マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~   作:ユウキ003

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今回はトータルイクリプス、第13話冒頭で語られた2000年5月の出雲攻略戦をベースにしています。序盤は夕呼達で、中盤と後半が作戦ベースです。


第11話 出雲攻略作戦

インファント島のコスモス基地を調べていた夕呼達は、モスラとバトラの覚醒が近い事を知る。そして夕呼は、轟天号をベースにしつつ新たに3隻の空中戦艦を、基地の力であるザットを利用して開発。これを国連に提供する事などを条件に基地の所有権を獲得した。そんな中でモスラとバトラが覚醒。2匹は早速佐渡島ハイヴを崩壊させ、その後も各地の戦線に現れてはBETAを倒し大地と傷ついた人々を癒やすのだった。

 

 

モスラとバトラの出現から2週間ほど経った4月上旬。

あれからというのも、夕呼は横浜基地から機材をいくつかこっちのコスモスベースへと運び込んでいた。そして人工知能であり、優れた演算能力を持つゼアの力と、パンドラボックスに内包されている知識を使って研究を行っていた。そしてその護衛の為に、デリング中隊とヴァルキリー中隊がコスモスベースに常駐するようになっていた。

 

そして今は基地内の隊舎で生活しているみちるや水月、美冴たちヴァルキリーズの女性衛士や孝之たち男性衛士。とは言え隊舎の作りがしっかりしており風呂なども性別で分けられた作りになっていたりと、かなり生活しやすい空間になっていた。

 

更に彼等にとって嬉しいのは、現在の人類の主な食料源となっている『合成食料』よりも美味い食事が食えている事だった。BETAの侵略によって動植物が激減している今の世界で、人間が、特に最前線の衛士達が食べるのは『合成食料』を使って作られた料理だ。これが本物の料理や食材と比較して『不味い』のだ。良く言っても『美味しくは無い』が精々な合成食料由来の食事。

 

これまで水月や孝之たちが居た横浜基地では『京塚 志津江(しずえ)』と言うPX(一言で言うと購買部)を仕切っていた女性の料理の腕前のおかげで合成食料の料理でもまぁまぁ美味しい料理は食べられていた。しかしその横浜基地を離れる、と言う事になって孝之や慎二は内心ため息をついていた。もちろん水月達もだ。

 

しかし、そんな中でゼアが夕呼にある提案をした。基地に来ていた彼等の会話を監視カメラ越しに聞いたゼアが、『食事の質の悪さは士気の低下に繋がるため、早急にこの問題に対処すべきです』と夕呼に言ったのだ。夕呼にしてみれば、ゼアのリソースをオルタネイティブ4関係に注ぎ込みたかったが、彼女も合成食の味の悪さは知っていたので、渋々ゼアの提案を受諾した。それが数日前のことだ。そしてゼアは、夕呼が持ってきた合成食料のデータを見た後、数時間で『新たな調味料』を開発し生み出した。夕呼はこれを使って、女性衛士の1人に料理をさせた。彼女の料理の腕は平均的なレベルだ。なので料理は出来ても合成食料の『不味さ』をどうにかすると言う志津江さんほどの腕は無かった。

 

しかし、作られた料理の味は普段口にしていた合成食料の料理とは比較にならないほどのおいしさだった。これには、実際に食事をした夕呼も驚かざるを得なかった。そして翌日には、彼女から国連を経由して全世界に向けてこの調味料のレシピが公開され、世界の食事情は以前よりもマシになった。

 

そして結果的に、ゼアの力を周囲に広める結果にもなってしまった。

 

 

「……どう思われますか?これを」

某国の会議室に、いつぞやの時のように数人の男女が集められていた。そして発言した1人の男性の手元には、夕呼がゼアを使って開発した調味料が置かれている。

「今回の一件で、あの基地の価値は更に上がった」

 

「例の人工知能ですか?」

議長である男性の言葉に、女性の1人が問いかける。

「そうだ。あれには自分で判断を下す人格があるようだ。国連に提出された報告書によれば、元々この調味料は人工知能であるゼアの提案によって開発されたようだ」

「つまり、そのゼアには情報さえあれば新兵器を開発出来る、と言う事ですね?」

「そうだ。情報を得て、分析し、最適な答えを人間に提示する。そして許可が下りれば、その答えを生み出す。ゼアの存在があれば、どれほどの力となるか想像も付かない」

 

「……では、破壊を?」

 

その時、男の1人が物騒な事を言い出した。ゼアの大本はコスモスベースにある。ゼアの破壊はつまりコスモスベースへの攻撃に他ならない。

 

「いや。壊すには惜しい存在だ。それに今はまだその時ではない。ただでさえモスラの奇跡にも等しい技のおかげで、インファント島への人々の興味は強い。下手に動けば感づかれる可能性もある」

「しばらくは、様子見ですか?」

「そうだ。それに、早急に対怪獣用兵器の設計開発とテストをしなければならん。万が一あれらの存在が我が祖国の敵となった時、戦い勝つためにもな」

 

その時。

「勝てますかね?あんな存在に」

1人の男が弱気なことを言い出した。あんな存在、とは当然ゴジラやギドラを指す。

「例えどれだけ不利であろうと、矛と盾は必要であろう?それが無ければ、我が国の国民が奴らによって蹂躙されるだけだぞ。……備えは、必要なのだ」

 

議長である男の言葉に、誰も何も言わなくなった。

 

「全ては、祖国と、この国で暮す『アメリカ』国民のために」

 

彼等にとって、最も優先されるべきは祖国、アメリカ合衆国の事であった。だが、それ故に他国を利用する事も辞さず、それ故に他国からの反発も強い。そしてまた、その強い愛国心故に、道を踏み外そうとしていた。

そして皮肉かな、今この場にそれを正せる人間は1人も居なかったのだった。

 

 

 

一方、コスモスベースでは日々新兵器の開発も続いていた。

夕呼はパンドラボックス内部に残っていたデータベースから人間が使う銃器サイズのレールガンである『電磁加速小銃』と、同様の原理の『電磁加速拳銃』(※アニゴジでハルオ達が装備していた銃)を開発。ザットの力で数丁を生産し、基地施設内部の試射場で水月や孝之達に試させた後、これを国連軍司令部へと提出した。

 

そうやって、国連軍に対して次々と兵器を提供する夕呼。もちろんこれには裏がある。それは国連、延いてはその後ろに居る米国などに貸しを作る為だ。

そんなある日。

 

「博士、少し良いか?」

コスモスベースに創られた夕呼の部屋にパウルが訪れた。

「あら司令?何か御用ですか?」

「あぁ。少し話を聞いておきたくてね」

「と言うと?」

 

「……単刀直入に聞くが博士。ここの設備があれば怪獣を倒す事の出来る装備を開発出来るのか?」

「……」

パウルの言葉に、夕呼は無言で表情を引き締める。やがて彼女は静かに立ち上がると、部屋の壁に立てかけてある施設の見取り図の前に立った。

 

「その質問の答えは、可です。ですが、相手の能力や格にもよります」

「と言うと?」

「怪獣にもランクと言いますか、実力には差があります。例えば中国やロシアなどで活動が確認されているアンギラスや帝国のバラン。あれ位であれば何とかなる兵器を作れるでしょう。しかしそれ以上、例えばモスラやバトラ、キングギドラほどとなると不可能です。当然この3匹より格上のゴジラもです。ですがそもそもな話、彼等と戦おうとする事自体が間違いだと私は考えます」

 

「どういうことかな?」

「現状、私達人類と怪獣の関係は『敵の敵は味方』という言葉が似合います。ですがより正確に言えば『敵でも味方でもない』、つまり『中立』です。ゴジラの侵攻によって帝国でも少なく無い被害が出ましたが、あれはゴジラに敵意があった訳ではありません。犠牲者には申し訳無いですが、『巻き込まれた』、『運が悪かった』としか言えませんね」

「……あれでかなりの人間が死んだ。遺族はそんな言葉では納得しないだろう」

「えぇ。ですが、現にそうとしか言えません。実際ゴジラが人間を巻き込んだのは帝国の一件だけですからね」

 

「むぅ。……それで、彼等を敵にする事が間違い、とは?」

「その言葉通りの意味です。彼等の今の立場は中立。彼等を我々人類の敵とするか味方とするかは我々の行動次第。……ですが、ただでさえBETAに押されていた我々人類がここから更に人類、怪獣、BETAの三つ巴の大戦を繰り広げたとして、司令には人類が生き残れる未来が予想出来ますか?」

 

「……出来ぬ」

夕呼の言葉に、パウルは正直にそう答えた。実際、ただでさえBETA相手に苦戦していたのに、そこで更にBETA以上に強力な怪獣とも戦ったとして、誰が『勝てる』と言えるのか。

 

「そう。その通りです。そしてそれを考えれば現状怪獣も含めた三つ巴の戦いは、愚策中の愚策。それを考えれば彼等と敵対するよりも、共闘、とまでは行かなくても上手く利用し人類が生き残れるようにした方が賢くはありませんか?」

「……そうだな博士。帝国の、龍神の姫巫女達という前例もある事だからな。当面はやはり、怪獣の様子を観察し情報を集めるほか無いか」

「えぇ。彼等と上手く付き合っていくためにもね」

 

パウルは夕呼の言葉に頷いた。

 

そして少し計画の進捗状況について話をしたあと、パウルは部屋を後にしようとした。

「あぁ、そう言えば」

そう言って足を止めて振り返るパウル。

 

「帝国では出雲攻略戦が行われるそうだが、博士はどう思う?この作戦について」

「それはもちろん、キングギドラ次第かと」

「やはりそうである、か。では失礼する」

 

そう言って部屋を後にするパウル。

 

 

そして、彼の言うとおり、2000年5月。帝国は奪われた中部地方より西を奪還するために帝国陸軍や斯衛軍が合同で、島根県の出雲市や松江市一帯をBETAから奪還する『出雲奪還作戦』を決行する事にした。

 

そして、この作戦には五摂家の1つ、崇宰家当主、崇宰恭子も青い武御雷に乗って自身の部隊である『斯衛軍第3大隊』を率いながら参加していた。しかし、やはり物量で勝っているBETAの前に彼女達も苦戦を強いられていた。

 

「くっ!?」

時間が経てば経つほど、被害が広がっていく。通信機越しに聞こえる悲鳴のような報告に彼女が歯がみしていた、その時。

 

『『『ビィィィィィィィィィィッ!!!!』』』

彼女たちに向かって来ていたBETAの群れを、雷撃のような光線、引力光線がなぎ払った。

「ッ!?まさかっ!」

 

彼女が振り返ると、そこには黄金の粒子を周囲に浮かべながらこちらに向かって飛んでくるキングギドラだった。

 

そして更に、そのキングギドラの『周りを固める12機の武御雷と24機の瑞鶴』。

キングギドラは、引力光線を撃ちまくる。それに負けじと光線属種がレーザーを放ってくるが、それもギドラが周囲に展開した黄金の粒子による結界に阻まれ、ギドラは愚かその周囲を飛行する戦術機を落とす事も出来ない。

 

『『『キュルァァァァァァァァッ!!!』』』

そしてギドラが叫ぶと、ギドラの必殺技でもあるビッグスパークボールがBETA群の中央に着弾。大爆発を起こし一気に数千のBETAを吹っ飛ばした。

 

その隙をついて着陸するギドラ。更にその周囲に降り立つ武御雷と瑞鶴。

 

「大隊長より各機へ!」

そして、赤い武御雷、所謂『F型』に乗る佳織から指示が飛んだ。今の彼女は部隊再編に当って大尉に昇格。更に唯依たち初期メンバーである12人も既に中尉へと昇格していた。

 

「これより我々はキングギドラを援護しつつ付近のBETAを掃討するっ!」

「「「「「了解っ!」」」」」

佳織の言葉に唯依達、つまり歴戦の衛士となった彼女達が答える。

唯依が乗っているのは黄色い武御雷。これは佳織のF型と同じ仕様である。それ以外の上総や志摩子達は白い『A型』と呼ばれる武御雷に乗っている。そんな彼女達も既にキングギドラと共に戦った戦闘の数は二桁を超えている。

それもあってか、彼女達もすっかりベテラン衛士の仲間入りを果たしている。

 

「良いか新兵共っ!」

更に佳織は後ろの瑞鶴に乗る衛士達に向かって叫んだ。今現在、唯依達の部隊に追加要員として配属された衛士の殆どはかつての唯依達と同じ新兵だった。彼女たちも、既に特別遊撃隊の衛士として戦った経験はあるが、それもせいぜい数回。しかもこれほど大規模な戦闘は初めてなのだ。緊張するな、と言うのは無理な話だ。

 

それ故に新兵である彼女達も冷や汗を浮かべながら指示を聞いていた。

「我々の主任務は『キングギドラの援護』だっ!要塞級、突撃級、光線級はキングギドラが倒してくれるが、戦車級や要撃級は数が多いっ!そこで我々はキングギドラに群がるこれら2種を優先的に対処するっ!行くぞっ!各機兵器使用自由っ!ギドラを援護せよっ!」

 

「「「「「「「「「了解っ!」」」」」」」」」」

 

佳織の指示に従って、戦闘を行うギドラの周囲に部隊が展開される。

ギドラを中心としてその周囲に、円形に部隊が展開され、迫り来る戦車級に対して優先的に対処していく。そんな中で唯依達は……。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」

安芸は武御雷の両手に握った突撃砲。更には背面の『可動兵装担架システム』を使って脇の下から覗かせた2門の突撃砲。合計4門の突撃砲を撃ちまくる。更に彼女の周囲に展開する瑞鶴たちも突撃砲を撃ちまくり銃弾の壁を形成し戦車級を蹴散らしていく。

 

「安芸っ!最初から飛ばしすぎっ!」

志摩子はそんな彼女の様子に気づいてそう注意しながら支援突撃砲で正確に要撃級の胴体を撃ち抜いていく。

「全く。フォローしますわっ!」

すると上総の武御雷と部下の瑞鶴数機が安芸たちの後方に展開。支援突撃砲を手に迫り来る要撃級の群れへと攻撃を開始した。

 

更に彼女たちから少し離れた所でも、唯依と和泉が部隊を率いて戦っていた。

「無理に接近戦は仕掛けないでっ!今はとにかく距離を保ちつつ射撃を継続してっ!」

「「「「りょ、了解っ!」」」」

和泉の指示に部下の少女達が頷きながら、射撃を継続する。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

唯依は、両手で長刀を持ち戦車級の群れに突進する。振るわれる刃が戦車級を何匹もなぎ払い、それを部下の瑞鶴たちが援護する。

 

その傍でキングギドラが3本の首から放つ引力光線で、次々とBETAの群れを撃破していく。更に……。

「ハイドラ1より各機へ!」

恭子はギドラの登場に合わせて指示を出した。

 

「これより我々は特別遊撃隊と共闘しBETA群を殲滅するっ!」

「「「「「「「「了解っ!」」」」」」」」

恭子の指示に従い、残っていた戦術機たちが合流し部隊を立て直すと佳織達の特別遊撃隊と合流し戦闘を開始した。

 

「助かります崇宰大尉」

「いいや。礼を言うのはこちらの方だ」

通信でやり取りをする佳織と恭子。階級は同じ2人だが、立場的には恭子の方が上だ。

 

そんな2人の視線の先では、合計で60機を超える戦術機が戦っていた。

しかしその戦術機部隊を、配下を従えるようにして戦う存在がいた。キングギドラだ。

ギドラの戦う傍で戦術機たちが彼を守りフォローする。

 

それはまるで、ギドラの花道を戦術機たちが作るような。

或いは『王の歩みを進めるための露払い』をしているようであった。

それはまるで、神に仕える戦乙女、ヴァルキリーが神と共に戦場を戦っているようであった。

 

ギドラが飛び上がり、ビックスパークボールで最後の群れをなぎ払う。僅かに生き残った戦車級などを戦術機部隊が殲滅する。

 

そして、その場での戦いは終わった。だが美保湾から旧米子市に向けて大陸からBETAが上陸しようとしていた。それを察したキングギドラは威嚇するようにうなり声を上げるとすぐに飛び上がり、飛んでいった。そして佳織達も、何度もギドラと共に戦ってきたのだ。僅かな声のトーンからギドラの様子を察した佳織は……。

 

「各機っ!残弾及び推進剤の残りを確認っ!動ける者はギドラに続けっ!」

「「「「「「了解っ!」」」」」」

佳織が咄嗟に指示を出し、36機の戦術機がギドラの後を追って飛んでいく。

それを見送る恭子の青い、『R型』の武御雷。

 

「大尉、我々は……」

その時部下の1人が声を掛けてきた。指示を待っているのだ。

恭子は一瞬沈黙した後。

 

「私達も行くぞ。ギドラ及び特別遊撃隊を援護するっ!

 斯衛軍の矜持を、異星起源種に見せつけるっ!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

そして、恭子達も唯依達の後を、更にはギドラの後を追った。

 

その後、米子市に設置されたHQ、司令部にBETAが迫りあわや壊滅か?となったがそれもギドラと唯依や恭子たちの活躍で免れたのだった。

 

そして戦闘終了後には、BETAの屍の山の上で雄叫びを上げるギドラに対し、多くの衛士や兵士達が歓声を上げた。

 

それから少しした後、恭子や唯依達は機体をHQ近くの仮設格納庫へと入れた。その後恭子は大隊長としてHQへ報告に向かった。そして報告が終わり、仮設の建物を出ると、そこでばったり、唯依と出くわした。彼女は水のボトルを数本手にし、強化装備の上にジャケット、『Cウォーニングジャケット』というパイロットスーツである衛士強化装備の内蔵バッテリーの消費を抑えるジャケットを纏っていた。

 

余談だが、衛士強化装備には電子機器などが搭載されており、それらは当然バッテリーで駆動する。戦術機に搭乗していれば、それらは機体から電力が供給されるが通常時はそうもいかないので、今のように待機中は外部バッテリーの役割を果たすCウォーニングジャケットを羽織って居るのだ。

 

 

「あぁ、篁中尉」

「ッ!崇宰大尉!」

咄嗟にボトルを左手にまとめて右手で敬礼する唯依。一応2人は血縁関係にあるが、ここは戦場。なので今はお互い衛士としての立場を考えなければならない。

「お疲れ様です中尉。今は待機任務中?」

「はい。我々の部隊は現在、BETAの奇襲を想定して準待機中となっています。しかし格納庫には水のボトルが無かったので、私が仲間と共にここへ取りに」

「そうだったの」

と、呟く恭子だが、彼女はふと疑問に思った。

「えっと、仮設の格納庫はあっちのはずじゃ?」

 

恭子の言うとおり、格納庫は今彼女が出てきた仮設司令部の反対側だ。ならば何故唯依はこっちにいるのか?と彼女が疑問に思っても仕方無い。

 

「あ、その、実は今、仲間たちはギドラと一緒でして……」

唯依は聞かれ、戸惑いながらも答えたのだが……。

「え?」

 

恭子は一瞬その言葉の意味が分からなかった。そして彼女は以前からギドラに興味があった事や、彼女もしばらくは待機で急いでやる事も無かったので、唯依についていってその言葉の意味を確かめてみる事にした。

 

そして、たどり着くなり驚いた。

 

見ると、前方の少し離れた平地にギドラが横になっているのだ。腹ばいの姿勢で横になり翼も畳んで3つの頭も、顎を大地に付けている。それはまるで動物が眠っているような姿勢だった。

だが恭子が驚いたのはそこでは無い。

 

彼女が驚いたのは、志摩子や和泉、安芸、上総。更には唯依たちと嵐山防衛中隊の頃からの同期である少女達が、ギドラの巨大な頭に背中を預けた姿勢で眠っていたのだ。更にその傍では、瓦礫に腰掛けた佳織がやれやれと言わんばかりの表情で苦笑しながら水のボトルに口を付けているし、同じく瓦礫に座りながら新兵の少女達が先輩である安芸たちの様子を見ていた。

 

「これは、また…。何と言うべきか」

目の前の光景に、恭子は戸惑った様子だ。それもそうだろう。アリとゾウほどの身長差がある人間と怪獣が寄り添って寝ているのだ。驚くなと言うのが無理な話だ。

 

「ギドラも流石に疲れたみたいで。戦いが終わった後私達に付いて来てここで眠り始めてしまったんです。なので、それを見守るつもりだったのですが……」

そう言って、一緒に寝ている安芸たちを見つめて苦笑する唯依。

しかし恭子からしてみれば、そんな事より彼女達が怪獣と一緒に寝ている事の方が仰天以外の何者でもなかった。

 

「あ、その、唯依?」

そして驚きのせいか、ついつい下の名前で彼女を呼んでしまう恭子。

「え?はい」

「貴女達って、こんなに怪獣と、ギドラと触れあう機会が多いのかしら?」

「えぇまぁ。武御雷は指先までスーパーカーボン製のブレードを装備していますから。流石にあの手で撫でてあげる事は出来ませんし」

そう返す唯依だが、恭子からすれば『いやそうじゃなくて』と言いたかった。

 

「今のはその、質問が悪かったわね。貴女達はあぁやって、生身でギドラと触れあう事が多いの?」

「はい。横浜での作戦の時、戦闘終了後に安芸と和泉が自分でギドラを撫でたりしたのがきっかけで。少し前には新兵達にもギドラを触らせたんです。安芸が『通過儀礼だ』とか言って。まぁ、彼女達の方はまだ少し怖いのか積極的ではありませんが、私や安芸たち、あとはたまに如月大尉もギドラを撫でたりしていますよ」

「そう」

 

恭子は唯依の言葉に頷きながらも、ギドラの傍で眠る志摩子達に目を向けた。

彼女達もギドラも、夕暮れ時の中で静かに眠っている。

その表情はとても穏やかで、お互いを信頼している事を伺わせた。

 

そして……。

「ねぇ唯依。ちょっと、五摂家の当主としてではなく1人の人間として。貴女の従妹叔母として聞きたいのだけど、良いかしら?」

「え?はい。何でしょうか、恭子様」

「あなたにとってギドラとは、どういう存在なのかしら?」

「どういった存在、ですか?」

 

唯依はその質問にしばし悩んだ後。

「ギドラは、彼は、私達の戦友であり、仲間であり、守護神ですね」

彼女は笑みを浮かべながらそう答えた。

 

「私はギドラが、バラゴンやガーディーが居たから今もこうして皆と笑っていられるのだと考えています。でなければ、あの京都の戦いで私や彼女達もどうなっていた事か」

「……そう」

初めての初陣である京都での戦い。そしてその時出会った怪獣達、バラゴンとガーディー。

 

「あの時、バラゴン達と出会った『縁』があるからこそ、私達はここまで生きて来れたのだと、私は思います」

そう言って唯依は、ギドラを暖かい表情で見つめていた。

 

「そう。ありがとう唯依。話を聞けて良かったわ」

「いえ。それでは私はこれで」

「えぇ」

恭子は佳織たちの方へと歩いて行く唯依を見送った。

 

そして恭子は、今も眠るギドラへと目を向けた。

 

彼女にとって、唯依は血縁に当る存在。故に時折彼女の事が心配になる事もあった。しかし今こうして唯依は仲間たちと笑っている。

『これも全て、あなたのおかげなのでしょうね。キングギドラ』

 

恭子は理解する。キングギドラがこれまで護ってきた存在の中に、『唯依達の笑顔』もまた含まれていた事を。そして更には、多くの命と幸せが、ギドラによって護られている事を。

 

もちろんギドラが意図している訳では無い。彼は唯依達とは明確な絆を紡いでいるが、それ以外は違う。しかしギドラの護国聖獣として命を守ると言う使命が、結果的に大勢の人々を助け、大切な人々を失うと言う絶望を破壊しているのだ。

 

大切な家族、友人、恋人。BETAとの戦争の中で、そう言った人々との別れは付きものだった。しかしバラゴンやガーディー、そしてキングギドラの出現以降帝国内での戦死者の数は激減している。つまり、その減った分だけギドラは人を助け、更に助けた兵士達の周りにいる人々の幸せも護ったと言う事だ。

 

「ありがとう」

そして恭子は、眠っているギドラに小さくそう呟くとその場を後にした。

 

 

 

その後、出雲作戦もキングギドラの活躍で被害を出しながらも成功。旧米子市を中心に部隊が配置され以降の戦いの前線基地となる。そして唯依達は、今は復興が進んでいる京都の仮設基地を拠点としており、出雲作戦後にそこへ戻っていた。

更に京都と言う都市そのものを要塞化する意見が出てきた為、現在京都付近では要塞化に向けた建設工事が至るところで行われていた。

 

そんな中で、恭子もまた京都にある基地の1つからテレビ会議を行っていた。相手は同じく五摂家の人間である斑鳩や悠陽たちだ。

そんな彼等の議題、と言うのが……。

 

「特別遊撃隊を更に拡充する」、と言う話題だった。

『それは少し、早急過ぎるのではないかな?』

恭子の言葉に、五摂家の1つ、斑鳩家当主の『斑鳩 崇継(たかつぐ)』がそう言って首をかしげる。

 

『彼女達の部隊は設立から大して時間が経っていない。その上でまた拡充したとしても、彼女達が慣れないだけではないかな?』

「少佐のお言葉も最もです。無論、今すぐと言う訳ではありません。が、ギドラと共に戦う彼女達の存在は帝国民の間でも大きな希望となっています。だからこそ、彼女達が功績を挙げ今よりも強くなったとき、速やかにその存在を大きく出来ないかと考え、こうして通信をさせていただきました」

『成程』

 

崇継は恭子の言葉に頷く。更に彼は、他の2人に意見を求めるが、反対意見は無かった。

『では、悠陽様。貴方の意見をお聞きしてもよろしいですか?』

そう言って悠陽に問いかける崇継。

 

『そうですね。私も恭子様の意見には賛成です。なので、将来的な拡充を今の段階から検討しておく、と言う事でよろしいでしょうか?』

「はい。構いません。ありがとうございます悠陽様」

そう言って頭を下げる恭子。

 

『しかし、仮にその拡充案を採用したとして次は連隊規模。そうなれば戦術機の数は108機に登る。とてもこの数の武御雷は揃えられない。かといって瑞鶴では少々心許ないのも事実。どうしたものか』

そう言って悩んだ様子の崇継。

 

すると……。

『その事なのですが、私からも1つ提案をしてもよろしいでしょうか?』

そう言って声を上げる悠陽。

「何でしょうか悠陽様」

 

『今し方思いついた事なのですが、その連隊を、帝国陸軍と合同で設立するのは如何でしょうか?』

「っ、帝国陸軍と、ですか?」

『はい。斯衛軍と陸軍から衛士や戦術機を出し合い、兵員と物資などを揃えた上で1つの軍とするのです』

 

「しかし、そうなると指揮系統にも問題が生じるかと。仮にその一軍を為したとしても連隊長は1人です。それを斯衛と帝国陸軍のどちらかにするしかないとなれば、現場での反発も無いとは……」

『えぇ。それももちろんです。ですが、現場指揮官と後方指揮官を1人ずつ、と言うのは如何でしょうか?例えば、現場で戦術機部隊を指揮する者を1人。基地など後方から部隊を指揮する者を1人。こうすることで、現場で臨機応変に対応する事を可能にした上で、2人の指揮官の立場を対等にすればよろしいのでは無いかと考えます』

「成程。しかし指揮官を2人にするとは言え、それは誰が?」

 

『あくまでも私個人の意見ですから別の方に代る可能性はありますが、陸軍からは彩峰萩閣中将を。斯衛からは、貴女にお願いしようかと考えています。崇宰恭子様』

「え?わ、私がですか?」

『えぇ』

戸惑う恭子に、悠陽はそう言って頷くだけだ。

 

『しかし、そうなるともはやその一軍は斯衛でも陸軍でも無い。帝国内部の新たな軍となるでしょう。陸軍、海軍、宇宙軍、斯衛軍に続く第5の軍という事になるだろう』

と、語る崇継。

 

「怪獣、キングギドラと共に戦うことを前提とした第5の軍」

ポツリと呟く恭子。

 

『その設立も、恐らくはもう少し先になるでしょう。ですが私はその第5軍がこの国の希望になるとも考えています』

悠陽は、そう言って4人に語りかけた。

 

『ならば、先に名前だけでも決めておくのは如何でしょうか?』

『そうですね』

斑鳩の言葉に悠陽はしばし迷った後。

 

『では仮に、ですが。ギドラという大いなる力と共に戦う軍、と言う事でギドラの頭文字を取って≪Gフォース≫と言うのは如何でしょうか?』

「G、フォース」

 

その名をリピートする恭子。不思議と、その単語が良いような気がした彼女は……。

「それで、私は良いと思います」

そう言って静かに頷いた。

 

更に他の3人も異議などは無く、結果的に第5軍の仮の名として『Gフォース』という名前が採用されたのだった。

 

そして恭子がテレビ会議を終えて部屋に戻るとき、小さき笑みを浮かべながら思って居た。

『唯依に面白い土産話が出来たなぁ』、と。

 

 

Gフォース。それはのちにこの国を護る猛者達が怪獣と共に異星起源種に立ち向かう軍となるのだが、それはもう少しだけ、先のお話。

 

     第11話 END

 




って事でGフォース設立フラグが立ちました。

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