マブラヴオルタネイティブ~~怪獣達の逆襲~~ 作:ユウキ003
キングギドラの活躍で解放された横浜。そんな横浜の一角に新しい国連軍の基地が建設されることになり、明星作戦を生き延びた孝之や慎二は、生まれ故郷の横浜へと戻ってくるのだった。
そんな中、新たな来訪者として先史文明の生き残りであるコスモスが芹沢の元を訪れ、警告と自分達の遺産、パンドラボックスを託す相手を探していることを告げる。
その後芹沢は、考え抜いた末にパンドラボックスを1人の女性、香月夕呼に託すべきだとして彼女の元へコスモスを連れて行き、その話をするのだった。
話を聞いた彼女は、即決しパンドラボックスの回収に向かうのだった。
2000年1月。太平洋上。
今、太平洋のど真ん中を、モナーク所属の大隈級戦術機揚陸艦が進んでいる。
大隈級には、夕呼が連れてきたA-01連隊の内の一個中隊、別名『伊隅ヴァルキリーズ』と呼ばれる第9中隊の衛士とその戦術機、不知火(UNカラー)が12機搭載されていた。
そして、船内の小さな会議室には中隊長である『伊隅みちる』大尉を始めとしたヴァルキリーズのメンバーが集められていた。
そしてそのメンバーの中には水月や遙の姿もある。
ちなみに、ヴァルキリーズという名称の由来は隊長のみちる以下メンバーが全員女性であることから付けられている。
そして、そんなヴァルキリーズの前に夕呼がいて、更に近くにドールハウスを持った芹沢がいる。水月は『何であの人ドールハウス持ってるの?』と思いながらも、夕呼の話に耳を傾けた。
「今回の貴方達の任務は、この先にある島、インファント島に存在する『ある物』を回収する事。そして回収作業中の私達の護衛。それが大まかな任務の内容よ」
と、夕呼が言うとみちるが手を上げた。
「その回収する物と言うのは?」
「それについては、私じゃなくて彼女達から説明して貰うわ」
「彼女たち?」
首をかしげるみちる。すると夕呼の近くで控えていた芹沢が彼女の前の教壇の上にドールハウスを置いた。
「何をしてるんだろう?」と言わんばかりに皆が戸惑っていると……。
「「はじめまして。皆さん」」
中からコスモスが現れ、皆驚きから絶句してしまった。
そして三度、彼女達の口からコスモスの事や自分達の文明がゴジラに滅ぼされたこと。そしてその過ちを繰り返さない為に警告に来た事と、コスモスの遺産を託す為に芹沢を通して夕呼に接触した事などが話された。
「それで、その遺産というのは?具体的な事を聞いても良いだろうか?」
「「はい。それはコスモスが残した『基地』と『戦艦』です」」
と、ここでコスモスは『事前に夕呼から指示されていた』、『偽の遺産』の情報を流した。
正確に言えば、彼女達の言う基地と戦艦も、パンドラボックス込みで夕呼に与えられる予定だった。だが、パンドラボックスに関しては不用意に口にしないように夕呼からコスモスに指示していたのだ。
その理由は情報漏洩を避けるためだ。
『壁に耳あり障子に目あり』という諺があるように、どこの誰がどんな所から話を盗み聞きや盗み見ているか分からないからこそ、パンドラボックスの事を隠したのだ。
今現在、パンドラボックスの存在を知っているのはコスモスを除けば夕呼と芹沢だけだ。
で、話を戻すと……。
「その戦艦、と言うのは?」
衛士の1人、『宗像(むなかた) 美冴(みさえ)』中尉が手を上げて質問する。
「「私達コスモスが技術の粋を集めて開発、建造した最強の船です」」
「ですが、ゴジラの圧倒的な力の前に敗北と文明崩壊を察した私達はこの船を、最後に残された基地、インファント島の地下に封印しました」
「成程」
と、コスモスの話に頷く美冴。
「しかし、その基地はよくゴジラの攻撃を受けませんでしたね」
そう問いかけるのは、『風間 梼子(とうこ)』少尉。
「「恐らく、ゴジラはそれを脅威と判断しなかったのでしょう。扱う事の出来る存在も、もう殆ど残っていませんでしたから。そして更に、私達の後に生まれる文明に対する、警告の意味も込めて、残したのだと思います」」
「警告、ですか?」
「「はい。『コスモスほどの技術力があってもゴジラには勝てない』、と言う警告です」」
「「「「………」」」」
2人の言葉に、衛士達は皆押し黙る。
「過ちを繰り返し、この地球の怒りを買ったときどうなるか。その末路を示唆するためにゴジラはコスモス最後の基地を破壊しなかったと言う訳か」
ポツリと呟く芹沢。
「とにかく。今の私達の任務は、第1目標は戦艦の回収。第2目標は基地施設の状況観察。可能であればこれを接収する予定よ。良い?」
と言うと……。
「あ、あの」
水月が挙手した。
「作戦とかは分かるんですけど、それを私達が回収して大丈夫なんでしょうか?それだけでゴジラに標的にされる、なんて事は……」
と、思った不安を口にする水月。しかし彼女の不安は他の衛士達からしても最もだ。
「それについては、コスモスの2人に聞いた方が良いでしょうね。それで?お二人の判断は?」
「「ゴジラはあくまでも、この星の脅威、つまり自然や他種族を蔑ろにする存在の敵となります。回収するだけであれば問題無いと思われます」」
「まぁ、実際の所問題は回収した後なんだけどね」
と、コスモスの話を補足する夕呼。
「とにかく任務は今言ったとおり。まずインファント島沖に到着後、私と芹沢博士は貴方達の不知火に便乗して島に上陸。半分を上陸地点の警備に残して、他は私達と一緒に基地へ向かう。道中何があるか分からないから警護をよろしくね。……誰か質問は?」
と言うが、皆手を上げない。質問は無いようだ。
「それじゃあ到着するまでに準備をよろしく。あぁあと、コスモスの二人のことも一応機密事項だから、不用意に喋らない事。じゃあ一時解散」
そう言って部屋を出て行く夕呼。
残されたみちる達も各々部屋を後にし、それぞれの準備を始めた。
そして水月も、出撃前に自分の愛機の確認作業をしていた。
「……ゴジラに滅ぼされた文明の戦艦かぁ。どんなのなんだろう」
そんな事を考えながら愛機の確認をしていると。
「水月ちゃん」
「あっ、遙。どうしたの?」
CP将校、所謂オペレーターの制服姿の遙がやってきた。
「これ。インファント島の地図だって。伊隅大尉が水月ちゃんにも見せておけって」
「あ~ありがとう遙」
水月は遙の持っていたタブレットを手に取り、インファント島の地形に目を通しておく。
そんなときだった。
「ねぇ、水月ちゃんはその、ゴジラの事をどう思う?」
「え?どうって?」
「ゴジラは、私達よりすごい技術を持ってたコスモスを滅ぼしたんでしょ?だったら、今の私達じゃゴジラに勝てないって事だけど、だからってゴジラを放置したら放射能をまき散らすし」
「……そうね」
水月は彼女の言葉に頷く。そして遙のどこか不安な様子にも彼女は納得してしまう。
横浜は一度、ゴジラによって汚染されてしまったのだ。結果的にBETAがそれを中和したから良い物の、故郷が汚染されたとあっては良い感情は持てないだろう。
だからこそ彼女はまた故郷がゴジラに汚染される事を恐れているのだ。
ゴジラの存在は、人間にとってメリットとデメリットがある。
メリットはBETAを倒してくれる可能性がある事。
デメリットは高濃度の放射能を出現地点にばらまく事だ。
そしてどちらかと言えば、デメリットの方が大きいかもしれない。
放射能に汚染された大地を、人々は捨てなくてはならない。
そのことを考えていた時、水月はふと……。
「もしかしたら、ゴジラ自体が核兵器とかに対する警告なのかもね」
「え?」
「放射能汚染の事よ。『存在するだけで世界を汚す』。そのことの警告のために、ゴジラは放射能をまき散らしてるのかもね。『お前達が核兵器を作り続けたら、こんな風に住めない土地が増えるんだぞ』って」
「そう、なのかな?」
「まぁ、私の勝手な推測、ってか妄想だけどさ」
と、二人が話していると……。
『当艦は間もなくインファント島近海に到着します。衛士各員は強化装備を装着の上待機されたし。繰り返します。……』
艦内放送が流れた。
「っと、じゃあ私着替えに行かないと。じゃあね遙!」
そう言って、水月は遙にタブレットを渡すと足早にその場を後にした。
「……ゴジラの存在自体が、警告かぁ」
遙は、それだけ呟くと数秒して気持ちを切り替え自分の持ち場に戻った。
その後、芹沢とコスモスは梼子の不知火に乗せて貰い、夕呼も水月の不知火に乗せて貰いながら大隈級を出発した。
戦術機には、パイロット以外に人間を乗せる装置がある。
とは言え、戦術機が戦闘するとなればかなりのGがかかる。加えて装置はあっても簡易的な物なので、これを使って居る人物の安全を考えると高Gがかかる戦闘機動は避けなければならない。
まぁ、今は実際戦闘中でないから良かった。
だが、それならばヘリを使えば良いのでは?と思うだろうが、夕呼の提案で今回のインファント島行きに付いてくる人間は、極力少なくしたい。と言うのでこうなった。
どういうことかと言えば、まぁ情報漏洩を警戒しているからだ。
一人でも関わる人間を少なくすれば、それだけ情報が漏れる心配も無い。更に関わる人間が多すぎると、仮にスパイが紛れ込んでも分かりにくくなる。
だからこそ夕呼は関わる人間の数を最低限にしたかったのだ。
そして、彼女達はフェアリーに乗って空を飛ぶコスモスたちの後に続いてインファント島に上陸した。
しかし、傍目からは普通の無人島にしか見えないインファント島。規模自体は結構大きな島だが、周辺に大きな陸地や人間の住む島が無い事や、航路から外れた場所に在るため訪れる者の居ない無人島のままだったのだ。
そして、コスモスを乗せたフェアリーはインファント島の一角の平野へと降りていく。それを確認した12機の不知火達も次々と着地しながら周辺を警戒している。
「「ここからは入り口の洞窟まで歩きになります」」
との事だったので、事前に決められていたメンバーが不知火を降りて、残りは不知火に
乗ったままこの広場で待機となった。
フェアリーに乗ってゆっくりと進むコスモスに続く芹沢、夕呼。更にその護衛としてみちるや美冴、梼子や水月などが拳銃を手に続く。
ちなみに芹沢も夕呼も、今は動きやすい服装だ。流石にいつもの格好では島は歩けないからだった。
コスモス曰く、『歩いて数分』との事だったが、島自体が全く舗装も整備もされていない無人島だったため、目的地に着くには10分以上掛かってしまった。
「「ここです」」
そして10分以上かけてたどり着いたには、見た目はありふれた洞窟だった。
『本当にこの下に基地なんてあるの?』
と、水月はそんな疑問を感じつつも、拳銃に装着されているライトのスイッチを入れる。
芹沢や夕呼もそれぞれライトを取り出し、中へと入っていった。
洞窟の中自体も、普通の物だった。人為的に作られたと思わせる部分は無く、如何にも天然の洞窟と言う感じだ。なので足場も悪く、慎重に進んでいく事5分。
「ッ、行き止まりか?」
先頭を歩いていたみちるが、目の前に現れた壁を見てそう呟く。
「「いいえ。行き止まりではありません」」
すると後ろからフェアリーに乗ったコスモスが彼女の前に出て、そしてフェアリーから降りると目の前の壁に触れた。
直後。
壁面を、水面が波打つように光が走った。直後、壁そのものが粒子のようになって消滅してしまった。まさかの開け方に彼女達が戸惑う。だが、本当の戸惑いはそこからだった。
「「さぁ、皆さんこちらへ」」
再びフェアリーに乗ったコスモスに促されるまま、彼女達は歩みを進めた。
そして開いたドアの先には、全く別の世界が広がっていた。
白を基調とする綺麗な通路が広がる。とても数千年放置されていたとは思えない、清潔さを保った通路だった。驚きながらもその通路を進んでいくと、彼女達の前に大きな扉が現れた。
するとコスモスはフェアリーを降りて、左右に分かれる。すると扉の隅っこに、コスモスサイズの小さなハンドスキャナーが出現した。
二人は互いにうなずき合うと、同じタイミングでスキャン装置に触れた。
レーザーが2人の手をスキャンすると……。
『コスモス2名を確認しました』
どこからともなく電子音声が響き渡る。
『基地施設のロック解除。全システム、復旧します』
すると、電子音声に次いで『プシュゥッ』と言う音と共に、大きな扉が左右に開く。
そして長い間封印されてきたコスモス最後の基地に、電力と言う名の息吹きが吹き込まれ、再び動き出した。
大きな扉を越えたその先は、基地全体を見渡せる高台となっていた。芹沢やみちる達、夕呼でさえも愕然とした表情で眼下に見える基地を見回していた。
基地には、人が暮らせるのか隊舎のような建物や、戦車や戦闘機を格納できそうな倉庫。更に一番奥には、同じく一番大きなドックらしき建物も見える。他にも生産工場らしき施設などが散見される。
正にSF小説に出てきそうな、近未来的な光景が彼女達の前に広がっていた。
「こ、ここが、コスモスの基地?」
呆然と、周囲を見回す水月。
「「そうです。さぁ、皆さんこちらへ」」
そう言って、コスモスは彼女達を促す。驚きのまま2人についていく芹沢たち。
そして彼女達が、高台の一部にある丸い円形の上に乗ると、コスモスが彼女達サイズの小さな端末に触れた。すると、円形の物体に走るラインが緑色の光を放ちながら浮かび上がった。そして彼女達を乗せたまま、音も立てずに動き出したのだ。
「これは……。まさか重力制御技術?」
目立った推進機関も無い円形の物体が動く事に、夕呼は驚きながらもそう呟いている。
「それに、操縦桿のような操作に使う端末のような物もない。ちょっと、これってどうやって動かしているの?」
「「これは、この触れている場所を通して私達のイメージを送り込んでいます」」
「そのイメージを機械が読み取って動かしているんです」
「この基地内の行きたい場所をイメージすれば、そこへ連れて行ってくれるんです」
「つまり、イメージインターフェースと言う訳ね。それも大きさからして、現行の戦術機に搭載されているものよりもずっと性能の高い物。この乗り物だけでも、どれだけの技術が詰まっている事か」
そう言って、何やら笑みを浮かべる夕呼。
ちなみにだが、戦術機にはその操作に当って、操縦桿やペダルだけでなく間接思考制御と言う物が使われている。これは簡単に言うと、衛士の『こう言う動きをしたい』というイメージによる指示を機体が受け取って、機体側が実行。そこから細かい動作をパイロットが操縦桿などで行う、と言うものだ。
そして、そうこうしている内にフライングボード、彼等の乗る円形の乗り物は基地の奥にある一番巨大なドックへと到着。それを降りると、再びコスモス2人のハンドスキャンで扉を開放した。
そして、開いた扉の先で彼女達を待ち受けていたのは……。
「これは……」
「……大きい」
ポツリと呟く美冴と梼子。
彼女達の視線の先にあるのは、巨大な漆黒の船だった。
流線型の船体。現代の『船』という常識的概念から外れた形の船。
しかし何と言っても目を引くのは、船首に取り付けられた巨大なドリルだった。
「これが、コスモスの戦艦か?」
「「はい、そうです。私達は『轟天号』と呼んでいました」」
船、轟天号を見上げながら呟く芹沢にコスモスたちが答える。
「轟天号」
ポツリとその名前をリピートする水月。
「それで、こいつの武装とかの説明は?」
「「それでしたら、『ゼア』がしてくれます」」
「ゼア?」
問いかけた夕呼は、2人の言うゼアという単語に首をかしげた。
「「ゼア。そこに居ますか?」」
2人が、まるで基地に向かって呼びかけるように声を発した。周りの者達が『何を?』と首をかしげていると……。
『お呼びでしょうか?』
どこからともなく、女性のような声が響き渡る。
「ねぇ、この声って……」
「「この声の主はゼア。コスモスが生み出し、この基地の管理を任せているマスターAIです」」
と、夕呼の問いかけにコスモスが答える。
「「ゼア。皆さんに轟天号の事を教えてあげて下さい」」
『分かりました』
と言う訳で、人工知能であるゼアから夕呼達に轟天号の説明がなされた。元々轟天号は対ゴジラ用に開発された決戦兵器の一つで、破壊力を優先して開発された事。そのために艦首でもあるドリル周りに武装が集中している事。いざとなれば轟天号そのものを弾丸として、ゴジラに突っ込む事も想定されていた事などを、ゼアが説明してくれた。
更に飛行能力や動力源などの詳しい話もされたが、水月などはちんぷんかんぷんだった。
「「もし良ければ、轟天号の中もご覧になりますか?」」
「えぇ。それじゃあ見せて貰おうかしら」
と言う事で夕呼と芹沢はコスモスの案内で中に入る事に。
「それじゃあ、貴方達は外で待機しつつ基地の状況を確認。って言っても分からない所だらけだろうから、とりあえず破損してそうな箇所や施設が無いか確認よろしく」
「了解しました」
そしてみちる達には外で待機するように指示を出した。
「「では。ゼア。もしもの時は皆さんの質問の答えてあげてください」」
『かしこまりました。個人の顔データを識別中。……完了。
6人をゲストとして一時登録します』
「「これで、もしもの時はゼアが答えてくれます」」
「ご配慮、感謝します」
コスモスの言葉にそう言って頭を下げるみちる。
そうして、みちる達は轟天号の外を見て回り、夕呼達は轟天号の中へと入っていった。
轟天号の中も中で、近未来SF的な作りになっていた。
中に入ってからコスモスが真っ先に案内したのは、轟天号の船長室だった。
そして、その中の透明なケースの中にパンドラボックスが保管されていたのだった。
パンドラボックスは、ボックスの名の通り正六面体の構造物だった。
だが、夕呼は機材を接続出来る穴もないその構造を見て、どうやってアクセスするのか?と内心首をかしげていた。
そうこうしている内に、コスモスが透明なケースに触れると、ケースが粒子となって消滅しパンドラボックスが露わになった。
「ねぇ、これってどうやって情報を引き出すの?見たところ外部装置の接続口も見当たらないけど?」
「「それについては、直接触れてみて下さい」」
「触れるって、ボックスに?」
「「はい。害は無いので、触れてみて下さい」」
「……そう」
夕呼は、内心緊張しながらも静かにパンドラボックスに手を伸ばし、そして触れた。
『カァァァァァァァッ!』
するとパンドラボックスが独りでに光を放ち始めた。
その光量に咄嗟に視線を逸らす夕呼。
だが、直後夕呼は『意識が引っ張られるような感覚』に陥った。そして一瞬瞬きをした直後、彼女の目の前には、『無数の本棚が広がる世界』が続いていた。
「なっ!?」
これには夕呼も驚いてボックスから手を離してしまった。
すると、景色は元の艦長室に戻る。慌てて夕呼は周囲を見回す。
「今のは……」
「「今、香月博士の意識は、一時的にボックス内部のデータベースへとアクセスしていました」」
「ッ!?何ですって?つまり、このボックスは……。触れた人間の意識を一時的に引っ張り寄せる事が出来るの?」
「「その認識で間違いありません。そして、このボックスにアクセス出来るのは私達の許可を得た人間だけです」」
「成程ね。許可の無い人間はどうやってもデータベースにアクセスする事が出来ない。しかもネットワークから独立していれば外部から電子的に侵入される心配も無い。ねぇ、アクセス認証が出来るのって、貴方達だけ?」
「「いいえ。ゼアにもその権限がありますが、そちらは私達の意思で取り消す事が出来ます」」
「つまり、確実にアクセスするのなら貴方達の同意が必要不可欠って訳ね。となると強引にボックスだけが奪われたとしても、誰も中を見ることは出来ない」
「「その通りです」」
その時。
「香月博士は、もしかしてこれを狙って、しかも武力攻撃を仕掛けて来る連中がいると考えているのですか?」
そう問いかける芹沢。
「……えぇ。正直、これの存在が表に出ればどうなるか。下手をすれば大国同士がボックス欲しさに大軍を動かす可能性だってあります。それを考えれば、これは災いの元。正しく様々な厄災を収めたと言う、パンドラの箱と言う名に相応しい存在です。ひとたび存在が明るみに出れば、戦争と言う厄災の火種になりますからね」
「……ならば、尚更これの存在を公にするわけには行かない、と言う事ですね」
「えぇ」
そして2人は、人類の希望にも絶望にもなり得る箱を見つめるのだった。
一方その頃、水月は他のメンバーと別れて基地内を探索しながら、状況確認を行っていた。とは言え、ゼアによる管理がしっかりしていたのか目立った損傷どころか汚れた場所すら無い現状だった。
そして水月が見て回った先では、倉庫の中に『四つ足の戦車』だったり『バイクサイズのホバーバイク』があったり、更には装備生産用の『多次元プリンターザット』まであったりした。そして見る物全てが驚異的過ぎてコスモスの技術レベルの高さに何度もため息が出た。
「ホント、びっくりするくらい色々あるわねここ…」
戸惑いながらも足を進めていた水月。しかしふと、彼女が視線を上げると……。
「ここって、教会?」
目の前に教会の大聖堂のような建物があった。周囲のSF的な空間とはどこかミスマッチな教会に、水月は興味を引かれて中へと入っていった。
そして中に進むと、降り注ぐ光が天井のステンドグラスを通って形を為し、大聖堂の真ん中に『紋章』のような物を描いていた。
「これって……」
『それは、モスラの紋章です』
ポツリと水月が呟くと、どこからともなくゼアの声が聞こえる。
「うわっ!?びっくりしたっ!」
突然話しかけられ驚く水月。
「……って、モスラって何?」
やがて驚いたのも束の間。水月はゼアに向かって呼びかけた。
『はい。モスラとは、かつて存在したコスモスの文明が女神として崇めていた存在です。今貴方様の前にある紋章は、そのモスラを表す物です』
「モスラかぁ」
そう言って大聖堂の中を見回す水月。として彼女は大聖堂の奥にある巨大な蝶のような銅像を見つけた。
「ねぇ、もしかしてモスラってあの蝶の事」
『はい。ですが正確には、モスラは蝶ではなく蛾に近い存在です』
「え?そうなの?」
ゼアの答えを聞き、驚きながらも水月はモスラの像を見上げていた。と、その時。
『こちらヴァルキリー1。各員聞こえるか?』
みちるから基地内に居るメンバーに通信が届いた。
『博士が轟天号から出てきた。各自一旦集合しろ。場所は轟天号の前だ』
「『『『了解』』』」
彼女達はすぐに返事をして、水月も踵を返して大聖堂を後にしようとした。
その時。
『キュアァァァァァァッ………』
「え?」
彼女は、『何かの甲高い咆哮』が聞こえた気がして足を止めた。振り返って周囲を見回すながらも耳を澄ますが、再びその咆哮が聞こえる事は無かった。
「……気のせい?」
水月はそう言うと、足早に大聖堂を後にした。
だが、それは気のせいではなかった。
インファント島の奥にある白い繭の中で、緑色の光が胎動するように規則的に明滅する。
そして、それに呼応するようにその隣にある黒い繭の中でも、紫色の光が明滅する。
ゴジラ、キングギドラとならび、神や女神とまで称される事になる新たな怪獣の目覚めは近い。
第9話 END
今回出てきた『ゼア』は仮面ライダーゼロワンの人工知能の名前です。
あと、声というかゼアのCVは同作のメインヒロイン『イズ』の声と思って頂ければ大丈夫です。
また、今回登場した轟天号は『ゴジラFINAL WARS』に登場した轟天号です。
感想や評価、お待ちしています。