マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
俺は、この世界が楽園だと思った事は一度だってない。この世界はクソッタレだ。
生きての地獄を味わい続けるか、いっその事一瞬の痛みを受けれ、死ぬか。
生憎とこの世界で『平和』って奴を享受できる程、俺の人生は恵まれて無かった。
BETA。『人類に敵対的な地球外起源種』の英語の頭文字を取ってそう呼ばれる、宇宙からの侵略者。
天文学的な数の物量を生かして押し寄せる化け物。人類はそのBETAに襲われてからという物、後退の一途を辿り続けて来た。中国、東南アジア、中東、ソ連、欧州。
中国のウィグル自治区への落下から始まったBETAの侵攻の前に、人の持つ兵器は尽く蹴散らされ、喰われ、破壊されてきた。
奴らが通った道には何も残らない。残骸も、雑草も。……命も。
俺はこんな世界に生まれた事を後悔した。
ここは地獄だ。
何度そう思った事か、自分でも分からない。
現在進行形で化け物に侵略された世界を地獄と言わずになんて言う?
だが、俺達の足の下にあった物。地球の中には、その地獄すら一蹴する化け物が居た事を、その時の俺はまだ知らなかった。
あの日、『あいつ』を目にしたその時まで。
俺が『あいつ』を目にする約1年前の事だ。『奴ら』の出現は、唐突だった。
1998年。朝鮮半島。
そこでは進行するBETAから領土を、人間の住まう大地を捨てて逃げ出す作戦。『光州作戦』が展開されていた。
何の装備も無く、BETAの前に立つ事は死以外の何物でもない。
ゆえに、BETAが迫った土地の人々は迫られる。
故郷からの脱出か。故郷と運命を共にするか。
呆気ない死か、惨めな生か。
どちらにしろ、選ぶだけでも苦だ。
だからこそ人の中には、せめて最後は故郷で死のう。
そう考える奴も居るらしい。
そして『奴ら』の内の一体が初めて姿を現した戦場は、そんなクソみたいな選択を迫られる場所だった。
~~光州作戦、帝国陸軍司令部~~
この作戦には、半島の隣国である日本、帝国の軍隊も参加していた。
そして、現場での帝国軍の指揮を任されていたのが『彩峰萩閣(しゅうかく)』中将だった。
光州作戦の目的は、BETAが迫る朝鮮半島からの撤退。
その撤退戦を支えるために、最前線では大勢の兵士が戦っていた。
逐次現場から上がる報告を、当時の中将は司令部で聞いていた。
そして、後に中将はこう語った。
『私は、あの日希望と絶望の双方を見た』
これは、そんな作戦の時に起こった、のちの争乱の幕開けとなる序章だ。
~~~
現場から上がる悲鳴のような報告に、苦虫を嚙み潰したかのような表情を浮かべる萩閣。
既に帝国の部隊のいくつかはBETAとの戦いに敗れ消滅した。その時。
「っ!?緊急連絡!」
と、通信を行っていた兵士の一人が立ち上がって萩閣の方へと向き矢継ぎ早に報告を始めた。
「大東亜連合軍が避難を拒否する現地住民救助のために動き出した模様です!」
通信士のその報告で、陸軍司令室は騒めきに包まれ始めた。
「現地住民の救助だと!?自ら残った人間のために兵力を裂くなど!大東亜連合の司令部は正気か!?」
「しかし、だからといって彼らを見捨てる訳には!」
一つのイレギュラーが更なるイレギュラーを引き起こすように、大東亜連合の起こしたイレギュラーに帝国陸軍司令部も瞬く間に飲み込まれていた。
萩閣を補佐する佐官達がたちまち声を張り上げる。そして、萩閣を補佐する側の佐官たちの意見が割れ始めたその時。
「あ、あの。中将。我々は一体どうしたら」
その喧噪を収めるためかそう問う通信士の兵士。そしてその質問が響くと、喧噪は嘘のように消え去った。
皆、この場において最上位の階級を持つ萩閣の指示を待っていた。
現地住民を無視するか、否か。
そして、萩閣は考え、決断を下そうとしたその時。
「緊急連絡!!」
不意の別の通信士の一言が、萩閣の口に待ったを掛けた。
「最前線の部隊より報告!突如として巨大不明生物が出現!BETAと交戦中との事です!」
「………。何?」
その時、萩閣は文字通り『思考が追い付かなかった』。
『巨大不明生物?新種のBETAか?いや、しかしBETAと交戦中とはどういう事だ?』
あまりの事に民間人救助の事からそちらに意識が移ってしまう萩閣。
「な、何をバカな事を言っているのだ!ふざけているのか貴様っ!」
「い、いえっ!決してそのような事は!現に前線の部隊からはそのような報告がっ!」
怒鳴り散らす佐官に、通信士は慌ててそう返事をする。
「くっ!?巨大不明生物だと……!?まさか前線の者達が錯乱でもしたのではあるまいな……!?」
佐官の一人が苦々しい表情でテーブルを叩こうとした時。
「……データリンク」
「中将?どうされました?」
不意に呟かれた言葉に周囲の佐官たちが気付いた。
「データリンクだ!前線の部隊からデータリンクで映像を取得できないか!?」
「あ!す、すぐにやってみます!」
そう言われた兵士は飛ぶ勢いで席に戻るとコンソールを操作しだした。
「中将閣下!今はそのような!」
「映像に何も映っていなければ前線の者達の妄言で済む!しかし真実であれば!……確かめる必要がある」
彼がそう言って周囲の佐官たちを納得させた時。
「前線部隊からリアルタイムの動画データを取得しました!モニターに映します!」
通信士が叫ぶと、戦域マップが映されていたモニターが一瞬暗くなり、すぐに動画に切り替わった。
そこでは………。
『ゴロゴロゴロゴロゴロッ!』
「何だ。これ、は」
そう、正しく、疑問符しか浮かんでこないような映像が映し出された。
『グシャッ!ベギャッ!』
そこでは、今まさに、『無数の針が生えた巨大な岩石の様な物がBETAの集団の中を縦横無尽に転がっている』、という彼らからしてみれば現実離れした映像が流れていた。
「巨大な、岩石?」
あまりの事に、我を忘れ、周囲を忘れ呟く萩閣。その巨大で丸い『何か』は、転がりながらも背中の棘とこれまで確認された中でも最大級のBETA、『要塞(フォート)級』を軽く上回る巨体を生かし次々とBETAを轢殺していった。
あの『何か』が通り過ぎる場所では盛大に血しぶきが吹き、小さい(と言っても数メートルはある)『戦車(タンク)級』の体が木の葉のように吹っ飛んでいる。
BETAの中で最硬度の前面装甲を持つ、『突撃(デストロイヤー)級』ですらあの『何か』の攻撃には煎餅を割るように簡単に装甲を破壊され、押しつぶされている。
これまで人間を『蹂躙してきた』BETAが何かに『蹂躙されていた』。
その事実に思考が停止寸前の萩閣と周りの者達。しかし、本当の驚きはこれからだった。
次の瞬間、盛大に跳ねた丸い『何か』はBETAの群れの外に着地した次の瞬間、『態勢を戻した』。
そう、その『何か』は最初から丸かったのではない。
『丸まって転がっていた』だけなのだ。
そして、『それ』、『暴龍アンギラス』が姿を現した。
『プァァァァァンッ!!!』
どこか甲高いラッパのような咆哮を上げるアンギラス。
四つん這い、4足歩行の体つき。びっしりと背中を覆う、BETAの血に汚れた幾重もの、巨木サイズの剣山みたいな針の群れ。
恐竜を思わせるそのフォルム。
「あ、あ~~。すまん、誰か俺を一発殴ってくれ。げ、幻覚が見える」
「ちゅ、中将閣下!お気を確かに!」
そして、その動画を見ていた萩閣はあまりの動揺っぷりにそんな事を言い出してしまった。
『プァァァァァンッ!』
しかし、動画の中では相変わらずアンギラスがBETAの集団相手に暴れ回っていた。
尻尾を振るい襲い来るBETAを薙ぎ払い、地中に潜って姿を消したかと思えば、今度は
群れのど真ん中から飛び出して奇襲をする。
その巨体に似合わない速度で戦場を縦横無尽に駆けまわる。
また姿を丸くし、必殺の『暴龍怪球烈弾(アンギラスボール)』でBETAの群れを蹂躙していった。
そして、この流れを見ていた時、萩閣はハッとした。
如何に非現実的とはいえ、今は戦闘中だ。
その事実がこの驚きの中にあって指揮官である萩閣の思考を引き戻した。
「前線の部隊に伝達!今すぐに後方に下がり弾薬等の補給をさせろ!それと後方からの支援砲撃部隊にも伝令!あの化け物が居る地点への砲撃は中止し他を狙わせろ!今の内に態勢を立て直し、あの化け物の力を利用して一挙にBETAを殲滅する!」
「なっ!?本気なのですか中将閣下!」
驚いた佐官の一人が叫ぶ。
「BETAが奴に気を取られている今がチャンスだ!あの化け物がBETAであり、今は錯乱して敵味方の区別がついていないだけとも言い切れない!しかし奴がこちらに向かって来る前にBETAを殲滅しておけば、戦う相手は奴一匹で済む!」
と、その時。
「き、緊急連絡!各地の防衛線で戦っていた残存BETA群があの怪物の方向に向かって反転、移動を開始しました!」
「ッ!ならば好都合だ!国連軍司令部にも通信を繋いで援軍を送らせろ!あの怪物を餌にしてここでBETAの数を可能な限り削り取る!」
通信士の報告に、すぐさま命令を伝える萩閣。
「「「「「はっ!!!」」」」」
萩閣の命令を的確に実行していく部下達。
そして、この戦いはアンギラスを倒そうと無数に群がってくるBETAを、人類側の戦力が半包囲する形となり、結果的に人類側に背を向けたBETAを後ろから撃つ事が出来た
光州作戦の参加部隊は、奇跡的に撤退作戦を成功させることが出来た。
そんな中で、萩閣は……。
「一体、奴は何だったんだ」
祖国へと帰る船の中で、ずっとその事だけを考えていた。
アンギラスは襲い来るBETAと戦い続けた。
人類側はそれを利用し、BETAを後ろから撃ちまくった。
それによって、結果的に人類側は作戦を成功させた。
加えて、BETAのほぼ全てがアンギラスに注意を向けた事で大東亜連合軍は強引ではあったものの、民間人の救助に成功した。
そして、肝心のアンギラスはと言うと……。
『プァァァァァンッ!』
BETAを殲滅したアンギラスは、勝利を宣言するかのように数回天に向かって吠える
と、近くに『戦術機』――人間がBETAと戦うために作り出した18メートルサイズのロボット――の集団が居たにもかかわらず、彼らをガン無視して地中へと帰って行った。
その事実が、彼ら、萩閣や彼の部下。
アンギラスが暴れ回る所を見た者達を困惑させた。
そして帰国後、その際の事を聞かれた萩閣は……。
「不明。正しくそうとしか言えません。奴が何者なのか?そもそもBETAなのか?違うのなら、なぜ今になって現れたのか?何処から来たのか?なぜ我々に興味を示さなかったのか?何一つ、分かりません。ただ……」
「ただ?何だね?」
疑問符を浮かべながら問う上官。
「私は、あの日希望と絶望の双方を見た。そう感じております」
「希望と、絶望?」
「はい。もし仮に、奴がBETAと戦い続けるのであれば戦況に何かしらの影響を与える
でしょう。それが今の戦況に変化をもたらすのではと期待していた自分が、あの時居ました。しかし同時に、奴の、BETAの軍団を単独で蹂躙する奴の力が我々人類に、帝国に向けられたらと考えると、余りにも恐ろしいと、そう思ってしまうのです」
そんな彼の報告を前にして、上官たちもまた重く口を閉ざした。
~~~
その日、初めて人類は≪怪獣≫と言う存在を目撃した。
BETAを蹂躙するアンギラス。
その事実は一般への公表は控えられた物の、様々なルートを通って各国の軍高官や政治家の耳には届けられた。
しかし、一体誰がこれから起こり得る事を予見しただろう。
後に、≪怪獣≫と言う言葉が世界各地で使われるようになると。
アンギラスだけが、怪獣ではないと。
BETAを蹂躙する怪獣の≪王≫が、実在する等と。
あの戦いの日が、唯の始まりに過ぎないのだと。
今、侵略者に襲われていた地球の生命が、怒りだす。
地球生命の逆襲が、今始まろうとしていた。
第1話 END
って事で、簡単にパワーバランスを説明すると……。
ゴジラ(アース)>>>>>>怪獣>BETA>人間って感じです。
分かる人は分かると思いますけど、今作でのゴジラは
アース様です。……うん、ヤバいです。
BETAにガチで勝てるゴジラはこの人(?)しか
思いつきませんでした。
あと、後書きで知ってる人が大半だと思いますけど、
登場怪獣の解説もしてます。
第1話登場怪獣
『アンギラス』
初出・ゴジラの逆襲(1955)
ゴジラシリーズにおいて、ゴジラと最初に戦った怪獣
として有名。以降はゴジラシリーズに何度か登場し、
昭和ゴジラシリーズではゴジラの相棒としても
活躍した(地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972))。
今回使用したアンギラスボールという技は、
『ゴジラFINALWARS』で登場した個体が使用したもの。