マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~   作:ユウキ003

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今回はほぼ、怪獣メインのストーリーです。物語自体はあんまり進みません。


第15話 覚醒

希望作戦を経て、帝国内部に結成される事になった新たな軍、Gフォース。しかしそんな中、唯依は両親や親しい知人である巌谷榮二中佐の勧めを受け、帝国斯衛軍の装備実験部隊、ホワイトファングスに移籍する事になった。彼女は、来たるべき決戦の日に備えて、今よりも強い武器や戦術機を作りたいと言う思いからホワイトファングスに異動する事を決意。

 

そして彼女は上総たちと共に、その事をキングギドラへ伝える為富士の樹海跡地となった草原へとやってきた。そしてギドラから鱗をお守りとして受け取ったり、これまでのお礼として舞を披露した唯依達。そして数日後、唯依は正式にホワイトファングスへ異動となった。

 

 

Gフォース設立から、既に1ヶ月ほどが経過した2000年12月。あともう少しで新年と言う事だが、今年は去年よりも平和な新年が祝えそうな雰囲気の帝国。理由は言わずもがな。ギドラとモスラ、バトラ、更に大陸のアンギラスの活躍によってBETAが退けられているからだ。

 

そんな中で、上総や安芸たちはGフォースの衛士として訓練を続けていた。所変わって、国連軍所属の夕呼やパウル、更にはみちる達衛士も、コスモスベースと横浜基地という往来こそあるが、戦闘は皆無と言って良い状況だった。

今は帝国全体が平和を謳歌していたのだった。

 

とは言えBETAとの大戦に勝利したわけではない。なので軍部は今のうちに軍備再編と軍備拡張を急いでいる。新しく斯衛のホワイトファングスに移った唯依も、今は新しい環境に慣れようと忙しい日々を送っていた。

まぁ、それでも最前線で戦うよりは平和な日常なのだが。

 

 

だが、今現在平和なのは最前線から遠い北米や南米、オーストラリア。あとは今のように

前線を押し返した帝国くらいだ。他の国はそうも言ってられない。特に欧州は激戦区だ。

 

キングギドラのように特定の地域を護る怪獣は今も発見されていない。定期的にモスラとバトラがやってきてはBETAの間引きを行っているが、それでも帝国などに比べると怪獣の影響力は大きいとは言えなかった。

 

かつてゴジラによってリヨンハイヴが撃破された後、リヨンハイヴ一帯は放射能に汚染された。それもBETAの光線種変異種、清掃級によって除染されたため、今はEU、欧州連合軍による欧州奪還に向けたBETAとの戦いがあちこちで行われていた。

 

そして今日も。欧州各国の軍が最前線に展開され、西進してくるBETAの群れを相手に戦っていた。

 

今現在、欧州では独自開発された第3世代戦術機が戦線に投入されている。イギリスの『EF-2000タイフーン』、フランスの『ラファール』。スウェーデンの『JAS-39グリペン』。だが、第3世代機は第1世代機や第2世代機と比較して数が少ない。なのでEU軍の主力戦術機は今も第2世代機などが中心だ。

 

そんな第2世代機中心のEU軍。彼等は立派に戦っていたが、それでもやはり戦術機部隊だけではBETAの大軍を退ける事は簡単ではない。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」

絶望的な戦場。それでも兵士たちは必死に戦っていた。生き残る為、誰かを守るために。

それを嘲笑うかのように、倒しても倒してもBETAは向かってくる。その絶望が多くの兵士達の心をへし折る。

 

だが……。

 

『グララッ!』

「っ!?何だっ!?」

突如として大地が揺れ始めた。多くの衛士達は、『BETAの地下侵攻かっ!?』と考え顔を青くしていた。だが違った。

 

『ドバァァァァァァァッ!』

 

突如、EU軍戦術機部隊と向かってくるBETAの中間地点付近の大地が吹き飛んだ。さらのその余波で周囲に砂煙が立ち上る。

「何だ!?何が起きたっ!」

通信の中で状況を確認しようと衛士達が叫ぶ。彼等は咄嗟に戦術機の跳躍ユニットを吹かす事で砂煙を吹き飛ばした。

 

そして彼等は見つけた。

 

赤いトゲトゲとした体。四足歩行に長い尻尾。両手両足の長い爪。そう、それは……。

 

「か、怪獣!?」

そう、正しく怪獣であった。

 

『ギュウアァァァァァァッ!』

 

そして怪獣、『電撃怪獣ボルギルス』は咆哮を上げた。

突然現れた怪獣に、戦術機部隊は戸惑いながら動きを止めてしまった。

 

「HQ!HQ!緊急連絡っ!前線戦闘地帯にて怪獣出現っ!繰り返すっ!怪獣出現っ!」

その時、中隊指揮官であった1人の男がすぐさま後方の司令部へ通信を繋げ報告をした。

 

「何っ!?怪獣が出ただと!?でその怪獣はっ!?モスラか!?バトラか!?」

『いえっ!データベースに該当する怪獣は居ませんっ!新種ですっ!』

「っ!?ここへ来て、新たな怪獣だと!?」

後方にいる将官たちは前線からの報告に戸惑った。彼等が怪獣出現を素直に喜べないのには理由があった。その理由がゴジラだ。怪獣についてはまだ分かっていない事が殆どで、今回出現したボルギルスの特性やゴジラの放射能汚染のように、周辺に何らかの汚染を広げるのではと危惧していたのだ。

 

しかし、ボルギルスにそういった物はなかった。そしてボルギルスは、眼前に迫るBETAの群れを発見すると、猛然と突進していった。

「ッ!怪獣っ、BETA群に向かっていきますっ!」

「見れば分かるっ!総員、警戒態勢のまましばらく様子を見るっ!」

部下の衛士からの報告を受けて、大隊長である1人の衛士はそう指示を飛ばした。

 

猛然と突進していくボルギルス。そのボルギルスに対して光線属種がレーザーを放つ。

 

だが、それは無意味だった。なぜならレーザーが全て、ボルギルスの背中にある角に吸収されてしまうからだ。むしろこれがボルギルスにエネルギーを与える結果となってしまった。

 

ボルギルスは、お返しとばかりにその口から火炎弾を発射しBETAの群れを焼き払う。更にそのままボルギルスはBETAの群れに突進していった。先鋒の突撃級を踏み潰し、後続の戦車級や要撃級までも踏み潰し、更に停止してその場で大回転。鞭の如くしなる巨大な尻尾の一撃がBETA群を吹っ飛ばしてしまった。

 

すると、そこに無数の戦車級がボルギルスの体に飛びついた。1匹、2匹と続いて続々と飛びかかる戦車級。終いにはボルギルスの体が見えなくなってしまった。

 

「あぁっ!」

それを見ていた衛士の1人が悲痛な声を上げた。だが……。

 

『バリバリバリバリッ!!!』

覆い尽くされたボルギルスの体から放たれた放電が、取り付いた戦車級を内側から焼き払い、黒い煙を上げながら戦車級がボロボロと地面に落ちる。

 

そしてもう一度回転による尻尾攻撃で周囲のBETAをなぎ払うと更に火球を放ちBETAを焼き払う。

 

そんなボルギルスの戦いを後方から見つめていたEU軍。しかし、彼らの中にも既に怪獣信仰の種が根付いていた。回数は少ないとは言え、モスラとバトラは何度かこの地に現れて戦った事があるからだ。そして、モスラとバトラによって植え付けられた種は、今芽吹く。

 

「ッ!各機っ!あの怪獣を援護しつつBETAを殲滅するぞっ!」

「「「「「了解っ!」」」」」

1つの部隊がボルギルスを援護するために飛び出した。するとそれに続いて、2つ、3つと部隊が次々と動き出した。

 

『『『『『ドドドドドドドッ!』』』』』

無数の火線を放ちながら戦術機部隊がBETAに向かっていく。そしてボルギルスは、一度彼等に目を向けると、すぐに前を向いて駆け出した。

 

ズズンッ、ズズンッと足音を響かせながら突進し、立ち塞がるBETA全てをその足で、巨体で、粉砕しながら突き進んでいく。ボルギルス突進力の前には、要塞級ですら軽々と弾き飛ばされ宙を舞う。

 

そして真っ直ぐに、BETAの群れの中に1本の道が出来た。その道筋には、踏み潰されグチャグチャになったBETAの死骸が無数にあった。

 

そしてついにボルギルスはBETAの群れを突破した。だがそれに留まらず砂煙を上げながら急停止した彼は、振り返ってその口から火炎弾を放った。

BETA群の最後衛には基本的に光線属種や要塞級が居る。だから光線属種が無数のレーザーを放つ。だが、その全てがボルギルスの背中の角に吸収され彼のエネルギーとなる。そしてそのエネルギーを使って繰り出された火炎弾がBETAを焼き払う。更にボルギルスが軍団の後方に抜けた事で、殆どのBETAが反転。結果的に人類側に背を見せる形となった。

 

「ッ!?今だっ!BETA共の背を攻撃しろっ!一気に殲滅するっ!」

「「「「「了解っ!」」」」」

各軍、各部隊の隊長達は同じような指示を出してBETAの背後を攻撃させた。

 

怪獣ボルギルスとEU軍による挟撃。それは、数万は居たBETA軍団をあっという間に壊滅させてしまったのだった。

 

そして、戦闘終了後にボルギルスは、何と原型を留めていた要塞級の体を食べ始めたのだ。

これには多くの衛士達は戸惑ったが、ボルギルスは本来、莫大なエネルギーを求める怪獣だった。これまでは地下奥深くに潜り、地球そのものからエネルギーを得ていたが、今回の一件でボルギルスは新たなエネルギー原、つまりBETA、延いてはG元素に目を付けたのだ。

 

やがて光線属種のレーザーを吸収してエネルギーにした事もあってか、ボルギルスは最後に一声、大きく咆哮を上げると地中へと帰っていった。

 

 

こうして、欧州で最初の怪獣、ボルギルスが目撃されたのだった。

 

だが、彼と同時期に他の怪獣が現れたのだ。

 

場所はインドシナ半島。そこでは今日も、BETAを相手に人類は戦っていた。そんな時だった。

 

「報告っ!後方より前線に向かう飛行物体をレーダーが捉えましたっ!航空機ではない模様っ!」

「おぉっ、ではモスラとバトラか?」

通信士の報告を聞き、司令部に居た将官の1人が喜びの声を上げた。この東南アジア戦線にもモスラとバトラは度々出現している。なので、航空機ではない飛行物体、と聞けば真っ先にその2匹を思い浮かべても可笑しくない。

 

だが……。

 

「い、いえ。それが、レーダーで捉えたのは1匹だけです。また、速度もモスラやバトラとは違うようで……」

「ッ。何だと?」

その将官は通信士の報告に首をかしげた。

 

『モスラとバトラではない?ではまさか、キングギドラか?いや、ギドラは基本的に帝国からは出てこない。オペレーションホープは例外だったと。他に飛行できる怪獣は現在まで発見されていない。と言う事はまさか……』

「新しい、怪獣?」

彼がポツリと呟いた時。

 

「報告っ!前線の部隊が未確認飛行物体を確認っ!物体はBETA群と戦闘を開始っ!物体は、新種の怪獣の模様っ!」

『『『ザワザワッ!』』』

その報告に司令部はざわついた。

 

「おいっ!前線の部隊からデータリンクで怪獣の画像を入手出来るかっ!?」

「はいっ!やってみますっ!」

将官の指示を受けてすぐにPCを叩く通信士。

「画像データ取得しましたっ!メインモニターに映しますっ!」

 

直後、メインモニターに映った映像に映っていたのは……。

 

「きょ、巨大な、マンティスだと?」

 

巨大なカマキリが、今正にBETAに向かって巨大な鎌を振り下ろす所だった。

 

 

一方、最前線ではその怪獣、『かまきり怪獣カマキラス』が暴れていた。独特な羽音と共にソニックブームを発生させながら飛行して戦車級などの小型種を吹き飛ばし、その手に備わった鎌から繰り出す必殺の一撃、『ハーケン・クラッシュ』は突撃級をその生体鎧ごと切り裂く。と、そこに要撃級の群れが四方八方から向かってくる。周辺を囲まれたカマキラス。

 

『キシィィィィィィッ!!』

だが、カマキラスが咆哮を上げた直後、陽炎のように揺らめいてその体が見えなくなった。

 

目標を見失って無数の要撃級が右往左往していた。と、その時。

『ズバッ!』

いつの間にか群れの背後に回り込んだカマキラスが保護色を解除して現れ、要撃級の群れを後ろから鎌で切り刻んでいく。

 

咄嗟に無数の要撃級が振り向くが遅い。振り返る頃には切り刻まれ、大地の上に横たわる屍になった。生き残っている個体が再び襲いかかるが、カマキラスは飛び上がって攻撃を避ける。更に保護色、いや、もはやステルス迷彩や光学迷彩と言っても過言ではない隠密に特化したその体で敵から隠れ、死角から襲いかかる。

 

鎌による一撃は、まるで死神が生者の魂を鎌で刈り取るようにBETAを切り刻む。保護色を生かした奇襲と高速飛行による離脱。それはファンタジーの中の忍者のように。更に狙う相手を見失った光線属種はレーザーを撃てない。と、直後光線属種の群れのど真ん中にカマキラスが現れ、振るわれた鎌の一撃が無数の光線属種を切り裂く。

 

一撃必殺、一撃離脱。正に疾風迅雷。正に死神。

 

カマキラスの刃が振るわれる度、無数のBETAが切り裂かれその亡骸が宙を舞う。

 

 

そしてその戦いを、人類軍は見守る事しか出来なかった。理由は1つ。カマキラスの動きが速すぎるからだ。下手に撃てば流れ弾がカマキラスに命中して自分達を敵と見なすのでは?と言う疑問から彼等は撃てなかったのだ。

 

そして、約20分の間にカマキラスは、3万は居た軍団規模のBETAをバラバラにしてしまった。

『キシィィィィィィッ!!』

 

そして戦いが終わった後、カマキラスはカマキリが獲物を補食するように、器用に前足でBETAの屍肉を掴んで喰らい腹を満たすと、羽を広げてどこかへと飛び去っていった。

 

それを多くの兵士達は、呆然と見送る事しか出来ないのだった。

 

 

それから数日後。2体の怪獣出現の報告が各地のモナーク支部からモナーク本部を経由して東京に居る芹沢の元に届けられた。部下が持ってきた報告書に目を通す芹沢。

 

「そうか。欧州と東南アジアでも怪獣が」

「はい。欧州の怪獣は、ケルト神話の数少ない文献に記述が。かつて噴火する火山の火口付近に現れ、一瞬にして火山から何かを吸い取り活火山を休火山に変えたそうです」

「……恐らく火山、いや、内部にあるマグマの熱エネルギーを奪ったんだろう。送られてきた資料によれば、光線属種のレーザーをも背中の角で吸収したとある。それで、怪獣の名前は?」

 

「資料では、この怪獣は古代ケルトの言葉で、『火を喰らう者』という意味のボルギルスと呼ばれていたようです。この怪獣が過去に出現した者と同一個体かその子孫なのかは不明ですが、欧州の支部はこのボルギルスという名前をそのまま使うそうです」

「そうか。……東南アジアに出現したカマキリ型の怪獣の方は?」

「そちらについては、参考となる資料などは発見されていません。便宜上、今はカマキリとマンティスを掛け合わせてカマキラスと呼ばれているそうです」

 

「そうか」

部下から説明を聞きながら、資料に目を通す芹沢。

「君は、この報告書に目を通したか?」

「はい。さっとですが」

「そうか。……君はこの報告書を見て、どう思った?」

「どうと言われても。……でも、そうですね。ここへ来ていきなり怪獣が新たに2体も現れたのは、正直頼もしいって思ってます。でもやっぱり、不安ですね。彼等がいつ俺達の敵になるんじゃないかって思うと。どうしても……」

 

「そうだな。だが、だからこそ今我々が怪獣とどう向き合うかが問われている。お互い、離れて行くのか共にBETAに立ち向かうのか。それは全て、我々人類の行動次第だ」

 

「人類、次第」

芹沢の言葉を受けて、部下の男はポツリと呟いた。

 

と、その時。

『ドンドンッ!』

部屋のドアが乱暴に叩かれた。

「芹沢博士っ!大至急連絡がっ!」

「開いてるっ、入ってくれっ」

「失礼しますっ!」

彼が促すと、息を切らした男が1人、慌てた様子で入ってきた。

 

「どうした?何があった」

「そ、それが、先ほどソビエトの最前線で、『新種の怪獣』が確認されましたっ!」

「ッ!?」

彼の報告に芹沢は息を呑んだ。そして、彼は静かに窓の外へと目を向けた。

 

「まだまだこの星には、我々の常識が通用しない存在がいると言う事か」

 

そして彼は、小さくそう呟くのだった。

 

 

時間は少しばかり遡り、数日前。ソビエトの某最前線に、『彼女』は部下たちと共に派遣されていた。『フィカーツィア・ラトロワ』中佐。

彼女は『Su-37チェルミナートル』。その最新型である『Su-37M2』を駆る『ジャール大隊』という戦術機部隊の隊長をしている。

 

そして、彼女は今日も部下達を率いてソビエトの戦線で戦っていた。

『『ガガガガガっ!』』

チェルミナートルの手にした突撃砲2門が戦車級の群れを穿つ。

彼女は手早く残弾、推進剤の残り、部隊の配置、残存BETAの数や配置などを確認しつつ部下達に飛ばす指示を考えていた。

 

だが……。

『中佐っ!CPより通信がっ!』

彼女が指示を出すよりも早く、部隊の副官でもある『ナスターシャ・イヴァノア』大尉が通信を繋げてきた。だが、映し出された通信用ディスプレイに映ったのは、まだ10代半ば、京都防衛戦当時の唯依達よりも幼く見える少女だった。

 

実はこのジャール大隊の衛士は、隊長であるラトロワ中佐を除いた全てが少年少女で構成されているのだ。

 

「どうした大尉?BETAの新手か?」

ラトロワは冷静にBETAへ攻撃を加えながら問いかける。

 

『いえっ!それが太平洋側よりこの前線に向かって西進してくる飛行物体をレーダーが捉えた模様ですっ!』

「飛行物体?数は?」

『数は1。しかしレーダーの反応からして航空機ではないと連絡が』

「何?」

 

彼女は一瞬だけ指先をピク付かせた後、すぐに戦闘に意識を戻した。

「それで?その物体が到達するまでの時間は?」

『それが、恐らくもうっ……!』

と、ナスターシャの声を聞いていた直後。

 

『中佐っ!後方より高速で向かってくる飛行物体を発見っ!速度はマッハ3っ!間もなく戦域に到達しますっ!』

「ッ!」

この報告にはラトロワも一瞬驚いた。次いで、彼女は咄嗟に指示を出した。長い戦いの中で培ってきた経験が、感となって彼女に告げる。『危険だ』と。

 

「大隊各機全速後退っ!バックブーストで下がれっ!」

「「「「「「りょ、了解っ!」」」」」」

 

最前線で戦っていたジャール大隊の戦術機、『Su-27ジュラーブリク』が跳躍ユニットを吹かして後方へと急速後退した。

 

直後。

 

『キュォォォォォォォォォンッ!!!!』

 

甲高い咆哮が響き渡った。そして……。

『カッ!』

 

一瞬彼らの視界の隅で光が瞬いた。直後、光の奔流とも言える光線が、BETAの群れをなぎ払った。

「な、何だぁ!?」

「何が起こったの!?」

突然の事に、ジャール大隊の少年少女達は戸惑う。

 

咄嗟にラトロワ中佐が『狼狽えるなっ!』と一喝しようと息を吸い込んだ。

 

『バサッ!』

 

しかし、その言葉は彼等の頭上を横切った影に気を取られて消えてしまった。

 

彼等の頭上、雲の合間から漏れる光を受けながら、巨大な翼を広げた『それ』が高速で、自由自在に空を飛び回っていた。

 

大きな翼を広げての飛行は、固定翼機である戦闘機などよりも激しい軌道での急旋回を可能とし、旋回して戻ってきた『それ』が口から放った光線、『ウラニウム光線』がBETAの先鋒、突撃級の群れをなぎ払った。

 

そして『それ』は荒れ果てた大地の上に降り立った。

 

『キュォォォォォォォォンッ!!!』

 

巨大な翼を広げながら雄叫びを上げるそれ、『翼竜怪獣ラドン』。

 

「な、何だよあれ」

「まさか、怪獣?」

突然のラドンの出現に、ジャール大隊の衛士達は戸惑う。

 

「各機、この状況はイレギュラーだがまだ戦闘が終わった訳ではない。各機はBETAを警戒しつつ、あの怪獣には手を出すな。この状況でBETAと怪獣の双方を相手にするのは得策ではない。しばらく様子を見る」

『『『『『りょ、了解』』』』』

 

「それと大尉。CPを通して他の部隊に、無闇に奴を攻撃しないように命令させろ」

『はっ!』

 

部下たちに指示を出したラトロワは、ラドンの背中を見つめる。

『ここに来て怪獣か。さて、どうでる?怪獣』

彼女はラドンに対しても警戒を緩めずに居た。

 

しかし肝心のラドンは戦術機部隊には興味が無いのか一瞥すらしない。

 

『バサァッ!バサァッ!』

 

そしてラドンはその巨大な翼を動かし始めた。すると……。

 

『ゴォォォォォォォォォッ!』

 

その巨大な翼から放たれる風は、もはや暴風。いや、それすらも凌駕する程凄まじい物だった。砂煙が立ち上り、比較的軽いBETA、戦車級や光線級が巻き上げられ宙を舞い、そして落下し地面に叩き付けられた。

 

BETA小型種の雨が、要撃級や突撃級の上に降り注ぐ。更に暴風に煽られ、ラドンに向かって突進していた突撃級がひっくり返り、動けずに足をバタバタとバタつかせた。そしてひっくり返った突撃級が、結果的に同類である要撃級達の足を止める壁となった。

 

そしてその隙に、ラドンの放ったウラニウム光線がBETA群を焼き払う。暴風と光の奔流の前に、BETAは一歩を前に進むことが出来なかった。

 

これまで何十、何百と人間の防衛線を突破してきたBETAが、である。

 

圧倒的なまでの巨大な壁、怪獣という壁がBETAの前に立ち塞がった。

 

そしてラドンによる蹂躙劇を後方から見守っていたラトロワ中佐以下、ジャール大隊の衛士達。彼等は、ただただ呆然とラドンの猛威を見守る事しか出来なかった。戦場に居ると言うのに、突撃砲を構える事すら忘れ、ただただ目の前の戦いを見入る少年少女達。

 

そんな中で……。

「これが、怪獣の力」

 

どこか冷徹な、しかし諦めが混じったような表情でラトロワはラドンの背中を見つめていたのだった。

 

 

それから約20分後。ラドンの前には吹き飛ばされて叩き付けられ潰れたBETAや、光線を喰らって炭化した『BETAだった物』が広がっていた。

 

『キュォォォォォォォォォォンッ!』

 

そしてラドンはそれを見回し一瞥すると、咆哮を上げてどこかへと飛び去っていった。それを見送るラトロワ達。

 

「中佐っ!司令部から通信っ!出現した怪獣を追跡せよと……」

「もう遅い」

ナスターシャの言葉をそう言って遮るラトロワ。

 

「見なさいターシャ」

 

そう言って、ラトロワは片手の突撃砲でラドンが飛び去って行った方向を指さした。ナスターシャが視線を向けた頃には、ラドンは既に遙か遠くを飛んでいた。

 

「戦術機で奴を追うのは無理だ。司令部にもそう伝えろ大尉」

「はっ!」

 

「大隊各機へっ!戦闘終了っ!基地へ帰投するぞっ!」

『『『『『了解っ!』』』』』

 

隊長である彼女の指示を受けて、無数の戦術機が戦闘地帯から離れていった。そんな中で帰還途中にラトロワは思った。

 

『司令部の豚どもがあの怪獣を敵認定し、我々と戦わせるような事が無いと良いが』、と。

 

新たな怪獣の出現に、不安を胸の内に抱えながら中佐は部下と共に基地へと戻っていったのだった。

 

 

新たに現れた怪獣達。欧州でボルギルス。東南アジアでカマキラス。そしてソビエトに現れた怪獣には、プテラノドンの変異種のようだ、と言う事から『ラドン』という名前が付けられた。

 

新たに現れた怪獣達。果たして彼等が人類にもたらすのは希望か?絶望か?

 

 

だが、そんな中で……。

 

『ウジュル、ウジュル』

 

どこかのハイヴの奥深く。光も届かない漆黒の闇の中で、『ヘドロ』のような物が静かにうごめいていた。そして、『赤い光彩と黄色い瞳の双眸』が、静かに天井を見上げていた。

 

『キュロロロロロロッ!』

 

そして世にも不気味な咆哮が、ハイヴの中に木霊するのだった。

 

     第15話 END

 




って事で、ボルギルス、カマキラス、ラドンが登場です。あと、最後の1体分かる人は分かると思います。『アイツ』は宇宙から来たって言う話だったので、厳密には『地球産怪獣』ではないので敵にしました。

人類ばっかり有利じゃつまらないでしょぉ?(ゲス顔)

ちなみにボルギロスを選んだのは、自分がもろコスモスの世代だからです。初めて見たウルトラマンがコスモスだったんですよね。なので愛着もあって。あっ、それとコスモスから更に『2体』ほど、登場予定です。もう少し先なんですけどね。

って事で、感想や評価、お待ちしてます。
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