仮面ライダーW Hの狂気/もう一人のライダー   作:八咫ノ烏

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第6話です。どうぞ。


第6話 復讐者H/そのライダー、乱暴につき

 ミラードーパントの騒動があってから1週間が経過した。警察や探偵たちは相変わらず攫われた奴らを探しているけど、やっぱり見つかる気配はない。

 当たり前っちゃ当たり前だが、これだけ精力的に捜索を続けても見つからないということはあの世界から出ることは叶わなかったんだろう。

 

 事の顛末を知るのは僕ただ一人だけだ。そしてその僕も警察にそれを話すつもりなど毛頭ないから、おそらくは時効が来て未解決の誘拐事件として後世に語り継がれることになりそうだ。

 実際、既にこの街ではこの事件に関するいろんな噂、憶測が飛び交っているけど、まさか異世界じみた空間にいるとは誰も思わないだろう。

 そもそもそこまで長い間覚えられているのかが疑問な気もする。

 

 まぁ何はともあれ、僕が疑われるとかそういった類のことは一切なく、びっくりするほど平穏な1週間を享受していた。

 何度かドーパントが暴れ回っていたものの、それは半分こライダーが対処してくれたらしく僕が直接戦う前にはもう既にメモリの使用者が逮捕されているという状況だ。どうせなら殺りたかったけど、流石に警察署に乗り込んで

 

「っしゃオラー!! オメェドーパントだな? だな? なら殺していいよな? いいよな? いやお前に拒否権はねぇから。是が非でも殺す」

 

 なんてことをやる度胸なんて持ち合わせていない。

 それに今まで戦ってきて散々殺人罪を犯してきたんだ。警察署なんかに行ったが最後、逮捕されて僕の人生は終わるだろう。だいぶ前に終わってるんじゃないかとかそういうのは置いておいて。

 

 平穏な1週間を享受できたのはよかった。とても体が休まったし学生の本分である勉強にも集中できた。ドーパントの相手をするときや追っているときに

 

「さーて勉強しなきゃな」

 

 だなんて悠長なことは言ってられないから、こういう何もない平和な時間というのは結構ありがたかったりする。あいつら妙に行動が早いからね。そういう点でありがたかったりするのだが……。

 

「ねぇ、何で蒼がウチにいるのさ?」

 

 目の前でくつろぎながら教科書を眺める蒼。一体どういう状況なのかと彼に問い詰めると、

 

「それはお前が上げたからだな」

「じゃあ何でウチに来たのかな?」

「それは暇だったからだ。あとどうせなら世界史教えてもらおうかと思って」

 

 大きなあくびをしながら呑気にそう言い放つ蒼に僕は若干呆れながら

 

「お前が取ってるの世界史じゃなくて日本史だろ」

 

 と言い返して本棚から日本史の教科書を引っ張り出し、叩きつけるように蒼の頭の上に乗せる。一体何を考えてここに来たのか知らないけど、今日の僕は完全に一人でダラダラ過ごすつもりだったんだ。せっかくの平和な休日を邪魔されたくないね。

 そんな僕の気持ちに気づいているのか否かは知らないが、教科書を叩きつけられた頭をさすりながらこんなことを聞いてきた。

 

「ところでここ最近夜中に怪音が響き渡ってるって話があるんだけど、知ってるか?」

 

 その言葉を聞いて、僕の思い描いていた平和な休日計画が音を立てて崩れていくのを感じた。思わずはぁ、と深いため息を吐いてから問い返す。

 

「そんなの初めて聞いたんだけど?」

「まぁそうだろうな。最近じゃ鏡誘拐事件に恐竜爆走騒動も起きてたし霞んでたんだろうよ」

 

 俺の目をじっと見ながらそう言ってから、静かに語り出したのだった。

 

 

 

 その日の夜。風都を流れる川のほとりに一人、釣りをしている男性がいた。物凄い集中力を発揮して竿の先を見つめている。

 ザク、ザクと草を踏み分けて近づいてくる足音にも気づかないくらいに。

 

「お前は━の━だな?」

「んあ? どこのどいつだか知らねぇが見ての通り俺は釣りで忙しいんだ。邪魔をしないでくれないか」

 

 この季節を逃したら次狙えるのは来年になるもんでなぁ、と言ってまた釣りに精神を向ける男性。近寄ってきた足音の主は男性のその態度に不満を持ったのか、チッと舌打ちをすると男性の脇腹を蹴り飛ばす。

 ギリギリのところで川に落ちるのを回避した男性は蹴られた箇所を押さえながら足音の主━男を批判する。

 

「いきなりなんてことをするんだ!! もし川に落ちたらどうなると思ってんだい!? えぇ!?」

「あんたが溺れて死ぬ。ただそれだけのことだろう?」

 

 涼しい顔をして反省の色を見せずにそういう男。その態度に男性は思わず顔を真っ赤にしてさらに怒りのボルテージを上げ、勢いよく立ち上がると男の胸ぐらを掴み怒鳴り上げる。

 

「死ぬだけ、じゃないだろう! 殺人犯になりたいのか君は!!」

「なりたいんじゃなくてもうなってるんだよ。今更躊躇するつもりなんてないな」

 

 男はそう言って懐から細長い箱を取り出し、それを見せつけるように男性の目の前に突き出すと獰猛そうな笑みを浮かべる。男性はそれを見ると男の胸ぐらを掴んでいた手を離してズボンのポケットに手を回す。警察に通報するつもりなのだろう。

 そうして取り出したガラケーは、しかし男に奪い取られて川に投げ捨てられてしまった。顔を一気に絶望に染めた男性は、男に背を向けて走り出す。そりゃそうだ。男の持つそれは人を人ならざる物に変貌させてしまう禁忌の箱、ガイアメモリだ。そんなものを突きつけられて逃げずにいられる人間などこの街はごく少数を除いていないだろう。

 

「たっ……助けてくれェ!!」

 

 そう叫びながら男から離れる男性。しかし男はそのメモリを起動すると胸元にあるガイアメモリコネクタに挿してその姿を怪物へと変える。男性はちらりと男の方を見てそれがドーパントになっていることを確認し、一層走るスピードを上げる。

 ドーパントはため息を吐くと右手の指を銃のような形になるように握り、伸びた人差し指を男性のいる方向へと向ける。

 

「どれだけ逃げても、どんな場所に隠れても無駄だっての」

 

 静かに呟いて標準を定めるように手の向きを微調整し、一息入れて無音の不可視の弾丸を放つ。その弾丸は寸分の狂いもなく男性の心臓のある位置を貫いた。

 

「ゴフッ……!? なん、で……」

 

 走っていた勢いのまま前のめりになって倒れていく男性。口からは血を流している。ドサッ、ドサッ、という無慈悲な音が響いて、男性は川に転落していった。辺りの水が真っ赤に染まっていく。

 ドーパントはそれを見て満足そうに頷くと、不意に空を仰いで何かぽつりと呟く。途端に辺りに響く重低音。数秒間だけ響いたその音は、おそらくは噂されている怪音のそれだろう。ドーパントはしばらく空を仰いでいたが、体を思いっきり伸ばしてから自らも川に飛び込み、上流へ向かって泳いでいく。

 

 翌日の早朝、漁に出た漁船が男性の遺体を発見し大きなニュースとなるのだった。

 

 

「昨日もまた怪音があったらしいぞ」

「へぇ? 朝のニュースでやってた死体遺棄事件と何か関係ありそうだね」

 

 そんな会話をしながら登校する。警察は今頃大忙しなんだろうな、とカバンの中をゴソゴソと漁りながら呟く蒼にそうだろうねと言って同意する。先日の鏡誘拐事件は未だ真相に辿り着いた人はいないし━そもそも辿り着けるはずもないのだが━恐竜爆走事件のこともある。いろんなことに人員を割かれているはずだ。

 もうパンクしていてもおかしくないんじゃないの? 風都にいる警察官フル動員しても足りないくらいの人員の割かれ方だと思う。まともに機能してたらすごいよここの警察署。

 

「やーっぱドーパントくせぇよなぁこの怪音騒動」

 

 ガラケーをいじりながらそう言う蒼。それを聞いて思わず僕は

 

「何かネットで目撃情報でもあったの?」

「まあそれに近いものを見つけてな。内容はこうだ。昨日の夜堤防を走ってたら助けて、という声が聞こえたあと何か重たいものが水に落ちる音がした……。見に行こうとしたその時に怪音が鳴った。不気味で怖くなりその場を動かずにいると怪音が止み、また重たいものが落ちる音がした。ゆっくりと音のした方へ行ったが、その時にはもう既に誰もいなかった。……どうだ? いかにもらしいだろ」

「確かにドーパントくさいね」

 

 ニヤリと笑いながら読み上げ、その画面を僕に見せる。僕は頭の中でその情報を整理してから口を開いた。

 

「水に落ちた音がした、か……。それが起きた場所ってあの川だよな?」

「んまぁ風都で川っつったらあの川しかないからな。これが本当の書き込みなら目撃者含めて最低でもその場に3人はいたことになるわけだ。んで、川に落とされた人が一人、落としたやつで二人。で最後に目撃者で三人だ。もしかしたらもう一人いたのかもしれないけど、そうするとどこに隠れたのかっていう疑問も湧いてくる」

 

 そう一気に捲し立て、ノートから一枚紙を破り取るとそこに色々書き込んでいく。僕はどんどんと文字で埋まっていくそれを見ながら僕なりの疑問点を指摘する。

 

「目撃した人の捜索不足というか、見つからなかっただけ気づかなかっただけって線は?」

 

 それを聞いた蒼は一瞬考え込む素振りを見せたがすぐさま否定してくる。

 

「流石にそれはねぇだろ。もしこれが殺人事件だってんなら目撃者も殺すだろ。もし自分たちの姿が見られて警察に通報されたら面倒なことになる。それを考えたらターゲットと一緒に殺した方が楽だ、と俺が殺人者の立場ならこう考えるね」

「言われてみれば確かにそうだな……。その怪音って鳴ってる場所時間に規則性あったりする?」

「む……言われてみりゃ考えたこともなかったな……。えぇっと? 大体は深夜の水辺だとよ。時間帯に関してはたまに早朝とか真っ昼間でもあるから特に関係ないんじゃねえか? 犯人の都合の良い時間帯が深夜だってだけだろうし」

 

 となると犯人は学生ではないってわけか。もし学生だったら昼間に動くのは無理だろうし、そもそも深夜に出歩いてしまうと条例違反で警察に補導されてしまう。もし持ち物検査的なことをされたら一発でバレるだろう。だからその可能性はないとして……。

 頭の中でじっくり考えていると、すごい勢いでノートに色々と書き込んでいた手を止めて蒼は僕に尋ねる。

 

「なぁ。俺たちってただの学生だよな? なんでこんな推理みたいなことしてるわけ?」

「そりゃあ気になるからに決まってるだろ」

「こういうのって俺らみたいな一般人がいくら推理したところで情報量も乏しいし正確性の欠片もねぇし意味なくね?」

 

 はぁ、とため息をついてこの書き込みの考察がびっしりと書かれた紙をクシャッと丸めゴミ箱へと放り投げる。なぜ今更そんなことを……と若干戸惑いつつ彼の背中をバシッと叩いて丸められた方の紙を指差し、早く拾って捨てるよう促す。このままにしておくと学級委員長がうるさいからね。怒らせるとなかなかに面倒くさいって聞いたことあるし。

 蒼はんだよ叩くことねぇじゃんかよ、などと叩かれた背中を摩りながらそれを拾いに行く。

 

「もし今日の朝ニュースでやってた死体遺棄事件の被害者がこの書き込みで襲われた人なら……。川の下流で落とされたとはいえ沖合五キロ先まで流れるのか? ありえなくはなさそうだが、そうなるとその犯人はその人に何らかの恨みを持っていてガイアメモリに手を出したってことになりそうだな」

 

 口に出して考えをまとめていく。この件で僕が何かしら行動を起こすことになるのかどうかはわからないけど、ライダーである以上は備えておくべきだろう。犯人がもし無差別に人を攻撃して街を破壊しまくるようなやつならいつ交戦する羽目になるかはわからないし、それに何よりも僕は誓ったから。ドーパントは全員殺すってね。

 

 

 そして学校が終わり、急いで帰宅し私服に着替えてすぐさま飛び出た。目的はもちろんドーパント狩りである。

 当てが全くないわけじゃない。ただ犯人の出現する場所が水辺であることが多いという情報くらいしか手元に無い今、ドーパントの中身を突き止めろなんていう方が酷な話だが直感に従って動けば何とかなるんじゃないかという淡い期待がある。

 

 今朝水死体で発見された男性が犯人から何らかの恨みを買っていたとしたらおそらくは、というのがある。その男性は水産系の会社の重役だったらしく、経営が傾いてしまった時に大規模な人員整理を行ったそうだ。その時に何人かの部下に直接解雇を言い渡し、それで恨みを買ったんじゃ無いかとニュースで報道されているので、水産系の工場が集まる海岸沿いなら遭遇しやすいのではと思っている。

 

 警察も同じ考えを持っているようで、数台のパトカーが巡回しつつ付近の住民に聞き込み調査をしているのを何度も見かけた。警察のお墨付きをもらったのだと一人で勝手に盛り上がる。まぁ高校生でも思いつくようなことを思つくことができないようならそれはそれでどうなのかって感じだけどね。

 それはそれとして、いつドーパントが出現しても対応できるようにずっと海岸沿いを歩き続けてたんだけど、もしそれが出現したらとんでもない騒ぎになってその方向がうるさくなるだろうということに気付いた。別に向かうのはそれからでも十分だ。

 

 そういうわけでぼーっと海を眺めつつ騒動が起きるその時を待ち続けた。潮風独特の気持ち悪い感覚が僕の体を包む。こりゃ帰ったらいつも以上にしっかり体洗わないとな……。というか何でこの街はこんなに風が強いんだ。鬱陶しいったらありゃしない。

 もう少しくらいゆったりとしたそよ風が吹いてくれるなら良いんだけど……。

 

 そんなことを考えて思わず寝てしまいそうになったその時だった。僕の耳が微かに叫び声を捉えた。遅れて何かが崩壊するようなゴゴゴという音が辺りに響く。

 

「これが例の怪音か……っし」

 

 悲鳴はどんどんはっきり聞こえるくらいには大きくなり、やがてまた大きな崩壊する音が聞こえた。僕はその音の鳴る方向へと全力でダッシュする。これは十中八九ドーパントの仕業だろう。ただの施設の崩壊ではない。作業員たちががむしゃらに走って逃げる事態なんてドーパント以外に思いつかない。もしただの施設の老朽化による崩壊だったとして、その施設のある土地から出る必要があるのだろうか。しかもすれ違う人は皆口々に助けてだの化け物だだの言っている。

 

 必死に走ってその施設のすぐそばに辿り着く。中を見ると、やはりというべきか青い色のドーパントが真ん中に突っ立って何かの機械を手当たり次第に破壊していっている。屋根も所々剥がれ落ちている。さっきの轟音はこれの音だったのかと一人で納得して様子を伺う。

 そのドーパントはしばらくは機械をボッコボコに殴って破壊していたが、急にピタリと動きを止めて天井を仰いだ。途端に響き出す怪音。やっぱりあの書き込みの怪音はドーパントの仕業だったのか……てか不快だしうるさいな! と心の中で文句を言う僕にドーパントはチラリと顔を向けると

 

「そこに隠れてるやつは誰だ? 警察か?」

 

 などと話しかけてきた。見つからないように細心の注意を払っていたのにこうもあっさり見つけられたことに驚いて思わず

 

「ゲッ……ばれてんのかよ」

 

 と言葉を漏らしてしまう。それが聞こえたのか知らないが、ドーパントはこちらに体を向けて挑発をするように手招きをする。おそらく警察なんか問題にならないという自信の現れだろう。そうでなければこんな軽々と挑発なんてしない。

 僕はそれに乗ってやるよ、と心の中で返して身を隠していた木の影から飛び出してドーパントの方へと近付く。

 

「……警察じゃなくてガキだったか」

「お望みの警察じゃなくてごめんなさいねドーパントさん。でも退屈させることはないと思うよ」

「ほう……? もしやお前もドーパントだとでもいうのか?」

 

 面白い、とでも言わんばかりにそう返してくるドーパント。僕はそれに少し近いかな、と返してドライバーを取り出して腰に当てる。それを見たドーパントは噂のライダーかと臆する風もなく呟いて僕の動きを見ている。ドーパントたちと戦うときいっつも思うんだけどこいつら何で変身する前に攻撃してこないんだかねぇ……バカでしょ。まあその方がこっちも助かるから良いんだけど。

 

「さて、ここはもう危険地帯だ。逃げるなら今のうちだ」

《ハザード》

 

 ガイアメモリのスイッチを押してそれを構える。俺の宣戦布告を聞いたドーパントはハッと鼻で笑い飛ばし、

 

「逃げるのはお前の方だろ? 死んでもしらねぇからな」

 

 ……言ってくれるじゃねえか。思いっきり獰猛な笑みを浮かべ、周りに人がいないのを確認してから息を整えて吠える。

 

「死ぬのはそっちさ。社会的にも肉体的にもな!! 変身!!!」

 

 メモリをスロットに差し込み勢いよく倒す。

 

《ハザード!!》

「ウオォォォ!!」

 

 ライダースーツが完全に身を包むのを待たずに突進し、握りしめた拳を勢いよくドーパントの胸元に叩き込む。ゴッという音がしたがドーパントは痛がる素振りを見せず、カウンターの拳を俺の頬に食らわせようとする。

 それをギリギリのところで受け止め、少し後退して背中から鎌を乱暴に引き抜いて構える。あんまりこいつは使いたくないが、拳打で攻撃が通らないなら使う他ないだろう。

 

「ふんッ!!」

 

 勢いよく振ったそれはもちろん空振りしたが、ドーパントはそれをかわすために後退りして距離ができた。ほんの少しの間ならあの分厚い装甲を貫通させることのできる策を考える余裕ができるはずだ。この隙を有効活用しない手はない。

 そうして鎌を握りしめていつ襲いかかってきても良いように相手を見つめる。

 

 確かに相手との距離があればある程度の時間稼ぎができる。だがそれは遠距離攻撃を持たない相手の話であって、それを持つ相手には通用しないということを失念していた。

 

 ドーパントが手を銃の形を作るように握るのが見えた。俺はそれを見て訝しむ。何子供みてぇなことしてんだ? そう思った直後、尋常じゃない衝撃が俺の腹を襲った。

 

「ガッ……!? なんだっこれ!? ゲッホゲホッ!!」

 

 思わず腹を押さえてうずくまる。あの子供のような構え、本当に銃弾を発射するものだったとは……。いってぇ……けどずっと蹲ってたらボコボコにされてマジで殺されちまうなぁ! 

 根性で何とか立ち上がり再び鎌を構える。今度は放たれた銃弾を斬ってやる、と目を凝らしていたが、今度は手のひらを向けてきた。その手のひらには明らかに何かが飛び出ますよ、とでも言わんばかりの発射口らしき穴が空いているのが見えた。今度はなんだと身構える俺を襲ったのは大量の水だった。流動体の水を斬るのはいくら何でも無理だ。

 

「ブヘァッ!? ンヌオォォォォォ!!」

 

 気合いと根性で吹き飛ばされるのだけは回避したが、ここから前に進むのは無理そうだ。別のメモリに差し替えたらワンチャンあるかもしれないが、この状態でそんなことをする余裕など微塵もない。かと言ってこのまま水の放出が終わるまで耐えるというのも無理だ。じわじわと距離を詰められたらそれこそ水圧で吹き飛ばされてしまうし、いつまで踏ん張っていられるかもわからない。こうして耐えるだけでもキツいのに。

 

 詰みだ。でかい口を叩いたのは良いが、ここからどうすることもできない。運を天に任せて耐えられるだけ耐えるしかない。おそらくは負けるだろうが、足掻けるだけ足掻いてやるか。

 半ば諦めかけたが決死の覚悟で必死に抵抗する。ドーパントが何か言っているように聞こえたが襲ってくる水の音で何も聞こえない。一体何の記憶を秘めたメモリならこんなことができるのだろうか、と考えたその時に事態は急転した。

 

 まず水がなくなった。ビッショビショだが何とか生きている。

 そしてドーパントが吹っ飛ばされているのが見えた。全く見当違いの場所に水を放っている。

 最後に……

 

「ライダー!?」

 

 片手に斧を持った茶色いライダーがそこにいた。状況が飲み込めない。一体何がどうなっているのかと固まった頭を必死に動かそうとする俺に、そのライダーは言った。

 

「遅くなってわりぃな黒いライダー!! このディノスが助太刀させてもらうぜ!!!」

「……ハハ、何が何だか」

 

 頭の中が真っ白になり、俺はただ困惑することしかできなかった。そんな俺をよそにディノスと名乗ったライダーはまるで野獣のような雄叫びを上げるとドーパントに襲いかかるのであった。

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