【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

102 / 192
第101話 だべりだべり

 俺たちが訪れたのは海の近くにある広い料亭。なんでも頼むメニューによっては自分で焼いたりできるらしく、カツオをステーキみたいに焼けると聞いてよだれをたらし、日葵に怒られたのはいい思い出だ。ちなみによだれをたらしたのは光莉。

 

「さて、何食べようかな」

「千里。お前その状態でなんか食えんの?」

「食べる時になったら戻ってるよ」

 

 聖さんの制裁を受け、顔をパンパンに腫らした千里を気に掛けるが、それもそうだな。千里は死んでも死なないし殺されても死なないし、怪我をしてもすぐに治る。事故ったら普通にそのままだけど、制裁とかそういう系のやつはすぐに治るのがお約束だ。

 

 座り順は長いテーブルの奥に千里、俺、薫、ゆりちゃん。それぞれ対面に聖さん、日葵、光莉、春乃。正面に日葵がいることでド緊張しそうだが、隣に千里と薫の安心サンドイッチがあるからまだ大丈夫。ふーふー。落ち着け俺。食事マナーは大丈夫な方だから、それで幻滅されることはない。むしろ食事マナーごときで幻滅されるなら俺はとっくに幻滅されてる。

 

「兄貴、何食べる? くらい聞きなよ」

「おぉ、そうか。千里、何食べる?」

「それを素でやってるから勘違いされるんだよ」

「なにが?」

 

 俺の胸の少し手前くらいまで既に治っている顔を寄せて、「おいしそうだね」とにこっと笑って俺を見る千里。おいおい。可愛すぎて可愛いという概念が塗り替えられそうなくらい可愛い。お前男とか嘘つくなよ。その洗練されたメスの動きを自然と出せるなんてもう男って名乗れねぇよ。

 ちら、と対面を見る。日葵はメニューを見て目を輝かせ、光莉はそんな日葵を見てよだれを滴らせ、春乃は光莉が何かやらかさないか注意深く見守っている。聖さんはうふふと微笑ましそうに見ている。なんか、あれだな。おっとりしたお母さんとしっかりしたお母さんに挟まれた娘二人みたいだな。片方の娘がとんでもないけど。

 

「うんんん。ぜんぶおいしそうで悩む……」

「気になるものそれぞれが頼んでわけっこすればいいんじゃない?」

「光莉にしてはええこと言うやん」

「そいつ、名案考え付いたみたいな顔してるけど日葵が食べたものを食べたいだけだぞ」

「は? 私は日葵のよだれを啜りたいの。勘違いしないでくれる?」

「お前年下の女の子の前でエグイ下ネタぶつけてくんなよ……」

「ゆりちゃんはめちゃくちゃ頷いてくれてるわ」

「あの子はかなりおかしいから別だ別」

 

 ゆりちゃんだったら例え腕毛でも美男美女のものなら喜んで食べるだろう。美男美女を神格化してるところもあるし、ただよだれは恐れ多いのか、「私なんかがいいのかな……」と薫に真剣な相談を持ち掛けている。薫は「そもそも啜れるわけないじゃん」とメニューを見ながら華麗に突っぱねていた。俺の妹がクール可愛い。ゆりちゃんも「んっ、そうだよねっ!」と顔を赤くしてにこにこしていた。ヤバいってあの子。

 

「恭弥は何にするか決めたの?」

「俺はカツオを焼きたい。やーきーたーいー!」

「私もやーきーたーいー!」

「ははは。クズゴミが駄々こねてると面白いね」

「光莉。こいつを面白い形に変えてやろう」

「御意」

「待ってくれ! もうすでに男なのに女の子みたいっていう面白さがあるじゃないか!」

「プライドかなぐり捨ててまで助かりたいんやな……」

 

 あと面白くないぞ。面白くないレベルで可愛いから。中身は面白いんだけども。

 

 さて、こうして遊んでいるといつまで経ってもご飯が食べられないのでそろそろ真面目に決めようと思う。ふざけすぎると怒られちゃうし。ふざけるときは節度を守ってふざけよう。

 

 店員さんを呼んで注文する。俺と千里はカツオのステーキ。どうやら千里は俺とどちらがいい焼き加減ができるか勝負したいらしい。ふふふ、いいだろう。男同士の勝負……かと思いきや光莉も同じものを頼んだ。羨ましくなったらしい。可愛いやつめ。

 聖さんはお刺身の定食。春乃は鯛だしのにごりそばと鯛めしのセット。薫とゆりちゃんは同じ海鮮丼。かわいい。

 そして日葵は悩みに悩んだ末、うにといくらのあいもり丼にした。「高いけど、ごめん!」と言った日葵が可愛かった。どうせ親の金だしいいのよ。むしろもっと食ってくれ。

 

「ふむふむ。値段的には日葵が一番高いわね」

「うぅ……だ、だってこういう時しか食べられないから」

「父さんも金使ってくれた方が嬉しいだろうから、むしろじゃんじゃん食べてくれ」

「え? 端から端まで?」

「食えるならいいぞ」

「多分いけるわよ」

「強い星の戦士かよ……」

 

 光莉はよく食べそうよく食べそうとは思っていたが、メニューの端から端まで食べられる強靭な胃袋の持ち主だとは思わなかった。いつもいっぱい食べてるからそんなにおっぱい大きいんだなぁ……。

 

「私、何か申し訳ないです。こんな美男美女に囲まれて、おいしいもの食べていいところに泊まれるなんて……え? もしかして私余命宣告されてます?」

「縁起でもないこと言わないで」

「やーん薫ちゃんすきー!!」

「春乃。私も今から薫ちゃんに抱き着いてくるけど見逃してね」

「私は別にええけど、日葵と恭弥くんが許さんと思うで」

「知ってる。肩が万力で挟まれてるのかと思って見てみたら日葵の手だったから」

「薫ちゃんの教育に悪いからだめです」

 

 光莉が薫の教育に悪いなら、俺と一緒の家で育つのはかなり教育に悪いことになるが、そのあたりどう思ってるんだろうか。俺は家族だからいいとか? へへ、照れるぜ。

 ていうか、日葵ってちゃんと光莉のことを危ない人だと認識してるんだな。普段ぽやぽやしててなんでも許してくれそうだから、ただの親友くらいに思ってるのかと思ってた。日葵がちゃんとした目を持ってて俺は嬉しいよ。

 

「ゆりちゃん結構平気な感じ? さっきから気絶することあらへんけど」

「はいぃぃいいい。まだ皆さんに名前を呼んでいただくのは慣れていませんが……あまり見ないようにすればなんとか!」

「ふーん」

「アッ」

「春乃さん!」

 

 春乃がゆりちゃんの顎に指を添えて自分の方を向かせ、悪そうに微笑んだ。超絶イケメンスマイルを正面から受けたゆりちゃんは顔を一瞬で真っ赤にし、薫にしな垂れかかる。あんなのされたら誰でもあぁなるって。春乃は自分のイケメンを理解しすぎだろ。あれで可愛いんだから最強すぎる。

 

「もう、ゆりをあんまりからかわないでください」

「にゃはは。かわええからついやってまうねんな。ごめんな?」

「よし」

「お前も可愛いけどやってくれないぞ」

「え……岸さんにやられて薫ちゃんに覆いかぶさろうと思ってたのに」

「幸せ二連撃受けようとしてんじゃないわよ」

「うふふ。私がやってあげましょうか? 千里」

「あ、すみません」

 

 聖さんに頼んだら顎に指を添えるんじゃなくて、顎にパンチを喰らわせて脳を揺らし、本気で気絶させにくることだろう。聖さんの前じゃ千里も思い切りはっちゃけられな……はっちゃけてるな。いつもより制裁が強いってだけで、それ以外はいつもと変わってない。こいつマジで我慢覚えた方がいいだろ。いつか死ぬぞ。制裁で。

 

「そういえば恭弥。ご飯食べた後はどこに行くの?」

「この近くに挙式が体験できるところがあってな。さっき予約した」

「きょ、きょきょきょきょきょきょ挙式!!!??」

「どうせ千里にウエディングドレス着せる気でしょ。期待してないわよ」

「期待ぃ? 光莉は何を期待してたん?」

「私が新郎で日葵が新婦になることを期待してたに決まってるじゃない」

「ブレねぇな……」

 

 一瞬光莉がウエディングドレス着て俺の隣歩きたいのかと勘違いしちゃったじゃねぇか。自意識過剰男が死ね。自意識過剰の男がこの世で一番恥ずかしいからな。あーやだやだ。一瞬でも想像してしまった自分を殺したい。ていうか死ね。

 

 ふぅ。こういう時は千里にウエディングドレスを脳内で着せて落ち着こう。目いっぱい笑ってやる……あれ、似合いすぎて全然笑えない。むしろ見惚れる。ウエディングドレス着た千里に「へへ。結婚……しちゃったね」って首傾げながら言われたら俺は可愛すぎて抱きしめてキスする自信しかない。ゴールインしたとしても何の後悔もない。嘘。薫から千里を取るのはだめだ。

 

「千里ちゃんがウエディングドレスなら、私がタキシードにしようかな」

「薫はすらっとしてるから似合うだろうな。でもせっかくだからウエディングドレス着て、千里の隣に立たせてもらえよ。未来の予行演習だと思ってさ」

「兄貴……」

「ウエディングドレスなんて着る機会そうそうないんだしよ。どうせなら好きな人の隣に立ちたいだろ?」

「恭弥って、やっぱりいいお兄ちゃんだね」

「こういう時だけ薫ちゃんが羨ましくなるわ」

「金あるし顔ええし優しいしな」

「一番最初に金を持ってくるのがリアルすぎる」

 

 小さく聞こえた薫の「ありがとう」に笑って頷いて、ぽんぽんと頭を撫でた。

 

 触らないでって言われた。なんで???

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。