今回は本当に第11話です。日常回のような何かです。どうぞ。
ほんのちょっとグロい表現あるかもなんで苦手な方は一応気をつけてください。
「はぁー…随分疲れたぜ」
そう言いながら腰掛けた椅子がギシッという音を立てる。ドーパントと戦った挙句警察にあれこれと質問攻めにあったから疲れていて当然っちゃ当然なんだけど、当分は背中の筋肉痛は取れそうにない。
ライダーのときに飛べるのはいいんだけど、普段使わないところに力を入れるせいでやたら背中が痛くなる。戦ってる最中は多分アドレナリンがドバドバなせいで痛みには気付かないんだろうけど、戦い終わってから少ししてから徐々に痛みが襲ってくるんだよね。だから基本使わないようにしてる。ジャッジメントみたいなのが異例なだけで空を飛べるドーパントなんてあんまりいないわけだし。
「…心配する点は俺の背中じゃなくてあの黒いのなんだよな」
机の上に乱雑に置いてあるドライバーとメモリを見つめながら呟く。今回は幸運なことにあの黒いのが来なかったからよかったけど、もし来ていたら…想像もしたくないが、おそらくあの男は今頃息をしちゃいないだろう。あんなにドーパントに対して怨念を抱いている人間なんてそうそういないだろうし、聞き込みとかをやればそのうち中身を洗い出せるんだろうけど面倒くさいからやりたくない。そういうのは警察やら探偵やらその道のプロに任せるに限る。
とはいえ次いつ会うかわからないし被害者が増える可能性も大なわけで。たった一回あいつの戦闘を見ただけで対策なんて立てられるわけもなく、正直お手上げ状態だ。何をしたらいいのかさっぱりわからん。
『ドーパントになった人間を殺して何が悪い。あいつらは犯罪者だ。何人も殺してる大量殺人鬼の場合だってある。そんなやつを生かしていてもどうにもならないだろう?それに刑務所に入れてはい終わり、で被害者の遺族の気が済むとでも思ってるのか?』
「罪を憎んで人を憎まず。それがライダーのあるべき姿だと思いたいんだけどよ…」
脳裏にあいつの言った言葉が浮かぶ。確かにあいつの言った通り、ドーパントの中身ってのはどうしようもないろくでなしばかりで、平気で人を殺すような人格が破綻してるやつしかいない。実際にさっき倒したやつも頭おかしいんじゃねえのってことばっか言ってたし間違ったことじゃない。それに関しては俺も大いに同意するし、世間一般の方々も概ね賛成はしてくれるとは思う。
だが━。
「それとこれとは話が違う。それで殺しちゃ俺たちがライダーである理由がなくなっちまう」
俺はライダーってのは誰かを守るためだけに存在してるわけじゃないと思ってる。この街にあるくだらない負の連鎖を断ち切るための…言わば洗剤みたいな役割もあるはずだ。そうしないと誰かに殺された恨みでドーパントになって人を殺し、被害者の家族がドーパントになり人を殺しその被害者が、と永遠に終わらない。それを終わらせるのが俺の、ライダーとしての勤めだと思う。もちろん人を守るのは当たり前だ。
「次会った時にあの仮面引っぺがして話しねぇとダメだな。あんまま放置しておくわけにはいかねえし」
はぁ、とため息を吐いて天井を見上げる。なんでこんな難しいことを考えないといけないんだ、と思わずそう言葉を漏らした。
なんで高校生のはずの俺がこんな心配をしなくちゃならないんだ。こういうのは警察の仕事だろ。そもそもの話、警察が未だにガイアメモリの製造元を特定できていないからこんなことになっているのであって、本来なら俺はライダーになって戦う必要すらなかったはずだ。だからと言ってライダーを止めるって選択肢はありえないけど、それにしたって色々とおかしいだろ。
「あおちゃーん!!ご飯できたから降りてきなさーい!!」
一階から母親の声がして現実に引き戻された。俺は急いでドライバー一式をカバンに放り投げて階段を降りるのだった。
「あおちゃん言うのやめろぉ!!」
「えぇ?かわいいし良くない?」
「なんっにも良くねぇ!!俺は男なんだぞ!!」
「ねぇねぇ!!あっちに面白そうなのある!!お母さん!!あれで遊びたい!!」
うねうねした何かを指差しながら僕の手を優しく握る母さんにそう言う。母さんはしゃがみながら僕の目をしっかり見つめて、
「今は誰もいないけど、もし他の子が来たら迷惑かけちゃダメよ?いい?」
「うん!!」
「じゃあ良し!元気に遊んでらっしゃい!」
僕の手を離してポンポンと背中を叩いて、ゆっくりと立ち上がる母さん。
僕はわーい!!と喜びながらその遊具らしき何かに向かって走り出す。
「相変わらず元気な子だ」
「誰に似たのかしらね?」
「少なくとも僕らからというわけじゃないと思うぞ」
父さんがゆっくりと母さんに寄り添うように歩いてそんなことを話す。どっちも運動系じゃないからこんな話が出るのも頷ける。
僕は遊具にたどり着いて、そこに座り込むと父と母を呼んだ。
「お父さん!お母さん!一緒に遊ぼーよ!!」
「父さんはいいかな…最近腰にキてるから」
「いいじゃんいいじゃん!!一緒に遊んだ方が楽しいって!!」
そう駄々をこねる。優しいから駄々をこねるとすぐ折れてくれるんだよね。
仕方ないなぁ、そんなことを言いながら遊具に近づいてくる父さんと母さん。途中で母がつまづいてこけた。
「大丈夫!?」
「いてて…足挫いちゃったかも」
足をさすりながら苦笑いする母さん。それを見て父さんは急いで母さんのそばに駆け寄り、手を差し伸べた。
「まったく…本当にドジだね。ほら、手を貸すから」
「うるさい」
そう言いつつ母さんは父さんの手を取った。それをすごい仲良いなぁ、なんて思いながら見ていた僕。
次の瞬間。目の前で二人が跡形もなく弾け飛んだ。
「…え?」
ほっぺたに生温かい何かが付いた感覚。僕はそれを手で拭って、目の前にかざす。
「ひっ!」
それは真っ赤な血だった。ほっぺだけじゃない。あたりに赤い血が飛び散っていて、それを見て僕は何が起きたのか理解した。してしまった。
父さんと母さんが死んだ。
それを理解した途端、僕は恐怖に耐えきれなくなって、
「う、あぁ…あああああ!!!!!」
「━ッ!!」
飛び起きて周りを確認した。いつもの部屋だ。血でグロテスクな光景が広がってるわけでも、僕の服が真っ赤になっているなんてこともない。着ているのはしわくちゃになった汗臭い制服だ。目の前にあるのは公園の芝生じゃなくてよだれを垂らした跡のある勉強机。
僕はあれが夢であることを確認すると深いため息を吐く。
「…またあの夢か」
制服のボタンを外しながらそうボヤく。さっきの夢は本当に起きたことで、あれからだいぶ月日は流れたが、未だにあの時のことを鮮明に覚えている。それが原因でライダーになったと言っても過言じゃない出来事だからだ。今の僕という人間をある意味では縛りつける呪いのようなものなのかもしれない。あの出来事で僕のまともだった性格は完全に消え失せてドーパントに異常な殺意を抱くようになって、ついに殺すことになってるんだから。
「あの時から街は変わっちゃいない、か」
ドーパントが出たという話はここ最近おかしいくらいによく聞くし、実際何度も対峙することになっている。僕が、半分こが、あのディノスとかいうやつが、どれだけドーパントを駆除しようとホコリのように湧いてくる。一体どこからどうやって入手したのか問い質したいし、どうやってそんなに製造しているのかあの銃を突きつけて吐かせたいレベルだ。そういうのは警察の専門分野だから僕は何もしないけれど。
「…父さん、母さん。僕は一体どうすればいいの?」
唯一残っていたらしい僕ら家族の写真立てに向かってそう問いかける。当然言葉は何も返ってこない。悪い夢を見たせいか不思議と腹が減ってくる。
「そういえば飯食ってなかったな…」
時計を見て思い出す。そういえばよくわからないことを大声で叫んでたあの男から女の子を引き剥がして警察署に逃げ込んだあと、家まで送ってもらってから勉強しようとして気づいたら寝てたんだ。そりゃ腹減るわ、と納得しながら椅子から立ち上がり冷蔵庫に向かったのだった。
「んー…この豚肉そろそろ使わんとやばいな。ちょうどパラパラねぎもあることだし豚丼にするかな。卵はあと一個か…落として食うのありか。さーて肉焼きますかぁ!」
日常回がこんなのでいいのかとは思いましたが彼らにほんわかした雰囲気を味合わせたくないので仕方なしです。じゃあ書くなって言われそうですけどね。
次回はちゃんと戦う予定にはなってます。