マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~   作:ユウキ003

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今回はほぼオリジナルです。オルタネイティブのヒロインの1人がちょっとだけ出てきます。


第12話 希望作戦

国連軍、オルタネイティブ計画の基地となったインファント島のコスモス基地。そこで生活をしながら夕呼は研究に勤しんでいた。そんな中、帝国ではBETAに奪われた京都より以西の本土奪還作戦の一環として出雲攻略作戦を決行。当初は数で勝るBETAに苦戦を強いられるが、キングギドラの加勢によって形勢は逆転する。そんな中で五摂家当主が1人、崇宰恭子はギドラの存在の大きさを認めるのだった。更に彼女は唯依達の部隊を拡充すべきと他の当主である崇継や悠陽と話し合い、将来的に新たな軍、『Gフォース』を設立する事になるのだった。

 

 

そして、2000年6月。夕呼はいつも通りコスモスベースの自室で様々な研究と模索をしていたのだが……。

 

「今更ですが、オルタネイティブ4の計画を根本から変えてみるのは如何ですか?」

「……」

突然彼女の部屋に呼び出されたパウルが、用件は?と聞いて帰ってきたのがこの言葉だ。突然の話に彼が頭を抱えたのは悪く無い。

「なぜそう言う話になるのか、教えてくれないか博士?」

「えぇ。……そもそもこのオルタネイティブ4の目的は、前の第3計画から得られたデータを元に、BETAに対する諜報員を生み出しそこからBETA側の情報を引き出すことが大本の目的でした」

「そうだ。そのために博士は日夜研究をしていたはずだ。しかし肝心の博士が何故そのような事を言い出したのですか?」

 

「一言で言えば、状況がかなり変わってきたから、としか言えませんね」

「……。怪獣、ですかな?」

「えぇ」

パウルの言葉に夕呼は静かに頷く。

 

「現在怪獣によって落とされたハイヴの数は5つ。リヨン、マンダレー、ブラゴエスチェンスク、横浜、佐渡島。内訳はゴジラが3。ギドラが1。モスラとバトラが1。……仮に人間が大軍でもって行えば、数万の犠牲を出して失敗しかねない可能性すらあるハイヴ攻略を単独で、或いは数体で簡単に攻略してしまった怪獣の存在。……更にはこの基地も怪獣モスラとバトラに縁のあるコスモスによってもたらされています。結果的に怪獣たちによって帝国は持ち直し、欧州各国や大東亜連合軍内部でも既に怪獣崇拝、特にモスラとバトラに対する崇拝者が増加傾向にあるとか」

「むぅ。……怪獣ほど、今のこの世界に変化をもたらした存在は他に無い、か」

 

「かつて存在した宗教の多くは、BETAという存在に対して私達人類に何ら救いを与える事が出来ずに人々の信頼を失って失墜。結果的にBETAを滅びと受け入れる恭順派が派閥を広げてきた訳ですが、今度はそれに取って代わるように怪獣信仰が広がりつつある」

「人はいつでも、信じたい物を信じると言う事ですな」

「えぇ。恭順という名の諦め、絶望。しかしそれをひっくり返すかもしれない怪獣の出現によって、人々は希望を見いだした。それが怪獣信仰の根っこです」

 

「むぅ。……それで、その状況の変化に対応するために計画を根底から変える、と?」

「そもそもオルタネイティブ計画全体の目的はBETAの情報収集です。何故情報を集めるのか。それはBETAの弱点を探り勝つ為です。それは私なんかよりも軍人である司令の方が良く理解しているはずですね?」

「うむ。戦争において情報は貴重な物だ。だからこそこの計画は人類の行く末を担う重大

な計画だと私は考えている」

 

「しかし、その重大な計画よりも今人類の未来を担っているのは怪獣です。そして現に国連内部では反オルタネイティブ派が勢力を伸ばしつつある。そしてその派閥の中には怪獣信仰の信者も多いとか」

「つまり、その反オルタネイティブ派に対する牽制として計画を修正する、と?」

「それも無い訳ではありませんが、一番の理由はオルタネイティブ5への牽制ですね」

「む?どういうことかな?」

 

「『オルタネイティブ5』の内容は、司令もご存じでしょう?あれが発動されるという事は、人類がBETAに負けた事に他なりません。それは、最も避けるべき事態です。だからこそ、ここで必要なのは、この基地のゼアとザットの力です」

「どういう事かな?」

 

「今現在、人類にとって怪獣は守護神、神に近い存在です。その神がBETAやハイヴをぶちのめしている事によって人々に希望がもたらされ、結果各地では戦意向上などが見受けられます。そこで、更にこの戦意向上を後押しする策として考えられるのは『オルタネイティブ計画など不要』と思わせる程の戦果を人々にあげさせる事です」

「……成程。少しは読めてきた。つまりこの基地の設備で新兵器を作り、それによってBETAを圧倒し、オルタネイティブ5。つまり地球からの脱出などしなくても良いと人々に理解させるわけかね?」

 

「その通りです。確かにオルタネイティブ計画自体は重大な計画です。ですがそもそもこの計画の最終的な目的は人類が生き残る事。更にオルタネイティブ計画自体は、こう言っては何ですが対BETA諜報員の育成など、BETAを直接ぶっ潰すような直接的な勝利をもたらす物ではありません。奴らの情報を集めると言う、人類の勝利に間接的に関わる計画と言っても良いかもしれません。そして直接的ではないからこそ、この計画に懐疑的な連中もいるのかもしれません。『BETAの情報を集めて弱点が見つかるのか?』、『そんな事に金や労力を割くくらいなら、新しい兵器開発に割くべきだろう』、とね。そしてそんな連中を黙らせる為に必要なのは、純粋にBETAをぶっ潰す『破壊力』、『直接的な戦闘力』です」

 

「成程。形はどうあれ、最終目的である人類の生存を考えればその過程を変更することもやぶさかではない。それが博士の言い分な訳か」

「えぇ。もちろん、従来の計画を進めながら新兵器の開発なども可能です。なにせ、私の『新しい助手(ゼア)』は優秀ですから」

そう言って夕呼は笑みを浮かべる。

 

「……分かった。ならば妥協案という事で、新兵器の開発と従来通りの計画を同時進行という事にしよう。幸い怪獣の活躍で、今の人類には些か余裕があるからな。これでどうかな?」

「えぇ。分かりました」

彼女が頷くと、パウルは部屋を後にしようとした。

 

「あぁそうだ司令。少しよろしいですか?」

「ん?何かな博士?」

「下りるかどうかは分かりませんが、国連軍司令部に打診しておいてほしいのです」

「打診?何を?」

 

「それはもちろん、『ハイヴ攻略作戦』の打診ですよ」

 

そう言って夕呼は笑みを浮かべるのだった。

 

と言う事で、計画に新たな方向性が付け加えられた一方で……。

インファント島の一部に作られた戦術機用の試験場では、水月や孝之、みちる達が『強化型不知火』の運用試験を行っていた。

 

デリング中隊とヴァルキリー中隊が島に常駐するようになって早数ヶ月。そんなある日、戦術機のデータを見ていたゼアから戦術機の改修案が提案され、夕呼はみちる達に相談した後、部隊の一部の不知火を強化改修。見た目はこれまでと同じだが、搭載されているコンピューターや機体運用に関わるOS、装甲素材。ジェネレーターからアクチュエーターまで。外見以外はもはや別物と言っても良いくらい改良された不知火。その動きはもはや戦術機の常識以上の物であった。

 

これまでの戦術機よりも速く、堅く、力強い。この強化型不知火に乗った孝之達の意見としては、『今すぐ部隊の全ての不知火を強化型にするべき』と言わしめる程だった。

その後は帝国横浜基地から代る代る不知火が搬入され強化改修を受け数日の慣熟訓練の後に帝国本土へと戻される日々が続いた。

 

そして今日も今日とて強化型不知火の慣熟訓練を終えた孝之、慎二、水月たちが隊舎の食堂に集まって駄弁っていた。

「いや~しっかし凄いよな~強化型不知火」

ドリンクに口を付けながらそう語る慎二。

「やっぱり、そんなに凄いの?」

「まぁね」

衛士では無いので分からず首をかしげる遙に水月が頷いた。

「反応速度とかパワー。スピード。全部強化されてる感じ。正直、初めて撃震から吹雪に乗り換えた時くらいの衝撃だったわね」

「あぁ。実際、最初はその変化に戸惑って上手く扱えなかったが、慣れてみれば凄い物だよ」

水月の言葉に頷く孝之。

 

「って言うか、こんな強化型の開発まで出来るゼアってスゲぇよな」

「確かに」

慎二の言葉に水月が頷く。

「俺は何でも生み出せるザットの方が凄いと思うんだが」

「あ、私も」

逆に孝之と遙はザットが凄いと思って居た。のだが……。

 

「まぁ実際どっちも凄いんだけどな」

「「「うんうん」」」

孝之の言葉に他の3人が頷いた。

 

その後。

「しっかし、キングギドラのおかげで帝国も随分落ち着いてきたよな」

「そうねぇ。前は国内にハイヴを2つも抱えてたのに、今じゃギドラと協力して西部方面の奪還作戦やってるくらいだし」

慎二の言葉に水月が頷く。

「この前ちょっと横浜の町を見てきたけど、そこそこ復興は進んでたよ」

「マジか。どんな感じだった?」

遙の言葉に孝之が興味を示す。

 

「まだ瓦礫とかがある場所もあったけど、町の大部分は復興して、人も住み始めてたみたい。お店も少しだけと始まってたし」

「そっか。横浜も、少しずつ回復して行ってるんだな」

故郷の復興の兆しに、孝之は笑みを浮かべる。だが彼だけでなく、水月や慎二も嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「あっ、後はやっぱり人にも活気があったかな。何て言うか、前までは皆沈んだ感じだったけど、今は前向きって言うか」

「そっか。やっぱりギドラのおかげかな?」

「多分。水月ちゃんが言った通りだと思うんだけど、町で木彫りのギドラとかモスラの像を見かけたことがあるし。新しく出来た神社も見てきたけど、仏像じゃなくてギドラとモスラの像が飾ってあってびっくりしたよ」

そう言って笑みを浮かべる遙。

 

「やっぱ怪獣崇拝って結構な速度で広がってるんだな~」

と呟きながら天井を見上げる慎二。

「なぁ遙、その神社って結構人居たか?」

「うん。そもそも私も、人がたくさん集まってたから何だろう?って思って行ってみたから」

孝之の言葉に頷き応える遙。

 

「そういやこの前、テレビ番組で話題になってたな。怪獣信仰の事」

ポツリと呟く慎二。

「え?それ私見てないんだけど。どんな内容だった?」

「あぁまぁ、最初は帝国で怪獣信仰が活発な事とか、最近だと仏像の代わりに怪獣の像を造ってる所があるとか。まぁ普通って言うか遙が聞いたのと大して変わんない話だったけど。

あ。そういや最近世界各地、特に欧州とかアジア方面で急速に怪獣信仰の信者が増えてるって話してたな」

「欧州やアジアで?」

「あぁ」

水月の言葉に頷く慎二。

 

「やっぱ、この前のモスラとバトラの活躍のおかげじゃねぇかな?ほら、佐渡島ハイヴを落とした後、モスラとバトラって世界各地を回ってたみたいだからさ」

「あ~。そう言えばニュースになってたわね。世界各地に蝶の怪獣現る、って。まぁでもモスラもバトラも蛾の怪獣らしいけど」

「でも、あんまり蛾って感じはしないよね、モスラって」

「確かに」

遙の言葉に孝之が頷く。

 

「私、あのもふもふの背中に寝っ転がってみたいな~」

「それは、分からなくも無いな」

水月の言葉に慎二も頷く。

「ってか聞いた話だと、怪獣信仰の信者の人達ってモスラを女神って崇めてるらしいぞ?」

「モスラを?何で?」

と、首をかしげる水月。

「そりゃぁ、第1にハイヴをぶっ潰す力がある。第2にすっかり荒廃した大地を生き返らせて尚且つ瀕死の重傷者を助ける力がある。2番目のなんかもうほとんど神の御業ってやつじゃね?」

「まぁ確かに」

慎二の言葉に孝之が頷く。

 

「それに、モスラってあんまり怖くないよね。大きな瞳が可愛いし、あのモフモフの体も、なんだかぬいぐるみみたいで」

「あ~わかる。モスラって可愛いわよね~」

軍人としての責務を一旦は忘れ、年ごろの少女らしい会話をする遥と水月。

 

そんな話をしていた時。

「そ~いやさ」

慎二のつぶやきに他の3人の視線が彼に集まる。

 

「帝国じゃ斯衛軍の特別遊撃隊がキングギドラと一緒に戦ってBETA相手に快勝繰り返してるって話聞くけど、もしかしたら俺たちもそのうち、モスラやバトラと一緒に戦う事になったりしてな」

「いやいや。でも私達だけじゃ足引っ張るだけじゃない?それに見たでしょ?モスラのあの必殺技。下手したら私達まで巻き込まれるって。それを考えれば、流石に無いんじゃない?」

そう言って慎二の言葉に苦笑しながら首をかしげる水月。

 

「そ~だよな~。まぁ俺たちの援護なんかそもそも要らねぇか」

そう言って苦笑する慎二。

 

 

だったのだが、数か月後のある日。

 

「へ?ハイヴ攻略作戦?」

特に事前連絡もなく、コスモスベースの会議室に呼び出されたみちる達、A-01連隊の衛士たち。そしてそんな彼ら、彼女らに伝えられ慎二が首を傾げたのが、『ハイヴ攻略作戦』だった。

 

「そうよ。この作戦名は『オペレーション・ホープ』。つまり希望作戦って所かしら」

「希望」

夕呼の言葉を聞き、その単語をリピートする水月。

 

「今回の目標は朝鮮半島のH20、鉄原ハイヴよ。幸いこの鉄原ハイヴはまだ若い方。なので、ここで叩き潰す」

「……それで、戦力の程は?」

静かに問いかけるみちる。

 

「今回はあなた達A-01連隊を含めた国連軍、帝国軍、大東亜連合軍の3軍連合によるハイヴ攻略よ。兵力は各軍合わせて、およそ2万」

「「「「ッ」」」」

彼女の言葉に、大半の者は息を呑んだ。それもそうだ。2万という兵力はハイヴ攻略を考えれば『少なすぎる数字』なのだ。いくら若いと言っても数万のBETAを要するハイヴにこの程度では攻略出来ない。

 

「これは、いくら何でも少なすぎるのではないですか?」

そして皆を代表して挙手し発言するみちる。しかし彼女達からこの言葉が出るのは夕呼も想定済みだ。

「まぁあなた達の意見も最もね。でも大丈夫よ。何せ今回は、モスラとバトラ、更に帝国のキングギドラが『参加』する予定だから」

「「えっ!?」」

夕呼の言葉に孝之と慎二は声を揃えて驚く。

 

すると、それに合わせるかのように夕呼の背後にあった大きなモニターが鉄原ハイヴ周辺の地図を映し出した。

 

「今回の主役はモスラ、バトラ、キングギドラの3大怪獣よ。この3体がハイヴを攻撃し、私達はそれをサポートする。細かい作戦日程や行程は後で各隊の隊長から聞いて貰う事になるだろうからここからはざっくりとした説明だけど、まず、3大怪獣がハイヴを攻撃しBETAを殲滅。あなた達はそれを後方から支援。……って言っても精々撃ち漏らしの小型種を倒す程度でしょうけど。その後、BETA殲滅後にハイヴ内部の各所に爆弾、『S-11』を設置。全機が、もちろん怪獣も含めて安全圏に退避後にこれを起爆し、ハイヴを完全に破壊する。これが大まかな予定よ。誰か質問は?」

 

夕呼の言葉に、孝之たちが所属するデリング中隊の隊長である『大和田大尉』が手を上げた。

「バトラとモスラはともかく、キングギドラは参戦してくれるのでしょうか?」

「それについては大丈夫よ。ギドラの方は、芹沢博士を通じて斯衛軍の特別遊撃隊に依頼してあるから。相手側もOKしてくれたみたいだし」

そう言って笑みを浮かべる夕呼に、多くの者達が驚いていた。

 

 

そうして、鉄原ハイヴ攻略作戦が開始される事となり、それに参加する部隊は慌ただしく動き出していた。

 

そんな風に動きが慌ただしくなる少し前。夕呼がパウルを通じて鉄原ハイヴ攻略の許可を何とか国連からもぎ取った頃。夕呼が言ったように芹沢を通じて唯依達にこの話が飛んできた。

 

「えぇ!?鉄原のハイヴを攻略するっ!?」

芹沢から聞いた事に安芸が驚いて聞き返してしまった。更に周囲に居る唯依達も驚いた様子だった。

 

「あぁ。モスラとバトラ、キングギドラを主力とし、更にそれをサポートする軍として君たちを含めた帝国軍、国連軍、大東亜連合軍の3軍による部隊を展開。鉄原ハイヴを攻撃するとの事だ」

「しかし、キングギドラも、ですか?彼はあくまでもこの国を護る聖獣です。鉄原ハイヴを

攻撃すると言う事は国外への遠征を意味します。……彼が来てくれるかどうか」

そう言って難しい顔をする上総。

 

「それは、提案者である香月博士も承知の上だった。だからこそ、君たちにお願いしたいのだ。ギドラを説得して欲しい」

そう言って頭を下げる芹沢。

 

その姿に5人はしばし黙り込んだ。が……。

「正直、好きになれない」

「安芸?」

ポツリと呟いた安芸の言葉に唯依が反応する。

 

「私達の恩人を、私達の勝手な理由で引っ張り出そうとしてるのは、正直ギドラに悪い気がして好きになれない」

「うん」

「そうだね」

彼女の言葉に、和泉と志摩子が頷く。

 

「だから、私達から条件を出す。鉄原ハイヴの作戦には私達も参加する。これは絶対だ。でももし、ギドラが少しでも嫌がったら、ギドラは参加させない。ギドラは私達の仲間で戦友だ。都合良く頼れる存在じゃない。だから私達はギドラを尊重する。……そしてもし、無理矢理にでもギドラを参戦させようとしたら……」

「……」

芹沢は、黙って安芸の次の言葉を待った。

 

「少なくとも私は、アンタ達の敵になるよ」

 

安芸は、凄みのある表情でそう呟き、芹沢を睨み付けた。

芹沢は彼女のその怒気を含んだオーラに気圧され僅かに息を呑んだ。

 

だが、それは彼も理解していた事だった。彼女達にとってギドラがどういった存在なのかは百も承知だ。だからこそ……。

「分かった。その条件を呑もう。ギドラが拒否すればそれ以上参加を要請することはしない。香月博士には私からそう言っておく」

彼にその条件を拒否する理由は無かったのだった。

 

 

その数日後。唯依達は武御雷に乗ってギドラと話をするために、富士の樹海跡地となった『草原』を目指していた。

 

かつてはBETAの侵攻で荒れ果てたこの土地も、モスラのパルセフォニック・シャワーの力で緑を取り戻していたのだ。

そしてたどり着いた草原の一角に、ポツリと大きな穴が空いていた。それこそがかつてギドラが眠っていた場所であり、今のギドラの住処だ。ちなみに、ここから数キロの所にギドラの様子を監視するモナークの小規模な基地、アウトポストが設置されている。監視と言ってもギドラは人類に友好的な怪獣なので、目的は監視よりも見守る、と言う事や万が一様子に異変があればそれを安芸達に知らせるのが主な役目となっている。ちなみに何故安芸達に知らせるのか?と聞かれれば、それは彼女達が巷で話題の『龍神の姫巫女』として有名だからだ。実際、この国でギドラと一番親しいのは彼女達だ。だからそれも別段おかしい事ではない。まぁ最も、当の本人達は変なあだ名で呼ばれる事をとても恥ずかしがっているのだが。

 

話を戻し、武御雷が大きな穴の傍に着地すると、中から唯依達の5人が降りてきて穴の中へと入っていった。見た目は洞窟なのだが、唯依達が何度かここに足を運んだ事もあり滑落防止の為に入り口からの降り口にはロープが垂らされたりしていた。

そして奥へ進んでいくと、大きな平べったい岩の上でギドラが眠っていた。

 

『キュルル……?』

しかし来客に気づいたのか、ギドラは小さく喉を鳴らしながら目を開き首を動かした。

「お~~い!ギドラ~~!」

まるで親しい友人に声を掛けるかのような気軽さで声を掛ける安芸。

するとギドラも彼女達の来訪を喜んだのか、キュルルと左右の首が嬉しそうに喉を鳴らした。

 

そして、いつものように少し撫でてあげたあと。

「あのさ、ギドラ。実は今日は大事な話があって来たんだ」

彼女達を代表するように安芸が一歩前に出て話し始めた。

 

近々国外にあるハイヴを攻撃する事。そのためにギドラの力を貸して欲しい事を。

「……その、本当にイヤなら断ってくれて良いんだ。ギドラは私達の恩人だ。だから無理強いだけはしたくない」

そう語る安芸だが、直後に彼女の手が震える。

 

彼女達はこれまでギドラに護られてきた。だがギドラが断れば、今度はそうはいかない。ギドラが傍に居ないと言う事は死ぬ確率が跳ね上がるのだ。

それ故に、彼女達は恐れる。だが安芸はそれを必死に隠し気丈に振る舞おうとした。

「大丈夫だ。大丈夫」

そして自分に言い聞かせるように呟き、彼女は強引に笑みを浮かべた。

 

「何かギドラ以外にも怪獣が一緒に戦ってくれるみたいだから、ギドラが無理して参加する必要は……」

そう、言いかけた時。

『キュルアァァ』

左側の首が、彼女の頬を舌先で舐めた。そして彼女を心配するように、小さく喉を鳴らす。

 

すると、それがスイッチとなって安芸の心を決壊させる。彼女の目から涙が溢れ出す。

「ご、ごめん。ごめん、ギドラ。卑怯だって、ズルいって、都合が良いって、わか、分かってる。でも、でもやっぱり私達だけじゃ怖くて。だから、だから……」

 

そう言って必死に流れる涙を拭う安芸。

 

どれだけ実戦を経験しても、どれだけ高性能な機体に乗っていても、どれだけ強い武器を手にしていても、彼女達はまだうら若き少女たち。そして、死の恐怖はそう簡単に克服できるものではない。だからこそ恐れる。普段はギドラと共に居る事でそれを克服していたのだ。

 

安芸は自分達の都合でギドラを巻き込みたくなかった。自分達人間の都合に、恩人を利用しようとしていることが、恩義に対する背信のようで情けなかった。だからこそ、死ぬ確率を上げる物だとしても無理強いはしたくなかった。だがそれも、ギドラの声を聞き、彼女の本音が漏れ出した。

 

すると、左右の首が中央の首に向かって何かを訴えるように喉を鳴らした。中央の首は、しばし沈黙した後、静かに頷くように喉を鳴らした。

 

すると左の首は喜ぶように喉を鳴らし、もう一度安芸の頬を舐めた。

「ギドラ、一緒に戦って、くれるのか?」

彼女が問いかけると、ギドラは『もちろん』と言わんばかりに喉を鳴らす。

「ホント、ごめん。ごめんな。いつも頼ってばかりでさ」

安芸は涙を流しながらも笑みを浮かべ、ギドラの頭を抱きしめる。

 

「でも、ありがとう、ギドラ」

涙を流す安芸。そんな彼女を慰めるように、ギドラは小さく喉を鳴らすのだった。

 

 

こうして、ギドラの参戦は決定したのだった。

 

 

そして時間は戻り、希望作戦の決行日が迫る中、唯依達は京都にある舞鶴の軍港へ集結していた。その軍港には唯依達を始め、恭子の第3大隊と言った斯衛軍の部隊や帝国陸軍の戦術機部隊が集まっていた。そして唯依達の元に恭子が訪れて居た。

 

「この前の出雲作戦以来ですね」

「お久しぶりです崇宰大尉。お元気そうで何よりです」

5人を代表するように敬礼をしながらそう返す唯依。

そして、恭子は周囲を見回すと、今だけは1人の女性となった。

 

「唯依もみんなも元気そうね。ホントに良かったわ」

そう言って彼女は唯依の頭を撫でる。

「えっ!き、恭子様?何を……」

「私は貴女の従妹叔母でしょ?たまにはそう言う事もしないとね」

そう言って笑みを浮かべる恭子。唯依は戸惑いながらも、撫でられ顔を赤くしていた。

しかしは後ろで安芸達がニヤニヤしているのに気づいて更に顔を赤くしたのだった。

 

その後。

「それにしても、まさか恭子様まで参加されていたとは。驚きました」

「まぁそれについては、私の方から志願したの」

「え?恭子様ご自身で、ですか?」

彼女の言葉に志摩子が驚く。

「えぇ。私としても、モスラとバトラと言う怪獣を近くで見たかったのもあるし。怪獣が一緒なら大丈夫って言う確信もあったから」

恭子はそう言って頷く。

 

「あ。そうだった。怪獣と言えば、唯依達に話しておきたい事があったんだった」

「え?それは一体?」

首をかしげる唯依達に、恭子は少し前、五摂家当主陣との会議で議題に上がったGフォースの事を彼女達に話した。

 

「G、フォース。帝国第5の軍、ですか?」

「えぇ。言わば、ギドラと共に戦うギドラにとっての斯衛軍と言った所かしら」

「ギドラにとっての斯衛軍。それを、私達が?」

そう言って恭子に問いかける安芸。

「えぇ。と言ってもまだ明確に設立が決まった訳じゃないの。だからそこまで期待しない方が良いかもしれないけど、そうなるかもって事だけは覚えておいて」

 

そう言うと、恭子は部下が呼びに来たので唯依達から離れて行った。

 

そして恭子が去った後。

「Gフォース、かぁ」

ポツリと志摩子が呟いた。

「皆はどう思う?Gフォースっての」

「私は、良いと思うな」

志摩子の問いかけに、安芸はそう呟く。

 

「ギドラと戦う。一緒に。一緒に戦って、この国を護る。それって最高じゃん」

そう言って彼女は笑みを浮かべ、他の4人も同意するように笑みを浮かべるのだった。

 

そして更にそのまま駄弁っていると、1人の人影が近づいてきた。

 

「元気そうだな、お前達」

「え?!」

聞こえた声に驚きながら5人が振り返ると、そこに居たのは彼女達が京都の衛士訓練学校に居た時の恩師、『真田晃蔵』だった。

 

「さ、真田教官っ!」

「ふっ、俺はもう教官ではない。今は陸軍の原隊に復帰した身だ。ここでは大尉と呼べ」

「失礼しました、大尉」

驚き戸惑う唯依にそう呟く真田。慌てて訂正する唯依。

 

「まぁ良い。それにしても……」

5人を見回す真田。そして彼は小さく笑みを浮かべた。

「全員、あの頃よりは幾ばくか衛士らしい顔つきになったものだ」

「あ、ありがとうございます。大尉」

 

普段は厳しかった真田からの褒め言葉に戸惑いながらも頭を下げる唯依。

「もしかして大尉も今回の作戦に?」

「あぁ」

 

と、話をしていると、唯依達の少し離れた場所で将官の軍服を着た男性が娘と妻と思われる女性2人と向かい合っていた。

「あれって、もしかして」

「ん?あぁ。あの男性が彩峰中将だ。光州作戦の指揮官であり、世界で初めて怪獣を目撃した人の1人。一緒に居るのは、恐らく奥様と娘さんだろう。確かあれくらいの歳になる娘が居ると聞いた事がある」

「へ~」

 

唯依達が見つめる視線の先では、彼女達より1~2歳ほど年下と思われる少女が母親と共に父、彩峰中将の見送りに来ていた。

「それじゃあ、行ってくる」

「えぇ。どうかお気を付けて」

彼の事を気遣う奥さんと思われる女性。

「あぁ」

萩閣は頷くと、彼女の隣に居た娘、『彩峰(けい)』へと視線を向けた。

 

「慧、俺が留守の間、お母さんを頼んだぞ」

「……うん。いってらっしゃい」

小さく笑みを浮かべながら慧は父、萩閣を見送る。そして彼は待っていた部下と共に軍港の建物の方に行ってしまった。それを見送った後、慧も母親に連れられて軍港を後にした。

 

それを遠くから見守っていた唯依達と真田。

「さて、と。俺もそろそろ行く。お前達の元気そうな顔が見られて何よりだ。ではな」

そう言って真田を離れていった。彼を、無言の敬礼で見送る唯依達。

 

そんな時。

「負けられないよね」

和泉がポツリと呟いた。

「和泉?」

「さっきの女の子、多分私達より少し年下なだけだよね?だから、もしかしたら後数年で兵士として徴兵されるかもしれないって事だよね」

「「「「…………」」」

和泉の言葉に、4人は黙り込む。

 

帝国では1996年より16歳以上の男女は徴兵の対象になっている。これはつまり学徒動員に他ならないのだ。

「ほんのちょっと年上ってだけかもしれないけど。でも自分たちより年下の子達が戦場で戦わされるのは、見てられないなって思って」

「そうですわね。それを考えれば負けられませんわね」

和泉の言葉に上総が頷く。

 

「だったら、勝つだけだろ」

と、その時、安芸がそう言ってパンッと拳をぶつけ合う。

「油断大敵なのは分かってる。でも、私達にはギドラとそれにモスラとバトラも居るんだ。だったらハイヴをぶっ潰して、この国を少しでも平和にする。そうだろ?」

 

安芸の強気な態度に、他の4人も笑みを浮かべる。

 

「そうね。勝ちましょう。勝って、この国の人々に希望を灯そう」

 

唯依の言葉に、4人は頷く。

 

 

そして、数日後。舞鶴の軍港に国連軍や帝国軍の艦艇が集結する。更にその傍にはギドラとモスラ、バトラの姿があった。

 

『全軍へ』

そんな中、国連軍の総指揮官を任されたパウルの声が通信を通して軍港に居る者達の耳に届く。

 

『これより我々は朝鮮半島の鉄原ハイヴを攻略する。……人類とBETAの戦争が始まって既に数十年。これまで人類はずっと後退を続けてきた』

パウルの演説が、唯依や真田、萩閣と言った帝国軍の面々や、大隈級の不知火に搭乗したまま発進の機会を待つみちる達や孝之達の耳に届く。

 

『その度に領土を奪われてきた。だが、今の我々には怪獣という心強い味方がいる。言葉を交わす事は出来ずとも、この星に生きる同じ命として、この危機に立ち向かう味方が。彼等の力を借りた我々にもはや敵はない。……だからこそ、諸君等の手で勝利を勝ち取って欲しい。BETAには勝てないと言う絶望を破壊するために、異星起源種共に勝てると言う現実を証明するためにっ!諸君等の手でっ!歴史に勝利を刻んで欲しいっ!』

 

それが、パウルの演説。士気を爆発させるための言葉。

 

一瞬の静寂。

「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」

あちこちで兵士達の歓声が上がる。文字通り、士気の爆発。

 

数十秒の間を置いてそれが落ち着いた頃。

 

『それではこれより、鉄原ハイヴ攻略作戦、オペレーション・ホープを開始するっ!』

 

そして、パウルの言葉に応じて艦艇のエンジンが唸りを上げ動き出す。更に、彼等の先頭をキングギドラ、モスラ、バトラが飛んでいく。船は3匹の神を追って海原を駆ける。

 

人類に希望の火を灯すため、彼等は神々と共に異星起源種の巣窟へと向かう。

神々と共に戦い、勝利するために。

 

神々は人と共に進む。今、『三大怪獣による総攻撃』が始まろうとしていた。

 

     第12話 END

 




次回もオリジナルの希望作戦のお話です。
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