マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~   作:ユウキ003

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少し間隔が空いてすみません。ちょっと話の構成が纏まらなくて。
今回は安芸たちがメインですが、本当のメインは後半と言っても良いかもしれません。


第17話 光と陰

インファント島のコスモスベースにてオルタネイティヴ計画のための研究に勤しんでいた夕呼。そんな彼女の元に帝国から鎧衣左近という男がやってきた。事前の連絡が一切無い中での鎧衣の来訪を警戒する夕呼。そんな鎧衣の目的は密かに帝国へ亡命していたソビエトの技術者をここに連れてくる事だった。そしてその技術者であるアレキエフ・マエロフは狂信的なタイタニストであり、本人の希望とコスモスたちが許可した事もあってコスモスベースで技術者として兵器開発をする事に。そうして彼は2ヶ月後、見事に新型兵器の試作機を完成させてしまうのだった。

 

 

~~時は少し巻戻り、コスモスベースにマエロフがやってきた頃~~

 

ある日の帝国。Gフォースの総司令部にて。

 

「……広報活動、ですか?」

「はい」

恭子は萩閣から渡された書類に目を通してから彼の方に視線を向け呟いた。

今は基地司令である萩閣の部屋で彼と恭子の2人だけで会議中だ。

 

ちなみに、恭子は少佐で萩閣は中将。階級的にはかなり差があるが、お互い斯衛と陸軍のトップという立場である事や、片や前線指揮官。片や総指揮官。と言う事もあってお互いに基本は敬語で話をしている。

 

「上の連中の強い要望でしてね。官民の士気向上も兼ねて、国防の要であるキングギドラと共に戦うことを前提にして我々Gフォースを広告塔にしたいようです。噂では、国連からも広報の人間を連れてきてGフォースの存在を諸外国にも宣伝するつもりのようですよ」

「……役人の考えそうな発想ですね」

「巻き込まれる我々にしてみればたまった物ではありませんが、今の我々には実戦というものが皆無です。出番の無い軍隊は金食い虫だ、などと世論に叩かれないためにもこう言った事は必要なのでしょうな」

「そうですね。分かりました。書類には撮影のメインに龍神の姫巫女達、と言う事ですから、如月大尉たちには私の方から伝えておきます」

「お願いします」

 

と、それからも2、3今後の話をした後。2人は中将の秘書官が用意してくれたお茶で喉を潤した。

 

やがて萩閣は座っていたソファから立ち上がると、窓の外から遠目に見える東京の街並みへ目を向けた。

「……平和になりましたな。この国も」

「えぇ」

萩閣の言葉に頷きながら恭子も窓の傍に歩み寄る。

 

「少し前までは、ここも最前線だったと言うのに」

「横浜に出来たハイヴ。更には佐渡島まで。国土の大半がBETA支配領域となったにも関わらず、出現したキングギドラによって横浜は奪還。中部地方の奪還にも成功。更にモスラとバトラによって佐渡島ハイヴも攻略され、中国・四国地方の攻略も始まり、挙げ句には半島の鉄原ハイヴも攻略。いや、破壊する事に成功。この1年程度で、帝国は随分と変わりましたな」

「えぇ。激動の1年でした」

恭子は萩閣の言葉に頷く。

 

「しかし、軍人としては情けない限りですな。怪獣に頼らなければ国1つ満足に守れないとは」

「それほどまでにBETAが強大であると気を引き締めるべきか。或いはそれすらも単独で凌駕する怪獣に畏敬と畏怖の念を抱くべきか。中将は如何です?」

「両方、でしょうなぁ。今後を考えれば。時に少佐の方は如何ですか?」

 

「残念ながら、私も両方です。……出雲攻略作戦の時には、湧き出てくるBETAに絶望しかけ、しかしそこを聖獣キングギドラに救われた」

「それは私も同じですな。光州作戦の時、アンギラスが現れなければ私もどうなっていたか。……お互い、怪獣の力で生き延びたとも言えるのでしょうか?」

「えぇ、恐らく。しかしそれは我々だけではありますまい。今この国で生きる人々。兵士達も。一体どれほどの命が、彼等によって救われたのか。それは私達には想像も出来ません」

 

しばし2人は、平和な東京の街並みへ目を向けた。明星作戦直後は、ホームレスや難民なども目立っていたが、今はその姿は見る影も無い。今日本全国での復興が進んでいるため、建設業などの人材が足りていないとまで言われる。それほどまでに、帝国は今復興と軍備増強を急いでいる。

 

「……本当に、彼等には何から何まで世話になった気分だ。そんな彼等に報いる方法があるとすれば……」

「えぇ。来たるべき決戦の時。少しでも彼等の隣で戦えるように、兵士達の練兵や新兵器の開発、ですね」

「あぁ」

萩閣は恭子の言葉に頷くと自分の机に戻った。

「さて、そろそろ仕事をしますかな。最近、事務仕事ばかりでどうにも肩が凝る。歳かなぁ」

「ふふっ。ですが中将。事務仕事の事で愚痴を言っていられるだけ、私達はまだ幸せな方ではありませんか?」

そう言って苦笑する恭子。

 

「確かに。それもそうだなぁ。平和は良いが、事務仕事ばかりで肩が凝る、なんて言ってられるのも平和な証拠か。さて、ならばその平和のために我々も努力しませんとな」

そう言って、萩閣の方も笑みを浮かべている。

「えぇ。では私もこれで」

「あぁ」

 

 

そうして2人はそれぞれの仕事へと戻った。その後、恭子から撮影の話を聞く上総たち。しかし話を聞いた後の4人はかなりげんなりしていた。それもそのはず。そもそも彼女達4人と唯依は、龍神の姫巫女と呼ばれる事をあまり良く思って居ない。そもそもこのあだ名はどこかの新聞社が誇張のために勝手に付けた物だ。

 

「あ~あ、また撮影か~」

「ホント、嫌になりますわね」

気怠げに呟く安芸と上総。

「うぅ、私撮影とか苦手なのに」

「しょうが無い、で納得出来れば良いんだけどね~」

更にその傍にいる和泉と志摩子もげんなりしていた。

 

彼女達は、今のGフォースに移る前、斯衛の特別遊撃隊として活動を開始した頃、つまり明星作戦の後くらいから、今のあだ名で呼ばれるようになった。そして広告塔のように4人と唯依は取材を受ける事が多くなった。官民含めて士気高揚のために、彼女達はプロパガンダに利用され取材などをたくさん受けるハメになった。しかし肝心の彼女達はうら若き少女たちなのだ。取材なんて受けた事が無いし映像を撮るにしたってそれ相応の演技や態度が求められる。素人の動画撮影じゃないんだから、とシーンを取るのにダメだしを貰ったりした事もあって、すっかり撮影や取材が嫌になっていた4人。

 

なので、この取材地獄から抜けられた唯依をちょっとだけ恨めしく思って居た。

 

まぁ、肝心の唯依も唯依で……。

 

「篁中尉ってGフォースに居たんですよね!?どんな感じなんですかGフォースって!」

「え、えぇっと、良い所、ですよ?」

「中尉ってキングギドラに直に触った事あるんですよね!?どんな感じですか!?」

「え、えぇっと、金色でゴツゴツしてて……」

 

と、Gフォースから移ってきた唯依が珍しい、と言うか龍神の姫巫女とまで言われた1人である彼女が自分達の所に来た事自体、ホワイトファング所属の彼女達には予想外すぎた。なので来たばかりの頃は唯依も何だかんだで動物園のパンダみたいな状況が続いていたりした。

 

 

で、話を戻して数日後。Gフォースの基地に広報官たちが無数にやってきたのだが、何とそこには『国連軍の広報部隊』まで居るのだ。

 

これには当初撮影は『帝国軍の広報部隊だけ』と聞いていた上総たちも驚いていた。

「な、なんで国連軍の広報部隊まで居るの?」

遠巻きに彼等を見つめながらも戸惑った様子の志摩子。と、その時彼女達の近くにたまたま恭子が通り掛かった。

「あっ!すみません少佐っ!」

彼女に気づいて、咄嗟に安芸が声を掛けた。

 

「何か?」

「い、いえ。恐れながら、何故国連軍の広報部隊までここに?事前に渡されていた書類によれば、来るのは帝国軍の広報部隊とだけ聞いていたのですが?」

 

「あぁ。正直、それについてはすまないと思って居る。実は国連の広報部隊が来たのは、本当に急だったのだ。急な話に軍上層部は返答を迷ったが、『帝国の力を諸外国に示す良い機会だ』と一部の議員達の強い要望があり、結果この通り、と言う訳だ」

「つまり、私達は国の政治の駒になれと?」

「ち、ちょっと安芸!?」

恭子に対する仏頂面な安芸の物言いにギョッとする志摩子。しかし安芸も、ただでさえ嫌いな撮影任務なのに、更に国連軍の広報部隊が来ているとあって不機嫌だ。

 

「まぁ、石見少尉の態度も分かるが、これも宿命だ」

そう言って苦笑する恭子。

 

「日々を平和に暮らせているのだ。激戦区に放り込まれる事に比べれば、これ位の任務など楽な物だろう?違うか?」

「うっ、そ、それは確かにそうですけど……」

「そう言う事だ。諦めてしっかり仕事を全うせよ」

 

「り、了解しました。少佐」

「うむ。では私はこれで」

そう言って離れて行く恭子。しかしそれでも、安芸達はどこか気怠げだ。

そしてそれに拍車を掛けてしまったのが……。

 

「おぉ!もしや君たちが『ドラゴンウィッチーズ』かな!?」

「え!?だ、誰!?」

不意に、何やらテンションの高い白人らしき男性が声を掛けてきたので、驚く和泉。

「あぁこれは失礼!私は国連軍広報部隊所属の、『オルソン』という者だ。階級は大尉だ」

「は、はぁ。国連軍の」

オルソンを相手に、半ば戸惑いながらも返事を返す上総。

 

「今日は君たちの取材をさせて貰うので、よろしく頼むぞ!」

「は、はぁ」

テンションの高いオルソンと対照的に、テンションがだだ下がりな安芸たち。

 

で、結局撮影をすることになったのだが……。

「なんでこんな格好させられてるんだ私達はぁ!」

控え室、兼、更衣室の中で叫ぶ安芸。しかしそれもそのはず。なぜなら今の彼女達は『巫女服』を着せられていたからだ。

 

そもそも何故こうなったのかと言うと、原因はオルソンだったのだ。上総達は最初、士官の制服や衛士のパイロットスーツである強化装備姿で、乗機の武御雷などをバックにしながら撮影などをしていたのだ。しかし、オルソンが……。

 

「帝国には帝国のウィッチが着る衣装があると聞いた事がありますが、それは使わないのですか!?」と問いかけたのが理由だ。ちなみに、ウィッチには魔女以外にも巫女の意味がある。

 

なので、先ほどオルソンが言ったドラゴンウィッチーズも龍神の姫巫女達を英語風に言い換えた物だ。

 

で、話を戻すと、オルソンの提案もあって帝国軍の方の広報部隊も納得。急遽巫女服が用意されてしまった、と言う訳だ。

「ま、まぁまぁ安芸。落ち着いて?ね?」

そう言って彼女を宥める志摩子。彼女は更に……。

「この仕事は終わったら、また休暇を取ってギドラの所に行こう。ね?最近出撃が無くてあんまり会えてなかったし。ね?」

「……うん」

 

志摩子にギドラの名前を出された事で安芸も落ち着いた様子だった。何だかんだで彼女達とギドラの付き合いは1年以上になる。そして、今の志摩子や上総たちにとって、ギドラとは心の安らぎであり、支えでもあった。

 

世の医療関係の単語に、『アニマルセラピー』という物がある。これは動物を使ったセラピー療法の1つで、動物とのふれあいの中で人の心にある傷を癒やしたりするために行われるが、今の志摩子達にとってギドラの存在はこれに近い物があった。

 

彼女達にとってギドラは『戦友』であり『恩人』であり『友達』であり『英雄』であり、そして何よりも『精神の拠り所』なのだ。少し悪く言えば『依存』していると言っても良い。

 

これまで彼女達は多くの戦場をギドラと共にした。共に戦場を駆け抜け、共にBETAを駆逐し、共に生き残ってきた。そして、ギドラを神と人々が崇める程の圧倒的な力を、最も近くで見てきたのは他ならぬ志摩子達だ。

 

そしてだからこそ、彼女達にとって戦場においてギドラが居ないだけで士気が下がるし、逆にギドラが居れば士気は最高潮まで高まる。『依存』という単語は些か言いすぎかもしれないが、皆その一歩手前なのはもはや確実だ。

 

ギドラとのふれあいは彼女達にとって心の癒やしでもあるし、その力にこれまで守られてきた。志摩子達は『ギドラの加護』を受けていたと言っても過言ではないだろう。

 

それ故に、彼女達にとってギドラは言葉では言い表せない程に『大切な存在』なのだ。だからこそ、志摩子がギドラの名を出した事で安芸は落ち着きを取り戻したのだ。

 

 

しかし、それから数日後。志摩子たち4人は休暇申請を出し、受理されたのでギドラに会えると皆喜んでいた。だが、いきなり休暇前日になって通達があった。それは、帝国の広報部隊と国連軍の広報部隊も、一緒にギドラの眠る洞窟に行きたいと言ってきたのだ。

 

これに真っ先に怒ったのは安芸だ。彼女は制止する志摩子達を振り切って恭子の部屋へと突撃した。

 

「どういうことですか少佐っ!なんで広報の連中が私達に付いてくるんですか!?」

怒りを滲ませる安芸。彼女にとって、あの洞窟は自分達とギドラだけの『特別な場所』という思いがあった。そのため、広報の連中が付いてくる事に我慢ならなかった。彼女にしてみれば、我が家に赤の他人が土足で上がり込んでくるような気分だった。

 

「ちょっと安芸っ!」

それを追いついた志摩子や和泉が宥めようとするが、安芸は聞く耳を持たない。

「皆だってそうだろ!?あそこは、私達とギドラの思い出がある場所だろっ!?そこに、部外者を入れる事に何の嫌悪感も感じないのか!?」

「そ、それは……」

「……」

安芸の言葉に志摩子は言葉を濁し和泉も俯いてしまう。

 

なぜなら、彼女達も安芸の言う事に一理あったからだ。安芸ほどではないにしても、部外者である男達があそこに立ち入る事に、二人は嫌悪感を覚えて居た。しかし、そんな中でも比較的冷静だった上総が安芸を宥めた後、恭子の前に立つ。

 

「少佐。無礼を承知でお聞きしますが、何故洞窟に広報の部隊を?下手にギドラを刺激すれば、最悪死人が出る可能性があります。願わくば、私達が納得出来る説明をお願いしたく思います」

 

上総も冷静ではあったが、他の3人と同様に、広報部隊の同行には否定的だった。

「そうだな。良いだろう。ならば話してやる。お前達が納得出来るかは別だが」

そう言うと、恭子は手にしていたペンを置き、話し始めた。

 

「お前達は、最近各地で怪獣が出現しているのを知っているな?」

「はい。欧州のボルギルス。東南アジアのカマキラス。それとソビエトの『ラドン』ですね?」

「そうだ。世界各地で新たな怪獣が出現した訳だが、帝国議会はこれ見よがしに自らの成功を売り込みたい訳だ」

恭子は上総の言葉に頷きながら話を続けた。

「売り込む、と言うと?」

しかし、その言葉の意味が分からず首をかしげる和泉。

 

「帝国はギドラやモスラ、バトラ。つまり怪獣との共闘の結果国土を奪還し、更には希望作戦でもハイヴ攻略に貢献している。加えて、単独でハイヴを攻略するゴジラ。こう言った怪獣達をどう扱うか、いや、彼等とどう接していくかはBETA大戦後の、我々人類の運命を決める分水嶺となるだろう」

「分水嶺、ですか?」

 

「現在世界における怪獣に対する反応は2つ。BETA共々排除すべきと言う考え方。それとは逆に、BETAとは異なりこの地球で共に生きていく命として受け入れると言う考え方。そしてお前達は正に、後者を体現した存在だ。ギドラと心を通わせているからな。だが逆に、前者の急先鋒として有名なのは米国のタカ派だ。軍人や軍産複合体と繋がりのある政治家連中にしてみれば、自分達の作る武器よりも、単独で尚勝る圧倒的な怪獣の存在は邪魔でしかない。……いや、自分達の力が及ばないことを恐れていると言っても良い。故に、排除したしたがっている」

 

「排除したいって、その力がまず及ばないのにどう排除する気だよ」

恭子の言葉に吐き捨てるように呟く安芸。

「それは連中も分かっているだろう。だが、奴らはそれでも恐れている。怪獣をな。だが、我が帝国議会、もっと言えば政威大将軍である悠陽様は逆の考えを持っておられる」

 

「つまり、怪獣との共存、ですね?」

「そうだ」

恭子は上総の言葉に頷く。

「Gフォースの結成から、徐々に悠陽様は力を付けてきている。特に軍内部では悠陽様を支持する者達が増えつつある」

「どうしてですか?支持者が増えてるって……」

と、首をかしげる志摩子。

 

「軍内部ともなれば、一般市民や政治家たち以上に前線で怪獣達に助けられた者も多く、その大半が怪獣教を信奉している。そこへ来て、怪獣との共闘を前提としたGフォース。更に怪獣との共存を考えていると言う噂が広まったのだ。軍人たちの多くが悠陽様を支持するのは確実だろう。……そして、その流れに帝国議会が乗っかったと言う訳だ」

 

「成程、今の話を聞いていて何となく分かってきましたわ」

「え?ど、どういうことだよ上総?」

理解した、と言わんばかりに小さく頷く上総と、訳が分からず問いかける安芸。

 

「つまり帝国は、米国とは逆に、共存派の先鋒に立ちたがっていると言う訳ですわ」

「ど、どういうことだよ?」

 

「現状、我々人類の怪獣に対する反応は先ほど崇宰少佐の仰ったように、敵対するか、共存するかの二択です。そして敵対する者達のトップが米国であるのなら、共存派のトップは、今は空席と言う事になります」

「ッ!?じゃあまさかっ!」

 

「えぇ。帝国は、その共存派のトップという椅子を狙っているのですわ」

上総の言葉に、安芸はしばし目を見開いた。

 

「BETA大戦が終われば、次に待っているのは怪獣とどう在るべきかと言う論争です。そして今現在、この世界は怪獣によってBETAの侵略を退けられているのが現状。加えて怪獣教が世界レベルで急速に浸透している今だからこそ、共存派が将来有利になるであろうと考えた帝国議会は、共存を強く主張したい。そして、そのために……」

 

「私達と、ギドラを利用しようって言うのか!?そのための広報だって言うのか!?じゃあ国連の広報部隊は!?」

「……恐らく、世界により広く、私達を。もっと言えば共存派の旗印として私達を宣伝させるために敢えて許可を出したのでしょう」

 

その言葉に安芸はブルブルと拳を振るわせ……。

 

「ふざけるなっ!!!」

思い切り叫んだ。

 

「ギドラを、ギドラを政治の道具にするのなんて絶対に許せないっ!!アイツは、そんな事のために利用して良い存在なんかじゃないんだっ!!!」

安芸の怒声が響き渡る。しばし、彼女は肩で息をしていたが誰も何も言わない。安芸のハァハァと言う息づかいだけが響く。

 

上総も、志摩子も和泉も、安芸の言葉に内心同意していたからだ。戦友であり恩人でもあるギドラが政治の道具にされる事は、彼女達にしてみれば嫌悪対象以外の何者でもなかった。そして恭子もまた、その事は分かっていた。分かっていたのだが……。

 

「それでも、これは命令だ」

彼女は軍人なのだ。彼女は毅然とした態度で彼女達に言い放った。

「この広報活動は、軍上層部も期待されている。陸軍も、斯衛もだ。今更お前達が断ろうとしても、覆る事は無い」

「でも少佐っ!」

 

「お前達の憤りも理解出来る。ここにいる誰よりもギドラに近しい存在なのはお前達4人だ。それを疑うつもりは無い。……しかし、上から下された命令は絶対なんだ。それが、軍隊と言う組織なんだ」

「ッ!そんなのっ!ギドラには関係無い事じゃっ!」

 

言いかけた安芸の背中に、上総が静かに手を置く。安芸が振り返れると、彼女は静かに首を横に振った。それは『もう止そう』という意思表示だった。安芸はその仕草を前に歯を食いしばった。彼女自身、もう自分達が騒いだ所で覆らない任務なのは分かっていた。

 

それでも、ギドラを政治に利用する事が、どうしても許せなかったのだ。だが上総に止められた安芸は、他の3人と共に『失礼します』と言って部屋を後にしようとした。

 

が、その時。

 

「今の組織に不満があるのなら、上を目指しなさい」

「え?」

不意に聞こえた声に振り返る安芸。そこでは、不敵な笑みを浮かべている恭子がいた。

 

「今の組織が嫌いなら、のし上がって、自分の力で変えられるように努力しなさい。それだけ言っておくわ」

 

そこに居たのは、時たま見せる、恭子の優しい一面の現れだった。それは彼女達の上に立つ者としてのアドバイスだった。

 

その後、上総たちはギドラの洞窟で撮影に臨んだのだ。どこの誰が悪乗りしたのか知らないが、撮影の最中にかなりきわどい水着を持ち込まれていた。これを着ての撮影を、と聞いた4人はすぐさま嫌そうな顔をした。すると……。

 

『『『グルルルルルッ!!!』』』

ギドラが威嚇のうなり声を上げ、更にその巨大な翼で4人を匿うように覆い隠した。そしてギドラの放つ殺気に当てられて何人かの撮影スタッフが泡を吹いて気絶する事態になってしまったので、きわどい水着での撮影は無しになった。

 

その後、撮影が終わった事で撮影スタッフ達は、ギドラの殺気に当てられて逃げるように洞窟をあとにしていた。しかし、上総たちだけは洞窟の中に残っていた。

 

「あ~~~疲れた~」

適当な岩にブルーシートをかけた所に、ぐで~っと体を預ける安芸。相変わらずの取材やら撮影やら、慣れない笑顔やらで彼女も他の3人もお疲れ気味だ。

 

それを見ていた和泉は、静かにギドラの方へと歩み寄る。

「あのねギドラ。少しだけここで休んでいって良いかな?もう、時間も時間だし」

彼女が問いかけると……。

『キュルルゥ』

良いよ、と言わんばかりにギドラが優しく喉を鳴らした。

「ありがとう、ギドラ」

 

 

その後、上総たちには基地に通信をした後、適当な場所にブルーシートを何枚か重ね、その上で横になった。毛布代わりに大きなシート一枚を掛けて、しばらくすると彼女達は眠りについてしまった。それを見守っていたギドラは……。

 

『ズシッ、ズシッ』

彼女達を起こさないように一歩一歩、静かに歩み寄る。そして、自らも横になりながら、翼で優しく彼女達の周りを守るように包み込んだ。

 

それはまるで、親が愛する我が子を両手で抱きしめ守るように。

 

それから数分後。安芸の寝相が少し悪いせいか、全員で被っていたシートがずれてしまう。季節もあるが、洞窟の中はそこそこ寒い。シートがずれて、和泉が無意識に体を震わせた。

 

すると、ギドラの中央の首がスッと伸びてきて、器用のずれたシートの端を口先で摘まむと、上手く動かして和泉にシートを掛けた。和泉が寒さに震えなくなると、ギドラは安堵したように自分もまた眠りに付いた。

 

 

少女達が龍神を大切に思っているように。龍神もまた、彼女達との出会いの果てに紡いだ絆を大切にしていた。

 

だからこそ、ギドラは、そして今はその中にあるバラゴンもガーディーも思う。

 

『例え言葉を交わす事は出来ずとも、彼女達を守ろう』と。

 

彼等は誓う。聖獣の名に恥じぬ、その高潔なる魂に。

 

巫女たる少女達を守る事を。

 

 

 

しかし、一方で……。

 

欧州某所。夜。

 

とある場所で、数機の戦術機と歩兵たちが簡易なキャンプをしていた。彼等の任務は偵察と警戒だ。

 

通常、BETAの軍団の移動などはまず真っ先に人工衛星などで観測されるが、人工衛星による監視網も完璧ではない。その穴を埋めるために、前線の一部ではこうして人の眼による監視が行われているのだ。数十人の歩兵と彼等を乗せるためのトラックと装甲車。戦術機は米国製の第1世代機、『F-5フリーダムファイター』を欧州でライセンス生産した機体である『トーネード』だ。完全武装の戦術機が6機、2機を1分隊として、3個分隊+アルファの戦力が監視任務に就いている訳だ。

 

とは言え、ボルギルスの出現以降、『何故かBETAの活動が停滞』しているため、はっきり言ってこの監視キャンプの兵士達は油断していた。

 

だが……。

「ん?」

その時、戦術機に乗ってレーダーを監視していた1人の衛士が何かに気づいた。そして、すぐに通信機に向かって叫んだ。

 

「レーダーに感ありっ!動体反応検出っ!各自戦闘態勢!」

彼が叫ぶと、待機していた兵士や衛士達が慌てて動き出した。衛士達は戦術機に飛び乗り、歩兵達はライフルや無反動砲を構える。

 

BETAの物量の前には歩兵のライフルや無反動砲など、1匹を倒す事は出来ても、それが限界だ。しかし彼等の任務はあくまでも偵察であり戦闘ではない。だから護身目的でこれらの装備を持っているのだが……。

 

「ブラボーリーダーよりブラボー6!現状を報告せよっ!」

隊長各の衛士である男の声が通信機より響く。

「レーダーに映った目標の数は1っ!微速ながらもこちらへ接近中っ!」

「数は1だとっ!?それはBETAなのか!?」

「不明っ!音紋をデータベースで解析しましたがデータは無しっ!」

「データが無いっ!?まさか、新種だとでも言うのか!?」

隊長衛士は、静かに歯がみした。BETAで新種と言えば、5年ほど前に初めて確認された兵士級がそうだ。

 

噂では、あれはBETAが捕食、ないし捕獲した人間をベースに作られたとも言われている。BETAの姿形はどれをとっても『醜悪』の一言に尽きる。その、醜悪な怪物の新種が誕生したかもしれないとあっては、誰だって恐れる。

 

「念のため歩兵隊は下がらせろ!我々より約100メートル後方に後退後、照明弾の用意をっ!」

『『『了解っ!』』』

 

指示を受け、歩兵達を乗せたトラックがすぐさま発進し戦術機部隊の後方へと下がる。

 

そして、そうこうしている内に目標が戦術機部隊の傍まで迫る。

「照明弾、撃てっ!」

 

隊長衛士が指示を飛ばすと、後方の下がった歩兵隊からいくつもの照明弾が放たれ、それが夜の世界を照らす。そこに現れたのは、歪な怪物だった。

 

灰色一色の体に、不気味な赤い眼の、四足歩行の怪物。

『キュロロロロロロロッ!』

とてもこの世の動物が発するとは思えない不気味な鳴き声が、衛士達の恐怖を煽った。と、その時、風向きが変わって、怪物が風上になったのだが……。

 

「うぐっ!?何だこの臭いっ!?」

100メートル以上離れた歩兵達の鼻孔を突き刺す刺激臭に、兵士達の大半がたまらず鼻を押さえた。

 

戦術機に乗る衛士達は、臭いで鼻をやられる事は無いが目の前の怪物を警戒しながら冷や汗を流していた。各々突撃砲を構え、臨戦態勢だ。

 

だが、彼等は発砲する事を躊躇っていた。BETAはこんな風に単独で行動する事はない。『BETAではないのにこの巨体、ならば怪獣なのでは?』と言う考えが彼らの頭の中にあった。そして怪獣はBETAと敵対する、言わば人類の救世主的存在。だからこそいきなり発砲する事を躊躇っていたのだ。だが……。

 

『キュロロロロロッ!』

 

怪物が雄叫びを上げたかと思った次の瞬間、体の一部を戦術機部隊に飛ばしてきた。

「ッ!?全機回避っ!」

咄嗟に指示を出し、周囲へ散りながら回避するトーネード達。

『くっ!?奴が怪獣なのかBETAなのか分からないが、先に向こうが仕掛けたんだっ!正当防衛は成り立つだろうっ!』

「奴からの攻撃を確認っ!各自の自己判断で攻撃を許可するっ!」

『『『『『了解っ!』』』』』

 

次の瞬間、6機の戦術機の突撃砲が火を噴いた。放たれる銃弾の雨。だが……。

 

いくら銃弾をたたき込もうとも、怪物は平然とした様子で向かってくる。

 

「くっ!?どうなってるんだっ!」

『野郎っ!これでも食らえっ!』

隊長が悪態を付いたとき、1機のトーネードが120ミリ滑空砲から粘着榴弾、『HESH弾』を放った。

放たれたHESH弾は怪物の前足近くに着弾した。爆発による爆煙が怪物の体を覆い隠す。彼等は距離を取って警戒をしていた。が……。

 

『キュロロロロロッ!』

 

爆煙を越えて現れたのは、片足を失ってもなお向かってくる怪物だった。

 

「う、嘘だろっ!?なんで負傷したのに、血も流れてねぇんだよっ!?」

 

BETAでさえ、負傷すれば血を流す。だがこの怪物は、負傷しても血すら流さない。明らかに化け物じみていた。

 

そして、その恐怖が彼等の『隙』となった。

 

『キュロロロロロロロッ!』

 

次の瞬間、怪物は雄叫びを上げながらその巨体には想像も出来ない跳躍力を持ってジャンプし、1機のトーネードに飛びかかった。その1機は、恐怖によって動けなかった。

 

避けられなかったトーネードに真上からのし掛かる怪物。

「ひぃっ!?た、助けてくれェッ!」

中に居た衛士が叫ぶ。

「や、やめろぉっ!」

仲間たちが怪物を引き剥がそうと突撃砲を放つが、怪物は退かない。そして、その隙に怪物の持つ『硫酸ミスト』が戦術機さえも『腐食』させていった。

 

「う、うぐあぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

そして、装甲を突き破った硫酸ミストは衛士さえも『溶かして』しまった。

 

仲間の最期を前にして恐怖を覚える衛士達。

「く、クソがぁぁぁぁぁぁっ!」

 

仲間の死に錯乱した一人がやたらめったらに突撃砲を撃ちまくった。

 

しかし、その一発が幸か不幸か推進剤の入った部分に命中し、瞬く間に発火し……。

 

『ドゴォォォォォォォンッ!』

溶かされつつあった戦術機と怪物を飲み込む程の爆発が起こった。

 

周囲に怪物の肉片と戦術機の残骸が飛び散る。

 

彼等は、しばし呆然としていた。が……。

 

「ッ!」

真っ先にリーダーの男が我に返った。

「緊急事態だっ!今すぐ後方の基地へと下がり、事態を報告するっ!行くぞっ!」

『『『『りょ、了解っ!』』』』

隊長の言葉で他の4人も我に返り、逃げ出すようにその場をあとにした。

 

あんな怪物が他にも居たら。

 

そんな恐怖が、彼等が逃げ出すようにこの場を離脱させる原因になった。

 

だからこそ、彼等は気づかない。

 

『ウジュル、ウジュル』

 

飛び散った怪物の肉塊が、今もまだ『生きて動いていた』事に。

 

 

怪獣の登場によって戦いは有利になったかと思われた人類。だが、そんな淡い希望を打ち砕かんと新たな『絶望』が現れたのだった。

 

    第17話 END

 




もう分かってる人も居ると思うのでネタバレですが、最後に登場したのはゴジラ怪獣の『ヘドラ』です。

へドラはそもそも宇宙から隕石にのってやってきた鉱物由来の生命体、ヘドリュームがヘドロや公害といった汚染物質を取り込んで誕生した怪獣、と言う設定なので、厳密には宇宙怪獣かな?って事で敵である『BETA側の怪獣』にしました。

あと、BETA側の怪獣の候補として『ウルトラマンネクサス』の『スペースビースト』とかを出そうかなって考えてるんですよねぇ。個人的にはペドレオンとかが昔は結構なトラウマで。スペースビーストの造形とか、如何にも『怪物』とか『化け物』って感じがBETAに合いそうで。その当り、もし意見があれば感想などでお願いします。
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