然だ」

 

驚く優奈が呟いた言葉に対し、ライドキラーは淡々と告げる。

遠い昔とはいえ知りもしなかった優奈が戸惑う中、一登はあることに気付く。

 

「じゃあ、誰がショッカー達を……そんな悪い奴らを一体誰が倒したんだ……?」

 

「それは、お前達がよく知ってるんじゃないのか?」

 

一登の問いかけにライドキラーはさも当然のように答えた。

彼の言葉を聞いて一登と優奈は暫く考える……そして、とある存在に思い当たった。

いや正しくは【自分達は知っている】……何故なら、その先達にも出会い、自分自身も変身したからだ。

 

「ショッカー達を倒したのは……仮面ライダー、なんですか?」

 

優奈が勇気を振り絞るように言葉で告げたのは、自分達二人が思い至った人たちの総称。

……仮面ライダー、窮地に陥った自分達を助け、自分達も変身した戦士達。

以前出会ったスーパー1やスカイライダーという先輩ライダー達の存在を今思い返せば、その答えに辿り着くのは自然だった。

ライドキラーは優奈の言った答えを聞いて、カラカラと笑って返答した。

 

「まあ正解だなぁ。いつもの時代、何処かの場所で仮面ライダー達はショッカーのような組織と戦ってきた。それは……そうだな、理由は様々だな。義勇のためだったり、復讐のためだったり、贖罪のためだったり」

 

「「……」」

 

仮面ライダーが戦ってきた理由を聞いて、一登と優奈は複雑な表情を浮かべる。

そんな二人を見て、ライドキラーは困ったような声音で言った。

 

「そう怖い顔するなよ……正直言うと、お前達が戦っている理由が俺は羨ましいよ」

 

ライドキラーは二人に背を向けながらそう呟いた。

それが何処か照れくさそうに見えたのは、二人は錯覚に見えたような気がするが……。

一登と優奈にそう思われている事に気付いていないライドキラーは話を続ける。

 

「話を戻そう。地堂冥司は何らの目的を以てクリスタルといった異次元結晶技術を悪用し、怪人を蘇らせて悪用している……なんで過去の怪人達を利用してまで暴れる理由は、俺でも検討つかんがな」

 

流石のライドキラーでも地堂……否、プルートの目的は知らない。

少なくとも優奈を自分の元へ取り戻そうとしているのは確かだ。

それを思った一登は自分の拳を握り締める。

 

「俺は……優奈の事を渡したくない」

 

「――それは、彼女を好きな女として渡したくないのか?」

 

「なっ、俺は……!」

 

優奈の事を『好きな女』と指摘されて顔が真っ赤になる一登。

隣にいる優奈本人も黙っていはいるが俯いて自分の表情を隠している。

凡そ顔を真っ赤にしている二人の初々しい様子を一人だけ堪能しているライドキラー。

 

 

そんな奇妙な三人のやりとりが続く中で……。

突如大きな揺れが起きた。

 

それにすぐ反応したのは、ライドキラーだった。

 

「チッ、どうやら奴さん見つけたようだな!?」

 

廃墟の壁に隠れてから窓を覗くと、外にはヘルボーグの姿があった。

その傍らには再び作り出したのか、何体ものショッカーライダー達の姿もあった。

特にショッカーライダーの指先から放たれている小型ミサイルから見ると、どうやら先程の攻撃は彼らの物のようだ。

ヘルボーグ達の襲撃にライドキラーは自分一人で動き出そうとその足を踏み出そうとする。

 

……だが迎撃へ行こうとするライドキラーを優奈が呼び止めた。

 

「待って、ライドキラー!」

 

「……どうした?」

 

「私、あの人と……地堂さんと会った時、怖くて震えていて……気付いたら、戦えなくなっていたの」

 

優奈の真剣な表情にライドキラーは顔を向ける。

彼女の震えている手が見えており、相当勇気を振り絞って言っている事が見える。

今もショッカーライダーの攻撃が続く中で、優奈はライドキラーへ訊ねた。

 

「もしも、今の私と同じように恐怖で戦えなくなった時……アナタはどうやっていたの?」

 

「そうだねえ……俺はお嬢ちゃんと似ても似つかない境遇だけど、自分のためだけじゃなく誰かのために戦っていたからな」

 

「誰かのために……」

 

「もしも恐怖で圧し負けそうになっていたら、大切な誰かを心の中で思い浮かべな。そうすりゃ、幾分かマシになるかもな」

 

優奈にそう助言した後、ライドキラーは砕けた窓ガラスを破り、勢いよく外へと飛び出した。

その言葉を聞いて優奈はしっかりと心の中で受け止めると、一登と顔を見合わせてある決心をした。

 

一方、敵陣の目の前に躍り出たライドキラー。

ショッカーライダーを引き連れたヘルボーグはライドキラーを視認すると軽口を叩く。

 

「やぁ、誘き出せたのはアナタだけか」

 

「どうした地獄の石頭、また殴られたいようだな」

 

「冗談はよしてくださいよ。お互いに痛みわけじゃないですか」

 

「減らず口を……」

 

互いに冗談を口にした後、ヘルボーグとライドキラーは互いに近づき、殴り合った。

 

【Number 005・Boot On】

 

ヘルボーグは瞬時に近づき、怪力能力を有した赤熱化した拳でライドキラーを殴りつけ。

 

「おらあああッ!!」

 

それに対してライドキラーは左腕を向け、キラースラッシャーを展開しながら迎え撃つ。

 

お互い殴り合いをはじめ、力の籠った拳でぶつかりあう二人。

そんな一騎打ちの戦いにショッカーライダーは無粋にも入ろうとする。

 

だが、そんな彼らを止めるように電子音声が鳴り響く。

 

 

「「変身!」」

 

【ACCELE×MACH】

 

【RIDER FUSION】

 

【BLAZING ROAD】

 

灼熱の熱風と共にショッカーライダー達の前に現れたのは、仮面ライダージェイナス・ブレイジングロード。

加速能力でショッカーライダー達へ近づき、ライドキラーの戦いを邪魔させないために参戦していく。

 

ヘルボーグによる二人の戦士による戦いは、決着がすぐそばまで迫っていた。

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