仮面ライダーW Hの狂気/もう一人のライダー   作:八咫ノ烏

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一ヶ月以上も更新サボっててすいませんでした。許して…

では第12話です。どうぞ。


第12話 神速のL/騒動は突然にして

「なんで俺を試合に出さない!?あいつらより俺の方が早いだろ!!」

 

 部屋に少年の怒声が響き、廊下にいた生徒がそれに驚いて体をピクンと跳ねた。血が頭に上っている少年に教師は

 

「素行の問題だ。問題を起こしがちなお前を試合に出して他校の生徒に迷惑をかけるわけにはいかん」

 

 と言って少年の要求をキッパリと断った。教師の言っていることはごもっともである。しかし、少年にはそれが気に入らなかったようで、近くにあった机を蹴り飛ばし、

 

「知ったことかそんなもん!!勝てればどうだっていいだろうが!!」

 

 と教師の胸ぐらを掴んでそう叫んだ。しかし教師はそれに臆することもなく、冷静にその手を払うと

 

「もし試合に出たいのならその考え方を改めることだな」

 

 と言って少年に背を向けて退室しようとした。少年がガイアメモリを握っていることに気付かずに。

 

「そう言うんだったら無理矢理言うこと聞いてもらわねぇと、なあ?」

《Lightning!!》

 

 体にガイアメモリを突き刺し、ドーパントに変貌した少年。次の瞬間、その部屋に閃光が走った。

 

 

 

 期末テスト。大半の学生にとって長期休み前の最大の障壁でもあり、赤点者の処理に先生の胃が一番痛む時でもある。

 普段ドーパント騒ぎに自分から関わりに行っているせいで勉強の時間があまり取れていないのもあって、目も当てられないような惨状にはなったけど、赤点じゃないだけまだよかった。

 

「課題くらい自分でやんないとダメでしょ…」

 

 呆れつつ蒼の赤点課題のページを捲る。その量はとんでもなく多く、見ているだけで憂鬱な気分になってきて思わずうへぇと声を出す。

 今僕は蒼の家にお邪魔している。理由は非常に単純で、蒼の赤点課題の手伝いだ。今回の日本史のテストはかなり難易度が上がっていて、平均点が五十点を下回るといういくらなんでも酷すぎる結果になってしまっている。まあそんな結果になっているのだから当然のように赤点者もゴロゴロいるわけで、その中に蒼が含まれているというわけだ。

 赤点回避できてよかった…と胸を撫で下ろしていると、蒼が頭をぼりぼりとかきながらボヤいた。

 

「友人なんだし教えるくらいしてくれてもいいだろ。…でなんだっけこれ。白河法皇が作った直属軍…?なんとか武士だよな」

「北面武士。なんでそういう名前なのかは忘れたけど」

 

 そう返して炭酸を飲む。シュワシュワと口の中で弾けるそれを味わいながら教科書を取り上げてそれを読む。ちょくちょく復習していたおかげかある程度の内容は覚えてるけど、流石に抜け落ちているものもあるらしい。こんなのあったっけと言いたくなるような単語がいくつかあった。

 赤点でない僕ですらそんな状態だ。当然、赤点になってしまった蒼なんてほとんど覚えているはずもなく。

 

「わからん…なんだこれは……。一体なんの話をしているんだ…俺は何を聞かれている…」

 

 うわごとのように呟きながら頭を抱える蒼。この調子じゃあ期限までには終わらないだろう。最悪留年という可能性すらある。はぁ、とため息をついてもう終えたらしいプリントとその分の解答用紙を手にする。

 

「手伝ってあげるからぼやいてないで早く進めて」

 

 僕がそう言うと目を輝かせてあたぼうよ、なんて言ってペンを動かす速度を上げる蒼。僕はそれを横目に答え合わせをしていく。このペースだと今日中にはなんとか終わりそうだな、とそんなことを考えながら容赦なくペンをはねた。

 

 

 

「なんで出かける先が学校なんだよ」

「課題を進めるため。先生に聞けるでしょ?」

 

 睨みながら聞いてきた蒼にこう返して本を開いた。

 蒼の言う通り、今は学校の図書室に寄っている。その理由は十数分ほど前に遡る。

 

 僕はこのペースなら今日中に課題を終わらせられるだろうと思っていた。今日で終わらないということは自動的に僕の自由時間がその分減るということだから、僕としても早く終わらせたかった。しかし、どうも現実は僕を裏切るのが好きらしい。

 

「んあああああ!!疲れたああああもおおおお!!」

「うるさい!!」

 

 叫んでグデーっとした蒼に向かって叫び返す。課題をやり始めてからかれこれ二時間ぐらい経った。進捗としては絶望的というわけでもなく、順調にいけば今日中には終わるだろうといったところなんだけど。

 僕はあのなぁ、と思わず口から漏らし

 

「そんなことやってると今日じゃ終わらないよ!」

 

 と課題をやれと促した。しかし蒼はえぇ…と心底嫌そうな声を出す。

 

「期限は来週だから今日はこれでいいだろ…。いや冗談抜きで結構疲れたし少し休みたい」

 

 そう言って体を伸ばす。課題が渡されてから数日経っているのに全く進んでいなかった原因はこれか…。盛大なため息を吐いて顔を手で覆って天井を仰ぐ。これでどうやって課題と戦えばいいんだ…。僕には全く関係ないことのはずなのになんで胃が痛むのかは気にしちゃ負けだろうか。

 呆れて固まる僕に蒼は外をピッと指差して言った。

 

「気分転換に外行かね?」

 

 僕はそれに賛同した。確かに少しくらい気分転換した方が効率は上がりそうだなと思うわけだが。出かけたら出かけたで課題のことを忘れて何時間も遊ぶという未来がくっきりと見える。そうなれば僕の時間も減ってしまう。

 どうにかして課題を進められてなおかつ気分転換になるような場所…。そうだ。

 

「わかった。ただし僕についてきてほしい。課題も持っていくよ」

 

 僕はそう言って外に出た。ただし、学校に向かって。

 

 とまあそんなこんなで学校に来たわけだ。休日というだけあってやはり人は少ない。騒げば先生がすっ飛んでくるし、集中して課題をこなすにはもってこいの環境だろう。わからないところは先生に聞けるから僕まで頭を悩ませることはないし、その分僕は暇になるから気になっていたミステリー小説の続きが読める。

 蒼は課題が出来て僕は続きを読める。いわゆるウィンウィンの関係というやつだ。とはいえ、それを言ってしまえば僕がここにいる必要すら無くなるわけだが。

 

「う〜ん…スゥ…」

「…寝てちゃダメでしょ」

 

 ため息を吐いてこくりと船を漕いでいる蒼の頭を叩く。やはり僕は見張りとしてここにいる必要があるようだ。呆れつつ本のページをペラりと捲る。誰もほとんど喋らない、ペンと紙の動く音しかしない静かな空間。小説の世界に没頭できるからこの部屋は好きだ。だからと言って毎日通おうとは思わないけども。

 

「…なぁ、これってなんだ?」

 

 課題を僕の方に向けてヒソヒソと聞いてくる。それをチラリと見て頭に答えが浮かばなかった僕は、すぐさま職員室のある方向を指さして顎をしゃくった。

 

「先生に聞いた方が早いと思うよ」

「ダメだったか…」

 

 肩を落とし、課題を持って立ち上がった蒼。僕はそれに

 

「そんなの僕が覚えてるわけないだろ」

 

 と返して本を静かに閉じて同じく立ち上がった。先生に聞いてくるフリをして帰らないよう見張るためだ。蒼ならやりかねない。

 

「お前なんか失礼なこと考えてなかったか?…んなことはともかくさっさと聞きに行くとすっか。はーめんどくせ」

 

 心底面倒くさそうにそうボヤいて図書室の扉を押す。僕はそれに

 

「留年してもいいならしらばっくれたらいいんじゃない?僕は責任取らないけど」

 

 と返して後を追いかける。留年なんてしようもんなら下級生からバカにされるだろうし、何より彼の今後の人生に響いてくるからちゃんとこなして欲しいところである。

 

「赤点とかいうクソみたいな概念生み出したやつ誰だよ…。俺はそいつのことを絶対許さねぇ」

「勉強してればそんなこと気にする必要なかったのにね。つまりは蒼が悪い」

 

 恨めしくそう言って課題を握りしめる蒼に僕は辛辣に返した。詰まるところこれは蒼の勉強不足が招いた結果だ。そんなこと考えてる暇があったら勉強した方がいいんじゃないの?心の中でそう考えて、でも口にはしなかった。

 

 蒼はお前にだけは言われたくなかったなその言葉、と言って立ち止まり陸上グラウンドの方を見る。運動部がクソ寒い中汗水垂らして練習している様は同性ながら惚れそうになる。よくもまぁこんなクソ寒い中あんなに運動してぶっ倒れないものだ。僕だったらぶっ倒れているかもしれない。…いや、ライダーとして戦い初めてからだいぶ体力がついたような気がするし、そこまで酷くはないかもしれないな…。

 

「はー青春してんねー。にしてもサッカー、か。久しぶりにボールでも蹴ってみるかね」

 

 サッカー部員だった頃を懐かしむように呟く蒼。なぜか突然サッカーをやめてしまったが、やっぱりまだ続けていたかったと心の中で思っていたりするんだろうか。

 

「相手ならしてあげるよ」

 

 ニヤリと笑ってそう言った。筋肉はあまりないけど、少しボールを蹴り合うくらいならなんてことはない。流石にガチな試合みたいなものは僕なんかじゃ相手にならないだろうけどもね。ド素人が経験者に叶うわけもないし。

 僕の笑みを見てお?と楽しそうに笑う蒼。

 

「課題終わらしたらやってみるか?俺の記憶が確かならパンクしてないはずだし」

「そうと決まれば早いところ終わらせないとね」

 

 うへぇ、と呻いて露骨に目を逸らす蒼。僕はそれにおいと言って横腹を少し小突いて歩き出して、蒼もそれに付いてくる。

 

 なんてことのないただの高校生のくだらない日常である。しかし、この街ではそれが唐突に、何の前触れも無しに破壊されてしまうのだということを、決して忘れてはいけない。

 

 突然、隣の部屋から眩い光が溢れ出て、僕たちの視界を真っ白に染め上げる。

 

「なん…ッだこれ!!何も見えねぇ!!」

「事故か何かか!?一体何が…」

 

 二人してパニックになり、あまりの眩しさから目を覆った。眩しすぎたせいか目がすごく痛い。

 

「…バルスって唱えられた時の某大佐ってこんな気分だったんだな」

 

 そんなことを言って気を落ち着かせようとする蒼。僕はそれにそうだろうね多分と返して壁にもたれて、次に来るであろう何かに備える。

 こんなことが起きる原因なんて、この街じゃ一つに決まってる。

 

「何をするんだ!?やめろ!!」

 

 怒鳴り声が聞こえてきて、その後にバァン!!と何かをぶち破ったかのような音が廊下に響いた。なんとか視界が回復した右目をうっすらと開け、辺りを見渡して、やはりというべきだろうか。

 

「ドーパント…やっぱりか!!」

 

 そう言って近くにあった消火器を掴み、その栓を引き抜いて構える。ドーパントが先生を掴み、壁に叩きつけていたのだ。優しくて常識的でいい先生だというのにどうしてという疑問は湧くが、そんなことを聞いている余裕はない。

 

「蒼!!先生をなんとか助けられる!?」

「あ?あーそういうことか、任せろォ!!」

 

 蒼が力強くそう叫んでドーパントに向かって少し助走をつけて飛び上がり、その横顔に綺麗な飛び蹴りを喰らわせた。ビターン!という音を立てて地面に落下した蒼は、しかし痛がる素振りを見せずに先生の体を掴むと

 

「逃げますよ先生!!」

 

 と言って階段に向かって走っていく。起き上がったドーパントはそれを見て

 

「逃がさねえよ!!」

 

 と漫画に出てくるやられキャラのようなセリフを吐いて二人を追いかけようとした。だが僕は足を少し出してドーパントの足を引っ掛けてこかせると、その顔に向かって消化器のトリガーを引いてその中身を噴射する。視界を奪われたことにイラついたのか拳を突き出してきたがすんでのところでそれをかわし、空になった消化器を容赦無く頭に叩きつけて距離を取った。

 蒼も先生も、この場に僕以外の人間はいない。つまり、変身してもドーパント以外の人間にバレることはないわけだ。

 

「このクソガキが!!俺の邪魔をしてんじゃねえ!!ぶっ殺されてえのか!!」

 

 ドーパントが僕に指を向けてそう怒鳴った。殺したいのなら問答無用で殺せばいいのに。そんなことを考えて懐からドライバーとメモリを取り出す。

 

「その言葉、三流っぽくなるから言わない方がいいと思うよ。まあこれから気をつけようったってもう遅いだろうけどな」

《Hazard!!》

 

 メモリのスイッチを押してそれをスロットに落とし込み、流れる待機音声で思考回路を切り替え、何かを握り潰すように手を握りしめる。

 

「変身ッ!!」

 

 叫んでスロットを倒す。ハザード!という音声が再び響き、俺の体を黒い装甲が覆っていく。

 

「お前が噂の黒い仮面ライダーってやつか?楽しいか?正義のヒーローごっこわよォ」

「悪りぃが俺は正義だと微塵も思ってねえ。世間の奴らが勝手にそう騒ぎ立ててるだけ…だッ!!」

 

 言い切る前に地面を蹴ってドーパントに接近すると、顔にパンチを叩き込む。戦いの火蓋がここに切られた。

 

 

 

「なんで学校にドーパントが出てくんだよ!!」

 

 そう叫びながら階段を駆け上る。これで学校にドーパントが出たのは二回目だ。ここの警備とかは一体どうなってるんだ。怒りの念を覚えて懐からメモリとドライバーを取り出そうとした。

 その目の前を。

 

「グゥッ…!!」

 

 黒い何かが火花と散らしながら吹き飛ばされていった。俺は出てくるであろうドーパントに見つからないように階段に身を伏せて隠す。

 

「反応が遅えんだよこのガキがァ!!」

 

 叫び声が廊下に響いて、その次の瞬間に閃光が走り黄色い何かが目の前を駆け抜けていく。どうやら黒い何か…まあおおよそあのライダーだと思うが、そいつに夢中で俺のことには気がつかなかったようだ。バクバクと鼓動を早める心臓を落ち着かせるためにゆっくりと息を吐いて、腰にドライバーを当てた。

 

「ドーパントも黒いライダーも…どっちも止めてみせる」

 

 そう呟いてメモリのスイッチをそっと押した。

 

《Dinosaur!!》

「力を貸してくれ、相棒。…変身!」

 

 響いた音声にそう返してスロットにメモリを差し込んで、それを静かに倒した。装甲が俺の体を覆い切るのを確認して、廊下に体を出して、

 

「学校で何面白そうなことやってんだ!!俺も混ぜやがれ!!」

 

 と叫びドーパントに飛びかかったのだった。




今回はここで終わりです。
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