仮面ライダーW Hの狂気/もう一人のライダー   作:八咫ノ烏

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本当にありがとうございます。
あと更新ペース上げるって言ってて半年近く更新してなくてすみませんでした。反省してます。

ついでとばかりに投稿し始めてから二年が経っているという事実に驚いています。時の流れって早いですね。

前置きはこれくらいにしておいて14話です。本編どうぞ。


第14話 暴走するT/知りたくなかった事実

 夏の暑い空気が身を包む。薄手のシャツ一枚しか着ていないはずなのになぜこんなにも暑いのだろうか、と内心で呟きながら溜め息を吐いた。

 そんなに暑いのが嫌なのであれば外へ出なければ良いじゃないか、と誰かに言われそうな気はするがこれは仕方のないことなのだ。なんせあともう少しで冷蔵庫の中が空っぽになってしまうのだ。

 暑い環境に身を放り出して食料を手に入れるか、涼しい環境でゆっくりと餓死していくか。そのどちらかを選べと言われたら、きっと誰だって前者を選ぶことだろう。

 

 とはいってもだ。

 

「この暑さは身に堪えるなぁ……」

 

 思わず吐きながら呟いて、あまりの暑さに思わず項垂れる。いくら仕方ないと割り切ったところで、暑いものは暑いのだ。

 本当にうんざりしてくる。単に暑いというだけならまだ良いのだが、この時期になるとどうしても昔のことを思い出してしまう。何も楽しい思い出というわけではないのが僕を余計苛立たせてくる。

 

 あれも──両親が殺されたのもこの時期だ。公園に着く前に暑いね、なんていう会話をしていた記憶がうっすらと残っている。その後に起きたことが衝撃的すぎるというのもあり、その前後の記憶が霞みつつあるのは少々悲しく思うところがある。だが、時の流れには抗えないのだからどうしようもない。

 

 それはひとまず置いておいて。やはりあの記憶は良い物ではない。当たり前のことだが、目の前で自分の肉親を殺された時の記憶など思い出したくもないのだ。忘れたいかと聞かれるとそういうわけでもないのだが、しかしまあ強引に想起させられることだけはご遠慮願いたい。

 暑い風。滲む汗。煩い蝉声。思い出すには十分過ぎる。

 

「やっぱり夏は嫌いだ。早く秋になれば良いのにな」

 

 誰かに聞かせるように夏への怨嗟を吐き出す。吐き出したところで何かが変わるわけでもないのだが、少しくらいなら気分は紛れるだろう。

 ふう、と息をついてスーパーへ向かう。さっさと買い物を終わらせて家に戻るとしよう。そんなことを考えていた僕の耳が、突如として爆発音が響いたのを捉えていた。

 

 

 

 

 

 黒いのにボコボコにされてから数日経った。その間、何度かあいつのことについて考えることがあった。

 なぜあそこまでドーパントを敵視しているのか。誰からメモリとドライバーを受け取ったのか。そして中身は誰なのか。

 

 恐らく誰かに命令されてやっているとか脅されて仕方なく、というような理由ではないだろう。数日前の彼の様子を見ていると彼は本当に心の底からドーパントを敵視していて、だからこそドーパントを殺そうとしているのだとしか思えない。そこまで敵視するに至るまでの過程はわからないが、とにかく確実にあれは本心だ。

 

 なら次に、どうやって止めれば良いのだろうか。何とか中身を特定することができて、話を聞こうとするところまで漕ぎ着けたとして。多分まともに話は通じないだろうし、素直に理由も聞かせてくれるとは思えない。

 それ以前にそう簡単に話を聞くところまで漕ぎ着けるとは思えない。確実に一悶着はあるだろう。下手すれば激昂した彼に殺される可能性だってあるわけで、そんな状態で話を聞けるだろうか。

 

 とまあ、こんな具合にあれこれ考えてはみたのだが、結局のところ全て俺の憶測でしかないわけで。最終的に考えても仕方ないというところに落ち着いてしまう。

 どれだけ考えても、何がどう繋がっているのかもわからないのだからどうしようもない。時間の無駄なのだ。

 

「ふぅ……」

 

 軽く一息をついて空を見上げる。リフレッシュをするために軽くランニングをし始めてから、多分一時間くらいは経っているんじゃないだろうか。夏の太陽が肌を焼いてくるような感覚があるが、運動した後だからか余計に暑いような気もする。汗を流したせいか喉も乾いてきた。

 

「どっかに自販機ねえかな」

 

 こんなことなら水筒か何かでも持ってくれば良かった、と内心で後悔しつつ辺りを見渡した。が、残念なことに視界に入る場所に自販機の姿はない。

 思わず肩を落として溜め息を吐きそうになったが、そういえばこの辺りにスーパーがあったことを思い出す。走って十分かかるか否かというような位置にあるため、比較的近い。

 

「……あと少しだけ走るか!」

 

 顎から垂れそうになっていた汗を手で拭い、地面を蹴って駆け出した。

 

 

 

 

 

 二人が向かおうとしていたスーパー付近の住宅街。

 

「ははは!! いいぞ逃げ惑え!! 私にもっと絶望の表情を見せてみろ!!」

 

 辺りに響く轟音。上がる悲鳴。この場の音だけ聞いていれば紛争地帯のように思えてしまう。

 閑静な住宅街がそんな事態に陥っているのは、全てはドーパントが暴れ回っているせいである。

 

「……ドーパントか。通りでうるさいわけだ」

 

 先に到着したのは黒神恵理也であった。元よりこの道は彼の家からスーパーへの通り道である。ほぼ反対の方向から向かっていた蒼より先に着くのは当然だった。

 彼はすぐに物陰に身を隠し、ドーパントの姿を観察する。見た目は戦車を無理やり人の形に変えたかのようなもの。足にはキャタピラが付いており、それを回すことで移動するらしい。

 

 戦車の記憶を持つメモリを使っているのだろう。そう考えるまで時間は大してかからなかった。

 

「ただ買い物に来ただけだってのに……まあ良いけど」

 

 懐からロストドライバーを取り出し、腰にそれを当てた。これ以上見過ごしていれば被害が拡大する一方であることは明らかであり、であればそれを阻止しなければならないという考えるのは自然なことだろう。

 恵理也の腰に音を立てて巻き付くドライバー。その些細な音が聞こえたのだろうか。タンクドーパントは体ごと恵理也のいる方向へ顏を向けると、自身の手の甲から伸びている砲塔を向けた。

 そして。

 

「誰だか知らんが死ねェい!!」

 

 一瞬も躊躇うことなく砲撃を加えた。恵理也が身を隠していた場所は粉塵に包まれ、瓦礫と化した壁だったものが辺りに飛び散った。

 タンクドーパントはその煙や瓦礫を見て高らかに笑う。自身がもたらした破壊の結果に心が満たされているのだ。

 

 その煙を手で払いながら、彼は身を露わにする。

 

「危うく死ぬところだった……。とんでもねえ野郎だな、お前」

 

 彼は──黒神恵理也は頬から垂れる血を乱暴に拭いながら不敵に笑う。咄嗟に身を投げ出したために、飛んできた瓦礫に頬や服を切られはしたものの、重症を負うことだけは避けることが出来たのだ。

 

「……あの物陰に隠れていた者か。生きていたとは」

「バカ言うな。こんなので死んでられるかっての」

 

 恵理也は軽口を叩き、服についた裾を払う。ドーパントは次は殺す、などと粋がり始め、ガチャガチャと砲塔とぶつけていつでも殺せるぞとアピールをしてみせる。

 そんなドーパントに対して恵理也は嘲るように鼻で笑い、ハザードメモリを見せつけるように掲げてみせた。

 

「死ぬのはお前だっての。勘違いしてんじゃねえぞバーカ」

《Hazard!!》

 

 辺りに響くガイアメモリの音声。ドーパントは目を見開いてガイアメモリと腰にあるドライバーを注視し、目の前の少年が何者であるかようやく理解するに至る。

 

「まさか貴様、仮面ライダー……なのか?」

 

 ドーパントからの問い。それに恵理也は自嘲気味に笑いつつ、

 

「その通りだ。……まあドーパントと変わらないとか言ってきたやつもいるけどな」

 

 と返してメモリをスロットに装填。それを倒して変身した。

 

《Hazard!!》

 

 黒い霧が彼を包む。それが晴れ、現れるのは黒い装甲に身を包んだ仮面ライダー。

 彼は指を数回鳴らし、仮面の奥で歪んだ笑みを浮かべて叫んだ。

 

「ただで済むと思うなよ!!」

 

 それと同時に地面を蹴ってドーパントとの距離を詰め、握り締めた拳をその胸板に叩き付ける。

 ガァン!!と金属音を響かせ、ドーパントは殴られた衝撃を利用してそのまま後退。シェリフと距離を取ると、肩から伸びる機銃を掃射した。

 

 シェリフに襲い掛かる銃弾の嵐。彼は腕を交差させ防御の姿勢を取り、徐々に再びドーパントへ近づいていく。

 

「さっきからパチパチパチパチと……鬱陶しいんだよッ!!」

 

 我慢の限界を超えたのか、声を荒げて走り出した。背中から伸びる棒を引き抜いて鎌と化したそれを両手で握り締め、それを大きく振り被る。

 対するドーパントとて、黙って彼が迫りくるのを見ているだけではない。

 

「再装填完了ォ!! 食らえェい!!」

 

 手の甲の砲塔をシェリフの方へ向け、標準を合わせるやすぐさま砲撃を加える。ドーパントにとって、この砲撃は会心の一撃であった。

 シェリフとの距離は至近距離であり、さらに自身に向けて加速しているため外す方が難しいだろう。

 

 彼のそんな渾身の砲撃を。

 

「……ッラァ!!」

 

 シェリフは咄嗟に空へ飛びあがることで避けてみせた。

 

「なにィ!?」

 

 ドーパントは驚愕のあまり声を漏らす。野生の勘だろうか。ドーパントが砲撃を加えるよりもわずかに早く、シェリフは地面を蹴って空に飛びあがっていたのだ。

 そのままドーパントを飛び越えドーパントの背後に着地したシェリフは、振り向きざまに鎌を横に一閃。火花を散らしてよろめくドーパントにそのまま追撃を加え、両肩に乗っていた機銃を破壊する。

 

 明らかに不利になりつつあるドーパントは撤退しようと足のキャタピラを動かした。シェリフの胸に回転数の上がったキャタピラを押し当てて彼に攻撃を加え、そのまま猛スピードで逃げようと背中を向ける。

 その背中に。

 

「逃がすと思ったか?」

 

 シェリフはしがみついた。驚いてスピードを上げようとしたドーパントを羽交い絞めにすると足を払い、バランスを崩したのを良い事に力任せに押し倒した。

 そこから流れるように馬乗りになると、拳を握り締めてドーパントの顔を殴り始める。

 

「やっやめっ……やめてくれ!!」

 

 さすがに心が折れたのか、ドーパントはシェリフに許しを請う。攻撃しようとしてもその尽くをシェリフに妨害されるため、もう反撃の手立てはないのだと悟ったのだろう。

 しかし素直にその懇願を聞き入れるほど彼は甘くない。

 

「誰がやめるかよ」

 

 そう吐き捨てると鳩尾に一発拳を振り下ろし、悶絶するドーパントの首を引っ掴んでそれを持ち上げる。

 

「お前みたいなやつがいるから……。生きてちゃいけねえようなやつがいっぱい蔓延ってるから……ッ」

 

 だからあの日、両親は死んだ。無意識のうちに彼はドーパントの首を絞める手の力を強めていた。

 

《Hazard!! Maximum Drive!!》

 

 ドーパントが死への恐怖に顏を青ざめさせていることなど知る由もないシェリフは、もう片方の手でメモリをベルトから引き抜いて腰にあるスロットに差し込み、ボタンを押し込む。

 

「くたばれェ!!」

 

 彼の右手は黒いオーラを纏い始め、それを彼は全力でドーパントの右頬に叩き込んだ。悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、爆発するドーパント。パキンと何かが砕け散るような高い音が響き、爆炎の中から丸々に太った小汚い男が転がり出た。

 

 

 

 

 

 ドーパントとの戦闘が終わった。久々に本当に死ぬかと思い冷や汗をかいたが、その割にはそこまで苦戦することなく倒すことができた。もちろん仮面ライダーでなければ成す術もなく死んでいただろうが、そんなことはまあ良しとしよう。

 

 後は殺すだけ。それでこの騒動の全てが終わる。

 

 いつものようにドーパントの元へ一歩、足を踏み出した。そのとき。

 

「なんだよ、これ……」

 

 誰かが現場にやってきたらしい。この反応を見るに絶句しているのだろう。ゆっくりと振り向き、その闖入者の顔を見て、俺も驚愕してしまった。

 

「……ッ!?」

 

 そこにいたのは見知った顏。いつも学校でバカみたいな話をして、くだらないことばかりやって、そんな仲の友人。

 東風谷蒼。

 

「お前ッ……お前がこんなことをやったのか!?」

 

 僕の姿を認めるや、血相を変えてそう叫んできた。確かにこの状況はそう捉えられてもおかしくない。なにせ元凶となったドーパントはさっき倒したし、辺りに火の手が若干上がっている中に一人で立っていたらそう疑いたくもなるだろう。

 

 さて、俺は今濡れ衣を着せられそうになっているわけだがどうするべきだろうか。正直にドーパントが、などと言ってもそのドーパントはもう倒した上に、そいつが使っていたメモリの破片はどこに行ったのかわからない。

 証拠を見せられないために信じてはくれないだろう。

 

「俺にこんなことをするメリットがねえだろうが」

 

 だがこの状況で黙っているのは肯定する行為に等しい。信じてくれるか否かはひとまず置いておいて、とりあえず否定はするべきであろう。

 これで信じてくれたらありがたいのだが……こいつの場合はそう上手くはいかないはずだ。そんな俺の予想は綺麗に的中することになる。

 

「ドーパントを殺すやつの言うことなんか誰が信じられるかよ!!」

 

 そう来たか。仮面の奥で思わず苦笑いする。ある意味想像通りではあったが、少しくらいは信じてくれても良いのではないだろうか。仮にもこの状態での俺と蒼は初対面のはず。あのときのニュースで俺のイメージが固まっているのかは知らないが、なぜこうも強く罵倒されるのだろう。

 

「俺が殺すのはドーパントだけだ。単なる一般人を殺して俺に何の得がある」

 

 別に俺は殺人鬼じゃない。ガイアメモリに手を出すクズどもを殺しているだけであって、一般人を殺すほど落ちぶれているわけじゃない。少なくとも前者は両親の復讐のためという理由があるが、後者に関しては殺す必要性がない。

 

 そう言ったはずなのだが、彼には通じなかったらしい。強く俺を睨みつけるとこう言い放った。

 

「得なんかなくてももう人を殺してるじゃないか。俺の目の前で、おまけに二回もだぞ」

「……は?」

 

 記憶にない。俺がいつ蒼の前で殺したのだろうか。

 ふつふつと湧き上がる疑問。本当に心当たりが殆どない。あるとすれば、この間の電撃ドーパントくらいなものだが、それにしても二回もという部分が引っ掛かる。誰かと間違えているんじゃないだろうか。

 

「何の話だ?」

「とぼけんな!! 俺の目の前で二人も殺しただろうが!!」

 

 蒼はもうそこで我慢の限界を越えたようだった。頭を何回か掻き毟り、苛立ち紛れに叫びながら何かを懐から取り出した。

 

 その名もロストドライバー。仮面ライダーに変身するための装置である。

 

「お前……なんでそんなもんを持ってる……?」

 

 驚愕する俺を他所に、彼はそれを腰に当ててガイアメモリのスイッチを押した。

 

《Dinosaur!!》

「変身ッ!!」

 

 そのメモリをスロットに指し、倒す。再びガイアメモリの音声が響き、彼の体を茶色の何かが覆っていく。

 その何かが晴れたとき、そこにいたのはある意味見知った顔の仮面ライダーであった。

 

「今回こそはお前のその腐った性根を叩き直してやる……!!」

 

 何度も何度も突っかかってきて邪魔をしてきた鬱陶しいやつ。

 自称仮面ライダーディノス。

 

「マ……マジか……」

 

 想像もしなかった事実に動揺し、俺は思わず手に持っていた鎌を取り落としてしまうのであった。

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