マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
怪獣の出現によって、好転しつつある戦局。そんな中、新たな絶望として彼等の前に現れたのは、BETAが生み出した失敗作、へドラだった。ヘドラの特性から、今後の不安を覚えた芹沢らは、協力してこれを撃退する事を決定。すぐさま各国軍への交渉や新装備の開発が開始されるのだった。
対へドラのための戦闘が計画される中、コスモスベースでは急ピッチでメーサー車の量産が行われていた。
「……メーサー車は、これで6台目か」
完成し整列しているメーサー車を前にしてポツリと呟く芹沢。
彼はここ数日、ずっとコスモスベースと欧州の各国を往来していた。もちろん、ヘドラ掃討作戦に向けて、だ。
現在欧州で確認されたヘドラは、BETAの亜種と言う情報が世界各地へと拡散している。BETAの失敗作とは言え、未だに能力などが未知数のヘドラ。更に単独でハイヴから逃走。しかもその際には仲間(?)であるはずのBETAを皆殺しにしている。
更にゼアによる分析の結果、体そのものが高濃度の汚染物質であり、同時に要塞級の衝角から放出される、戦術機さえ溶かす溶解液に勝るとも劣らない酸性をヘドラは持っていた。
もしヘドラと戦術機で戦うのなら、接近戦は不可能だ。その体を斬り付けた近接武器が溶け落ちる事は必至だ。かといって、全身が流体に近いヘドラは銃弾など貫通してしまう。体内に榴弾など打ち込んでも、それは肉体を壊しヘドラの元となる欠片をばらまくだけ。
結局の所、ヘドラを倒す為に必要な戦法は、モスラのシャイン・ストライク・バスター並みの圧倒的な高温で滅却するか、冷凍弾などで氷漬けにした上で砕く。この二つ位だ。
地獄すら溶かす程の熱量か。全てを氷漬けにする絶対零度の冷気か。
しかしそのどちらも、今の人類の科学力では安易に生み出す事など出来はしない。
今の人間に用意出来るのは生物に対して優位性を持つメーサー車とマエロフがゼアの力も借りて開発している冷凍弾くらいだ。圧倒的な熱量でヘドラを焼き殺すのなら、何十発と核ミサイルや核弾頭が在るが、それを使えば土壌を中心とした環境が放射能汚染されて本末転倒だ。
「くっ」
結局の所、『人類が出来るのはモスラの支援が精々か』、と言う現状に芹沢は小さく歯がみしていた。
と、その時だった。
「ほぅ、ここが噂の先史文明の基地か」
「ん?」
声が聞こえ、意識を戻して振り返る芹沢。そこに立っていたのは、ボストンバッグを片手に持った、筋骨隆々の口ひげが特徴的な男だった。
ラフな格好にその見た目から、プロレスラーを思わせる出で立ちの男が、背後に部下らしき人間を連れて立っていた。
「アンタがここの責任者か?」
「い、いや。違うが?」
「何だ違うのか。……参ったなこりゃ。こっちは初めての基地だってのに案内役も居やしねぇ」
そう言ってため息をつく男。
「君たちは一体?」
そんな男と部下たちに怪訝そうな表情を浮かべる芹沢。すると……。
「お、お待たせしてすみませんっ!」
走ってきたのは遙だ。桃色の髪を揺らし、息を切らせながら走ってくる遙。
「おう、姉ちゃんが案内役かい?」
「す、すみませんっ!対ヘドラ作戦のせいで、今基地内部がバタバタしててっ!」
「まぁ良いさ。それより、基地の責任者の、あ~。コーヅキって博士が待ってるんだろ?案内してくれ」
「は、はいっ!」
そう言って歩き出そうとする遙。だったが……。
「あっ!芹沢博士もいらっしゃったんですねっ!良ければ一緒にどうぞっ!今後は彼等も共に戦う仲間になりますのでっ!」
(仲間?どう言う意味だ?)
「わ、分かった」
内心では戸惑いながらも、芹沢も遙に連れられて夕呼が待つ会議室に向かった。
そして中に入ると、夕呼が待っていた。
「遅いわよ遙」
「す、すみませんっ」
「っと、芹沢博士もご一緒でしたか」
「えぇ。たまたま。……しかし香月博士。彼等は一体?」
「あぁ。彼等は轟天号のクルーです。先ほど、訓練施設からこちらに付いたばかりです」
「ッ。では彼等がっ?」
と、驚く芹沢。しかし先ほどの男が夕呼に近づいてくる。
「アンタが責任者、ってか俺達の上官か?」
「そうよ。貴方たちの上司でここの責任者。オルタネイティブ4最高責任者、香月夕呼よ」
「成程。俺は『ダグラス・ゴードン』。階級は大佐だ。今日から世話になるぜ、博士」
そう言って握手を交す二人。
「さて、それじゃあまずは、適当な場所に座って。色々聞きたいこととかあるでしょうし」
「あいよ。ほらお前等、適当な所に座れ」
「「「「「「はいっ」」」」」」
ゴードンの言葉で、適当な所に腰を下ろす男達。
「さて、それじゃあまずは、こっちの二人を紹介しておこうかしらね」
そう言って夕呼は芹沢と遙に目を向けた。
「まずこっちの男性は、モナークのアジア方面の責任者、芹沢猪四郎博士よ。現在は私達とモナークの仲介役などをしています」
「芹沢です。はじめまして」
そう言ってお辞儀をする芹沢。
「次にこっちは、オルタネイティブ4の実動部隊、A-01連隊所属のCP将校、『涼宮遙』よ。部隊の管制官だし、便宜上あなた達の扱う轟天号もA-01連隊に所属する事になるから、彼女から指示が来るかも知れないから良く覚えておくように。……あと、手を出すのは止めておきなさい?怖~い妹と彼氏にボコボコにされるかもしれないから、ね」
「は、博士っ!?何言ってるんですかっ!」
妖艶な笑みを浮かべる夕呼の言葉に顔を赤くする遙と、ハハハッ、と苦笑いを浮かべる男達。
「まぁ、冗談はさておいて」
と、夕呼はそう言って真剣な表情を浮かべる。それには男達も姿勢を正す。ただ1人、ゴードンは頬杖を突きながらも、鋭い眼光で夕呼を注視している。
「今回、予定よりも早くアンタ達に来て貰った理由は、分かってるわね?」
「あぁ。ヘドラとか言う欧州で確認された化け物退治関係、だろ?」
「そうよ。涼宮、そこのPCからゼアにアクセスして、ヘドラのデータをモニターに」
「はい」
カタカタと遙がPCを操作し、モニターに映し出されたのは以前EU軍のパトロール部隊が遭遇した時、戦術機に搭載されていたカメラが録画した映像の一部だ。
「現在欧州においてその存在が確認されている新種のBETA。現在国連及びモナークによって与えられた仮称のコードを使うのなら、≪怪獣(モンスター)級≫第1号、ヘドラ。このヘドラはBETAが生み出した、怪獣と比肩しうる程の力を持った怪物よ」
「モンスター級、ねぇ。しかしこいつ、自分の家のハイヴのBETAを皆殺しにしたんだろ?何だって同類を皆殺しにするんだ?BETAは同類を攻撃しない、だろ?」
「それに関して、現在においてもっとも有力な説はヘドラが失敗作という事よ」
「失敗作?」
「可能性として、ハイヴは各地に出現する怪獣とやり合えるBETAを作ろうとした。そうして出来上がったのがこのヘドラ。が、単体で怪獣と比肩しうる程の強力なヘドラはBETAでさえも支配する事が出来ず、生み出したは良い物の制御出来ずに暴走。生まれ故郷のハイヴを蹂躙し活動を開始した。って所ね」
「はっ。なんだいそりゃ。自分の生み出したブツに蹂躙されてちゃ世話ないな」
「確かにね。でも、同時にあれは制御不能の怪物よ。更に体全体が高濃度の汚染物質の塊。下手に攻撃すれば汚染は拡大するし、奴は体の細胞一つ一つが生きている。下手に攻撃して体の欠片が飛び散れば、そこからヘドラは再生と進化、増殖を繰り返して増え続けるのよ」
そんな夕呼の言葉に、クルー達はザワザワとざわめいている。
「おいおい。放っておけば増えるか周りを汚染するだと?BETAよりたち悪いじゃねぇか」
「そうよ。だから今回の作戦で討伐するの」
と、ゴードンに答えると夕呼は再び遙の方に向き直る。
「涼宮、今度は轟天号のデータを」
「はい」
再びPCを操作する遙。するとモニターが切り替わり、轟天号の全体図と武装などが乗った映像が映し出された。
「この基地にあるAI、ゼアの予測の結果。ヘドラを倒す為に一番成功確率の高い方法は怪獣モスラの協力を得てヘドラを焼却する事。ただしこれを援護するためにEU軍や国連軍が展開される予定よ。そして、その国連軍の中にあなた達も含まれてるわ。この轟天号のクルー、と言う事でね」
「成程な。だが奴は下手に攻撃すると体の破片が飛び散って増えるんだろ?どうするんだ?」
「そこについては心配無いわ。轟天号には古代文明コスモスが開発した兵器が搭載されているわ。それが艦首にあるドリルに内蔵されたメーサー兵器よ。詳しい話はまた今度だけど、メーサー兵器を物凄く単純に言えば、バカみたいな出力の電子レンジよ。この兵器なら、ヘドラの細胞を焼き払う事が出来る」
「ほう?」
「現在コスモスベースではゼア協力の下、このメーサー兵器を搭載した特殊車両を建造中よ。作戦に際して、あなた達の駆る轟天号の役割はこの特殊車両と共にメーサー兵器を用いてモスラを援護すること。何か質問は?」
「はいっ」
彼女の言葉にクルーの1人が手を上げた。
「轟天号は空中戦艦という事ですが、BETAの、光線属種の攻撃は大丈夫なのでしょうか?作戦中にBETAの襲撃が無いとも限りませんし」
「それなら大丈夫よ。轟天号に使われている装甲板は、古代文明が対ゴジラ戦を想定して開発した物。あの出力に比べれば、光線級なんてレーザーポインターよ」
「……あの光線級すら、ゴジラの足元にも及ばないと?」
「付け加えるのなら、重光線級もね。……この基地の高性能AI、ゼアの予測によれば、現在のゴジラが発生させられる出力はテラワットクラスだそうよ」
「テラ?なんだそりゃ?」
「ギガワットクラスの更に上よ」
「じ、実感が沸かないですね。そう言われても」
と1人の乗組員がこぼす。
「あら。なら簡単に説明してあげましょうか?1ギガワットはおよそ原子力発電所1基分。そして1テラワットは1000ギガワット。と、ここまで言えば分かるかしら?」
「げ、原発1000基分っ!?」
極端過ぎるゴジラのエネルギー量に乗組員たちはザワザワとざわめき出す。が……。
「はっ。それつまり、俺達の船はそんなヤベぇ奴と戦う為に作られたって事だろ?だったら逆にいやぁBETAのレーザーなんか怖くねぇって訳だ」
「まぁ科学者として、絶対に安全という事は言えないわ。それでも轟天号の表面の耐熱積層装甲板は、光線級クラスの射撃なら動じる事は無い、と言うのがゼアの予測よ。流石に重光線級数十匹による同一箇所への集中砲火、までは耐えられないそうだけど」
「はっ。十分だぜ博士」
夕呼の言葉にゴードンはニッと凶暴な笑みを浮かべる。
「無能な上官ぶん殴って窓際に左遷か除隊かって時に、俺はアンタ等に拾われた。他の連中もそうだ。クソみてぇな上司に刃向かった奴、命令無視をした奴。みんなそれぞれ古巣じゃもう鼻つまみ者だ。……それがこんなヤベー船に乗れるってんだ。やってやるさ」
「そう。ならあなた達の働きに期待させて貰うわ。くれぐれも、失望させないで欲しいわね?」
「おうよ。全力であのヘドロ野郎を消し炭にしてやるぜ」
そう言って凶暴な笑みを浮かべるゴードンに同調するように、乗組員たちも笑みを浮かべているのだった。
その後、新しくコスモスベースへとやってきたゴードン達は、A-01連隊所属の空中戦艦轟天号を扱う部隊、『空中戦艦運用部隊』、通称『空戦隊』に配属される事になった。
現在は、メーサー車と表向きはゼアの開発と言う事になっている冷凍弾の数が揃い作戦が開始出来るようになるまでの間に、轟天号に慣れておくようにとの夕呼の指示で実物を使ってコスモスベース周辺の海域で訓練をしていた。
一方、ヘドラ掃討作戦の話は、海を越えて帝国へと伝わっていた。そしてもちろん、恭子や上総たちの元へも、だ。
その日、恭子の元に上総たちや真田と言った、部隊長クラスの者と、例外として上総たちが集められた。上総や志摩子達が例外なのは言わずもがな、ギドラと友好関係を持つ特別な存在だからだ。
そして彼等に恭子が語ったのが……。
「欧州で巨大不明生物の掃討作戦、ですか?」
「そうだ」
真田の言葉に恭子が頷く。
「現在欧州において、BETAが生み出したと思われる怪獣に類似した巨大不明生物、通称ヘドラの存在が確認されている。モナークなどの報告から、ヘドラは細胞一つ一つが生きている群体生物のような存在であり、例え体を破壊しても生きた細胞を残せば再び成長し、汚染物質をまき散らす恐れがある。そこで欧州は国連軍と協力し、欧州でのヘドラ掃討作戦を実行するつもりだ。この掃討作戦に関しては、コスモスベースのAI、ゼアが有効な戦術を提供したようだ。こちらに伝わっている情報によれば、モスラとバトラの協力を受けた段階で、更にコスモスベースで開発中の新兵器や空中戦艦、轟天号を投入するとの事だ」
「ッ、轟天号。確か古代文明コスモスが残したと言うあれですね?」
「そうだ」
上総の言葉に恭子は頷く。
「しかし、なぜその話が私達に?」
「まさか、希望作戦の時みたいに私達も海外に派兵される形になるんですか?」
と疑問を口にする和泉と安芸。
「いや。今回は場所が場所なので我々帝国の軍、つまりGフォースの派兵予定は無い。ただし、モナークの芹沢博士からの指示で我々は当面、第二次警戒態勢を維持する」
「どういうことですか?話が良く……」
と、首をかしげる志摩子。
「芹沢博士は、最悪の場合を想定していると言う事だ。もし万が一、モスラとバトラが敗れた場合、我々人類が真っ先に頼れる怪獣は、ギドラしか居ない。もちろん、博士自身もモスラとバトラ、そして人間の底力による勝利を信じている。が、あの双翼の神々が倒れたのだとしたら、我々人類最後の希望は……」
「千年竜王であるキングギドラだけ、と言う事ですね」
ポツリと先を読み言葉を漏らす上総。
「そうだ。単純な力で言えばゴジラという更に上がいるが、奴は放射能汚染をまき散らす。あれに期待するのは無謀な賭けなのだ。だからこそ芹沢博士は言って居た。『万が一に備え、戦えるように準備をしておいて欲しい』と」
彼女の言葉に上総たちや真田、如月たちは表情を引き締める。
「……これより我々Gフォースは万が一に備えて第2種警戒態勢へと移行する。各自、いつでも戦場に出られるように用意をしておけっ!良いなっ!」
「「「「「了解っ!!!」」」」」
こうして、欧州から離れた極東の地でも、人々は慌ただしく動き出していた。
場所は戻り、太平洋上、コスモスベース。
兵士達の憩いの場でもあるレクリエーションルームに水月や孝之たち4人が集まっていた。
「対ヘドラ戦、か」
そして集まった4人は、少しばかり重い表情を浮かべていた。ポツリと孝之が呟く。
彼の言うとおり、もう間もなく欧州でヘドラ討伐の為の作戦が展開される。そしてそれには当然、孝之、慎二、水月は衛士として。遙はCP将校として参加する事になっている。
そんな彼等の敵は、未だに戦闘能力などは良く分かっていないヘドラ。しかも怪獣と比肩しうる程の力を持った存在だ。そんなのを敵にすると分かっていて、楽観視など出来る訳が無かった。
「なぁ、作戦って確か……」
「あぁ。ヘドラと主に戦うのはモスラとバトラ、轟天号にメーサー部隊だ。俺達はマエロフ博士が作ってる冷凍弾を、戦術機の120ミリから放ってヘドラの動きを止めるか牽制する。そしてモスラやバトラ、轟天号とかの主力を援護するのが任務だ。……けど」
慎二の言葉に応える孝之だが、彼自身不安を拭えないで居た。
「……戦術機すら溶かす物質の塊か。近づきたくは無いわね」
真剣な様子でそう漏らす水月。
敵はまともな攻撃が通らない上に、近づかれれば溶かされる可能性だってある。近づかなければ良い、と分かっていても怖いものは怖い。誰だって溶かされて死にたくは無いのだから。
「接近戦は不可。かといって戦術機での使えそうなのは120ミリの冷凍弾くらい。しかも敵が飛び散るってんで下手な攻撃は原則禁止ってんだから。やりにくいよなぁ」
「確かに。やりにくいよね」
慎二の言葉に遙が頷く。
「それでもやるしかないだろ?ゼアの予測データ、見た事あるか?」
「予測?なんの?」
「香月博士がゼアにさせてたんだよ。仮にヘドラが増殖した場合、どうなるかってさ。俺も又聞きだから詳しくは知らないが、最悪だったらしいぞ」
首をかしげる慎二に答える孝之。更に彼は言葉を続ける。
「増殖したヘドラは生物の概念を越えた速度で進化するらしい。そして恐ろしい事に飛行能力を獲得したヘドラは、海を渡って北米や南米、帝国に、東南アジア、オーストラリアにまで活動範囲を拡大させる恐れがある、そうだ」
「ッ!?なんだよそりゃっ!?だったらBETAよりヤベぇじゃねぇかっ!」
「BETAだって飛行可能な種類は居ないのに……っ!」
孝之の語った予測データに狼狽する慎二と遙。
「おまけに、ヘドラは体全体が汚染物質の塊だ。移動するだけで土地を汚染するし、下手すれば海だって汚染される」
「ますます最悪ね……っ!予測データが最悪ってのも頷けるわっ。否が応でもね……っ!」
「そうだな。海が汚染されると、俺達が食ってる合成食料だって食えるかどうか。大地だって汚染されちまったら、奪還しても人が住めるかどうか。……そう言う意味では、さっさとヘドラを倒さないとな」
水月の言葉にそう続ける孝之。
「……負けられない。……そう言う事なんだよね」
静かに呟く遙の言葉に、水月達3人は沈黙する。負けられないのは確かだ。しかし相手は未知の敵。気軽の勝てる、などと言う事は出来なかった。
と、その時だった。
「「皆さん。こちらにいらしたのですね」」
声が聞こえた。その主は、小さなモスラ、フェアリーに乗ったコスモス2人の物だった。
「ッ、コスモス。俺達に何か用か?」
2人の方を向く4人。そして彼等を代表するように孝之が問いかける。
「「はい。此度は皆さん、ヘドラと戦う為の作戦に参加されるとお聞きしました」」
「ですから皆さんには一度、モスラとバトラの聖域へ来て欲しいのです」
「そこで皆さんに、お渡ししたい物があります」
「は、はぁ」
戸惑いながらも、孝之達は言われるがままにモスラとバトラの巣がある最深部、聖域へとやってきた。……ちなみに聖域と呼ばれるようになったのは、マエロフのせいだったりするのだが、今はもう誰も気にしなくなっていた。
そして彼等がやってきた聖域では、孝之達以外にもみちる大尉達やデリング中隊の衛士達。他の中隊の衛士達。更に作戦に参加予定のオペレーターや夕呼、マエロフまで。大勢の人間が集まっていた。
聖域の奥にはいつものようにモスラとバトラが鎮座していた。だがいつもと違う所があった。彼等の前に折りたたみ式のテーブルが置かれ、その上に無数の石のような物が並べられていたのだ。
「一体、何を?」
渡したいもの、と言われて集まった者達の中でポツリとみちるが呟く。
皆が戸惑いながらも待っていると、テーブルの前まで飛んでいくフェアリー。
そしてフェアリーがその場で浮かび始めた時だった。
『♪~~♪~~』
「ッ、これは?」
基地のスピーカーから音楽が流れ出し始めた。マエロフが驚いて周囲を見回している。他の衛士やオペレーター達もだ。だが夕呼や遙と言った一部の面々は、その音楽を知っていた。
「「モスラ~~ヤ、モスラ~~」」
それはコスモスがモスラを讃える歌だった。
(でも、何故?)
しかし何故今歌うのか?と言う疑問を拭えない夕呼。と、その時だった。
『キュアァァァァァァァッ!』
『キュガァァァァァァァッ!』
モスラと、彼女に寄り添うようにして隣に居たバトラが咆哮を上げた。突然の事に驚くみちるや孝之、夕呼達。
と、その時。モスラの体から淡い緑色の光が。バトラの角から紫色の光が、それぞれ溢れ出した。
そしてふよふよと漂う光の粒子は、やがてコスモスたちの前にある石のような物へと降り注いだ。
モスラとバトラが光を注ぎ続ける間、コスモスは歌を歌い続けた。やがて、彼等の光の照射が終わると、コスモスたちも歌を止め、スピーカーから流れていた音楽も止まった。
やがて、歌い終えたコスモスたちがフェアリーに乗って夕呼達の前までやってくる。
「コスモス、これは一体?」
流石の彼女もコスモスの意図が分からない、と言う表情で問いかけた。
「「これは、モスラとバトラと、私達からのお守りです」」
「お守り?」
「「そうです」」
「皆さんはこれから、困難な作戦に臨む事になるでしょう」
「そしてそこでは常に死がつきまとうでしょう」
「「しかしモスラとバトラは、あなた達を共に戦う友として認めています」」
「だから、お守りを?」
ポツリとみちるが呟く。
「「はい。これにはモスラとバトラの力を刻印してあります。きっと、戦地で皆さんを守る盾となってくれるでしょう。さぁ、どうぞ手に取ってみて下さい」」
そう言って促すコスモス。彼等は戸惑いながらもテーブルに歩み寄り、石を手にした。
お守りであるその石には『インファントの紋章』が刻まれていた。
(※イメージはゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOSに登場した小さな石版)
「ッ。これ、温かい」
そして彼等は気づいた。その石は確かに熱を持っていた。
「でも、熱いって訳じゃねぇ」
「うん。……とても、温かい」
慎二や遙はそう言って笑みを浮かべている。
他の面々も、不思議そうに石を手に取っていく。
ちなみにその傍では……。
「あぁ何と言うっ!何と言う恵みっ!これこそは正に二柱の神々からもたらされたご加護っ!喜ぶのだ諸君っ!君たちは神々に認められた人間っ!これ程の幸運は一生に一度、あるか無いかと言う物っ!いやっ!神に認められる人間など、決して多くは無いっ!あぁ何と、何と羨ましい事かっ!」
相変わらずのハイテンションなマエロフにみちるや美冴達は苦笑を浮かべていた。
そして、そんな中で……。
(怪獣に認められた人間、か…)
水月が手の中のお守りを見つめながら物思いにふけっていた。
そんな彼女の脳裏によぎった光景。それは帝国で唯依達がキングギドラと触れあう所を収めた写真だった。
「こんな凄いの貰ったんだし、お礼、しないとね」
「水月ちゃん?」
ポツリと呟いた水月の言葉を聞いていた遙が首をかしげながら彼女の方へと向く。
すると、水月は何とモスラ達の方へ向かって歩き出した。
「んっ?あっ!おい水月っ!」
相変わらずハイテンションなマエロフに皆視線が行って居た為、水月がモスラとバトラに近づいているのに気づくのが遅れた。一番最初に、それに気づいた慎二が声を上げる。
他の者達も、何だ何だ?と水月の方へと目を向ける。
しかしその頃には水月は、既にモスラとバトラの眼前に歩み寄っていた。2匹とも巣の中で体をリラックスさせていた。
水月はモスラの方へと歩み寄る。彼女は左手にお守りを握りしめ、それを胸の前に置きながら、右手でモスラの柔らかいその顔を優しく撫でた。
「ありがとう、モスラ。こんなのお礼になるか分からないけど。でも、本当にありがとう」
彼女は優しい声で語りかけながら、モスラの体を撫でていた。すると……。
『クルルゥゥゥッ』
モスラが気持ちよさそうに、喉を鳴らしたような声を漏らす。
「ふふっ、気持ち良いの?」
水月は笑みを浮かべながら更にモスラの事を撫でていた。みちるや夕呼たちはそれを茫然と見守っていた。が……。
「じ、じゃあ、私もっ」
「えっ!?遙っ!?」
唐突に遙もそちらへと向かってしまった。驚いて声を上げる慎二。
しかし遙は小走りでバトラへと歩み寄っていく。バトラの大きな複眼が彼女を見つめる。普通ならその大きさに圧倒され萎縮しても可笑しくは無い。
しかし、遙は物怖じするどころか、笑みを浮かべながらバトラのゴツゴツとした表皮を優しく撫でる。
「バトラもありがとう。私達のために、力を分けてくれて」
遙もまた、水月のように優しい表情を浮かべながらバトラの体を撫でる。
バトラは、モスラのように声を出すことはしないが、静かに彼女に身を委ねていた。
モスラと触れあう水月。
バトラと触れあう遙。
夕呼達はその姿を見ていたが、そんな中で1人の衛士がポツリと呟いた。
『まるで、帝国にいる龍神の姫巫女達みたいだ』、と。
壮絶な戦いの時は近い。しかし、彼等には加護が与えられていた。怪獣という名の、神々より賜りし加護が。
第20話 END
楽しんで頂ければ幸いです。あと、ここまで読んでる人なら大体分かると思いますが、何気に怪獣と少女達で色々くっついたりしてます。
あぁ、もちろん水月や遙は唯依達とは違い、あくまでも戦友や友達に近いイメージです。2人とも好きな人居るんで、勝手にくっつけるとNTRみたいになるかもしれないので。自分そう言う話大っ嫌いなので。