仮面ライダージェイナス   作:地水

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 ようやく出来上がった、本編第1話。
彼ら二人の物語は、第三の仲間と共に始まる。


第1話:ある捜査官の戦い 前編

―――時代が望む時、仮面ライダーは必ず甦る

 

 

 

 東京、頼打地区。

天にも届くほどの高層ビルが立ち並ぶ中、夜景を眺める存在が一人立っていた。

その人影は誰に聞かせるわけでもなく、その光景に対して呟いた。

 

「綺麗だな……」

 

「うん、とっても綺麗だね」

 

人影が突っ立っている場所には、少年と少女の声が響き渡る。

たった一人しかいないはずの人影は、二人の声で会話を続ける。

 

「これから俺達がこの街を、この世界を守っていく番なんだな」

 

「そうだね。私と君、二人で一人の『仮面ライダー』が」

 

「とはいっても……なーんか実感湧かないな。俺達があの仮面ライダーなんて」

 

「ふふっ、でも大丈夫だよ。私達、二人でならどこまでだっていける気がするもの」

 

少年と少女、人影の周囲で発する二人の声は楽しそうに会話を繰り広げていく。

そして、後ろを振り向くと、そのまま助走をつけながら走り出す。

数秒もしないうちに人影は炎の幻影(エフェクト)を残し、その姿を近くのビルへと飛び移りながら消し去っていった。

 

―――知られざる戦士は夜空を駆けていく。

 

―――その戦士の正体が明らかになるのは、『とある男』との出会いからであった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 東京、国際空港。

多種多様な国籍の人々が行き交う中、一人の男が姿を現す。

子供がすっぽりと入れるほど大きなリュックサックを片手で軽々と担ぎ、ジーンズとシャツという軽装を身に纏った姿。

何より目を引くのは平均的な成人男性にしては長身かつ服の上からでもわかるほどの鍛え上げられた筋肉質な身体。

凡そ軍隊か警察にでもいるような風体のその短い黒髪が特徴の男は、腕にかけた上着から携帯端末を取り出すと、何等かの操作をして連絡を図る。

電話はすぐに繋がり、男は相手に話しかける。

 

「リーダー、こちらレオンハルト。ただいま日本に到着しました」

 

『ご苦労、確認だけどあなたの任務は分かっているわね』

 

「わかってますよ。近日行われる国際音楽表彰式の重鎮の警護ですよね」

 

『ええ、我が国の誇る歌手も参列することになっている。あなたの任務はそれよ。守り抜きなさい』

 

「ええ、これでもインターポールの凄腕広域捜査官であるレオンハルトにお任せくださいよ」

 

その男……『レオンハルト』は自信満々に電話の相手であるリーダーにそう告げながら港内の出口へと向かう。

途中の売店で寄り、お茶にインスタントの味噌汁、そして御握り数個を買いながら、リーダーとの会話を続ける。

 

「しっかし、リーダーも心配性だよ。いくら日本に怪しい噂が流れてくるからって俺を派遣することはないのに」

 

『あなたは知らないから言えるのよね。そんなことを』

 

「いやいや、信じてないわけじゃないですが……はっきり言って半信半疑なんですよ。まさかこの日本で怪物(モンスター)だなんて」

 

『火のない所に煙は立たぬ。万が一出なかったらそれに越したことはないわ』

 

電話越しからでも伝わるリーダーの沈着冷静な言葉に、レオンハルトは苦笑いを浮かべる。

最近日本にて妙な噂が流れていた。

それは『人型の姿をした怪物』達が出てきている事。

まるで漫画に出てくるような怪人が出てくる、そんな信憑性が薄いながらも不気味さを漂わせるこの怪事件にレオンハルトは上司の命を受けて日本へやってきた。

暫しのやり取りの連絡を終えたレオンハルトは、軽食が入った手提げ袋を手に出入口を潜り抜ける。

 

―――そこで目についたのは、海が広がる水平線の向こうから伸びる巨大な建築物。

鋼鉄と超合金でできているとされているそれは、首を頭上へ見上げても先が見えないほど天高く聳え立っていた。

世界初の軌道エレベーター「望月(もちづき)」、この国……日本が有する宇宙へと繋がる『天の梯子』。望月の存在により、人類が夢に見た宇宙進出は少しずつだが飛躍している最中だ。

何処かの創作物でも描かれていたようなSFの存在が現実の前に現れれば、誰でも驚くだろう。

レオンハルトは先程買った御握りを口にしながら、感心していた。

 

「はぁん、あれがねぇ。ここ30年で日本も変わっちまったな……うぐっ、すっぺ」

 

適当に手を取ったものが梅干し入りだったのか、酸っぱい味に眉間を寄せながらレオンハルトは目的地へと歩き出していった。

目指す場所は……国際音楽表彰式が開かれる頼打地区の会場。

 

 

~~~~~

 

 

某所。

闇が包み込んだ漆黒の空間にて一人の人物が足を踏み入れる。

その人物の手には、無色の球体状の結晶が握られていた。

その手に二個の結晶を目の前の虚空へと投げる……すると、二つの結晶は空中で浮かび上がり、無色からそれぞれ黒と橙色に変色し、光を放ち始めて何らかの身体を形成していく。

片方は漆黒の体表に蜘蛛の巣状の模様が張り巡らされた身体を持つ蜘蛛面の怪物。

もう片方は橙色の体表に皮膜状の翼を持った蝙蝠面の怪物。

どちらも人の形をした二体の怪物は、まるで歓喜するかのように鳴き声を上げる。

 

「ヌォォォォォ!!」

 

「キキキキキッ!!」

 

「さて、再び生者として復活したあなた方に一つ、試練を与えましょうか」

 

二体の怪物を復活させたその人物は、口元に穏やかな笑みを向けて語り掛ける。

怪物たちは鳴き声を上げるのをやめ、静かに耳を傾け始めた。

地獄から甦った軍勢が暗躍を始める。

 

 

~~~~~

 

 

 頼打地区、国際音楽表彰式会場。

日本を中心とした各国のバンドグループ、アイドル、アーティストといった歌手達が一同に集まる祭典。

年に1年の頻度で開かれており、今回は司会を務めるのは新人気鋭・日本のアイドルグループ・BlazeManの一人・田宮佐久(たみや・さく)、映画・ドラマ・バラエティ・舞台とマルチな活躍をしている青年だ。

今彼は数万人にも及ぶ観客の目の前で、カメラマンの前で実況をしていた。

 

「いやぁ、TVの皆さんすっごいですね! 今回の国際音楽表彰式に参列するお客さんがこんなにもやってきています! この熱狂! この圧巻! 本場でないと伝わらない凄さなんですよ!」

 

『佐久さん、今回参加される歌手の中で注目している方はいますでしょうか?』

 

「そりゃやっぱり、現代のマイケルジャクソンこと往年現役歌手『スパイク=カタラクト』ですよ! なんたってね、俺の推しですよ! あのアニメ映画・ゲンムウォーズでまさかのラスボスの声優で参戦しましてねっ!」

 

スタジオにいるアナウンサーの質問に対して、熱く熱弁をするアイドル・田宮佐久。

まるで自分の好きなものを語るオタク(ギーク)の如く喋っているなと、遠くの方でレオンハルトは若干引きながら眺めていた。

その最中、目の前で語るオタクアイドルの話に出てきたスパイク=カタラクトに眉を顰める。

 

(……しっかし、アンタも変わらないな)

 

そう思ったレオンハルトの脳裏によぎるのは、今回の警護対象である重鎮・歌手スパイクの生い立ち。

昭和がまだ過去の元号じゃなかった時代、元々はニューヨークのスラム街にて住んでいた一介の少年だったが、必死に貯めた金を貯めて出たアマチュアナイトがきっかけでプロ達に注目される。

そして歌手スパイクとして様々な舞台・TVに出て、齢20になるころには自国に名を轟かす大成を治めた。

平成が過去の年号になった今も時代も、現役として第一線で活躍し続けている。

―――それが一般的に知られている、"スパイク=カタラクト"という男の生い立ちだ。

 

「たっく、一番星(トップスター)であるアンタが羨ましいよ」

 

皮肉めいた笑みを浮かべ、再び警備に戻り周囲を見回し始めるレオンハルト。

そこへ、数ある観客のうち、とあるグループが目に留まる。

それは私服姿の四人の男女の学生達。

そのうちの二人、亜麻色の髪の整った顔立ちの少年が美しい金髪の美少女の手を引いて歩いていた。

 

「ねぇ有栖、こっちだよこっち」

 

「待ってください蒼汰! 急がなくてもアイドルは逃げませんって!」

 

まるで子供の用にはしゃぐ少年……蒼汰と、そんな彼を止めようとする少女……有栖。

どちらも世間体で言う美男美女というお似合いの二人であり、一段目に引く。

そして彼ら二人の後をついていくように、黒髪の少年と栗色の長い髪の少女がついていく。

よく見れば、こちらの二人も手を握り合っている……しかもお互いの手の指のあいだに指を絡めるいわゆる"恋人つなぎ"というやつだ。

まるで互いに離れ離れにならない様に繋いでいる少年少女は先に行った蒼汰と有栖といっていた二人を追って、人混みの中へと消えていく。

可愛いものだなと思いながら、レオンハルトは彼ら四人から視線を外した。

一方で何らかの視線を感じた黒髪の少年は後ろを振り向いた。

 

「……ん?」

 

「どうしたの、一登君」

 

「ああ、……なんでもないよ優奈」

 

黒髪の少年……『夏川一登』と、栗色の長髪の少女……『飛鳥優奈』は友人達を追って向かう。

今宵行われるのは歌の祭典、友達と共に熱狂するために二人はここへとやってきた。

 

 

~~~~~

 

 

そして時間は過ぎ去り、国際音楽表彰式は幕を開ける。

 

まず観客を燃え上がらせるトップバッターとして演奏するのはリーダー・佐藤太郎を中心とした日本のバンドグループ『ツナ義ーズ』。

その次に世界滅亡を思わせる排他的な曲想が人気を博したイギリスの4人組アーティストグループ『Perish thunder』。

3番目として名乗り上げたのはアジアで活躍中の二人組アイドル『MagicLand in CoYoMi』。

 

数々の歌手達が魂を震わすほどの歌を歌いあげ、観客たちは熱狂をする。

この場にいる人達が歌という共通目的で盛り上がっている……。

 

―――だが、そんな彼らをあざ笑うかのように、地獄の魔の手は迫りくる。

 

とある控室、表紙には『スパイク=カタラクト』と書かれており、それを見た作業員姿の二人の人影は互いに顔を見合わせて頷き、ぶしつけに入る。

部屋の中には、こちらに背を向ける黒服スーツ姿の男性が一人。誰かが部屋に入ってきたのを気づいたのか、スーツの男は口を開く。

 

「悪いが後にしてくれ。そろそろ本番なんだよ」

 

「スパイク=カタラクト、お前は我らが作戦に選ばれた」

 

「大人しく我らについてこい」

 

二人の作業員はゆっくりとスパイクと呼んだ男へと迫る。

そして近づいたとき、男の一人が手を伸ばした……。

―――その時だった、眉間に銃口が付きつけられたのは。

 

「悪いなBAD-MANS。ちと過剰防衛かもしれないが許してくれ」

 

そう言いながら振り返り、スーツ姿の男……レオンハルトは、ニヤリと不敵な笑みを向けた。

目的の人物とは違う事に気づいた作業員の二人は慌て慄く。

 

「別人!? き、貴様何者だ!?」

 

「そう嫌な顔するなよ。牢獄での飯は美味い所にできるように計らっておくからさ」

 

「スパイク=カタラクトはどうした!?」

 

「バーカ、あの人は我が祖国が誇るトップスターなんだぜ? 既に出番待ちよ。プロ意識が違うんだよ」

 

レオンハルトは男に銀色の大型拳銃を引っ込ませ、空いた手で頭を掴み上げる。

俗にいうアイアンクローと呼ばれる技で、身体ごと作業員の男の頭を持ち上げる。

常人離れした膂力でノックダウンさせる……レオンハルトの特技の一つであるやり方。

だが、そこへもう一人の男が思わぬ反撃を繰り出した。

 

「舐めおって……くらえ!シャッ!!」

 

「なっ!?」

 

作業員の男の口から吐き出されたのは、白い粘着物。

レオンハルトは掴んでいた男を咄嗟に手放し、飛んできた粘着物を避ける。

壁に張り付いた粘着物は蜘蛛の巣状に広がり、衣装建てやメイク箱を巻き込んでいる。

それを見て、レオンハルトは目を見開く。

 

「おいおい、なんだ今の!?」

 

「仕方ない……本当は人質を捕まえたがったが、作戦を強行するぞ」

 

「ああ……キキキキキィィッ!!」

 

「ヌォォォォォ!!!」

 

二人の男は唸り声を上げながら、その姿を変貌させていく。

片方は漆黒の身体に赤い模様を走らせ、蜘蛛のような頭部を持った怪人。

もう片方は橙色の体表に皮膜状の翼の腕を持った蝙蝠面の怪人。

どちらも人の姿をした怪物となると、両者はレオンハルトへ襲い掛かる。

 

「マジかよ……おりゃあ!!」

 

大型拳銃で狙いを定め、発砲して牽制。

2体の怪人が怯んだ隙を見て間を潜り抜け、ドアを開けて部屋から抜け出す。

レオンハルトは何処からか取り出したインカムを繋ぎ、他の警備員に連絡を図る。

 

「レオンハルトだ! スパイク=カタラクトの楽屋に不審者二人が乗りこんできた! 至急こちらに人を回してくれ! できるだけ腕っぷしの強いヤツだ!」

 

レオンハルトは2体の怪物が扉を出られない様に自慢の肉体で抑え込み、助けの警備の人が来るまで現状を保つ。

まさかリーダーの言っていた怪人がこの目で目にするとは思っていたなかったのか、逆に皮肉めいた笑みがこみあげてきてしまう。

 

(わかっちゃいたが、あんな怪物(モンスター)がいるってのは流石にびびるよなぁ!)

 

まるでアニメや漫画のような絵空事でしかなかった吸血鬼(ヴァンパイア)死食鬼(グール)の登場に内心慄いていた。

リーダーの言っていた懸念は当たってしまった……あの人何者なんだ。

恐らく人生の中で一番危険な目に巡り遭っているであろう自分は、生きていたらあの人に謝罪の言葉を考えることにした。

だが、そんな冗談めいた思考を打ち砕く様に悲鳴が聞こえてきた。

 

「ぐああああああ!?」

 

「ッ!?」

 

レオンハルトが悲鳴が聞こえてきた方向へ振り向けば、そこにいたのは幾人もの『鉱物の怪人』。

まるで水晶で出来ているような手には今回共に働く事になった知り合いの警備員が握られており、それをレオンハルト目掛けて投げつける。

舌打ちを打ちながら扉から離れ、レオンハルトは警備員の身体をキャッチする。

助けた警備員の息はまだある……だが負ってしまった傷を見る限り、対物たちと戦えそうにはない。

その間にも蝙蝠と蜘蛛の怪人達が扉を破って出てきた。

 

「くっ、我ら偉大なる組織の怪人をコケにしおって」

 

「この屈辱、貴様を死を以て注がせてもらう」

 

2体の怪人達は自分達をコケにしたレオンハルトを目の敵にして今にも飛び掛かろうとする。

だが、だからって逃げるつもりはない……何故なら、相手が人間であろうと人外であろうと引き下がるつもりはなかった。

なぜなら、レオンハルトにとってそれが自分が選んだ道だからだ。

 

「たっく、やってやろうじゃねえか!」

 

レオンハルトは大型拳銃を構え、迎え撃とうとする。

だが、そこへこの場に駆け付けようとする2つの足音が聞こえてきた。

血を上っていた頭が急に冷静になり、振り向いた。

レオンハルトと鉱物の怪物を引き連れた二人の怪人達の前に現れたのは……。

 

「一登くん、これって!」

 

「優奈、……いくぞ!」

 

―――あの時すれ違った二人の少年少女……一登と優奈の二人であった。

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