マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
コスモスの案内の元、インファント島へとやってきた夕呼や芹沢たち。そこで彼女達は近未来的なコスモスの基地と、その技術によって作られた轟天号を目にする。そして夕呼はその轟天号の船長室に保管されていたパンドラボックスを静かに手にするのだった。一方基地の中を見て回っていた水月は、モスラの名を聞くのだった。
招集を受けて水月たちが轟天号の前に戻ってくる。
「ご苦労さん。で、どうだった?どこか破損したりしている施設はあった?」
と、夕呼が問いかけるが皆一様に首を横に振った。
「どうやら、ゼアによる管理が徹底しているようです。我々が見た限りでは特に破損しているような施設は発見出来ませんでした」
「そう。ともかくご苦労様」
みちるの報告に頷く夕呼。
「それじゃあ私達は一度帝国に戻るけど、コスモスとしてはまだ私達に見せたい物とかってあるかしら?」
そう言ってコスモスに問いかける夕呼。
「「では、最後に皆さんにお見せしたい存在が。どうぞこちらへ」」
そう言って、コスモスに促されるまま、彼女達は足を進めた。
向かったのは基地の最深部だった。いくつもの重厚な扉を越えて、たどり着いた場所は吹き抜けの神殿のような場所だった。天井部分に穴が空いていて、太陽の光が降り注ぐ。そして神殿の中心にある、巨大な二つの繭が光に照らされ輝いていた。
「あれって、繭?」
ポツリと呟く水月。
「「そうです。あれは私達コスモスが神と崇めた存在。先代モスラとバトラの子供達があの中で眠っています」」
「あの中で……」
芹沢は静かに歩みを進め、純白の繭と漆黒の繭を見つめていた。
「ねぇ、単刀直入に聞きたいんだけど、モスラとバトラの強さってどれくらいなのかしら?」
「「と、言うと?」」
「純粋な力量、って言うか戦闘力?それをゴジラや他の怪獣と比較したとしてモスラとバトラはどれくらいの位置に居るのか、ちょっと気になったのよ」
そう言ってコスモスに質問する夕呼。
「モスラとバトラは、単独ではあのキングギドラと互角。或いはギドラが少し優勢と言った所でしょう」
「ですがモスラとバトラは番いの怪獣です。敵には共に立ち向かうでしょう」
そう語るコスモス。
「つまり、常に共に行動する、って事ね。そしてその場合の強さはギドラ以上ゴジラ未満って事で良いのかしら?」
「「はい。概ねその通りです」」
「あのキングギドラ以上」
横浜ハイヴ攻略に最も貢献し、尚且つ今現在帝国において守護神として崇められているキングギドラ以上、と言う言葉に水月だけでなく美冴やみちる達も密かに驚いていた。
と、その時。
「霊長類、か。ホント、聞いてて呆れるわね」
「香月博士?」
ポツリと呟かれた夕呼の言葉にみちるが反応する。
「人類はこの星の王者なんかじゃなかった、って事よ。芹沢博士やコスモスの話を統合すれば、かつてこの星には巨大生物が生きていた。その生き残りや進化した子孫が今の怪獣って事よ。そして、彼等はやがて眠りに付き、彼等が座っていた『生命の玉座』は空席となった。人間はその空席を我が物顔で奪ったに過ぎない。でも、その生命の玉座に座っていた存在である怪獣達、つまり『真の霊長類』である彼等が帰還した今、人類は生命の頂点、つまり玉座を追われる」
「え、えっと、それってつまり?」
夕呼の言い分に首をかしげる水月。
「要は、私達人類はもはやこの星において最強ではない、って事よ。私達はこれから真の霊長類である怪獣達とよろしくやっていく以外に生き残る術は無いって事」
「そうだ」
夕呼の言葉に、芹沢が頷く。
「君たちも知っているだろう。ギドラやゴジラの力を。今の人類が、仮にコスモスの技術を吸収し兵器を強化したところで怪獣に、特にゴジラには敵わない。彼等に挑む事は自分に向けて銃の引き金を引くのと同じだ。自殺行為以外の何者でもない。そして、それ以上に彼等はこの星を護る存在だ。守護神に等しい存在だ。……我々人類は、これから先彼等と折り合いと付けていくしかないんだ」
その言葉に、水月は眼前にある巨大な二つの繭に目を向けた。
「怪獣が、真の霊長類かぁ」
ポツリと彼女が呟いた直後。
『ポゥ……!』
「え?光った?」
純白の繭が僅かに緑色の光を放った。それに気づいて水月が呟いた。その時。
『キュアァァァァァッ……!』
彼女達の耳に甲高い咆哮が響いた。
「ッ!?この声は……!?」
驚き後退る梼子。
「「モスラですっ!モスラの声ですっ!」」
「ッ!?まさか、覚醒の時が近いのか!?」
コスモスの言葉に芹沢が驚く。だが、それだけではない。
『キュガァァァァァッ……!』
まるでモスラの咆哮に答えるように、漆黒の繭からも咆哮が響く。
「「こっちはバトラの物ですっ!」」
「目覚めようとしているのか、やはり……!」
芹沢は、驚愕とも喜びとも付かぬ表情で繭を見つめていた。
その後、夕呼達はコスモスたちと別れて大隈級に戻り、そのまま帝国へと戻っていった。本来ならばコスモスたちも一緒に来て、その存在を国連に知らせる使者となるはずだったが、モスラとバトラの目覚めが近いと言う事で島に残った。代わり、と言っては何だが夕呼達はコスモスの基地からその証拠として『ホバーバイク』を数台持ち出していた。
そして、帝国に戻る最中、水月は大隈級の甲板からインファント島が見えなくなるまで、
島を見つめていたのだった。
その後、帝国に戻った夕呼達はすぐに国連司令部にコスモスのインファント島基地の事を報告した。その際には芹沢がカメラで撮ってきた写真を添付したが、もちろん簡単に信じられる物ではない。なので国連内部では彼女の話を信じる者と疑う者たちが論争を繰り広げた。
が、それも夕呼が疑う者達をコスモスの基地に連れて行った事ですぐに終了してしまった。
次に、夕呼によってこの基地をオルタネイティブ4のために接収すると言う話が持ち上がったが、これには当然と言うか国連を始め各国政府より反発を生んだ。オルタネイティブ計画を快く思わない者達はこれ以上彼女達に力を与えないために。力や技術を求める者はそれを手にするために。そう言った思惑もあって夕呼の話は通らない。
そう思われた。だが、それをひっくり返したのがコスモスだ。
彼女達は夕呼によって国連の会議の場に呼び出され、ある事を言った。
それを簡潔にまとめると……。
「あの基地は正当な所有者である私達から博士に贈られた物。よって第三者の承認は一切必要としない」、だ。
更に簡単に言えば……。
「他人のあなた達がどう言おうと基地は彼女に与えられた」、だ。
だがこれだけの説明で納得出来るほど、彼等は無欲ではない。当然反発を招いた。だが、そんな彼等を納得させるために夕呼が一つ、提案をした。
それは『轟天号』をベースに、グレードダウンと引き換えに生産性を向上させた空中戦艦を量産し、国連軍や延いては各国軍に与える、と言う物だった。
当然、これでも納得出来ない所は彼等にはあった。だが、これ以上ごねて何も貰えない、は避けたかった彼等は渋々これで了承した。
その後、コスモスの基地の多次元プリンターザットの力で、ゼアが設計・開発した新型空中戦艦3隻、『火龍』、『エクレール』、『ランブリング』の3隻がまず就航し、国連軍に与えられた。そして夕呼の提案で、国連軍内部にこの3隻を練習艦として空中戦艦の船員を育成するための機関、(空中戦艦、スカイバトルシップの名を取って)『SBS機関』と呼ばれる訓練機関が設立された。
このSBS機関は各国より選ばれた兵士達に空中戦艦の操縦を学ばせるために出来た訳だが、まだ教官となれる人間も居ないため、まずはSBS機関に属する教官たちの勉強が始まった。
だが、この3隻にはゼアによって、密かにその航行システム内部にバックドアが仕掛けられていた。これは、万が一にも空中戦艦がゼアやコスモスの意に反する行動をした場合、特に『思い上がってゴジラに攻撃を仕掛ける』というバカな行動をしそうになった場合外部から強制的にシステム権限を奪うために埋め込まれた。そして当然、これから量産されるであろう空中戦艦にもこのバックドアは仕掛けられる予定だ。
そして、そんな慌ただしい数ヶ月が過ぎた2000年3月もあと少しで終わると言う所。横浜基地自体は未完成だが、オルタネイティブ4に関係する計画の占有区画は稼働を開始。それに伴って夕呼もそちらに研究拠点を移していた。そしてそんな彼女の元にコスモスが現れ、こう告げた。
「「もう間もなく、モスラとバトラが目覚める」」と。
その数日後。夕呼は芹沢、更には護衛として孝之たちが属するデリング中隊とみちる達のヴァルキリー中隊の二個中隊らと共にインファント島のコスモス基地、『国連太平洋方面軍・特殊管理基地』と名付けられ、更には『コスモスベース』とまで呼ばれるようになったその基地へと足を運んでいた。
既にここには何度か国連の調査員が派遣されているが、彼等は誰1人としてモスラとバトラの神殿に足を踏み入れる事を赦されなかった。それ故に、モスラとバトラの詳細を知っているのはコスモスと芹沢を除けば後は夕呼やみちる達だけだ。
そして更に2人、モスラとバトラの繭の元に足を踏み入れる事を赦された存在がいた。
1人は『パウル・ラダビノッド』准将。国連より派遣されているオルタネイティブ4の監査役であり最高責任者だ。そして未完成だが横浜基地の基地司令も兼ねている。
もう1人は『イリーナ・ピアティフ』中尉。今は夕呼の秘書やオペレーターとして活動しているが、かつては衛士として明星作戦にも参加経験のある女性士官だ。
そして、2人ともモスラとバトラの繭を前にするといつかの水月達のように驚愕で目を見開いた。
「……香月博士より話は聞いていたが、この中に怪獣がいるのか」
「……」
ポツリと呟くラダビノッドの隣で、ピアティフは驚きながらも唯々繭を見つめる事しか出来なかった。
しかし、そんな2人の傍では水月や孝之、更には技術士官たちが臨時の司令部を設営していた。その理由はただ1つ。『モスラとバトラの戦闘データを取るため』だ。
コスモスによって目覚めの時が近い事が示され、更にゼアによって予測が為された。ゼアの予測によれば、モスラとバトラは覚醒後、すぐにインファント島から最も近いハイヴ。つまり帝国の『佐渡島ハイヴ』を攻撃するだろうと判断された。
怪獣とBETAの戦闘データは貴重だ。怪獣の力量を推し量る意味でも。人間の無力さと怪獣の強大さを比較する意味でも。
この司令部の目的は誕生直後のモスラとバトラのデータを収める事。そのため既に島の周囲にも不知火数機が待機している。更に、佐渡島周辺にも国連軍権限で国連軍の観測用部隊とモナークの少ない艦艇が展開されている。人工衛星も、可能な限りデータを取れる範囲で取る予定だ。
全ては、怪獣の事を知るために。そのために多くの用意が為された。
そしてちょうどコスモスベースの神殿に、臨時の観測所兼司令部が完成した時だった。
「「モスラ~ヤ、モスラ~」」
コスモスが2つの繭に向かって歌い始めた。更にそれに合わせて、基地施設のスピーカーから伴奏となる音楽が流れ始める。
「これ、って」
その歌に、孝之を始め水月やみちる達までもが手を止めて歌に聴き入っていた。
「芹沢博士、これは……」
「言語はインドネシア語ですね。私もマスターしているわけでは無いので歌詞の断片的な意味しか分かりませんが、どうやらモスラを神と称え、自分達の事をその下僕とも呼んでいるようです」
「……正に、コスモスにとって『神を称える賛歌』ですね」
夕呼は、芹沢の言葉を聞きそう呟いた。
と、その時。
『『ピシッ!ピシピシッ!!』』
まるで歌に答えるように、2つの繭に罅が入った。
「ッ!?撮影班っ!モスラとバトラの覚醒よっ!撮影準備っ!早くっ!」
夕呼は、今正に二匹が目覚めようとしていると理解しすぐに指示を飛ばした。彼女の指示に従って、コスモスの歌を聞き入っていた周囲の者達が慌てて動き出す。
そして各箇所のカメラが回り始め、それらの映像が観測所のPCに送られてくる。今回は、帝国軍が横浜戦の際ゴジラの起こした電磁波で通信などを妨害された、と言う同じ轍を踏まないため、念のためとして有線で接続している。
そして、準備が出来たその時。
『バリバリバリッ!』
繭を突き破って、まず最初にモスラが姿を現した。
だが……。
誰もがモスラの姿に驚き、その手を止めてしまった。緑色の大きな複眼。黒と白の、柔らかそうな毛並みに覆われた頭と体。そして広げた翼を彩る緑色の紋様。誰もが、予想以外のその姿に目を奪われていた。
ここに居る者達の殆どは、怪獣と聞いて厳つい存在をイメージしていた。だが、その予想に反して現れたのは、どこか愛嬌や優しさを思わせる存在だった。
「美しい……!」
モスラを見て、ポツリと呟く芹沢。
「これが、コスモスの守護神」
その隣で、夕呼もまた驚愕の表情でモスラを見つめていた。
『キュアァァァァァァァッ!!』
2代目のモスラとして生まれたモスラは、その存在を周囲に知らしめるように咆哮する。
だが、目覚めたのは『彼女』だけではない。
『カッ!』
漆黒の、バトラの繭の中から紫色の光が漏れ出した。かと思った次の瞬間、繭を引き裂いて成虫となったバトラが現れた。
モスラとは対照的に、怪獣に相応しい厳ついイメージのバトラ。それは見る物を畏怖させた。
バトラの出現に人々が恐れを抱き始める中、水月はモスラとバトラを見上げていた。
「これが、怪獣。モスラとバトラ」
初めて自分の目で見る怪獣に、水月は呆然と彼等を見つめる事しか出来なかった。
『キュアァァァァァァッ!』
『キュガァァァァァァッ!』
モスラとバトラは、互いに向かい合い彼等にだけ分かる言葉で、意思疎通をしていた。そして、遂には2匹ともその巨大な羽を羽ばたかせ、天井に空いた穴から外へと飛び出して行ってしまった。
2匹の起こしていた暴風から顔を護っていた夕呼は、風が収まるとすぐに通信機を取り出して通信を開いた。
「こちら神殿内部。たった今モスラとバトラが飛び立ったわ。そっちはどう?」
彼女は島の周囲に展開している不知火の部隊に通信を繋いだのだ。
『こちらも確認しました。モスラとバトラの2匹は、島から北西方面に向かって飛行中』
「了解。涼宮っ、すぐに2匹の進路予想をっ」
「はいっ!」
夕呼はすぐに遙に指示を出す。桃色の髪の少女、遙はPCを操作して2匹の進路を割り出す。それは……。
「間違いありませんっ。ゼアの予測通り、2匹は佐渡島ハイヴを目指して一直線に太平洋上を飛行していますっ!」
人工知能ゼアの予測通り、2匹はここから最も近いハイヴである佐渡島のハイヴを目指していた。
「やはり、か。……すぐに帝国軍に連絡っ!モスラとバトラに対して攻撃をしないように伝えなさいっ!それと、佐渡島近海に展開中の部隊にも通達っ!可能であれば戦闘開始と共にドローンを発艦させて情報収集をっ!それと、帝国軍がどさくさ紛れでG元素の回収をしないかよく監視するように言っときなさいっ!」
「は、はいっ!」
遙や周囲のオペレーター達が指示を受けて慌ただしく動きだす。
そんな中で夕呼は……。
「それじゃあ、見せて貰いましょうか。怪獣の力を」
期待と恐れが混じり合ったような表情を浮かべているのだった。
太平洋を横断したモスラとバトラは、そのまま更に帝国を横断した。夕呼達の通達もあって帝国軍による迎撃はされなかった。また、モスラとバトラの姿を見ていた人々の多くが、まるで神に祈りを捧げるようにその姿を見ると手を合わせたと言う。
そして、唯依達もまた配備された新型、『武御雷』の慣熟訓練の最中だった。彼女達の頭上をモスラとバトラが通過していく。そして、唯依達はそれを見送る。そんな中で安芸が……。
「お~~い!頑張れよ~~!」
白い武御雷で手を振りながら、二匹を見送るのだった。
そしてそんな安芸を、唯依達が笑みを浮かべながら見つめているのだった。
そして、2匹がついに佐渡島近くまで到達した。
既にフェイズ3まで到達しつつある佐渡島ハイヴ。その内部にいるBETAの個体数は20万に届く可能性さえある。
そして、ハイヴから早速光線属種による迎撃のレーザーが放たれた。だがそれは、1万年にも及ぶ進化によって以前のモスラとバトラよりも強化された、今の2匹には通用しない。
『『ビシュゥゥゥゥゥッ!!』』
逆に、グリーンモスラの放った『クロスヒート・レーザー』とバトラの『プリズム光線』が光線属種を軒並み焼き払っていく。そしてモスラとバトラは高速でハイヴの真横を通過していく。それだけで発生した爆風が小型の戦車級などを吹き飛ばす。
そしてバトラとモスラは左右に分かれた。モスラは、その体を小さな光のモスラに分裂させ相手を攻撃する、『イシュージョン・ミラージュ』で要撃級の群れへと突進しなぎ払う。バトラのプリズム光線が、突撃級の群れを背後から焼き払う。
そして、左右に並んだモスラとバトラは、マッハ80を超える超高速で敵に体当たりを放つ技、『エクセル・ダッシュ』で地表スレスレを駆け抜ける。発生したソニックブームはいとも容易く要撃級や戦車級の体を引き裂き、体当たりを喰らった要塞級がまるで木の葉のように天高く、バラバラにされながら打ち上げられる。
そして再び別れたモスラとバトラ。するとハイヴの中から出現した新たな光線属種がモスラを狙ってレーザーを放つ。だが、モスラに気を取られている間に旋回して戻ってきたバトラのプリズム光線がこれをなぎ払う。かといってバトラに集中すれば、今度はモスラのクロスヒート・レーザーで焼き払われる。
お互いがお互いをカバーする絶妙なコンビネーションの前に、BETAは瞬く間にその姿を減らしていった。
そして、最後の仕上げと言わんばかりに、モスラはその体から緑色の粒子を放出し始めた。
周囲に撒かれた粒子、鱗粉がレンズの役割を果たしハイヴ周囲のBETAを高温の光で焼き払っていく。そしてモスラが鱗粉を散布するほど、熱量は上がっていく。しまいにはBETAが蒸発し始めた。
これこそが、今のモスラの最強の必殺技、鱗粉のレンズによって太陽の光を増幅し、超高温の光を放つ、『シャイン・ストライク・バスター』だ。
最大時には太陽表面の20%にも到達する光が、BETAを焼き払い、ハイヴモニュメントを溶解させる。
そして、ハイヴモニュメントの真上で放たれたシャイン・ストライク・バスターの高熱は地下深くにある反応炉をも焼き尽くしてしまった。直後に行き場の無くなったエネルギーが大爆発を起こした。爆風がハイヴ内部を駆け巡り、各地の門から爆炎と砂煙が飛び出す。
そこから更に、モスラとバトラが光線で残っていたBETA群を焼き払う。
そして、動く物の無くなった大地にただ2人。モスラとバトラが降り立つ。
そんな二匹の様子を、ドローンや人工衛星の映像越しに見つめていた夕呼や芹沢。更にはみちる達や観測班の兵士達。
人類は今、新たにタッグでハイヴを攻略する力を持った存在を前にしていた。
誰もがその力に驚き、愕然としていた。
だが、本当の驚愕はこれからだった。
『キュアァァァァァァッ』
モスラが一度、咆哮を上げると飛び上がった。そして佐渡島の周囲を飛びながら、翼より緑色の粒子をまき散らす。
『戦いは終わったのに何を?』。多くの人々は内心そう思っていた。
そして、モスラは『奇跡』を起こした。
BETAによって食い荒らされ、もはや土ばかりしか無い佐渡島の大地に草花が咲き誇り始めた。
それこそが、モスラの起こす奇跡、『パルセフォニック・シャワー』の力だった。
荒れ果てていた島を、自然の緑が覆い尽くす。
誰しもが、モスラの起こす奇跡を前に驚き、愕然としていた。今のモスラは正に、『生命の女神』と呼ぶに相応しい力を発揮していた。そして……。
「そうか。そう言う事だったのか」
遙か後方、インファント島の基地の中で、事態を見守っていた芹沢がポツリと呟く。
「博士?」
それに気づいて孝之が声を掛けた。
「やはり、彼等こそがこの星の王なのだ。人間には為しえなかった、BETAによる破壊を癒やす力をモスラは持っている。かつてコスモスがモスラを神と崇めた事は、間違いでは無い。彼女こそが、『女神』と呼ばれるに相応しい存在だからだ。彼女こそが、命を繋げる力を持った存在なのだ」
「モスラが、女神」
孝之は、そう呟きながらモニターへと視線を戻す。彼の見つめるモニターの先では、ほんの数分前まで荒れ果てた大地だった佐渡島が、今は緑溢れる島へと変貌していた。
『これが、怪獣かよ』
改めて、孝之はその力に驚嘆し、恐れ、そして理解した。してしまった。
G弾をも歯牙に掛けぬ力を持ったキングギドラ。
荒れた大地をも癒やす力を持ったモスラ。
そして、ハイヴすらも易々と打倒するゴジラ。
これまで見てきた怪獣の力の前に、人類が無力である事を彼は理解した。そして同時に、彼等が『王』と呼ばれるに相応しい存在である事を。
そうやって、モスラとバトラの協力によって佐渡島ハイヴは、たった数十分で陥落してしまった。そしてこれは、帝国内部で更なる怪獣信仰を加速させる結果となった。横浜ハイヴを落としたキングギドラと、佐渡島ハイヴを落としたモスラとバトラ。
その存在は、帝国内部で瞬く間に大きく取り上げられ、そして人々の信仰心を集めた。
だが、これは帝国だけに限った話ではない。
佐渡島ハイヴ攻略の数日後。その頃、マレー半島やタイ、カンボジアを中心とした東南アジア戦線では人類とBETAによる攻防戦が日夜続いていた。
そしてその日も、大東亜連合軍を主体とする部隊とBETA群の戦いが行われていた。
F-4ファントムや『F-5フリーダムファイター』という第1世代の戦術機を中心とした部隊が展開し戦闘を繰り広げていた。元々、大東亜連合軍は1990年代後半に差し掛かった段階で第2世代戦術機、『F-15イーグル』などの機種転換を始めたばかりだ。なので戦力の大半は第1世代機なのだ。
そして、そんな第1世代に乗る衛士の1人である青年は、賢明に戦っていた。
F-4ファントムに乗り、突撃砲を撃ちまくる。何とか襲いかかってくる戦車級の群れを仲間と共に退けたが、その奥には、その群れが小さく思える程の膨大な数のBETAが存在し、今もこちらに向かって来ている。
『畜生っ!畜生っ!!』
既に何度目かも忘れた悪態を付きながら、彼は空になった36ミリ砲弾のマガジンを捨て新しいのを装填する。
そして、再び発砲しようとした、その時。
『コマンドポストより各隊へっ!太平洋側から未確認飛行物体を確認っ!その数2!速度はマッハ2で接近中っ!航空機ではないっ!各隊留意せよっ!』
前線指揮所であるコマンドポストより通信が届く。だが、大勢の兵士達にそれを冷静に聞く余裕はなかった。
と、その時。
『カッ!ドォォォォォォンッ!』
彼等の戦術機の後方から飛来した光が、BETA群を貫く。
「ッ!?何だっ!?」
彼は驚き慌てて振り返った。直後、彼やその仲間の戦術機の脇を通り抜けるように、モスラのイリュージョン・ミラージュが駆け抜け、BETA群に突撃していく。
「な、何だ?あれ?」
彼は、あまりにも現実離れしたその光景に、戦闘中だというのに呆然となってしまった。
その時。
『コマンドポストより全隊へ!未確認飛行物体は先日出現が確認された怪獣、モスラ及びバトラと思われる!各隊怪獣への発砲は極力控えつつ防衛線を維持せよっ!』
再びコマンボポストから届く通信。しかし今度の彼等にはそれを聞く余裕があった。
「か、怪獣、だと?」
彼は驚きながらも、空中で分身を再合体させるモスラを見上げていた。
更に彼からは見えない場所で、バトラもまたプリズム光線を撃ちまくりながらBETAと戦っていた。
モスラは、再合体と同時に周辺に鱗粉を散布し始めた。すると撒かれた鱗粉の結界から幾重もの光の柱が落下し、BETAを轢殺していく。これもモスラの技、『スパークリング・パイルロード』だ。次々とBETAが大地のシミになっていく。
モスラとバトラは、その力でBETAを蹂躙していった。
その戦闘時間は、精々10分程度。軍隊が総力を挙げて、食い止めるのがやっとのBETAの大軍を僅か10分程度で壊滅させてしまった。
その現実に、衛士や兵士の多くは喜ぶよりも打ちひしがれた。
『あんな怪物には勝てない』。そんな現実が彼等にのし掛かった。
だが、その絶望をも、モスラは祓って見せた。
戦いを終えたはずのモスラが、小高い丘の上に降り立ち戦術機部隊の方を、人間たちの方を見つめている。既に戦意を喪失しつつあった戦術機たちは、ジリジリと後退を始めた。
だが、次の瞬間。
『キュアァァァァァァッ!』
モスラが咆哮し、翼を広げた。すると翼から粒子、『パルセフォニック・シャワー』の光が周囲に広がっていく。そしてその力で、荒れた大地に緑が戻っていく。重金属雲の雲も消え、青空が広がる。そして……。
彼等の後方にある基地の中や戦場で、瀕死の重傷を負って今際の際にあった兵士達の傷すらも、モスラはその力で癒やして見せた。
傷ついた人々は立ち上がり、人々は奇跡によって復活した大地をその足で踏みしめる。曇天の空が吹き飛び、青空が広がる。
灰色に染まっていた、ディストピアもかくやの荒れ果てた戦場が、一瞬で緑に覆われ太陽に照らされる大地へと変貌した。
そして、歩兵達は1人、また1人とその場に膝を突き、まるで神に頭を垂れるようにしてモスラを崇め始めた。中には涙を流し大地の復活を喜ぶ者や、今際の際から生きて生還した事を歓喜する者達もいた。
そしてモスラは、再び咆哮を上げると飛び上がり、バトラと共にどこかへと去って行った。
そしてそれ以降、世界各地の戦線にモスラとバトラが共に現れるようになった。
BETAを倒す力もさる事ながら、大地や命を復活させるその力も相まって、モスラを生命の女神と奉る人々も増え始めていた。
こうして、世界に怪獣信仰は広まりつつあった。
そして更に……。
ソビエト軍、某所にある研究施設で、怪獣の事が書かれた新聞を手にしていた男がいた。
彼の名は『アレキエフ・マエロフ』。ソビエトの設計技師で戦術機開発などに関わっていた1人だ。だが、そんな彼は今……。
「あぁ!何と喜ばしい日だっ!また新しい神々が顕現なされたぁっ!命を繋ぐ力を持った女神モスラッ!女神の番いにして破壊の化身男神バトラっ!あぁ本当に喜ばしいぃっ!アハハハハハハハッ!」
狂ったように笑みを浮かべるマエロフ。既に42歳と中年な彼がこうなった理由。それは以前、ゴジラがブラゴエスチェンスクハイヴを攻撃していた時、彼が携わって居た『あるプロジェクト』の関係で『出来るだけ生のゴジラが見たい』、と言う事で彼は可能な限りハイヴに近づき、戦うゴジラの姿を目にした。目にしてしまった。
そして、その結果彼は『狂信者』となってしまったのだ。彼はゴジラを『黙示録の獣』、『神々の王』、『真の霊長類』、『圧倒的支配者』として称え始めたのだ。最もその結果、プロジェクトから外され今は閑職に追いやられてしまった。ギリギリ、兵器開発に関してはそこそこの経験と知識、実績があった為、用済みで捨てられる事は無かったのが現状だ。
だが今の彼にとってもはやそんな事はどうでも良い。なぜなら、そんな事よりも彼にとって重要なのは『怪獣』なのだから。
「あぁっ!あぁクソッ!私はなぜこんな所に居るんだっ!写真じゃ無い!生だっ!生で神々のご尊顔を拝したいっ!だがここに居る限りそれは不可能に近いっ!しかしどうすれば……。ブツブツ……」
あちこちを行ったり来たりしながら何やらブツブツと呟くマエロフ。
そして、それから数日後。マエロフは研究施設を脱走。帝国へと『亡命』するのだった。
のちに『ソビエトの狂人』と揶揄されながらも夕呼達に協力し、『ある兵器』を生み出す男が帝国へとやってくるのだった。
第10話 END
終盤で登場したマエロフはオリキャラの1人です。
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