マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
武たちの出番は、もう少し先の予定です。
それと、スマホの縦画面を想定して文章を区切っていたのですが、見にくいとの意見を頂いたので今回から文章の構成をちょっと変えました。もし見にくいと思ったら感想下さい。修正するなりなんなりしますので。
覚醒したキングギドラは、横浜に巣くうBETAの巣窟、横浜ハイヴ攻略作戦である明星作戦に乱入するような形で参戦しBETA群を撃滅。
更に投下されたG弾2発を宇宙へ追放することで無効化し、人類の作戦成功に寄与するのだった。その後、唯依達はこの国のトップとも言うべき政威大将軍である煌武院悠陽らとの会談を経て新たな部隊へと配属が決まったのだった。
横浜ハイヴが攻略されて、既に1ヶ月以上が経過していた。
明星作戦以降、ギドラは主に富士山付近に出現してはBETAを迎撃。
更に大陸からの大規模なBETA侵攻に対しても、大体一人(一匹?)でこれを撃滅していた。
無論帝国軍も黙って見ているわけではないが、侵攻の報告を受けて迎撃に軍を動かしても、
それより先にギドラがこれを迎撃してしまうので、『急ぎ足で駆けつけても出番無し』の状況が続いていた。
そしてその結果、帝国の軍備再建や拡張。BETAの侵攻を受けて半壊した市街地の
復旧作業などに人員が当てられ、横浜を中心とした街も既に復興が始まり、前線ラインの
再構築も始まっていた。
横浜の街にそびえ立っていたハイヴのモニュメントも、今は爆破解体され欠片も残っていない。
ハイヴが攻略され、横浜が解放されたという事で人々の間には希望が芽生えつつあった。
そしてその中心にある存在がキングギドラだ。
圧倒的な、人知の及ばない力を行使するこの国の救世主的存在として、既に国民の間では怪獣信仰、延いてはギドラ崇拝が浸透しつつあった。
一方、それとは逆に帝国民の反発を強めたのが米国だ。
その理由は言わずもがな、事前通告無しのG弾の一方的な使用である。
キングギドラのおかげで最悪の事態は回避されたとは言え、落とされた事には間違い無い。更に言えば、米軍が1998年に撤退した理由も『帝国側の度重なる命令不服従』なのだが肝心の米国はこの時既に戦術核やG弾による焦土作戦を展開しようとしていたのだ。要は自国を守る為に他国の今後を一切無視した戦術を取ろうとしていたのだ。
これでは帝国民が米国に良い感情を抱くはずもない。そんなこんなで、帝国における怪獣の評価が上がる一方、米国への信頼は急降下し続けていた。
そんな中、横浜のハイヴ跡地に国連軍の基地が作られる事になった。
この基地はオルタネイティブ4のための本拠地となる予定だ。
とは言え、跡地とは言えハイヴがあった場所での作業だ。
念には念を入れて、戦術機と衛士込みの警備部隊が周辺に配置される事となり、そこに明星作戦を生き延びた孝之と慎二も配属される事になった。
とは言え、衛士の本分は戦術機に乗っての戦闘だ。
二人はどちらかというと監視の目を増やすために、まぁ、言ってしまえば少しでも監視を強化するための頭数として配置されている感があった。
建設予定地付近の、仮設基地で休憩を取る孝之と慎二。
「なぁ聞いたか孝之。今朝のニュース」
「あぁ。フランスの『リヨンハイヴ』が『ゴジラ』に落とされた、って話だろ?今朝からテレビや新聞で大騒ぎだったからな」
「……ゴジラ、かぁ」
ポツリと呟く慎二。
今や、その名前を知らない者は居ない。
今から2週間ほど前、モナークによって全世界に『ゴジラ』の名前が公表された。
命名者は、一番最初にその存在を示唆した芹沢だ。
彼の故郷の『大戸島』に伝わる伝説の怪物の名を取って付けられたその名。
そしてその名を更に広めたのが、ほんの2日前。
フランスに上陸したゴジラによってリヨンハイヴが破壊されたと言うニュースだった。
「実際、圧倒的としか言いようがねぇよなぁ。あの青白い光線、高加速荷電粒子砲らしいぜ」
「……どうやったら生物の体からそんなの放てるんだよ」
あきれ顔で首をかしげる孝之。
「俺が知るかよそんなの。実際、荷電粒子砲ってのは俺等の技術でも作る事は出来るらしいぜ?まぁ、バカみたいな電力量が必要だから、実用化サイズは作れないらしいが」
「……何でお前がそんなこと知ってるんだよ?」
と、純粋に疑問を口にする孝之。
返ってきた答えは……。
「暇だから暇つぶしで色々調べた」
だった。
そして、更に彼等が暇を持て余していた時だった。
「なぁ孝之」
「ん?」
「俺らって、もしかして将来怪獣と戦う事になるのかな?」
「……可能性はあるんじゃないか?まぁ戦った所で、一瞬で終わりだろうが」
「それは俺達が圧勝って意味で?」
「逆。容赦無く一方的に虐殺されそうで」
「だよなぁ」
彼等もその目でキングギドラの活躍を見てきたのだ。
あんなレベルの存在と戦えなんて冗談じゃない、と言うのが二人の認識だった。
と、そこへ。
「二人して何駄弁ってんのよ」
「っと、水月」
青い髪の女性衛士がやってきた。
彼女は『速瀬 水月』。
彼女は孝之や慎二の幼馴染みであり、共にこの横浜で育った女友達だ。
そして今は同じA-01部隊の仲間だ。
まぁそれぞれ所属する中隊が違うのだが。
「はいこれ。遙から二人に差し入れ」
そう言って水月が2人に渡したのはお弁当だった。
「おぉっ!マジかっ!」
お弁当、と言う事で笑みを浮かべる慎二。
実際、もう時間的にはお昼時だ。
「これはありがたい。でも、よく作れたな。俺達衛士もだが、遙だって今はCPのオペレーターだろ?」
「まぁそれは、最近この辺りが平和だからじゃない?余裕が出来てきたって言うか」
そう話ながらも、ちゃっかり孝之の隣の椅子に腰を下ろす水月。
ちなみに、遙というのは『涼宮 遙』という女性の事だ。
孝之、慎二、水月、遙の4人はこの横浜で出会い育った。
そして今もこうして、同じ部隊に所属し共に戦っている。
と言っても、水月と遙は諸事情で明星作戦の後に任官した為、まだまだ新入りだ。
そして彼女もどこからか取り出すお弁当。
「あれ?水月も弁当?」
「そうよ。お裾分けって事で遙が作ってくれたのよ」
首をかしげる孝之に答える水月。
「って言うか、肝心の遙は?一緒じゃないのか?」
「遙は今書類と格闘中。ちょっと忙しそうだから手伝おうか、って言ったら代わりに届けてほしいって渡されたのよ」
「あぁそれで」
と、水月の言葉に頷く慎二。
って事で、3人でお弁当を食べていながらも、彼等は談笑していた。
で、話題に上がったのは、ギドラだった。
「しっかし、キングギドラのおかげで俺達はこうしてられる訳か」
ポツリと呟いた慎二の言葉に、孝之と水月の手が止まる。
「そうだな。あの時、キングギドラがG弾をどうにかしてなかったら、俺達は今頃どうなってた事か」
「結果的に、2人はキングギドラに助けられたって訳ね」
「世の中じゃ、キングギドラを神様みたいに崇め始める人達も増え始めてるってさ」
「あぁ、聞いたわ。怪獣信仰って奴でしょ?」
慎二の言葉に相槌を打つ水月。
「実際、怪獣ってすげぇ強いからなぁ。ゴジラは単独でハイヴを落とせるし、キングギドラだって単独で数万のBETA群を撃退出来るんだからよ。単独であの化け物の群れとやり合えるんだから、それこそ化け物だよなぁ」
「だからこそ、敵に回したくはないよな」
「そうねぇ」
孝之の言葉に頷く水月。
「それに、横浜が今のままなのも、キングギドラのおかげよね?」
「……あぁ」
水月の呟きに、孝之は真剣な表情で頷き、慎二も箸を止めた。
「G弾が落ちてたら、この辺り一帯はもっと酷い事になってたらしいぜ。下手すりゃ、放射能汚染とまでは行かなくても環境に影響が出たかもしれないって、香月博士が言ってたぜ?」
香月博士、と言うのは孝之達が所属する国連の計画、『オルタネイティブ4』の
中心人物、『香月 夕呼(ゆうこ)』の事だ。
そもそもこの横浜基地建設も彼女の提案である。
「……他国がどうなろうと知った事じゃないと言わんばかりに、兵器の実験場としてこの国を、横浜を犠牲にしようとした米国と、純粋にこの国を護ってくれた怪獣。 ……同じ人間よりも信頼出来るのは言葉の通じない怪獣、か。何て言うか皮肉だな」
「全くだ」
孝之の言葉に慎二が頷く。
「怪獣かぁ」
ポツリと水月は呟きながらも、ふと視線を窓の外に向けた。
そしてその時。
「ん?!」
彼女は、窓の外の『異様な光景』を見て、慌てて目を擦った。
そして再び外を見るが、その『異様な光景』、『小さな女の子2人がカラフルな蝶に乗っていた』、と言う異様な光景は消えていた。
「どうした水月?」
「あ、ううん!何でも無いっ!ちょっと疲れてるのかな?変なのが見えちゃった」
「変なの?」
戸惑う水月に孝之が声を掛けるが、彼女はそう言うだけだ。
慎二は首をかしげながらも窓の方に視線を向ける。
「何も無いけど?」
「きっと鳥よ。それが一瞬変な風に見えただけでしょ」
そう言って、半ば自分自身を納得させると水月は食事を再開し、孝之と慎二も同じくお弁当に視線を戻して箸を動かす。
だが、水月が見たのは間違い無く存在していた。
そして、その小人の2人、『コスモス』は、カラフルな蝶、『フェアリー』に乗り、帝国各地を巡っていた。
全ては、自らの存在を伝え、そして彼女達の同胞である『先住民族コスモス』の技術データを収めた、先史文明の遺産たる『パンドラボックス』を授けるに値する存在を探すために。
そして、明星作戦から3ヶ月ほどが経ち、キングギドラの活躍もあって帝国はそこそこ平和な年末を迎えつつあった。
そんな、ある日の事だった。
「ふぅ」
夜遅く、芹沢は東京にあるモナークの施設に戻ってきていた。
ギドラの活躍で関東圏が安全になった事もあって、彼は再び東京に戻ってきたのだ。
そして、最近の彼の仕事と言えば怪獣の調査に加えて、その存在の専門家として政治家や軍人たちに対する怪獣の説明などの仕事をしていた。
最近ではテレビのコメンテーターとして呼ばれる事もある程、何気に多忙な芹沢。
そして芹沢は施設内にある自分の執務部屋に戻ってくる。
時計は既に12時を超えている。
芹沢は着ていたスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めるとソファに腰を下ろした。
『このまま横になるか』、と彼が睡魔に負けてそんな事を考え始めた時。
「「はじめまして。芹沢大助博士」」
「ッ!?」
突如聞こえた声に、芹沢の眠気が吹き飛ぶ。
「誰だっ!?」
彼は声を荒らげながら周囲を見回すが、部屋には彼以外誰も居ない。
「「ここです博士」」
「?」
芹沢は声のする方、執務机の方に目を向けるが、そこには誰も居ない。
「一体どこに……」
更に彼が周囲を見回していると……。
「「ここです」」
執務机の上に重ねられた本の山の影から、小さな少女が2人、現れた。
「なっ……!?」
小人と言う、おとぎ話から現れたかのような存在の来訪に、芹沢も戸惑い思わず後退って
しまった。
「き、君たちは一体……!?人、なのか?」
「「いいえ。私達は人ではありません。言うなれば、先史文明人です」」
「先史文明?」
「そうです。1万年以上前、私達『コスモス』は高度な文明を誇る社会を築き上げていました」
芹沢の問いかけに、片方のコスモスが答える。
「コスモス?それが、君たちの種族名なのか?」
「「はい」」
「そうか。しかし、ました、と言う過去形という事は……」
「お察しの通りです。既にコスモスの文明は崩壊しています」
「そうだったのか。しかし、高度な文明を誇っていたのなら、何故だ?」
と、純粋な疑問を口にする芹沢。
「確かに、私達コスモスは繁栄を享受していました」
「発展した文明の果て、一部の科学者たちは天候をも自由自在に操ろうとしました。しかし、それによって」
「「地球生命の怒りを買ったのです」」
その話を聞きながら、芹沢は静かに、執務机の椅子に腰を下ろすと彼女達と向き合った。
「教えてくれ。君たちが何故私の元に現れたのか。地球生命の怒りとは何なのか」
「「はい」」
そうして、コスモスは語り始めた。
「「当時、我々コスモスはある2匹の怪獣を神と崇めていました」」
「ですが、地球生命の怒りを買った事で、その一方、『バトラ』が私達の敵となったのです」
「では、君たちはそのバトラに攻撃を受け、文明は崩壊したと?」
「「いいえ。もう一方の神、『モスラ』はバトラと戦いながら必死に彼を説得しようとしていました。ですが、そこにバトラ以上の脅威が現れたのです」」
「それは一体……?」
「「我々はそれをアースと呼んでいました」」
「そして今、人間が『ゴジラ』と呼ぶ存在です」
「ッ!?ゴジラがっ!?」
「はい。当時のゴジラは、今のゴジラほど大きくはありませんでした」
「ですがそれでも、我々の力も、モスラとバトラの力も及ばない程に強大な存在でした」
その話を聞き、しばし考える芹沢。
「ゴジラは自然界の調和を保つ存在だ。それ故に、バランスを崩しかねないコスモスを、彼は許さなかった?」
「「はい。その通りです」」
「そして、ゴジラに挑んだモスラとバトラはその圧倒的な力の前に敗れ、瀕死になりながらも自分達の子供を産み、命を落としました」
「子供?二匹の子供がいるのか!?それは今どこで何をっ!?」
「今、モスラとバトラの子供達は、インファント島という島で力を蓄えています」
「繭となって既に1万年。来たるべき日、『審判の日』を彼等は待っていたのです」
「その、審判の日、と言うのは?」
「「人類は、これまで多くの事をしてきました。戦争、環境破壊。そして地球を滅ぼしてしまうかもしれない兵器までも、創り出してしまったのです」」
「……原水爆か」
「そうです。そして人類の存在が、地球生命。即ちこの星にとって危険だと判断された場合、『裁定の獣』が現れるはずでした」
「それがゴジラか」
「「はい」」
「地球生命の意思によって、この星の脅威となる存在を排除する、言わば『地球生命の使者』。それがゴジラです」
「そしてモスラとバトラは、その審判の日が訪れた時、ゴジラと戦うために力を蓄えていました。ですが……」
「今では人間よりも、BETAの方がこの地球にとって有害な存在だ。だからゴジラは、BETAを相手にしている、と言う事で良いのか?」
「「えぇ」」
「ですがそれも、人間とBETAを比較して、BETAの方が脅威であると判断されただけでしょう」
「そうなれば例えBETAを退けたとしても、その先に待っているのは人間と怪獣の戦争」
「「そして我々と同じく、滅びの運命です」」
「……今の人類では、ゴジラには勝てないと?」
「「はい」」
「正直に言えば、今の人類の技術レベルは我々コスモスよりも劣ります」
「この程度の技術力では、ゴジラを倒すなど夢のまた夢」
「そうか」
芹沢は、コスモスの言葉に頷いた。
まぁ彼自身分かっていた事だ。
人類に出来ない事を、ハイヴ攻略を軽々とやってのける存在に、その人類が勝てる訳がないのは百も承知。
「つまり、君たち2人は我々人類に対して警告をするために来た、と言う事で間違い無いのか?」
「「はい。そしてもう一つ」」
「ん?」
「「我々コスモスの遺産を託するに値する人に託す為です」」
「コスモスの、遺産?」
「そうです。我々コスモスは、自らの過ちを理解し、最後はゴジラによって滅ぼされました。今生き残っているのは、私達だけ」
「そして私達に与えられた使命は、何時の日か私達と同じように知的生命体が現れた時、彼等に私達と同じ過ちを繰り返さないように警告することです」
「「そして、もし私達の遺産を託すに相応しい人が居るのなら、その人に遺産を託す事です」」
「その遺産、と言うのは一体何なんだ?」
「それは、私達コスモスの技術の全てを収めた、言わばデータバンクです」
「ですがこの中のデータは扱いを間違えれば、まず間違い無く私達と同じ運命を辿る危険な物です」
「扱いを間違えれば、人を滅ぼす存在。福音であり、同時に滅びの象徴。それがコスモスの遺産ですか」
「「はい。私達はこれを『パンドラボックス』と呼んでいます」」
「……パンドラの箱。様々な災いが収められ、ひとたび開かれればそれが世界に襲いかかる。だが、開かれた箱の中には一欠片の希望が残されていた、か。皮肉なまでにぴったりな名前だ」
そう言って芹沢は苦笑を浮かべた。
「使い方を間違えれば、それは人類の滅亡に直結します」
「ですが逆に、間違えなければそれは人類を未来に導く希望になります」
「全ては、『使い方次第』か」
2人の言葉に芹沢はポツリと呟いた。
「「私達が博士にお会いしたのは、仲介をお願いしたいからです」」
「仲介ですか?私に?」
「「はい。今この世界で最も怪獣、延いてはゴジラに理解があるのはあなたです。芹沢博士」」
「パンドラボックスを託す為にも、私達は相手を見極めなければなりません」
「ですが私達には人族との繋がりはありません。そして更にはパンドラボックスを手にする事の危険性を伝えなくてはなりません」
「パンドラボックスの使用を誤ればゴジラによって滅ぼされるから、か」
「「はい」」
「だからこそ、ゴジラの強さ、危険性を分かっている博士に仲介をお願いしたいのです」
「分かりました」
そう答えた後芹沢は、話し合いは後日で良いか?とコスモスの2人に確認を取って、OKを貰ったのでその日は別れた。フェアリーと呼ばれる小さな蝶に乗り、帰って行ったコスモスを見送った芹沢は今度こそ眠りに付くのだった。
そして、数日後の夜。再び彼の元をコスモスが訪れて居た。
そんな2人に芹沢がまず答えた事なのだが、『まず国家は信用出来ない』だった。
どういうことか?とコスモスが問いかけると芹沢は説明を始めた。
「この国、帝国は行政のトップに政威大将軍という方がいるのですが、現在彼女には大した発言力も無い様子。となれば仮に彼女にパンドラボックスが渡ったとしても、どうなるか。むしろ帝国の野心的な連中に奪われ良いように使われるのが関の山でしょう」
「「では、他の国は?」」
「残念ながら、似たり寄ったりでしょう。アメリカとソビエトはお互い相手を超えるために余念が無い。パンドラボックスを手にすれば、十中八九BETAとの戦い以外に利用してしまうでしょう。かといってそれ以外の第三国に流しても、その国はパンドラボックスの技術力によって大国に成り代わる事を画策し、結果的に争いを増長してしまう可能性があります。なので、結論から言ってしまえば信用出来る国家が無い、と言うべきか。……と言うより、どこの国にもパンドラボックスを悪用するであろう人間が居そうなので国家に渡すべきではないと言うべきか」
「では、個人ではどうでしょうか?」
「どなたか、信用出来る方は居ませんか?」
「信用出来る人、か」
彼は考えた。今彼が信用出来る人間を脳内にリストアップしていく。
更に彼はそこからゴジラの脅威を理解している者達へとリストを絞っていく。
そのリストの中には唯依達も居たが、立場や発言力などの弱さから早々に除外されてしまう。
そして彼が唸ること数分。
「……1人だけ、『彼女』なら或いは……」
「「その彼女、と言うのは?」」
「私も、少し前に出会ったばかりの女性です。しかし、何というか話をしている内に彼女は芯の通った女性だと感じました。目的に対して努力を惜しまない。悪い言い方をすれば目的達成のためには手段を選ばない女性のようでしたが、むしろその方が信頼出来るのではないかと考えての事です」
「「その方は、信じられるのですか?」」
「少なくとも、彼女は理解力のある女性です。それに、国連の最重要計画の中心人物でもあります。少なくとも彼女ならば、他国なども早々手出しは出来ないでしょう。それを考えれば特定の国に渡すよりは安全かと」
「「分かりました。それで、その女性の名前を教えて頂いても?」」
「彼女は『香月 夕呼』博士。オルタネイティブ4と呼ばれる計画の責任者です」
こうして、芹沢はパンドラボックスを託すべき相手を決めるのだった。
それから数日後。芹沢はコスモスと共に夕呼に会う約束を取り付けた。
もちろんコスモスの存在は今、彼以外に知る人物はいない。会う予定の夕呼もだ。
彼等の話し合いの場所は、未完ではあるが横浜基地の一角、と言う事になった。
芹沢は鞄にコスモスの2人を隠し、案内役の兵士に連れられて夕呼の待つ、仮設の応接室へと連れて行かれた。
「お待たせして申し訳無い、香月博士」
「いいえ。どうぞお気になさらず」
芹沢が中に入ると、そこには国連軍の制服の上に白衣を纏った女性、つまり夕呼が待っていた。挨拶をしながらも、彼女の向かい側のソファに腰を下ろす芹沢。
「それで、博士から話とは一体?」
そう言って首をかしげる夕呼。
「それについては、私ではなく『彼女達から』と言うべきでしょうか?」
「彼女、たち?」
芹沢は、首をかしげる夕呼の前に鞄の中からコスモスを自分の手の上に乗せて出すと2人の間にあるテーブルの上に下ろす。
「「こんにちは、香月夕呼博士」」
「……私、夢を見ているのかしら?それとも徹夜のせいかしら?」
そう言って彼女は苦笑しながら目頭を揉む。
「「いいえ。夢ではありません」」
「今日は、私達から香月博士にお話があって、芹沢博士に連れてきて貰ったのです」
「……話って、私に?」
「「はい」」
「そう。……それで、話って?」
未だに理解不能な様子だが、話を聞くだけならと言う様子で夕呼はコスモスの話を聞き始めた。
コスモスは芹沢に語ったように、自分達の種族の事。それが滅んだ事。その原因がゴジラである事。もしこのままであれば、人類はコスモスと同じように地球生命の怒りを買ってそのゴジラに滅ぼされる可能性がある事。
そして、最後にパンドラボックスの事を彼女に語った。
「お話は大体分かりました。で、なんで私なんでしょうか?聞いた所では、芹沢博士の推薦のようですが?」
「それについては、いつぞやお話しした時の事を覚えていますか?あの時私が最後にした質問を」
「それって確か。……『もし怪獣と敵対するか共生するかの選択を迫られた場合、どちらを選ぶか?』、だったかしら?」
「えぇ。あの時、香月博士は言った。『どちらのケースも想定し、あらゆる情報をかき集め、その上で対策を練る。出来る事をする。何を犠牲にしてでも人類が生き残る為に』。と。この答えを聞いた時、失礼ながら私は貴女を、目的のためなら手段を選ばない人だと思った」
「……その通り、だと言っておきましょう。生憎ですが私は超人でも英雄でも無い。所詮は天才。出来る事と言えばそれくらいですから」
芹沢の言葉に、夕呼はそう答えた。
「でも、だからこそ信頼に足るのではないかと私は考えました。あらゆる状況を客観的に分析出来るのであれば、当然ゴジラと戦う事がどういうことなのかも理解出来るはず。プライドに縛られ、ゴジラを一匹の獣と侮る連中より、その危険性を十二分に理解出来るであろう貴女に、私はコスモスの遺産、パンドラボックスを託すべきだと考えました」
その言葉に彼女は、しばし考えた後。
「まぁ、分かりました。現代技術をも上回る技術データの塊なら正直私も欲しい、と言うのが正直な所。それで、そのパンドラボックスというのはどこに?」
「「ここにはありません。あるのは、太平洋のとある島。インファント島です」」
「分かったわ。……なら、善は急げと言う訳じゃないけど、取りに行きましょうか?」
「え?今からか?」
夕呼の言葉に戸惑う芹沢。
「まさか。もちろん準備をしてから、ですよ」
彼女はそう言って笑みを浮かべながらも、コスモスへ目を向けた。
「案内をお願い出来るかしら?パンドラの箱が眠る場所まで」
そして彼女たちは向かう事になった。
コスモスの遺産、パンドラボックスの眠る場所。
そして、『モスラ』と『バトラ』の眠る場所。
インファント島へ。
第8話 END
作中で出てきたパンドラボックスの単語は、もろ仮面ライダービルドからパクりました。
あと、所々でライダーネタとか出していくかもしれません。
自分、仮面ライダーも大好きなので。
感想や評価、お待ちしてます。