マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
メインにしています。
~~前回のあらすじ~~
地球外生命体、BETAとの苛烈な戦争が
続く現代。しかし、そんなある日、朝鮮半島の
戦いで謎の巨大生物が出現、BETAと交戦する
という事態が発生。当時半島で行われていた
撤退作戦、光州作戦の最中の事であった。
しかし結果的にその巨大生物の出現で作戦は
成功を収めるのだった。
光州作戦から数日後。
日本帝国・元枢府。
その日、極東の国の政治家や軍の高官たちが
一同に会する会議があった。
しかし、その会議室の中の空気は重く、
皆が皆頭を抱えていた。
理由は唯一つ。それは……。
『プァァァァァァンッ!』
甲高いラッパのような鳴き声と共に、体を
丸めた巨獣が荒れた大地の上を転がり、
BETAの群れを轢殺する。
その非現実的な映像に、政治家や軍人たちは
頭を悩ませて居たのだった。
そんな彼らの中に、彩峰中将の姿があった。
やがて……。
「……以上が、我々が朝鮮半島撤退作戦、
光州作戦で経験した世にも不思議な事案です」
萩閣がそう言うと皆が皆、唸り声を上げる。
「彩峰中将。……貴官は、その、本当に
あれを見たのか?」
「自分の目で、という意味の質問であれば
違います。私が見たのは、前線の部隊の
戦術機から送られて来た映像をリアル
タイムで見ていただけです」
軍人の一人の問いに答える萩閣。
「中将、単刀直入に聞くが、我々は幻覚を
見たのか?何だあの生物は。まるで
太古の恐竜ではないか」
「恐れながら、私もそう思った事は帝国に
帰還してから一度や二度ではありません。
まるで長い夢を見ているような感覚に
至る事があります。しかし、数千の兵士
が幻覚を見た、というのは些か突拍子
もない事です。ましてや我々以外の国の
兵士達も、です。認める事は遺憾ですが、
あの巨獣は現実に存在し、尚且つBETA
と個の武力で殺し合いが出来る程に強大な
存在であると言えるでしょう」
今度は政治家の問いに萩閣が答えるが……。
「「「「………」」」」
彼の言葉に政治家たちが黙り込む。そんな時。
「……この星には、もしかすると、我々や
BETAでさえ知らない『怪物』が、眠って
いるのかもしれません」
彼の言葉に、誰もすぐには反論できなかった。
この時の彼の発言は、半信半疑であった。
彼自身も『あんなのが他に居るなんて思えない』。
内心はそう思っていた。
だが彼の言葉が現実である事を知るのは、存外
すぐであったのだった。
1998年、夏。BETAがついに北九州へと上陸した。
人々は怯え、BETAの脅威から逃げようと東へと向かった。
そんな人々を追うかの如くBETAは東へ、
ついには帝都である京都にまで迫っていた。
人々は更に東へと逃げる。
しかし、その人の流れに逆らう存在が今、
覚醒しつつあった。
東北地方・某所
巨大な洞窟の中にて。
『ピクッ』
その中で眠っていた巨獣が、目覚めた。
そして、洞窟の外を見つめる。
感じる。『彼』は感じ取る。自らの縄張りを
犯さんとする『害虫』が外からやって来た事を。
彼は憤る。この場所は自分の住処である。
よそ者が入ってきていい場所ではない。
彼は決心する。撃退せねば。住処を守る為
にも戦わねば。彼はノソノソと歩き出し、洞窟
の外へと出る。
そして、夜空に浮かぶ月と星空を見上げ
ながら、彼は、『むささび怪獣バラン』は静かに、
両脇に備えられた被膜を広げて飛び立った。
全ては、自らの住処を荒らすよそ者を撃退するために。
同じように、日本の一角、日本海側に
面する新潟県。そこにある妙高山の地下で……。
『ピクッ』
バランと同じように、静かな眠りについていた
一匹の獣が目を覚ました。
一本の角を生やした、その赤い獣、いや、
聖獣は目を開き、周囲を見回してから西の方
へと目を向け、そして唸る。
『彼』もまた感じ取っているのだ。この国
を汚さんとする悪しき軍勢が迫っている事を。
ならば、『彼』のやることはただ一つ。
『護国聖獣』の一匹として、この『くに』
を守るのみである。
『ガガガガッ』
そして、『彼』、『地底怪獣バラゴン』は住処を
離れ、地下を進む。
そして更に……。
日本の某所に、山に偽造されたピラミッドが
あった。そして、その中で眠り続けていた
存在がいた。
しかし、『彼』もまた守るべき『くに』へと
迫る危機を感じ取り、眠りより目覚める。
『彼』は西の方角を睨み、グルルとうなり声
を上げる。
そして、それを合図とするかのように光の
ピラミッドは消え去る。
月光の元に照らされたもう1匹の
『護国聖獣』、『超古代狛犬怪獣』、
『ガーディー』もまた、迫り来る
BETAに立ち向かう為に、西へと向かい
足を進めた。
一方で、とある場所に数人の少女達が集め
られていた。そこは京都の嵐山に造られた、
仮設の補給基地だった。そしてその基地の
守備隊に、近衛軍の衛士である少女たちが割り
当てられていた。
帝国には、他国と比べて少々変わった軍
がある。それが、『帝国斯衛軍』だ。斯衛の
主な目的は、帝国のトップである『政威
大将軍』およびそれに任命される可能性の
ある5大武家、『五摂家』、更にその縁者の
護衛である。そして、その近衛軍には大抵
由緒ある武家の人間が所属する事になる。
今ここに居る彼女たちも、譜代や一般
という差はあれど、武家の生まれだ。
しかし彼女たちはまだ学生であっても
おかしくない年頃だ。訓練も満足に出来た
とは言えず、大半のメンバーが怯えていた。
そんな中……。
「なぁ、みんなはこんな話、聞いた事あるか?」
褐色肌が特徴的な少女、『石見 安芸』が
傍に居た友人達に問いかけた。
「何?話しって?」
首をかしげているのは、黒髪のロングヘアが
特徴的な『甲斐 志摩子』だ。
「朝鮮半島での光州作戦、あっただろ?
あの時向こうでさ、化け物が出た
んだってよ」
「ば、化け物?まさかBETAの新種?」
その単語に怯えた様子なのは、眼鏡を
駆けている『能登 和泉』だ。
「それがさ、どうも違うらしくてさ。
聞いた話じゃBETAとやりあったん
だって」
「えっと、どういうこと?」
安芸の言葉の意味が良く分からず、首を
かしげるショートヘアの少女、『篁 唯依』。
「私も知り合いからの又聞きだからよく
分かんないんだけど、BETAとは違う
巨大な未確認生物が現れて、BETAと
戦ったんだってさ」
「ハァ、なんですのそれは?大方、何か
の話を聞き間違えたのではなくて?」
そう言ってため息をつくのは、黒髪
ロングヘアの少女、『山城 上総』だ。
「いやまぁ、そりゃ言ってて私も非現実的
だってのは分かってるけどさ。
……信じたくもなるだろ?BETAを
蹂躙する怪物、ってのをさ」
安芸は、どこか暗い表情で呟いた。
その言葉を前に唯依たちも押し黙ってしまう。
今この世界は、BETAによって滅ぼされつつある。
アジア大陸の大半が今やBETAの活動地域と
なっている今、安芸の言うように、BETAを
蹂躙する怪物、と言う存在に縋りたいのも
無理は無いのだ。
しかし、彼女達には知る由も無かった。
その存在、『怪獣』と自分達が出会うその時、
その瞬間が、既に秒読みに入っている事を。
今、唯依たちは嵐山仮設補給基地に迫る
BETA群を迎撃するために出撃。
平野部でBETAを待ち構えていた。
そんな中で、戦術機のパイロット、『衛士』と
なるための訓練過程を満足に終えていない
彼女達は、皆一様に緊張を隠せずにいた。
彼女達の乗る戦術機、『82式戦術歩行戦闘機』。
通称、『瑞鶴』。その数合計12機。
だが、そんな彼女達を嘲笑うかのように、
地鳴りと共に数千、数万の数のBETAが
彼女達へと向かって来た。
「……来た」
静かに呟く唯依。
だが……。
『き、緊急連絡っ!』
その時、彼女達の耳に司令部から通信が
届いた。
『戦闘中の各部隊に通達っ!東北東より
正体不明の飛行物体が前線に向かって
飛行中!なお、物体は航空機では無いっ!
各自警戒せよっ!』
「え?何?」
「飛行物体って、まさかBETAっ!?」
通信内容がよく理解出来ない志摩子と、
まさかの状況に怯える和泉。もし飛行物体が
BETAなら、それはBETAの新種で、しかも
背後を取られBETAに前後を挟まれた事に
なる。
「落ち着け新兵共っ!」
それを、中隊長である『如月 佳織』中尉が
一喝する。
「とにかく今は目の前のBETAをっ!」
と、指示を出そうとした時。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!』
「じ、地震だっ!」
BETAの進撃による地鳴りを上回る大きな
揺れが彼女達を襲った。
咄嗟に叫ぶ安芸。
と、その時。唯依は咄嗟にレーダーで地中の
様子を探ったのだが……。
『何、これ。震源が、動いている?』
視覚にデータなどを投影するヘッドセットを
通して、索敵し得られた情報が映し出されるの
だが、それは、震源が移動していると言う
データに他ならなかった。
そして、振動が僅かに弱まったその時。
『ドバァァァァァァァンッ!!』
唯依達の前方、約数百メートルの地点で
突如として大地が割け、その下から大きな
影が姿を現した。
それは、バラゴンだった。
地を割って現れたバラゴンは、唯依達に背中を
向ける形で前方のBETA群を睨み付け、威嚇
なのか耳を逆立てながら咆哮を上げる。
「何、あれ?」
目の前の存在を、文字通り『理解出来ず』に
困惑する志摩子。
だがそれは唯依や、中隊長の佳織も同じ事
だった。
正しく、『理解不能』。
だが、それだけではなかった。
『ガルルルッ!』
どこからうなり声のような物が聞こえ、
慌てて彼女達が周囲を見回すと、東の方角
から山を越えて二足歩行の怪獣、
ガーディーが現れた。
「ま、また現れたっ!?」
「どうなってるの!?」
驚く安芸。和泉はもはやパニックになりそう
で仕方が無かった。
と、その時。
『キィィィィィィィィンッ!』
甲高いジェットの音が聞こえた。かと思うと、
遠方の山々から、光、『光線(レーザー)級』の
BETAによる攻撃が夜空を切り裂いて、その
夜空に居る物体を撃ち落とそうとしていた。
しかし、その物体はレーザーを何発も喰らおう
と物ともせず、そしてバラゴンから少し離れた
場所に着陸した。それは、バランだ。
突如として現れた、バラゴン、バラン、
ガーディーの3体に、唯依達はもはや、
頭がパンク寸前だった。
だが、現状はそんな彼女達が落ち着くのを
待ってくれる程甘くは無い。
3体の怪獣が現れても、構わずに突進してくる
BETAの先方、突撃級の群れ。
だが……。
「な、何あれ?」
和泉が真っ先に気づいた。それは、バラゴンの
角が発光している事だった。と、次の瞬間。
『ヴァァァァァァァァァァッ!』
バラゴンがその口から、赤い熱線を吐き出した
のだ。
「ビーム!?ビーム吐いたぞあいつっ!?」
混乱のあまり叫ぶ安芸。
そしてバラゴンの放った熱線は、そのまま
突撃級の群れを横薙ぎになぎ払っていく。
しかし、バラゴンの熱線の威力だけでは、
突撃級の装甲、モース硬度15以上を誇る装甲
を溶解させ貫く事は不可能だった。だが、
それでも熱線の威力は、人類の武装を超えた
威力がある。そして、突撃級の足までもが、
その驚異的な装甲で覆われている訳ではない。
『ガクンッ!』
熱線の照射を受けても、最初はビクともせず
走り続けていた突撃級の一部が、不意に態勢を
崩して横転。更に時速170キロに及ぶ速度で
走っていた為に、運動エネルギーを止める事が
出来ずに、突撃級は盛大にスッ転び、更に
後続の突撃級までもが転んだ同族に激突して
転倒したりしていく。
「な、何が」
戸惑う志摩子。そんな中で、唯依は倒れて
起き上がれなくなった突撃級の足に注目し、
気づいた。
「あ、足が、溶けて、る?」
そう、突撃級の足は、バラゴンの熱線を
受けて焼け爛れ、終いには一部が熱量に
よって溶けて、その巨体を支えられなくなった
のだ。
それが先ほど、盛大にスッ転んだ理由である。
そして……。
盛大にスッ転んだのを合図に、バランと
ガーディーが前に出る。
BETA群も、前方が突っかえて身動きが
取れなくなった突撃級を超えて、戦車級や
要撃級のBETAが続々と向かってくる。
普通の人間ならば、例え戦術機に乗り、
武装していたとしても、その圧倒的なまでの
物量から恐れ、怯えていただろう。
だがしかし、2匹は恐れず、むしろ、
「やってやるぜ」と言わんばかりにうなり声
や咆哮を上げながら突進していく。
そして、真っ先に飛び出したのはバランだ。
一瞬力を溜めたかと思うと、大きく跳躍。
光線級の攻撃を物ともせず、BETA群の
ど真ん中に着地。
すると、『ドドドォォォォォォンッ!』
と言う爆音と爆風によって、下に居たBETA
は軒並みぺしゃんこ。比較的軽い戦車級は
今の爆風で軒並み吹っ飛び、味方(?)の
BETAに激突する始末だ。
更にそのままバランは大きく旋回し、その
巨大な尻尾でBETAをなぎ払う。
吹っ飛ばされた戦車級が地面に激突し、
大地にシミを作っていく。
更にガーディーも前進し、要撃級の群れを
次々と踏み潰していく。
別の要撃級がガーディーにその前肢を
振りかぶって突撃するが、ガーディーは
逆にその前肢を両手で掴むと、1匹の
要撃級を、さながら武器のように振り回し
他の要撃級や戦車級に叩き付けていった。
更にその場で大きく回転し、バランのように
巨大な尻尾でBETAをなぎ払う。
と、その時、ガーディーとバランに向かって
要塞級が向かって来た。緩慢な動きで前進し
向かってくる要塞級。しかしガーディーと
バランは要撃級や戦車級の相手で手一杯だ。
そして、要塞級最大の武器である衝角が
放たれようとした時。
『ドゴォォォォォンッ!』
突如として地面を割って地下から現れたバラゴン。
真下からの突然の奇襲に対応出来ず、
要塞級はその巨体を倒された。更に衝角と
本体を繋ぐ触手を、バラゴンの顎が食いちぎった。
と、そこに今度はガーディーが近づいてきて、
倒れた要塞級の頭のような場所に噛みつき、
その首を、文字通り食いちぎってしまった。
そして更にガーディーは、動かなくなった
要塞級の、槍のような形をした足を2本、
強引に引き抜くと、まるで双剣のように
それを振り回し始めた。
バゴォン、ドゴォンッと音を立てながら
振り下ろされる攻撃に、砂塵とBETAの
千切れた四肢、その体液が飛び散り、
さながらこの世の地獄のような様相を呈していた。
バラゴンが熱線でなぎ払い、バランが飛び、
ガーディーが要塞級の足でぶっ叩く。
そして、そんな戦いの惨状を、唯依達は
呆然と見ている事しか出来なかった。
だが……。
『嵐山仮設補給基地より護衛中隊へ!』
ヘッドセットを震わせる通信の声を聞き、
彼女達は体をビクッと震わせながら我に
帰った。
『レーダーで大型の物体を確認したが、
どうなっている!?状況はっ!?』
「こちら護衛中隊隊長の如月だ。げ、
現在我々の前方にて、未確認大型生物
がBETA群と交戦中」
『な、何!?中隊長、気は確かか?
そんなもの……』
「今からデータリンクで映像を送るっ!
良いから見てくれっ!」
そう叫ぶと如月はデータリンクを通して
今自分達が目にしている映像を、基地へと
送信した。
すると……。
『な、何、よ。これ……』
通信機越しに、女性オペレーターの驚く声が
聞こえてくる。
彼女もまた、自分の目を疑っていた。
ほんの少し離れた所にBETAの群れが居ると
言うのに、唯依達は呆然と、立ち尽くす事
しか出来なかった。
そしてそのBETAも、彼女達に構ってる暇
など無い、と言わんばかりにガン無視で
バラゴン達に次々と襲いかかり、
そして次々と返り討ちにあっている。
そんな中で、真っ先に我に返ったのは、
上総だった。彼女は頭をかぶり振ると数秒
考えたあと、中隊長である如月に通信を
開いた。
「中隊長、進言したい事があります」
「ッ、何だ。言ってみろ」
「はい。今のこの状況は、好機、チャンス
です。あの3体が何であれ、今BETAと
戦い、そしてBETAの注意があの3体に
向いているのなら、これを利用して少し
でもBETAの数を減らすべきでは無い
でしょうか?幸い、まだ戦闘開始前で
あった為、全機推進剤も弾薬も、まだまだ
あります」
上総の言葉に、数秒考えた彼女は……。
「よしっ。中隊各機へっ!これより我々は
BETA殲滅に移るっ!なお、あの3体への
対処は現時点では保留とするっ!この
状況であの3体まで敵になられては
厄介だっ!奴らには不必要に攻撃せず、
BETAのみを攻撃せよ!」
「「「「「了解っ!」」」」」
佳織の指示に少女達は頷く。
「よしっ!篁の第1小隊と私の第2小隊は
近中距離戦にて戦車級、要撃級を
最優先で攻撃。山城の第3小隊は遠距離より
光線級を最優先で撃破せよっ!各自、
兵器使用自由っ!攻撃開始っ!」
彼女の指示に従い、唯依達が攻撃を開始する。
「当ってぇぇぇぇぇぇっ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
志摩子と安芸が、悲鳴にも似た叫びを上げながら
戦車級を撃ち抜く。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
「そこぉっ!」
更に和泉と唯依の射撃が要撃級を撃ち抜く。
「前方11時の方角に光線級を発見っ!
各機、攻撃開始っ!」
「「了解っ!」」
上総の第3小隊も光線級に対して狙撃を
始めた。
放たれる弾丸が怪獣3匹を超えてBETA群に
襲いかかる。バラゴンとガーディーは一瞬
彼女達に目を向けた後、しかし何をする事も
無く再び前を向いて襲いかかってくる
BETAを蹂躙しはじめた。
そして、彼女達の弾がそろそろ無くなりそうに
なったその時。
『き、緊急連絡っ!嵐山守備中隊へっ!
各地のBETA群が突如として転進っ!
こちらに向かって来ますっ!』
「っ!?何だと!?」
その通信に驚く佳織。そして彼女はすぐさま
ハッとなって目の前の巨大不明生物へと
目を向けた。
『まさか、この3体を脅威だと認識したのかっ!?』
彼女は、まさかの仮説を立てた。しかし今は
戦闘中だ。向かってくるのなら、戦う準備を
しなければならない。
「司令部へっ!こちらの弾薬がそろそろ底
を突く!大至急補給物資を送ってくれっ!
頼むぞっ!」
『了解っ!』
とにかく今、彼女達に、戦う以外の選択肢は
無かった。だからこそ、少女達は戦う。
撃ちまくる。
そしてそれが、人類史で二度目の、怪獣と
人類の、意図せぬ共闘作戦となるのだ。
一方、帝国陸軍司令部でも、バラゴン、
バラン、ガーディー出現の報告を受けて
混乱に陥っていた。
更にここに来てのBETA群の転進。
これまでBETAに見られなかった行動と
未確認巨大生物の出現に混乱する司令部。
だが、こんな中でも比較的冷静だった人物が
いた。それは、彩峰萩閣。
即ち、朝鮮半島でアンギラスを目撃した彼
だった。
「これは、好機だっ!」
「ッ!?何を言っている彩峰中将っ!
これのどこが好機なのだっ!?」
「BETA共は今、出現した3体の巨大不明
生物に集中している。これは私が
半島で経験した状況と全く同じです。
ならば、あの時と同じ事が出来るのです」
「同じ事、とは?」
「あの3体を囮としてBETA群を我々が
包囲し、攻撃する。そして、あの3体を
我々が支援するのです」
「し、支援だと!?正気か中将!」
「はい。もしここであの3体が倒されて
しまえば次にBETAが狙うのは我々
人間です。だからこそ、あの3体を
生かしつつ囮とするために、3体が
死なぬように援護するのです。
もし仮に戦闘終了後に、あの3体が
敵となったとしても、3体だけならば
BETAと三すくみの状況になるよりかは、
まだマシだと考えます。如何でしょうか?」
「ぐ、う、うぅ」
萩閣の言葉に、周りの者達は困惑したが、
彼の言う事も最もであり、また光州作戦
の時のアンギラスという前例がある為に、
最終的には彼の意見が届く事となった。
「全軍に連絡っ!残存部隊は嵐山周囲に
集結しBETA群を攻撃せよっ!なお、
BETAと戦闘中の巨大不明生物3体への
攻撃をしないよう、全部隊に徹底させろ!」
「「「了解っ!」」」
司令官の指示を受けてオペレーター達が
慌ただしく動き出す。
「それと在日米軍、国連軍、斯衛軍司令部
にも通達して協力を要請しろっ!ここが
正念場だぞっ!」
帝国陸軍から他の軍司令部に届いた要請に
応じて、他の3軍も動き出した。
ある者は祖国を守るために。
ある者は戦いながらも3体のデータを
手にするために。
それぞれの思惑が交錯しながらも、
嵐山に部隊が、戦術機が集結する。
国連軍や米軍からは『F-4ファントム』や
『F-15イーグル』が集結してくる。
帝国陸軍からは『77式撃震』や『89式陽炎』
そして世界初の第3世代機でもある
『94式不知火』とその改修機でもある
『不知火壱型丙』が嵐山へと向かってくる。
そしてその中にも、唯依達の訓練校時代の
恩師である『真田 晃蔵』大尉の姿もあった。
更に、斯衛軍からも82式瑞鶴を主力とする
部隊が嵐山に集まってきてた。
そして……。
唯依達も、数十分におよぶ射撃支援を行い、
ついに何度目の補給か分からなくなっていた時。
『こちら帝国陸軍戦術機部隊っ!嵐山に
到着っ!これよりBETAへの攻撃を
開始するっ!』
唯依達の耳に、オープンチャンネルで届いた
通信。
「ハァ、ハァ、ハァ、え、援軍?」
安芸は、戦闘ですっかり上がった呼吸を
整えながら、遠方よりこちらに向かってくる
戦術機部隊の方へ視線を向けた。
更に、そこから堰を切ったように周囲に
集まってくる、国家の枠組みを超えた
戦術機たちや戦車部隊。戦闘ヘリ部隊など。
今、嵐山に、この戦いに参加している
半分以上の戦力が集結しつつあった。
そして、集まった部隊から放たれる
幾千、幾万もの火線がBETAの群れに
集中する。
バラン、バラゴン、ガーディーを狙って
前進してくるBETA。だが、それらは
3体の元にたどり着く前に、降り注ぐ
銃弾に穿たれ、多くのBETAが屍と
なっていく。そして火線を突破しても、
3体は向かってくるBETAを軽々と
屠り続けた。
だが、それでも物量で人類を圧倒してきた
BETAだけあって、数でもって火線を
くぐり抜け、小柄な戦車級が同類の屍の山
を盾にバラゴンとガーディーの死角から
襲いかかった。
咄嗟に気づいたバラゴンとガーディーだが、
対応出来ずに2匹に無数の戦車級が取り付いた。
そのまま噛みつく戦車級。肉を食いちぎる事は
出来なかったが、それでも2匹が悲鳴の
ような声を上げながら倒れる。
「あぁっ!」
それを見ていた和泉が悲痛な声で叫んだ。
すると、直後。
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
「離れろぉぉぉぉぉぉっ!!」
次の瞬間、安芸と志摩子の瑞鶴が
飛び出した。
そして、バラゴンに取り付いた方を安芸が。
ガーディーに取り付いた方を志摩子が。
それぞれ蹴る、殴るなどして、戦車級を
2匹から引き剥がす。更に……。
引き剥がされて起き上がった戦車級。だが……。
「こんのぉぉぉぉぉぉっ!」
「そこぉっ!」
それを和泉と上総の瑞鶴が撃ち抜く。
そして、4人は倒れたバラゴンとガーディー
の前に立つと、そこから弾幕を張って戦車級を
2匹に近づけまいとした。
「ッ!各機っ!上総達を援護っ!」
更に佳織は咄嗟に指示を出して唯依達が
2匹と4人にBETAを近づけまいと撃ちまくる。
だが、その攻撃を超えて戦車級数匹が、
4人に向かって飛びかかってきた。
「ひっ!?」
悲鳴を漏らす和泉。
「っ!?」
目を瞑ってしまう志摩子。
「っ!!!」
戦車級を睨み付ける安芸。
「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」
反撃しようと支援突撃砲を向ける上総。
だが……。
『ヴアァァァァァァァァァッ!』
後方から放たれた熱線が、戦車級の半分を
なぎ払い。
『ドシャァァァッ!』
投げつけられた要撃級の死骸が、残り
半分を押しつぶした。
「え?」
呆けた声を上げながら振り返る志摩子。
すると、後ろでは倒れていたバラゴンと
ガーディーが起き上がっていた。
そして、2匹は志摩子達の瑞鶴を数秒
見つめた後、彼女達の機体を避けるように
前に出て、再び戦闘を開始した。
しばし、それを前に呆然としていた4人。
しかし……。
『何をボサッとしているっ!今は戦闘中だぞ!』
佳織の怒声を聞いて我に返った4人は、
再び戦闘を開始した。
そして、それから約1時間後。
彼等は、襲い来るBETAを全て退けた。
嵐山付近に積み重なるBETAの死骸の山。
そして、その死骸の山で雄叫びを上げる
3匹の巨獣。バラン、バラゴン、ガーディー。
そして、それを見上げる鋼鉄の巨人、
戦術機。
そして、バランは勝ち鬨の咆哮を上げると、
大きく跳躍し、皮膜を広げてどこかへと
飛び去ってしまった。
『あっ!1匹逃げていきますっ!どうします
か!?大尉!』
「よせ。手を出すな。下手に手を出して
我々を敵と判断されても面倒だ。それに、
ここにいる全員、既に疲弊している。
これ以上の戦闘は無理だ」
バランを見送る真田たち。
しかし、ふとバラゴンとガーディーの2匹が
何故かゆっくりと戦術機部隊の方へと
歩み寄って来た。
戦術機たちは慌てて道を空けながら武器を
構えるが、2匹はそれをガン無視で、
白い機体、瑞鶴の元へと歩み寄り、あと少し
と言う所で足を止めた。
2匹が足を止めたのは、安芸たちの瑞鶴の
前だった。
「な、何?私らに用なのか?」
巨大な顔が近くにあって、戸惑う安芸。
すると、2匹とも、小さく喉を鳴らし始めた。
まるで犬が喜びを表現しているかのような声
で困惑する安芸達。
その時、不意に和泉が機体のスピーカーを
ONにした。
「あ、あの。もしかして、お礼、言ってるの?」
そう声を掛ける和泉。
しかし相手は獣だ。
人間の言葉が伝わるわけがない。
そう、遠巻きに見ていた誰もが思った。
しかし……。
次の瞬間、2匹は目を細めて小さく唸りながら
頷いた。
「えっ!?つ、通じたの!?」
これに驚く志摩子。更に続いて上総も
スピーカーをONにする。
「ま、まさか、私達の言葉が、分かるの
ですか?」
咄嗟に問いかける上総。しかし2匹は
困ったように首をかしげるだけだ。
どうやら言葉は通じないようだ。
だが、それでも和泉の感情は、思いは、
間違い無く2匹に通じたようだ。
すると……。和泉の瑞鶴が武器を地面に
置いて静かに前に出る。
「え!?ちょ、ちょっと和泉!?」
それを見ていた唯依が通信で止めるが、
彼女の瑞鶴は止まらずに……。
「ありがとう、助けてくれて」
そう言って静かにバラゴンの頭を撫でた。
するとバラゴンは嬉しそうに喉を鳴らす。
更に、それを見てどこか羨ましそうな
表情をしていたガーディーに気づいた
安芸の瑞鶴が、ゆっくりと飛び上がると
同じようにガーディーの頭を撫でた。
するとガーディーも嬉しそうに喉を鳴らす。
「はは、こうして見ると、可愛いなぁお前」
そう言いながらガーディーを、戦術機を
使って撫でる安芸。
そうして、2人が2匹を撫でる様を、
周囲の人間は皆、ハラハラしながら見守っていた。
しかし、2人が撫でるのを止めると、2匹は
最後に、4人に向かって小さく鳴き、
その後バラゴンは地面の下に潜っていき、
ガーディーはそのまま、東の山中へと
姿を消した。
こうして、帝国の首都、京都を守る為の
戦いは、バラン、バラゴン、ガーディーという
正体不明の、巨大生物の介入によって、
一応の勝利となったのだった。
そして、数時間後。帝国、某所。
1人の男が、部下から話を聞いていた。
「そうか。ついに、『彼等』が動き出したか」
「えぇ。……神話世界の存在。真の霊長類。
……かつての、この星の支配者たち。
とうとう、彼等が動き始めましたね。
『芹沢』博士」
「あぁ。……もはやこの星は、BETAに
蹂躙されるだけではない。
始まるのだ。この星に、この星に生きる
命達による、反撃が」
男は、近くの窓から見える街並みを見つめ、
そしてその先に見える山々へと目を向けた。
「『怪獣』達による、反撃が」
そして、彼はポツリと呟くのだった。
第2話 END
次回は、志摩子達をメインにする予定です。
感想や評価、お待ちしてます。
登場怪獣の紹介
1、『バラン』
初出・大怪獣バラン(1958)
むささび怪獣とも呼ばれる東宝怪獣の1匹。
作中では『婆羅陀魏山神』、これで
バラダギサンジンと読み、伝説の怪物として
とある部落民から恐れられていた。
その後、ゴジラシリーズの『怪獣総進撃』に
僅かながらも登場。
2、『バラゴン』
初出・フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)
バランと同じく東宝怪獣の1匹で、地底怪獣とも
呼ばれている。本作では、ゴジラシリーズの
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣
総攻撃』と同じ、護国聖獣としてのバラゴン
に、初代の持つ熱線を吐く能力をプラスしたもの。
余談だが、上記のバランは当初、前回登場した
アンギラスと共に、大怪獣総攻撃で護国聖獣
として登場する予定だったが、ネームバリュー
からモスラとキングギドラに変更になった。
3、『ガーディー』
初出・ウルトラマンティガ第44話
ウルトラマンティガに登場する怪獣で、
超古代狛犬怪獣とも呼ばれる。
本作では、バラゴンと同じく護国聖獣の
1匹として登場する他、胸のカラータイマー
は装備していない。