マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
2001年。コスモスベースに現れたソビエトの狂人、アレキエフ・マエロフによって新兵器の開発が進む一方、欧州では未確認の怪物が確認されたのだった。
2001年3月。マエロフによる機動兵器のひな形である『機動戦闘服タイプ01』が開発され、そのデータと実機が国連軍などに提供された。しかし……。
ある日の事だった。コスモスベースに滞在している夕呼を訪ねて、血相を変えた芹沢がやってきたのだ。その内容と言うのが……。
「はい?欧州で怪獣らしき存在が欧州軍を攻撃?」
正体不明の怪物、仮称として『ヘドラ』と名付けられた存在に関する事だった。
「あぁ。1週間ほど前、欧州で未確認の生物と欧州軍の間で戦闘が発生した事は?」
「聞いていますが。確か死者も出たとか」
「そうだ。……だが今重要なのは、この生物の存在が『怪獣なのかBETAなのか分からない事』だ」
「と言うと?」
「BETAは本来、単独で行動する事はまずない。だから単独で現れたこの生物が、BETAではないと判断している者達が多い。そして、ではBETAでは無い怪物と言えば……」
「怪獣、ですね?」
「そうだ。モナーク上層部や欧州連合首脳部などはこのヘドラを、人類に敵対的な怪獣と判断しつつある。だが、私達としてはヘドラが怪獣なのかどうかを疑って反論している所だ」
「あら?芹沢博士はヘドラが怪獣ではないとお考えですか?」
「あぁ。……怪獣にも、骨格などがある。バラゴンやバラン、ガーディー、ボルギルス。更に昆虫怪獣とも言えるモスラやバトラ、カマキラスでさえも、生物的には何ら可笑しくは無い骨格体型をしている。だが今回現れたヘドラは、はっきり言って『流体生物』とでも言える存在だ。加えて、戦闘データを見たが片足を吹き飛ばされても出血すらしていなかった。もはや、へドラを『生物』と定義して良い物かと、モナーク内部や各国軍首脳部でも意見が真っ二つに割れている。へドラをBETAの新種とするのか、新たな怪獣とするのか」
「前者であれば新たな脅威なのは確定。後者であれば、これまで人類の味方であった怪獣達への風当たりが強くなる、と言う事ですね?」
「そう言う事だ。……だからこそ、ここにあるゼアの力でヘドラの事を解析出来ないかと思ってデータを持ち込んだんだが……」
「成程。仰ってる事は理解出来ました。では、ゼアに解析をさせましょう。少し時間を頂きますが、よろしいですか?」
「構わない。ヘドラによる怪獣達への風評被害を緩和出来れば御の字だ」
「では、早速……」
そう言って夕呼が席を立った時。
「失礼するよ、ミスコーヅキ」
部屋にマエロフがやってきた。
「例の新兵器の進捗状況の報告を、っと。これは失礼。客人が来ていたのか」
資料に目を向けながらだったのか、入ってすぐに芹沢に気づかなかったマエロフ。
一方の芹沢は初めて見るマエロフに少し首をかしげていた。
『彼は、ロシア人か?しかし何故ここに?国連軍の人間、と言う訳でも無さそうだが』
「香月博士?彼は?」
「あぁ。彼は最近ここに来た技術者です。今はここでの新兵器開発を任されています」
そう言われ、改めてマエロフと向き合う芹沢。
「ミスコーヅキ、逆に私も質問したいのだが、彼は?」
「こっちの彼はモナークのアジア方面の責任者、芹沢大助博士よ」
「はじめまして。芹沢です」
「おぉっ!ではあなたが主神ゴジラの名付け親のっ!会えて光栄ですミスターセリザワっ!」
芹沢が手を差し出すと、マエロフは笑みを浮かべながらそれを取って握手を交わした。
「確かにゴジラの名前を付けたのは私ですが、主神、と言うのは?」
「彼は熱狂的なタイタニストなんですよ」
疑問符を浮かべる芹沢に夕呼の方が答えた。
「元々、ここに来たのも自分の意思。怪獣モスラとバトラに仕えるため、だそうです」
「そ、そうだったのか」
まさかの理由に、怪獣にも好意的な芹沢も少々引いていた。
「それで、ミスターセリザワは何故こちらへ?」
「あ、あぁ。実は、先日欧州で確認された未確認生物の調査の一件でね。怪獣ともBETAとも判別できない存在だ。なので、ゼアに判断して貰おうとね」
「成程。欧州で確認された、と言うと例のあれですかな?異様な臭気を放ちながら周辺を汚染していたと言う。たしか、ヘドロのような臭いからヘドラと名付けられてましたかな?そちらはヘドラのデータですかな?」
そう言ってマエロフは夕呼が手にしていた書類に目を向けた。
「えぇ、そうよ」
「ミスターセリザワ、拝見しても?」
「あ、あぁ。どうぞ」
彼の許しを得て、マエロフはヘドラのデータを見ていく。
「それで?ミスターセリザワはヘドラの分析か何かでここへ?」
彼は書類に目を向けたまま芹沢へ声を掛けた。
「そうだ。ヘドラについて、ゼアの意見を聞きに来たのだが……」
そう言って難しい顔をする芹沢。彼にしてみれば、ヘドラが怪獣だとは判断されて欲しくなかったのだ。
すると……。
「であれば、ゼアの意見を聞くまでも無いでしょう。奴は紛うこと無くBETAです」
「ッ、なぜそう思う?根拠は何だ?」
「何故、と仰られても。私はこれでもタイタニズムの信奉者です。怪獣については自主的に研究や調査をしております。まぁ、今は本業の兵器開発で忙しいですが……」
そう言ってフッと笑みを浮かべるマエロフ。彼としてはここに居られて、モスラとバトラの傍に居られて嬉しい反面、日々を研究と開発に追われて最近では彼等の事を調べられないのが少し不満であった。
「そ、そうか。それで、話を戻すが根拠は何だね?」
「あの怪物、ヘドラがBETAな理由はその汚染物質をばらまく事です。現在出現している怪獣の中で、周囲に汚染物質をまき散らすのは主神ゴジラを例外とした場合存在しません。主神ゴジラが放射能を発している事は事実ですが、私が巫女であるコスモス様から聞いた話によれば、それは文明や生態系をリセットする、裁定の獣たるゴジラだからこそ、と伺っております」
「確かに、ゴジラは地球生命の使者とも言える存在だ。いざと言う時は、この星を脅かす存在の敵となり、更には地球をリセットする存在だ。現に過去、コスモスもそれで滅んだ」
「そうです。……であれば主神ゴジラが放射能を発するのにも理由が付きます。しかし、ではヘドラが汚染物質を垂れ流す理由は?それが奴にとって住みやすい環境を作る為、と言うのならばまだ納得出来ます。しかし現在において確認されている怪獣は皆、現在の自然の調和を保つ存在。主神ゴジラを例外とすればモスラの自然さえも癒やす力が良い例です。つまり、ヘドラは現在の自然を破壊する存在。とても調和を保つ怪獣とは言えない」
「……確かに、マエロフ博士の言うとおりだ。それで、他にも根拠があるのか?」
「はい。我々が知る怪獣の共通点があります。それは口がある事。もっと言えば口による捕食が可能な事。現にカマキラスやボルギルスによる捕食行動が確認されています。これは経口摂取によるエネルギー補給が可能であるとしていますが、ヘドラにはそれが無い。では奴のエネルギー源は?そもそも怪獣の骨格は差異こそあれど地球上に存在する生物と似通っている。かのキングギドラでさえも、れっきとした骨格を持つ。しかしヘドラにはそれが無い。データによれば、まるで流体生物。ヘドロが集まって怪物になったような、そんな存在です。生物に近い体つきを持つ怪獣とは、一線を画しています」
「でも、それなら単独行動はどう説明するの?BETAは個体で活動する事なんてまず無いわよ?」
そこに疑問を唱える夕呼。
「ふぅむ。……あくまでも推測ですが、ヘドラを生み出したのがBETA、或いはハイヴだったとして、もしかするとヘドラは失敗作だったのでは無いでしょうか?」
「失敗作?ってどう言う意味?」
「現在においてオリジナルのカシュガルハイヴでは時折、何らかの物体が射出され外宇宙に向かっている事が確認されています。更にBETAは、まるで資源を集めるように草木や瓦礫などを奪っていく。BETAによって侵略された大地に、何も残らないのはそうやって資源を集めているから、と仮定します。しかしそうなると、奪う資源のある大地を汚染で汚す意味が無い。それでは資源を奪っても、汚染された資源でしかない」
「となると、BETAは怪獣の脅威に対して対抗出来る戦力としてヘドラを生み出した」
「でも生み出したは良い物の、同類であるBETAでさえも制御出来ない怪物が誕生してしまった、って事?」
マエロフの言葉を受けて、芹沢と夕呼が続け様に語る。
「恐らくは。そしてそうであれば、仮にヘドラがBETAだったとしても単独で行動している理由になります。それと、今すぐ国連に要請して欧州に近いハイヴの様子を確認させた方が良いでしょう」
「どういうこと?」
「もし、ヘドラがハイヴで誕生し暴走しているのであれば、どこかのハイヴがヘドラによって汚染されている可能性がありますからな」
そう夕呼に答えるマエロフ。
「すぐに調査させるわ」
そして夕呼は、真剣な表情で頷いた。
数日後。夕呼達の元に情報が届いた。すぐさま夕呼は自分の部屋にマエロフとコスモスベースに滞在していた芹沢を呼び出した。
「どうやら、マエロフの睨んだとおりですね」
呼び出して早々、そう言って2人の前に資料を差し出す夕呼。それを受け取った芹沢が内容を確認し、隣に居たマエロフがそれをのぞき込んでいる。
「……ブダペストハイヴか」
「えぇ。……11番目のハイヴであるブダペストハイヴ。衛星でその周囲を確認した所、無数のBETAの死骸が発見されました。それも、大地を覆い尽くす程の」
芹沢は資料の中にあった衛星写真に目を向けた。画質が悪く、正確には分からなかったが、ハイヴ近くの荒れた大地の上をBETAの物らしき骸が覆い尽くしていた。
「これで、マエロフ博士の仮説が立証されたな。ヘドラはBETAが怪獣と戦う為に生み出した存在。言わばBETA版の怪獣」
「しかしそれはBETAでさえコントロールできない怪物となった。そして、ヘドラはブダペストハイヴを内部から破壊しつつ、行動を開始した。と言う事ですか」
BETAが怪獣を生み出した、と言う事実に芹沢と夕呼は難しい表情を浮かべていた。
「2人とも、何を恐れる事がありますか?ヘドラは既に討伐された後です。加えてBETA側も失敗作となったヘドラを再び生み出すとは考えられませんが?」
「むぅ、それはそうだが……」
マエロフの言葉を受け、芹沢はどこか戸惑いながらも頷いた。
しかし、彼は妙な胸騒ぎを覚えて居た。
数日後。芹沢はマエロフの仮説とそれを証明するデータを国連に提出。その結果、ヘドラはBETAの一種とされた。多くの者は、既にヘドラが撃退されている事からBETAと分かった事に安堵するだけだった。
芹沢としては、BETAが怪獣並みの存在を生み出した事に危機感を覚えて居たが、多くの者は彼のそんな意見に耳を貸さなかった。
だが……。
国連での報告を終え、モナーク所有の船で太平洋を横断し日本へ戻ろうとしていた芹沢。
その時、彼の胸騒ぎは現実となった。
『ダダダダッ!!』
「博士っ!大変です博士っ!!」
芹沢は艦内にあてがわれた自室で仕事をしていると、部下の1人が駆け込んできた。
「どうした?そんなに慌てて」
芹沢は冷静に対応しようとしたが……。
「ヘドラですっ!!」
「ッ?!何っ!?」
唐突に出てきた名前に、彼は椅子から立ち上がった。
「どういうことだっ!?」
「それが、欧州の最前線近くでヘドラらしき物体が確認されたんですっ!」
「何だとっ!?ヘドラは数週間前、欧州軍のパトロール部隊との戦闘で木っ端微塵になったはずだろうっ!?」
「そ、そのはずなんですがっ!似たような影を衛士達が見たとっ!それも複数人がっ!」
「ッ!?まさか、新たな個体がっ!?いや、仮にヘドラがBETAによる失敗の産物なら、BETAがまたヘドラを生み出す理由が無いっ!しかし何故っ!」
芹沢は立ち上がり、窓の方へと歩み寄った。外を見つめながら考えている彼の目に、海が飛び込んできた。そして、彼はある事に気づいた。
「待てっ!ヘドラには骨格が存在しない。筋肉もだ。体全体が流体で出来ているような存在だ。……ならば臓器はっ!?脳はどこにあるっ!着ぐるみじゃないんだっ!外側だけと言うのはあり得ないっ!」
彼の言うとおり、骨も筋肉も無い生物など、普通に考えればありえない。それはBETAも同じ。如何にグロテスクな怪物であっても、奴らには体を動かす筋肉がある。だがヘドラはその筋肉すら持っていない。
『ヘドラが再生したっ!?しかしどうやってっ!?確かに報告では木っ端微塵にっ!っ!!』
そこで彼は気づいた。
「木っ端微塵。つまり、無数の欠片に砕け散った、と言う事か。……それが集合し再結合したのだとしたら……。欠片そのものが生きている?そんな事がありえるのか。いや。BETAが生み出した怪獣なら可能性はありそうだ。……っ!そうなると……っ!」
ブツブツと独り言を呟いていた芹沢。
「あ、あの。博士。我々はどうすれば……」
「ッ!そ、そうだったっ!今すぐ艦長へ言って進路を帝国からインファント島へっ!それと欧州の軍や国連に急いで通達を出せっ!ヘドラとは、恐らく無数の小さな個体が集まって形成された巨大な群体生物だっ!下手に攻撃して、欠片が飛び散ったとなれば、そこからまたヘドラが増殖する可能性があるっ!」
「ッ!?そ、そんな……!?」
ヘドラが勝手に増殖すると聞けば、彼のように顔色を悪くしても可笑しくは無いだろう。
「とにかく急いで連絡をっ!下手に攻撃すれば、あとあと取り返しの付かない事になるっ!」
「りょ、了解ですっ!!!」
芹沢の指示を受けて青年は慌てた様子で飛び出して行った。
それを確認した芹沢は、海へと目を向けた。
「BETAが生み出した怪獣、か。これほど厄介だとはな……っ!」
彼は、静かに拳を握りしめながら呟くのだった。
その後、急遽インファント島へやってきた芹沢はすぐさま夕呼とマエロフの2人と話し合いの席を設け、彼の考えついた仮説を話した。
「成程。無数の個からなる巨大な一個体に見せた群体生物。確かにそれが事実なら、体が四散したとしてもヘドラが生きている事の説明が出来ますね」
「加えて、群体生物であるヘドラの四散による増殖。確かにこれも厄介だ」
2人とも、芹沢の仮説を真摯に聞き、事の重大さを理解していた様子だった。
「ヘドラは周囲を汚染する性質から、放置すれば我々人類がBETAから奪還した地域を汚染されかねない。それではBETAに勝利しても意味は無い。かといって、下手な攻撃はヘドラの四散、延いては第2第3のヘドラ出現に繋がる可能性もあります」
「放置もダメ。しかし下手な攻撃もダメ。……八方塞がりですね」
夕呼は芹沢の言葉を聞き、ため息交じりにそう言って腕を組んだ。
「……念のため、ゼアにヘドラのデータ解析をさせるべきでは?弱点を探るのであればそれが必要でしょう」
「そうね」
マエロフの言葉に夕呼は頷き、彼女達は早速ゼアに、最優先でヘドラの解析をさせた。
驚異的な処理速度を持つ人工知能であるゼアによる解析は、最優先事項にされた事もあって、数時間で終了した。そしてゼアによってはじき出された情報を、3人は夕呼の部屋で確認する事にした。
「……結果から言うと、ヘドラを倒す術はあるわ」
真っ先にデータを閲覧した夕呼は、2人にそう言った。
「その術というのは?」
「ゼアが提示した中で、最も可能性の高い方法はモスラの協力が必要よ」
芹沢の疑問符に彼女が答え、更に言葉を続ける。
「モスラの必殺技であるシャイン・ストライク・バスター。あれの熱量でヘドラを乾燥させ、体内の水分を蒸発させるのが一番の手みたいね。体全体が流体、つまり液体であるヘドラは、体全体が乾燥すればボロボロに砕け散るのではないか、と言うのがゼアの予測。そしてモスラのシャイン・ストライク・バスターを使って一気に焼くのが、一番成功率の高い方法だそうよ」
「それが、ゼアの導き出した一番確実な方法という訳か」
芹沢はそう言って息をつく。
「……モスラの協力は、得られるだろうか?」
「彼等にとっても、地球環境を汚染するヘドラを放置する理由は無いと思いますが?マエロフ、あなたの意見は?」
「私もミスコーヅキの意見に賛成だ。女神モスラは、並み居る怪獣たちの中でも守護神や地母神としての格を特に強く表している。BETAによって荒廃した大地を癒やし復活させている点から考えても、大地を汚すヘドラを見過ごす事は無いだろう」
2人からすれば、モスラの協力は得られるだろうと言う考えだった。
だが……。
「でも、それだけに頼るのは危険ね」
「ん?」
不意に聞こえた夕呼の声に芹沢が反応する。
「ヘドラと戦うために、モスラ単独に頼るには愚の骨頂、と言う事です。幸い、ゼアが他にもアイデアを提供してくれましたので」
そう言って彼女は2人の前に一枚の資料を置いた。
「『メーサー、殺獣光線車』?博士、これは一体?」
「元々はコスモスが開発していた対怪獣用兵器の一つです。コスモスはモスラやバトラの存在から、この世界には彼等に類似する超常的な存在がいると予見していたようですね。そして、それと戦う時のための兵器として開発していたのが、そのメーサー車です」
資料には図面があった。それは見た目的に、巨大なパラボラアンテナの砲塔と、それを牽引する車のようだった。
「過去にコスモスはこんな物まで開発していたのですか。ほう?動力は小型化された原子炉っ!?何と素晴らしいっ!原子炉をこのサイズまで小型化出来ていたなんてっ!成程、誘導放出されたマイクロウェーブ、メーサー光線によって目標内部の水分を沸騰、蒸発させ、さらに膨張させる事で内側から敵を破壊する兵器、と言う訳ですか。言い換えれば巨大で高出力の、指向性も持たせた電子レンジ、ですな。これでは機械兵器には効果は殆ど無いでしょうが……」
興奮気味に語るマエロフ。
「えぇ。生物であるBETAや、体の殆どが水分のヘドラには効果てきめん、と言う事よ。それともう一つ、良い知らせがあるわ」
「と言うと?」
「轟天号の先端、あのドリル部分にもメーサー兵器が搭載されていたんです。それも冷凍メーサー砲と、ドリルスパイラル・メーサー砲というものが。データによれば後者は通常のメーサー車以上の出力を持っているようです。それに、冷凍メーサー砲は理論上、怪獣クラスの相手でも一瞬で凍らせる事が出来るとか」
「おぉっ!それこそまさに行幸っ!やはり先史文明たるコスモスの技術力は素晴らしいっ!冷凍メーサーが使えるのなら、ヘドラの動きを止められる可能性もあるっ!」
「成程。確かに轟天号やメーサー兵器を配備出来れば良い。しかし大丈夫なのですか?」
「あら?何がですか?」
「以前聞いた話では、まだ轟天号の乗組員の育成が終わっていないとか?それにメーサー兵器の量産も簡単ではないはず」
「あぁ。その事でしたら大丈夫。メーサー兵器は既に基地の多次元プリンター、ザットに命じて生産を開始。そして、轟天号の乗組員の研修は既に完了しています」
「ッ、では、轟天号は動かせると?」
「えぇ。現在乗組員はオーストラリアにいます。数日もあれば、オーストラリアの空中戦艦用の乗組員養成施設からここに連れてくる事が可能です」
「となれば、ヘドラとの対決は近いうちに、と言う事ですなっ!」
「えぇ。私としても、ヘドラを見過ごす理由はありませんし。折角世界が良い方向に向かっているんです。その波を消されるのは不味いですからね。私は早速、国連本部やオーストラリアの施設などに連絡を取ります。今のうちにヘドラ殲滅作戦の段取りを決めておきたいので」
「ならば私も、何か出来る事をするとしようっ!ヘドラは流体生物との事だしっ、そうだっ!冷凍弾はどうだろうかっ!こうしては居られんっ!すぐに設計などを始めなければっ!」
「でしたら私も。モナークを通じて各国に警告と警戒を促します」
笑みを浮かべる夕呼。嬉々とした表情で駆け出すマエロフ。真剣な表情で部屋を出る芹沢。
彼、彼女らは動き出した。悪辣な怪物、ヘドラ討伐のために。
かつて人と怪獣が協力してハイヴを破壊した、希望作戦のように。
『『『『キュロロロロロロロロッ!!!』』』』
だが、彼等は知らない。例えヘドラがBETAの生み出した失敗作だったとしても、それは『怪獣と比肩しうる程の化け物』だという事を。
そして、『既にヘドラは1匹』ではない事を。
ヘドラという存在に抗おうとする人と怪獣。阻む者は全て溶かし進むヘドラ。
モスラ・バトラ+人類 VS ヘドラ。
この戦いの日は近い。
そしてそれは、苛烈な戦いになることを知る者はいない。今は、まだ。
第19話 END
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