マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
自分は、今は終了していますがマブラヴオルタネイティブ
のスマホゲーム、ストライクフロンティアをやっていて
そのイベントなどで明星作戦の内容を知っていたので
そちらをベースに色々書きました。
人類とBETAの前に姿を現したゴジラは、
まず横浜へと侵攻していたBETA群を殲滅後、
アジア大陸各地にあるハイヴの内の二つを
完全に破壊。しかしBETAも新たに二つの
ハイヴを建造し始めるのだった。
そんな中、失意にくれる唯依達の元を訪れた
芹沢。彼は唯依達と共に、最後の聖獣である
ギドラを覚醒させるために富士の樹海跡地
へと向かった。
そして、安芸と和泉の持つ石の中で
眠っていたバラゴンとガーディーの魂と
融合する事で一気に進化し覚醒した
キングギドラ。そしてキングギドラは
明星作戦が展開される横浜を目指して
飛行するのだった。
更に、彼を追って唯依達もまた、横浜を
目指すのだった。
横浜、明星作戦区域。
荒れ果てた市街地で戦術機とBETAが入り乱れて
戦う中、2機で行動する不知火の姿があった。
その機体は『UNカラー』と呼ばれる青を
ベースにしたカラーで彩られていた。
その2機に搭乗するのは、国連軍に属する
帝国出身の、2人の男性パイロットだった。
1人は『鳴海 孝之(たかゆき)』。
もう1人は『平 慎二(しんじ)』。
2人は、国連が主導するとある計画、
『オルタネイティブ4』という計画において
戦術機の実動部隊、『A-01連隊』の中の
『デリング中隊』に属する衛士だ。
彼等がここに居る理由。それは戦闘における
データ収集のためだ。そのため上官からは
出来るだけ戦闘を避けるように命令されている。
だが、2人にとってここは故郷。
そう、2人は幼馴染みと共に、この横浜で
育ったのだ。それ故に、歯がゆさを覚えて居た。
そんな彼等の耳に入ってきたのは、米国が
本来作戦には無い、正確に言えば作戦から
外されたはずの、『G弾』の使用を強行しよう
としているとの事だった。
『G弾』。これは、BETA由来の地球には
存在しない物質、『G元素』を元に作られた
兵器だ。
そもそもな話この攻略作戦後、もし攻略が
成功すれば、各国には攻略によって手に
入ったG元素を分配する話がある。それも
既に協議済みだが、彼等には、G元素の強奪
を阻止する任務も与えられている。
つまり、帝国や他国がG元素を強引に奪おう
としたのなら、彼等にはそれを殺してでも
阻止しなければならない。例え相手が、
同じ祖国を持つ同胞であったとしても。
それほどまでに、G元素とは魅力的であり
強力な兵器の元であり、そして、争いの
火種なのである。
そんなG元素由来の兵器であるG弾の
破壊力は極めて高く、孝之達にもたらされた
情報によれば、仮にG弾が使われたとしたら
この辺り一帯は間違い無く跡形もなく
吹っ飛ぶ事間違い無しだ。
加えて、作戦に参加している帝国軍や
大東亜連合軍の部隊はこれを知らない。
孝之達がこれを知ったのは、強い権限を
持つ1人の女性のおかげとも言えた。
そして、G弾の強行使用に怒りを覚えた
孝之は、周囲の部隊に撤退を呼びかけると
言い出した。そしてバディである慎二と
言い合いになっていたその時。
『こちらは帝国斯衛軍、特別調査班所属の
者であるっ!』
不意に、オープンチャンネルで全ての部隊に
通信が届いた。
今現在、周囲には対光線属種用に放たれた
『ALM』、『対レーザー弾頭弾』によって
形勢された重金属粒子の雲が展開し、結果的
に通信を阻害していたが、それでも奇跡的に、
2人の耳や作戦行動中の衛士達に佳織の
言葉が届いた。
『現在、富士山近郊より出現した怪獣が
横浜ハイヴに向かって飛行中っ!
もう間もなくそちらの作戦区域に到達
する模様っ!各自留意されたしっ!
なおっ!怪獣の特徴は黄金の三つ首龍っ!
これはBETAにあらずっ!各隊黄金の
三つ首龍、キングギドラへの攻撃は
控えられたしっ!以上っ!』
「なっ、怪獣だって……!?」
突然の連絡に慎二は困惑する。孝之も同様で、
一瞬思考が止まってしまった。
と、その時。
『カッ!!!』
「ん?」
孝之は重金属雲の向こうで何かが光ったような
気がした。
と、その時。
『ブワッ!!!!!』
突如として、何かが空を覆い尽くしていた
重金属雲を吹き飛ばしてしまった。
『『『キュルァァァァァァッ!!!』』』
そして、青い空をバックに、空に浮かび
咆哮するキングギドラを目にする孝之と慎二。
更に彼等だけではなく、多くの者達が空に
浮かぶキングギドラを見上げていた。
しかしそれも束の間。すぐさま各地に展開
する光線属種による狙撃がキングギドラに
襲いかかった。だが……。
その攻撃は、ギドラの周囲に浮かぶ黄金の
粒子によって周囲へと散らされ、逸らされる。
「ッ!?マジ、かよ」
それを見上げながら呆然と呟く孝之。
彼の傍の慎二も、呆然とそれを見ている
事しか出来なかった。
だがそれだけではない。ギドラはその
粒子でレーザー攻撃のエネルギーを
吸収していたのだ。そして、ギドラの
周りで暴風のように吹き荒れていた粒子が、
ギドラ本体並みの巨大な光球、『ビッグ
スパークボール』となって、BETAの群れ
のど真ん中に落とされた。
直後。
『『『ドォォォォォォォォォンッ!!!』』』
核爆弾でも落とされたのではないかと疑い
そうな規模の爆発。振動。爆風。
それがBETAの群れ一つをまとめて
吹き飛ばしたのだ。
更に、間髪入れずにキングギドラはその3本の
首から『引力光線』を放ち、BETAの群れを
なぎ払っていく。
そして、この引力光線は受けた相手に対して
引力や斥力、延いては重力を持って攻撃する。
如何に強靱なボディを持っていようとも、
重力で車裂きのように肉体をバラバラに
されてしまえば同じ事。それ故に、突撃級の
強固な生体装甲も意味をなさない。
要塞級の巨大で肉厚なボディも、まるで内側
から裂けるようにしてバラバラにされる。
そして、空中からBETAを攻撃していた
キングギドラは、偶然にも孝之達の近くに
着陸し、ノシノシと歩きながら引力光線で
BETAを引き続きなぎ払っていく。
呆然とキングギドラの背中を見つめていた
2人。と、その時。
「おいっ!そこの不知火2機!何を
ボサッとしている!」
不意に聞こえたスピーカー越しの声に
2人は驚いて振り返った。
すると彼等の傍に、赤と黄色の瑞鶴が
1機ずつ。更に白い瑞鶴が無数に着地する。
そう、唯依達だ。
「む?その色、貴様等国連の衛士か?」
「あ、は、はい。国連太平洋方面軍所属、
鳴海孝之少尉であります」
佳織からの通信にそう答える孝之。
『あれ?この声、もしかしてさっきの
オープンチャンネルの』
更に彼は、彼女の声をから内心そう考える。
「そうか。我々は帝国斯衛軍、特殊調査班
所属の者だ。ともかく、戦場でボサッと
するなよ」
と言うと、瑞鶴達は再び浮かび上がり、
前に向かおうとする。
「あっ!」
その時、孝之はすぐにG弾の事を思いだした。
「待って下さいっ!今すぐ後退をっ!」
「ッ、何?」
彼の言葉に、前進しようとしていた瑞鶴たち
が足を止めた。
「G弾です!米国側の独断で、間もなくここ
にG弾が落とされますっ!もし仮に
軌道上から落とされれば着弾まで15分
しかありませんっ!今のうちに出来る
だけハイヴから離れないとっ!」
孝之の言葉に、佳織はしばし押し黙った。
だが……。
「忠告には感謝しよう。だが、であれば
尚更我々は退けない」
「ッ!?何故っ!」
「……前線で戦っている戦友を、1人に
する事は出来ない」
そう呟いた彼女と、更には唯依達の瑞鶴が
遠くで戦うキングギドラの方へ視線を向ける。
「しかしっ!」
なおも食い下がろうとしない孝之。
「心配いらないっての」
しかしそれを遮るように、そこに安芸が通信を
繋いだ。
「G弾だか何だか知らないけど、私らには
キングギドラが、最強の聖獣がいるんだ。
何とかなるさ」
そう言って笑みを浮かべる安芸。
更に……。
「もし、貴方方が1人でも多く救いたいと言う
のなら、我々が彼と共にBETAの相手をして
注意を引きます。その隙に帝国軍や我々
斯衛軍にこの情報を流して退避を呼びかけて
下さい」
上総が通信で促す。
「そういうわけだ少尉。中隊各機っ!これより
前進し、キングギドラの援護をする!
行くぞっ!」
「「「「「「了解っ!」」」」」」
佳織の指示に従って瑞鶴12機が浮かび上がり
キングギドラを追って移動する。
それを見送りながらも、孝之は決心を決め、
そして彼に説得された慎二もまた、1人でも
多くの人々を救うために、周辺部隊へ退避
を促し始めた。
一方、キングギドラ出現の報告を聞いていた
米軍の司令官は、すぐさま自分の更に上の
存在へと連絡を取っていた。そして彼の
元に指示が飛んできた。
それは、『可及的速やかにG弾2発を投下し、
ハイヴ及び怪獣に対する戦果などを確認せよ』
と言うような旨の命令だった。
彼はすぐさまその命令を、地球の衛星軌道上に
展開する宇宙軍に伝えた。更に彼は他の軍に
対して退避するよう指示を出させたりしていた。
だが、そんな中で彼には不安があった。
彼は今も、モニター越しにBETAを蹂躙する
キングギドラを見つめていた。そして思う。
『本当に奴に、G弾が通用するのか』と。
そして、その疑問の答え合わせは、すぐに
行われた。
数分前。最前線で戦うキングギドラは、
3本の首という手数の多さを生かして
周辺のBETAやハイヴ付近から狙撃して
くる光線属種を焼き払っていた。
だが背面はどうしても手が回らず、周り
こんだ戦車級と要撃級が後ろから襲い
かかろうとしてくる。
「させるかぁぁぁっ!」
しかし、それを唯依達の瑞鶴が上手く
カバーしていた。
雄叫びのような声を上げながら突撃砲を
撃ちまくる安芸。
今の彼女達は、キングギドラのカバーに
徹していた。彼の後ろや側面から
襲いかかりそうな敵を迎撃していたのだ。
加えて、彼女達がピンチになると、確実に
左右どちらかの首が対応し、巻き込まない
ように出力を絞った引力光線がBETAを
撃破する。
そうやってお互いをカバーしながら
戦っていた怪獣と戦術機たち。そして、
粗方のBETAをキングギドラと共に掃討
し終えた時だった。
『『『ビーッ!ビーッ!』』』
しかし、そんな彼女達の耳に響くアラーム音。
「ッ!?まさかG弾が投下されたの!?」
その意味を理解して唯依が叫ぶ。
「そんなっ!この状況で使う必要あるのっ!?
BETAだってギドラのおかげで殆ど
倒せたのにっ!」
彼女に続いて志摩子も叫ぶ。
実際、序盤のビッグスパークボールで
大きな群れを撃破出来た事とその後の
彼女達とギドラの、空中からの爆撃のような
引力光線の雨によって既に大半のBETAは
屠られた。今更G弾を使う意味は無い。
と、普通に考えればそうだろう。
だが、米国側の狙いは別だった。BETA
殲滅と言うのは、今となっては殆ど
建前に過ぎない。
一つは未だに実戦で使った事の無いG弾を
使った効果を見るため。
もう一つは、このG弾で怪獣を消滅させ、
怪獣よりも自分達の科学力の方が優れている
と言う理想を確かめたいが為に。
これが、人類側の圧倒的有利な状況の中で米国が
G弾使用に踏み切った理由だ。
そして米軍から退避を促す通信が飛んでくる。
だが、今更だ。ハイヴ近くで戦っていた
部隊が、今更10分程度でG弾の降下範囲外
に出るのは無理に等しい。まだ光線属種も
少数ながら生存しているのだ。下手に飛び
上がれば撃ち抜かれて撃墜される。
だが、こんな中で諦めていない者達がいた。
唯依達だ。
「ねぇ、ギドラ」
和泉の瑞鶴が、ギドラの傍に歩み寄り、声を
かける。するとギドラの3本首が、彼女の
瑞鶴を見つめる。
「本当に、頼ってばかりでごめんね。
でも、ギドラなら、アレをどうにか出来る?」
静かに問いかける和泉。他の面々も、静かに
彼女とギドラを見守っていた。
すると、ギドラは『任せて』と言わんばかりに
鳴くと、大きな翼を広げて飛び上がった。
それを見送る唯依達の瑞鶴。
更に、あちこちで戦っていた衛士や兵士達。
国や立場を問わず、大勢の人間が空へと
上がっていくキングギドラを見上げていた。
一方、落とされたG弾は、地表から放たれた
光線属種による狙撃を特殊な重力場、
『ラザフォード場』、または『ラザフォード
・フィールド』と呼ばれる偏向重力場に
よって防ぎながら落下していた。
G弾周囲の重力は歪められ、あらゆる物を
逸らせる。それは光線属種のレーザーも
同じだ。
理論状、これを阻止出来るのは同じ力場
を持つG弾だけ、のはずだった。
だが、今のキングギドラには、重力に関する
物全てを操る力がある。だからこそ、
G弾を『捕える』事も可能なのだ。
上空へと飛翔していたキングギドラは
まず邪魔をされないように地表の
残存光線属種を一掃する。そして、
その目で落下中のG弾2発を捉えた。
直後、左右の首から引力光線が放たれ、
それが命中したG弾は、何と落下を
止めてその場にフヨフヨと漂っている。
今、キングギドラは重力を操る力で
G弾のラザフォード・フィールドを
中和し、引力光線でG弾を捉えたのだ。
「何、だと?」
そして、それを見ていた米軍の司令官は、
戸惑いながらも内心、『やはりか』と
思って居た。
そして、中央の首が一声、咆哮を上げると
落下していたG弾2発は、まるで戻るように
上へ上へ押し上げられ始めた。
そのままG弾は、地球の重力圏を突破。
更に衛星軌道上に展開する米国宇宙軍の
艦隊を超えて、完全に地球の外へと
放り出されてしまった。
漆黒の闇へと追放された兵器。そして、
それを為した黄金の三つ首龍によって、
結果的に多くの人々が救われる結果となった。
そして、G弾を空へと追放したキングギドラ
は下降しながら、まるで『神の雷』のように
引力光線を放ち眼下の大地に巣くう残存BETA
を焼き払う。
そして、BETAを全て破壊したキングギドラ
は、ゆっくりとハイヴの『地表構造物』、
『モニュメント』の上に降り立つ。
『『『キュルァァァァァァァッ!!!』』』
そして、キングギドラは勝利を宣言する
かのように、勝ち鬨の咆哮を上げるのだった。
誰もがその様子を見つめていた。
そんな中で、唯依達の瑞鶴が広い場所に
歩み寄る。すると、モニュメントの上から
それに気づいたキングギドラは、そこから
降りて、唯依達の傍に着地する。そして
左右2本の首が、小さく喉を鳴らす。
すると、安芸と和泉は何を思ったのか
瑞鶴のコクピットハッチを開け、外へと
体を晒した。
僅かに漂うBETAの体液の悪臭に顔を
しかめつつも、目の前のギドラを自分達の
目で見上げる安芸と和泉。
すると、2人に1本ずつ首が伸びてくる。
そしてあと少し、2人が手を伸ばせば
触れられる距離に顔が近づく。そして、
2人は静かにキングギドラの、黄金の皮膚
に触れる。
「……温かい」
衛士のパイロットスーツ、強化装備越しに
でも感じるその温もりに、和泉は笑みを
浮かべながら呟き、そしてギドラの頭を
両手で抱き、顔や胸を預ける。
安芸は、ゆっくりとギドラの皮膚を撫でる。
「ありがとうな、ギドラ。私達を、この国
を。みんなを護ってくれて」
彼女は笑みを浮かべながらギドラを優しく
撫でる。それが気持ちいいのか、ギドラは
嬉しそうに喉を鳴らす。
そして、その光景を周辺に集まってきていた
各国軍の戦術機たちが遠巻きに見つめていた。
やがて……。
「なぁ、ギドラ。お前は、これからも
私達と一緒に戦ってくれるか?」
安芸が静かに問いかけると、ギドラは
すぐに『もちろん』と言わんばかりに
小さく鳴く。
「そうか」
安芸は、その言葉に頷くと、和泉の
ように体を預け……。
「なら、今度こそ私達も、お前と、お前達
と一緒に戦うよ。これまでの恩返し
として。……今まで、ありがとう。
そして、これからよろしく。お前達は
私達の、大切な『仲間』だ」
彼女は笑みを浮かべながらそう語った。
そして更に……。
『チュッ』
彼女はギドラの顔に、小さく口づけを
するのだった。
すると、ギドラもそれに答えるように舌で
優しく安芸の顔を舐めるのだった。
「アハハ、くすぐったいってばっ!」
そうやってじゃれ合う安芸を見て、志摩子や
上総。更には他の女子達も瑞鶴から出て、
ギドラと触れあう。中隊長の佳織からすれば
浮ついた様子を一喝するべきなんだろうが、
彼女もやれやれ、と言わんばかりの表情で
苦笑を浮かべる事しかしなかったのだった。
そして、戦いを終えたキングギドラは
最後に一度、大きく咆えるとその翼を
広げて西の空へと飛び去っていった。
それを、大手を振って見送る上総たち。
こうして、明星作戦は勝利を収めた。
しかもギドラの活躍もあってG弾の
投下は阻止された。
そして、唯依達から少し離れた所で
飛び去っていくギドラを見送っている男達
がいた。孝之と慎二だ。
彼等もまた、ギドラの活躍によって
結果的に一命を取り留めたのだ。
「怪獣、か」
ギドラを見送りながらポツリと呟く孝之。
「あれ、聞いた話じゃ護国聖獣って奴
らしいぜ?」
そんな彼に声を掛ける慎二。
「……国を護る聖なる獣、か。この国には、
いや、世界にはまだまだ俺達の知らない
奴らがたくさん居るんだろうな」
「あぁ」
彼の呟きに、慎二は頷く。
「ふふっ」
しかし、そんな中で不意に笑みを浮かべる孝之。
「ど、どうした?何笑ってんだ?」
「いや。ただ驚きすぎて笑えてくるだけだ。
……この国には、あんな凄い味方が
いたんだなって」
「あぁ、そうだな」
孝之と慎二は、既に見えなくなった
ギドラの去っていた西の空を見上げる
のだった。
横浜での戦いの後、帝国ではギドラの話題
で盛り上がっていた。バラゴンとガーディー
と言う護国聖獣と同一の存在、と言うのは
ギドラに対して肯定的な意見を後押しした。
だが、ゴジラによってもたらされた放射能
汚染や、大勢の人が熱線によって焼かれた
と言う現実から、ゴジラと同じ怪獣である
キングギドラに対して否定的な意見も
決して少ないわけではない。
だが、それを押さえ込み、キングギドラに
対して肯定的な意見を後押しする一枚の
写真が公開された。
それが、明星作戦終了後に、キングギドラと
触れあっていた唯依達の画像だった。
それはたまたま、その様子を見ていた
佳織の瑞鶴の動画データの一部だ。
しかし、それが大きな反響を呼んだ。
『キングギドラと触れあう少女達の写真』
は瞬く間に新聞社を通して日本全国に
広がりを見せた。無論、彼女達の事を
悪く言う人間は少なく無い。
だが、予想外にも彼女達の味方となった
のは前線で戦っていた衛士達だった。
彼等もまた、キングギドラやガーディー、
バラゴンの活躍で戦いを生き延びていた
だからこそ、彼女達とギドラを擁護する側に
回ったのだ。
更にキングギドラを擁護するために
モナークから発表された護国聖獣に関する
論文も、これを後押ししていた。
加えて、この論文によって護国聖獣伝記も
大いに注目を集める結果となり、その熱に
よって人々の間に『神道』が再び浸透
しつつあった。
強大な存在を神と崇める神道。
更に、今のBETAに侵略されつつある現状。
ハイヴを撃破し圧倒的な力を見せつけた
キングギドラ。
そんなギドラと触れあう少女達の姿。
それらが合わさった結果、絶望の中にあった
人々は縋るべき希望をキングギドラに
見いだしたのだ。
黄金龍と呼ぶに相応しい、煌びやかで
神々しい姿も、その信仰に拍車を掛けていた。
やがて世間では、キングギドラを
『護国龍神』や『千年竜王』という敬称で
呼び、ギドラを信仰する人々が現れ始めた。
これは特に、前線でギドラに助けられた
衛士達を中心に、帝国内で急速な広がりを
見せていたのだった。
と、ここで更に注目を集めた存在があった。
それが唯依達。つまり特別調査班の実動部隊
である彼女達だ。
彼女達はこれまで、バラゴンやガーディーと
共に戦い、キングギドラとも一緒に戦った。
そこへ来てあの触れあう画像だ。
それもあって、新聞社などが誇張を込めて
彼女達を『龍神の姫巫女たち』などと
言い出したのだ。
それを知った唯依達は赤面したが、なにげ
にギドラを崇拝する人々の間にこの呼び名
が浸透し始めていた。
そして、そんな時だった。
佳織と唯依達の合計6人が、斯衛の護るべき
存在である五摂家当主達と、今の政威
大将軍、『煌武院 悠陽(ゆうひ)』に招集を受けた
のは。
今、彼女達は緊張した面持ちだ。
相手は五摂家の当主4人と政威大将軍。
とても斯衛軍の一衛士達が早々会える
相手ではない。
そして、上座に悠陽が座り、更にU字型を
描くように唯依達の左右に2人ずつ、
残りの4人が腰を下ろす。そして4人と悠陽の
傍には警護の者達もいる。そして当然
その者達も皆、有力武家の出だ。そうそうたる
メンバーを前に二十歳前の彼女達が緊張
するな、と言うのが無理な話だ。
そして、お互いに名乗りを終えた後。
早速、悠陽から話が始まった。
「忙しい中、皆よくぞ来てくれました」
「いえ。斯衛の衛士たる者、お呼びと
あれば即座に」
6人を代表として、佳織が形式的な答えを
返す。
「今回貴女方をお呼びした理由は一つです。
例の黄金の龍、キングギドラについて
直接貴女方6人から話を聞きたいと
考えていたからです」
「我々から、直接、ですか?」
「えぇ。特別調査班から送られてくる
報告書にも目を通してはいます。が、
それだけではなく実戦の中で彼等と
共に戦い、生き残った貴女方自身の
話を聞きたいのです」
そう言うと、悠陽は6人を見回し、まずは
安芸に視線を向けた。
「石見安芸少尉」
「は、はいっ!」
将軍である悠陽に名を呼ばれ、安芸は緊張
した面持ちだ。
「あなたにとって、キングギドラとはどの
ような存在ですか?」
「え、えっと、わ、私にとっては……」
緊張のあまり、考えが上手くまとまらない安芸。
「どうか落ち着いて下さい。ゆっくりで
構いませんから」
そう言って笑みを浮かべる悠陽。
「あ、ありがとうございます」
そう言って、安芸は頭を下げてから
考えをまとめ、数秒の間を置いた後に
その視線を上げた。
「私にとって、キングギドラはかけがえの
ない戦友であり、仲間です」
「……仲間、ですか?」
「はい」
「言葉を交わす事は出来なくても、自らの
理解を超えた存在であっても、ですか?」
どこか、試すような口調で問いかけてくる悠陽。
「それでも、です。……私は、何度も彼奴ら
と、バラゴンや、ガーディー。それに
キングギドラとも触れあってきました。
彼奴ら、私の瑞鶴で撫でてやると気持ち
良さそうに喉を鳴らすんです」
安芸は、恥ずかしそうに笑みを浮かべながら
語った。しかし、その表情がすぐに陰る。
「でも、あの戦いの時、彼奴らは私達を
庇って、一度は消滅してしまった。
……あの時まで、私は心の中で彼奴らの
事を頼りっぱなしでした。バラゴン達が
来てくれるから大丈夫、なんて楽観した
考えまで持ってました。……でも、
自分の弱さのせいで、一度は彼奴らを
死なせてしまった。今は、それもとても
後悔しています」
「……であれば、その後悔を償いたい、と?」
「はい。それも無い訳ではありません。
でも、今はそれ以上に、キングギドラと
一緒に戦いたい。一緒に飛びたい。
弱い自分を捨てて、一緒にこの国を
護りたい。だからこそ、私にとって
キングギドラは戦友なんです」
安芸は、確固たる信念を浮かべた瞳で真っ直ぐ
悠陽を見つめていた。
「そうですか。ありがとうございます石見少尉。
では……」
そう言って他の面々を見回す悠陽。
「山城上総少尉」
「はいっ」
今度は上総だった。
「あなたは、キングギドラが帝国の守護神に
なるとお考えですか?それとも、横浜に
出現した300メートル級の超大型怪獣の
ような脅威になると?」
「……それについては、私たち人類の対応
次第かと、私は考えます」
「と言うと?」
「護国聖獣は、大和言葉の『くに』。つまり
特定の国家や組織、人種ではなく自然や
命を守る存在です。更に言えば、自然界の
調和を護ろうとする存在。我々人類が、
その調和を乱すこと無く生きるのであれば、
彼等が私たちの敵となる事は無いでしょう。
しかし、逆に我々人類がこの星の王者
として命や自然を蔑ろにし、傲慢な暴君
のように振る舞えば、何時の日か彼等が
私たちの敵となるでしょう」
「だからこそ、彼等が我々の脅威となるかは
我々自身の選択次第。そう仰りたいの
ですね?」
「はい。……今の彼等は、人間以上にこの星
を滅ぼす存在であるBETAと戦っています。
ですが、BETAが駆逐されれば
残るのは怪獣達と、我々人類。
そして次に試されるのは人類です。
彼等によって、この星に生きる命
として赦されるのか。或いは排除
するべき存在として攻撃されるのか。
まだ幾分先になる話でしょうが、
その可能性はあると、私は考えます」
「そうですか。ありがとうございます
山城少尉」
そう言うと、次に悠陽は志摩子を見つめた。
「甲斐志摩子少尉」
「はいっ」
「あなたは、彼等との共存は出来ると
お考えですか?」
「……正直、それは難しいと思います」
「何故?」
「一つは、やっぱり横浜に現れた
300メートル級の超大型怪獣の存在です。
あれは他の怪獣達よりも強く、単独で
ハイヴを攻略出来る存在。BETAを倒す
存在としてはとても頼りになるかも
しれません。でも、存在するだけで土地を
放射能で汚染し、私達人類が生活出来る
場所を奪ってしまう。これがあの怪獣だけ
なのかは今も分かりません。でも、同じよう
に何らかの方法で大地を汚染してしまう
怪獣が居たら、人との共存は難しく
なってしまうかもしれません。……でも、
私は不可能じゃないと思って居ます」
「その理由は?」
「……彼等にも、私達人間と同じ心があります。
撫でられれば喜び、攻撃を受ければ痛そう
な声を上げて怒って。私達の事を心配も
してくれて。……彼等には、間違い無く
喜怒哀楽を感じる心があります。だから
こそ、私達と喜びや悲しみを分かち合う事
は出来ます。決して楽な道ではないと
しても、端から共生を諦めるのは間違い
だと私は考えます」
「分かりました。ありがとうございます甲斐少尉。
では……」
次に白羽の矢が立ったのは和泉だ。
「能登和泉少尉」
「は、はいっ」
「もし、今後特別調査班の実動部隊である
貴女方に、これからの任務として
キングギドラとの共闘を命じられたら
あなたは素直に従えますか?」
「……はい」
悠陽の言葉に、和泉はすぐに頷いた。
「構わないのですか?彼との共闘はつまり、
最前線へ行く事に他ならないのですよ?」
「はい。それでも、構いません」
「何故?死の危険が、怖くはないのですか?」
「……死ぬのが怖く無いって言えば、嘘に
なります」
静かに、僅かに下を向く和泉。
「でも……!」
だが彼女はすぐに視線を上げ、悠陽を真っ直ぐ
見つめる。
「私はあの子を、キングギドラを信じている。
そして私も安芸のように、彼等に護られた
恩を返したい。何より今度こそ、私は目の前
で戦友が消えていくのを見たくない。
もう二度と、失いたく無いんです。
だから戦います」
一度は恋人を失い、二度目は目の前でバラゴン
の消滅を目撃した彼女だからこその言葉だった。
「分かりました。では最後に。
篁唯依少尉」
「はいっ」
「あなたは、現状配備されている戦術機、
瑞鶴に満足していますか?」
「ッ。失礼ながら、それはどう言う意味でしょうか?」
「要は、今の瑞鶴でキングギドラと共に戦う
事は可能なのか、と言う事です。
如何ですか?」
その言葉に、唯依は数秒迷った後。
「正直な所を申し上げれば、キングギドラとの
共闘を考えた場合、第1世代機の瑞鶴では
力不足かと」
「何故ですか?」
「一つは機動性です。第2世代、第3世代と
比較して重装甲な第1世代機の機動性では
キングギドラの歩行速度には追従出来ても
飛行速度には全く追従出来ません。
第2に、我々がキングギドラと共闘するので
あれば我々の任務は彼の死角のカバーです。
キングギドラの死角をカバーし、彼がより
戦いやすいよう群がるBETAを排除し
サポートする。しかしそうなると必然的に
近接格闘戦の可能性が高まります。
ですが、今の重い第1世代機では近接格闘戦
には不向きです。この機動性と格闘性能の
問題を考えると、今の瑞鶴ではキングギドラ
の『随伴機』としては、誠に失礼ながら
力不足かと存じます」
衛士としての率直な感想を述べる唯依。
「ありがとうございます篁少尉」
それについて悠陽はそう語ると、6人の
周囲に座る4人の当主の様子を伺った。
誰も、事前に悠陽が決めていた『提案』に
反対するつもりは無いようだ。
「ありがとうございます。貴女方の話は
大変参考になりました。そして、貴女方に
通達があります」
通達、と言う言葉に6人は表情を引き締める。
しかも大将軍直々だ。緊張するのも無理は無い。
「本日付で特別調査班実動部隊は解散」
突然の言葉に、唯依達は一瞬驚く。が……。
「その後兵力を大隊規模に増員した上で
特別調査班より独立。『斯衛軍特別遊撃隊』
として再編成。軍備拡張として帝国軍
より97式高等練習機『吹雪』を受領。
以降はこれを主力機としつつ活動。
また、将来的には現在開発が進んでいる
試製98式の配備も検討しています」
悠陽の言っている事は、つまり部隊を
再編成して新しい部隊を作ると言う事だ。
「旧特別調査班実動部隊は現状、この
特別遊撃隊へ編成される予定です」
そして、そこに唯依達は編入される事になる。
突然の事態に唯依達は戸惑っていた。
と、そこへ。
「皆さん」
悠陽が声を掛けた事で我に返った5人。
「……今現在、この国はBETAの侵略に
晒され、多くの人が絶望に打ちひしがれて
います」
静かに語る悠陽の言葉を、彼女達は真剣な
様子で聞き入っていた。
「そんな中で現れたキングギドラの
存在は、彼等の中で希望となりつつ
あります。そして、貴方達も」
「ッ、私達も、ですか?」
悠陽の言葉に、咄嗟に上総が聞き返した。
「えぇ。……怪獣と、『巨大生物と
共に生きる世界』のお手本として、人々は
貴方達に注目しています。
だからこそ、これからも貴方達に期待
しています。『彼』と共に、これからも
我が国を守る為に、その力を使いなさい。
期待していますよ?」
「「「「「はいっ!」」」」」
悠陽の言葉に、力強く返事を返す5人。
そうして、唯依達はキングギドラと共に
戦う道を選んだ。
それから数日後。佐渡島から襲いかかるBETA
に対してはバランが倒し、大陸などから海を
渡って侵攻してくるBETAには、キング
ギドラが対応するようになっていった。
そして、帝国内部では怪獣を、特にギドラ
を信仰する動きが見られ始めた。
最も新しい神としてギドラを、怪獣を人々
が崇める。
そしてそれは、後々『怪獣教』、別名
『タイタニズム』と呼ばれる怪獣信仰の。
BETAを人類の滅びと受け入れる
『キリスト恭順派』にとって代わり、
急速に勢力を広げる新たな宗教の
始まりであった。
そして、更に……。
太平洋のどこか。そこに浮かぶ小さな島。
夜空の月と星々がその島のどこかにある、
天井に穴が空いた洞窟の中を照らし出す。
そこでは……。
「「モスラ~ヤ、モスラ~」」
『巨大な2つの繭』を前にした、『小人』と
表現出来そうな、小さな2人の少女が
繭に向かって歌いかけていた。
まるで、『白い繭』と『黒い繭』の中に
いる『何か』の『覚醒』を促すように。
そしてほんの一瞬、白い方の繭から
『淡い緑色』の光が漏れる。
だが、『彼女』と『彼』の覚醒は、まだだ。
のちに『守護女神』と称される怪獣と。
『戦闘破壊獣』と称される怪獣の覚醒は、
もう少し先の事であった。
第7話 END
って事で、終盤には分かる人は分かるキャラを登場させ
ました。ちなみにあの2人は『小美人』ではありません。
ヒントは平成ゴジラシリーズの2人、です。まぁ
分かる人は分かると思いますが。
あと、繭が二つは間違いではありません。
彼の場合、本来は不完全変態、なのですが演出として
オリジナルにしました。
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