仮面ライダージェイナス   作:地水

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第1話:ある捜査官の戦い 中編

 時は戻り、数十分前。

一登と優奈は二人の学友と共に国際音楽表彰式へ足を踏み入れていた。

事のきっかけは一登の学友の一人が知り合いが譲ってくれた表彰式への予約席が回って来て、もったいないから一登達も連れてやってきたという。

今現在、席に座りながら目の前のステージで披露される歌手の姿と歌を聞きながら感動をしていた。

 

「ねぇ有栖! 最高だよね今回の表彰式は!!」

 

「はい! あの英雄團も登場するとは思ってもみませんでした!」

 

そう盛り上がるのは、一登達と同じ年頃の二人の少年少女。

亜麻色の髪色の少年の方は『氷室 蒼汰(ひむろ そうた)』。

一つ結びにした金髪の美少女の方は『有栖(アリス)・U・ランド』。

どちらも一登の学友であり、かけがえのない友人だ。

一登とは小学校高学年の頃からの付き合いであり、いつも三人でいた。

高校生になった今でも、その関係は変わってはおらず、表彰式には優奈もいれたこの4人でやってきたのだ。

数々の歴代アーティストに心躍る蒼汰と有栖であったが、はしゃいでいる自分達と比べて大人しい様子の一登と優奈に気付き、思わず尋ねてみた。

 

「どうしたんだ一登? 楽しんでいるかい?」

 

「優奈、どうしたのですか? もしかして楽しくないのですか?」

 

蒼汰と有栖は心配そうにふたりを尋ねる。

一登と優奈は互いに顔を見合わせると、二人の質問に答えた。

 

「悪い蒼汰、音楽はあんまり興味がなかったからわからなくてさ」

 

「ごめんなさい有栖、私、家が厳しかったから流行りものの音楽が分からなくて」

 

「「…………」」

 

―――何もそこまで仲良くなくてもいいじゃないの。

そう言わざる負えないほど拍子抜けした瞳を二人に向ける蒼汰と有栖。

 

つい最近、一登が会いたがっていた幼馴染と再会して嬉しいとは聞いており、蒼汰と有栖の二人もまるで自分の事のように喜んでいた。

だがしかし、親友にようやく春が来たと喜んでいるのもつかの間、二人の仲の良さを目の当たりにして蒼汰と有栖は驚いた。

まず、優奈が一登が住んでいる喫茶店兼食事処・New Amigoにて住んで学校に通っている事実の発覚。

年頃の異性が同じ屋根の下暮らしているのはどうかと思うが、どうやら優奈はちょっとした訳ありのようで、これは許された。(少なくとも蒼汰は)

次に、一登と優奈の学校でのやり取り……共に学校に登校し、昼食の時は優奈の手作りの弁当を一登が食べ、放課後は共に帰路へと付く。

登下校の際は手を絡ませており、昼食の時は真心籠った愛妻弁当を食べる……まるで世の中でいう恋人同士のように甘ったるい空間を広げているのだ。

とある誰かに『恋人同士か』と指摘されたが、二人から『まだそこまでにはなっていない』と必死に反論された。

 

流石に戸惑う二人の様子を察したのか、優奈がフォローを入れる。

 

「ああ、でも楽しいよ! みんな歌っていて楽しいよね!」

 

「わかったわかった、ごちそうさまですよ」

 

「貴方達のおかげで満腹になりそうです」

 

生暖かい目を向ける蒼汰達二人。

どうやらこの二人(カップル)はこんな調子で周囲を翻弄するのであろう……そう悟り、これから先の展開がどうなるか身を案じる一登の幼馴染コンビであった。

 

一方でステージの方は盛り上がっており、佐久を始めとしたアイドルグループ・BlazeManの手番が回ってきた。

数あるメンバーのうちの代表者として佐久が挨拶を始める。

 

「伝説のアイドルが言っていた、アイドルとは笑顔を見せるのが仕事じゃない、笑顔にさせるのが仕事……と。アイドルなれども俺達は夜空に輝く一介のアーティスト、それでも皆さんを笑顔にさせるため、謳わせていただきます!」

 

佐久は先程の笑みを浮かべた表情とは異なる決めた顏を表しながら、前口上を決める。

そしてBlazeManの代表曲『MUGEN FIGHT -コングを鳴らせ!-』を披露しようとするその時だった。

一登と優奈のポケットがわずかに光り、二人はそれに気づく。

 

「「あっ」」

 

(一登くん、これって……!)

 

(まさか……この会場に!?)

 

二人の持つ宝珠状のアイテム・ライドクリスタルが感じ取った『とある異変』に気づいた二人は、観客席から立ち上がって別の場所へと向かおうとする。

その際に蒼汰と有栖が彼ら二人を呼び止める。

 

「ちょっと待って一登! 今から始まるのに!」

 

「優奈もですよ、二人揃って何処へ行くのですか!」

 

「「お構いなく!!」」

 

二人の制止も聞く耳を持たず、一登と優奈は会場の出入り口へと向かっていく。

その間にも伴奏のBGMが流れ始め、ステージの上で立つBlazeManが歌い始めようとしていた。

 

 

~~~~~

 

 

一登と優奈の二人は手に握ったライドクリスタルの反応を感じ取りながら、会場内の異変が起きた場所へと走って向かっていた。

その間に見かけるのは、警備員もスタッフもいない無人の会場……一目で何かが起こった事を悟った二人は、ライドクリスタルの反応に従って進んでいく。

そして辿り着いた二人が目にしたのは、蜘蛛の怪人と蝙蝠の怪人、そして二体の怪人が引き連れた結晶の怪物達。

怪人達は警備員姿の男を抱える一人の黒髪の男性へ距離を狭めていた。

特に結晶の怪物は見覚えがある……これまでにもいくつも戦ってきた『敵』が連れていた奴だ。

 

「一登くん、これって!」

 

「優奈、……いくぞ!」

 

【【JANUS-DRIVER】】

 

二人は円形状のモニターがつけられた変身ベルト・ジェイナスドライバーを腰部に装着。

それと同時に、黒髪の男性と怪人達の間に漆黒のボディに無機質な灰色の装甲を身に纏った人型の仮面の戦士"ライドボディ"が出現。

まるで悪魔の軍団の進攻を止める様に立ち塞がったそれを見て、黒髪の男……レオンハルトは驚く。

 

「な!? なんだ!?」

 

何処からか出現した等身大の人型にレオンハルトが驚く中、一登達二人は慣れた手つきで準備を進める。

二人が取り出したのは二つのクリスタル……一登は白いライドクリスタル――マッハクリスタル、優奈は赤いライドクリスタル――アクセルクリスタル、とそれぞれ手に握っていたライドクリスタルを構える。

そして同時にあの掛け声を叫んだ。

 

「「変身!」」

 

【ACCELE】

 

【MACH】

 

二人は左右の側面の装填スロットにそれぞれライドクリスタルを装填。

二人のベルトがライドクリスタルに込められた仮面の戦士の名前が鳴り響き、中央部のモニターが光りだす。

 

【ACCELE×MACH】

 

【RIDER FUSION】

 

鳴り響く電子音声と共に二人の姿が光となって消失……赤と白の二つの光は、ライドボディと重なってその姿を変えていく。

真紅のボディの上に纏っていく白いアーマー、青く輝く双眸の複眼、(ターンエー)の模したアンテナを掲げるフルフェイスマスクに酷似した仮面。

けたたましいバイク音と激しい炎熱と共に姿を現したのは、一人の仮面の戦士。

 

【BLAZING ROAD】

 

ジェイナス・ブレイジングロード。

―――目の前で起きた二人の少年少女による変身を遂げた姿を見て、目を見開くほどレオンハルトは驚いていた。

 

「……そ、その姿は」

 

「名乗るほどの偉い者じゃないけど、俺達はお前らのような人達は見逃せないのでね」

 

ジェイナスは一登の声で喋りながら、怪人に対して拳を構える。

蝙蝠の怪人と蜘蛛の怪人はそれを聞いて悪態をつくと、苛立った口調で叫んだ。

 

「我らがショッカーの怪人幹部、蝙蝠男と蜘蛛男が相手をしてやる!」

 

「行け、ミネラリオン!!」

 

蝙蝠の怪人・蝙蝠男と蜘蛛の怪人・蜘蛛男の命令と共に、結晶の怪物こと結晶兵士・ミネラリオンが襲い掛かってくる。

ジェイナスは一瞬、腰を低くして構えると……足を一歩踏み出した途端、姿が消える。

レオンハルトと怪人二体が呆然とするのもつかの間、飛び掛かっていったミネラリオンの結晶の身体が文字通り砕け散った。

 

「「な、なに!?」」

 

「悪いけど、そいつらの既に攻略方法は掴めているの」

 

ジェイナスは怪人達の後ろにて立ちながら、今度は優奈の声で話す。

背後にいることに気づいた蝙蝠男と蜘蛛男は後ずさる。

 

「お、おのれ……いい気になるな!」

 

「ミネラリオンはこの会場一帯にいる! お前達に防がれるものか!」

 

「なんだと!?」

 

蜘蛛男の言い放った言葉を聞いてレオンハルトは驚きと焦りの声を上げる。

ただでさえ蝙蝠と蜘蛛の怪物だけで驚いているのに、先程の結晶の怪物が他にもいるとは……俺と警備員だけで防ぎきれるか?とレオンハルトは焦燥感を胸の内に湧き始める。

だが、ジェイナスは片腕を回しながら、一登の声で答える。

 

「大丈夫だよ、お前達を倒して、会場の皆を守ることぐらいは」

 

「それが、私達はできることよ」

 

一登の言葉に続いて優奈の声がジェイナスから発せられる。

減らず口に痺れを切らした蝙蝠男と蜘蛛男は、不利と見たのか逃げていく。

二人の怪人を追って去っていく仮面の戦士・ジェイナス……レオンハルトは先程助けた警備員を安全な物陰に寝かせながら、拳を握りしめた。

 

「……あれが、仮面(マスクド)ライダーなのかよ」

 

レオンハルトは自分も後を追いかけるべく、力強く走り出した。

―――これかレオンハルトと二人の一人の仮面の戦士・仮面ライダージェイナス、両者の最初の出会いだった。

 

 

~~~~~

 

 

国際音楽表彰式・舞台会場。

ステージではBlazeManの熱唱が終わり、全観客に頭を下げている所であった。

 

「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」

 

「はぁ、凄かったなぁ。名前の通り炎の如く気持ちが燃え上がってくるよ」

 

「こう胸を熱くさせる歌ってのもいいものですね」

 

蒼汰と有栖を始めとした観客たちはBlazeManの熱い歌詞を含んだ曲に感動を浸っている。

他のメンバーが去り、一人ステージに残った佐久が再び視界を始める。

 

「さぁ、さぁ、皆様! お待たせしました! 残る歌の戦士達も残すはあと5組!」

 

全力全開で歌ったにもかかわらず、平然と軽快なトークを続ける佐久。

そんな彼の姿を舞台裏で見つめる者がいた。

褐色肌の壮年の男性……『スパイク=カタラクト』は、優しそうな笑みを向けながら佐久の姿を眺めていた。

 

「懐かしいな、私もああいう風に頑張ってたもんだ」

 

誰に聞かせるわけでもなく、一人呟くスパイク。

その脳裏に思い浮かべるのは、―――かつての若かりし頃の自分。

家もなにもない少年だった自分は、アマチュアナイトで注目され、がむしゃらに頑張ってきた。

今現在では今度は自分が一番星(トップスター)となり、かつての自分だった誰かの光になる。

それは今でも変わらない……かつての『友』とかわした約束を思い出しながらスパイクは自身の出番のため、準備に取り掛かろうとする。

 

だが、突如会場全体の証明が消える。

何が起きたのかと会場の観客がざわつく中、舞台裏にスパイクはあることに気付く。

―――息を切らしながらこちらを睨みつける獣の眼光を。

 

「キキキィ!! スパイク=カタラクトォ……! 我らと、共にこぉい!!」

 

「……こ、蝙蝠!?」

 

突如暗闇の向こうから現れた怪物・蝙蝠男に驚いて後ずさるスパイク。

だが蝙蝠男は常人離れした身体能力を生かして飛び掛かろうとする。

思わず恐怖で顔を強張らせるスパイク……だが、彼の目の前に一人の人物が飛んできた。

 

「―――その人に近づくんじゃねえっ!!」

 

「なっ!? ぎゅあああああああああ!?」

 

スパイクの目の前に現れたレオンハルトは蝙蝠男目掛けて力いっぱいの鉄拳を叩きこんだ。

顔が拉げてしまうほどの一撃をもらった蝙蝠男は地面へ倒れこみ、その間にレオンハルトはスパイクの元へと駆け寄る。

駆け寄ってきたレオンハルトの顔を見て、心底驚いたような顔を浮かべる。

 

「レオン!? いったいなにがどうなって!?」

 

「悪い、スパイクさん! 久しぶりに会って悪いがここから逃げてくれ!!」

 

スパイクを庇いながら、レオンハルトは大型拳銃を構える。

だがその大型拳銃に白い粘着物が取り付き、手から離れてしまう。

二人の頭上から現れた蜘蛛男は、手に持ったレオンハルトの拳銃を投げ捨てながら鼻で笑う。

 

「我らに敵うものか……」

 

「しまった……!」

 

愛銃をレオンハルトは何とかしてもスパイクを守ろうと、彼を庇いながら後退りしている。

蝙蝠男もようやく復帰して、2体の怪人が迫りくる。

最早絶体絶命か……。

―――だがその時、バイク音と共に赤と白の閃光が蜘蛛男と蝙蝠男を弾き飛ばした。

 

「「ぐあああああ!?」」

 

「……!!」

 

レオンハルト達の目の前に現れたのは、ジェイナス・ブレイジングロード。

蜘蛛男と蝙蝠男から彼ら二人を守るように立つと、手を差し向けながら一登の声で発した。

 

「お前らの兵隊ならあらかた片付けてきたぞ」

 

「あの一瞬でだと……!?」

 

蜘蛛男はミネラリオンが一瞬のうちに倒されていたことに驚きの声を上げる。

ブレイジングロードの固有能力・高速移動を駆使して会場中を一瞬で駆け巡り、配備させていたミネラリオン達を倒したのだ。

自分達に付き従う兵士達が倒され、動揺する二体の怪人達。

 

「くそっ!? こうなれば……蜘蛛男!」

 

「ああ! シャッ!!」

 

蝙蝠男に呼ばれた蜘蛛男の口から大量の蜘蛛の糸を噴射。

ジェイナスは拳に生み出した炎で焼き切って防ぐ……だが、その一瞬の隙を狙って二体の怪人はステージの方へ逃走を図る。

レオンハルトはそれに気づくと、ジェイナスに向かって叫ぶ。

 

「おいライダー! 会場の方へ逃げたぞ! 追え!」

 

「えっ、あぁわかった」

 

ジェイナス……一登は常人ならざる姿をした自分達の姿を見ても普通に声をかけてきた事に気を取られ、一瞬行動が遅れる。

レオンハルトの言葉に従って怪人達を後を追うジェイナス……そんな彼の向かう姿を黙って見ていたスパイクがレオンハルトに声を掛ける。

 

「レオン、見たかい」

 

「えっ……なにがっすか」

 

「あれが、私達が言っていた(・・・・・・・・)仮面ライダーだよ」

 

スパイクはレオンハルトに優しい口調でそう言いながら向かっていくジェイナスの背姿を見ていた。

その瞳には、かつて自分が出会った大自然の戦士の姿を思い浮かべながら……。

 

 

 

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