【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:とりがら016

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第103話 脳がやられた

「鏡を見たら死ぬほど美少女がいたんだけど、それは僕だったんだ」

「知ってるぞ」

 

 純白の、肩と背中を惜しげなくさらした綺麗なドレスに身を包んだ千里。顔には化粧も施されており、この後タキシード着る時も化粧してるんだろうかと思うと面白くてたまらないが、今は言わないでおいてやろうと思う。

 男性職員が一斉に目を逸らして、性癖の歪みを抑えようとしているのが更に面白い。いや、わかるぜ。こんなの見たら性癖歪んじゃうよな。メガネも外してるし、可愛いお目目がモロに見える。いつもメガネで軽減されている可愛さが全開で死ぬほど可愛い。

 

 しかし俺は千里の親友。伊達にいつも隣でメスを見てきていない。普通の男とは違い、千里に脳をやられるなんてことはなく、いつも通り振舞うことができる。

 

「あ、あの、恭弥? なんでお姫様抱っこを……」

「あぶねぇから黙ってろ」

「あ、はい……」

 

 ちなみに俺もタキシードに身を包み、女性職員から「ひぇえええええ」と言ってもらっている。俺顔とスタイルいいからな。そんじょそこらのモデルにも負けないレベルだと自負している。

 そしてそんな俺が千里を抱き上げた瞬間、仕事中なのに女性職員が一斉にスマホを取り出して俺たちをカメラに収めていく。男性職員はまだ目を逸らしているっていうのに、強い人たちだ。

 

「さ、いくぞ」

「うん」

 

 大きめの扉を抜けて、外に出る。女性陣はまだ準備ができていない……かと思いきや、タキシードを着た光莉と春乃がいた。おい、春乃が激烈に似合ってるんだが? 俺確実に負けてるんだが? どう責任取ってくれんだよ。春乃の方がカッコいいじゃん。女性職員がきゃーきゃーいいながら春乃取り囲んでるじゃん。

 

「ふぅ。逃げてきたわ」

「お前相手にされてなかったもんな。チビで胸がデカいだけの背伸びした女の子とびっくりするくらいのイケメンなら、そりゃ後者とるわ」

「なによあれ。私がうきうきして日葵と写真撮るんだー! ってこれ着たのに、春乃が悪ノリしてきたのよ。で、あれってわけ。こんな悲しいことある? しかもウエディングドレス着たとしてもあんたが抱いてる兵器の方が確実に可愛いし。八方ふさがりじゃない。めちゃくちゃあほくさいわほんと」

「……このままだと僕を三人が取り合う構図になってしまう」

「お前は俺のだ。取り合いなんて起きねぇよ」

「おいおい。あっちがイケメンかと思ったらこっちはピンクかよ。やってらんねぇや」

 

 口調を崩した光莉が小屋の方に戻っていってしまった。似合ってないこともなかったのに、もったいない。日葵と新郎新婦姿で写真撮るなんて今日しか無理だろうに。まぁあいつも新郎の頂と新婦の頂を見たらバカらしくなってしまったんだろう。

 このまま二人でゆっくりしていても仕方ないので、囲まれている春乃のところに行く。春乃を囲んでいた女性職員は俺たちを見て音が聞こえるくらい一斉に動き、噴水の縁に腰を掛け、脚を組んでいる春乃までの道が開いた。イケメンがすぎる。もしかしてイケメンって春乃の誕生とともに生まれた言葉?

 

「わ、千里めっちゃかわええやん! 予想の数倍上やわ」

「な。メガネとって化粧してるからそりゃ元からメスなのにもっとメスになるとは思うけど、ここまでになるかね。うっかりお姫様抱っこしちゃった」

「僕も心までメスになりかけた。恭弥、下ろしてくれ」

「いいぞ。すみません、ベッドってここら辺にあります?」

「助けて岸さん! 恭弥が初夜を共に過ごそうとしてる!」

「おめでとう」

「助けてって言ってるだろ!!!!!」

 

 華奢で力のない千里が暴れたところで痛くもかゆくもない。ただ柔らかい体が腕の中で暴れるだけだ。ははは。お前ほんとに男か? 俺があの日見たちんちんは幻だったんじゃないのか? まぼちんじゃなかったのか? まぼろちんじゃなかったのか?うふふ。

 

「はーい、こっち見て!」

「ん?」

「え?」

 

 くだらない、いや、スーパーおもしろいギャグを脳内で浮かべてくすくす笑っていると、突然声をかけられた。声の方を向きながら、俺と千里は『多分写真撮られるな』と考えつつ、どうせならノリノリで撮られようとイケメンスマイルを浮かべ、千里は女の子になり切って華が咲いたような笑顔。振り落とされないように俺に腕を回しているのがポイント高い。

 そしてフラッシュがたかれ、見るからに高級そうなカメラを構えている男の人がサムズアップ。俺たちも一礼してから春乃の方に向き直ると、春乃がなにやら呆れた顔で俺たちを見ていた。

 

「二人とも、あの人が誰か知ってるん?」

「いや、知らねぇ」

「僕たちがあまりにも綺麗すぎて撮りたかっただけじゃないの?」

「簡単に言うと雑誌に載るような写真を撮る人やって。流石に許可せんかったら載せるようなことはないけど、二人ともちゃんと断りや?」

「マジか。あとでちゃんと断っとこうぜ」

「そうだね。うっかり芸能界デビューしちゃっても困るし」

「なくはないからツッコみづらいな……」

 

 俺はイケメンでスタイルよくて、千里は人類の神秘だからな。男なのに完全なメス。これで一般人やってるなんて信じられない。一般人で腐らせるのはもったいない。芸能関係の人が千里のことを知ったら絶対に芸能界デビューさせることだろう。そうなったら遊ぶ時間が減るからなんとしてでも阻止しないと。

 

「てか、千里普段めっちゃメスいじり気にすんのに結構ノリノリやな」

「さっき恭弥が一万円くれるって言ったから、ノリノリじゃないとくれない可能性がある」

「金とプライドで金を選ぶ男ってポイント低いで」

「岸さんからのポイント低くてもいいもーん。僕には薫ちゃんがいるもーん」

「薫も金とプライドで金をとるような男は嫌だって言ってたぞ」

「恭弥。今すぐ着替えてくるから下ろしてくれ」

「いやだけど」

 

 おいおい暴れるな暴れるな。柔らかくていい匂いするだけなんだから。暴れたところでメスだってことがなおさらわかるだけだぞ。あと俺がお前と結婚したくなるだけだぞ。だから本気でやめてくれ。ここでお前と挙式あげるなんてことになったらとんでもない地獄が待っている気がしてならないんだ。

 

「それにしても日葵ら遅いなぁ。なんかあったんかな?」

「光莉も行ったっきり戻ってこないしな」

「さては何かあったのかも。恭弥。見に行くとしよう」

「ほんまのメスにしたろか?」

「す、すみません……ゆるして」

 

 千里の手をからめとり、顎クイして妖しく微笑んだ春乃に、千里はぷるぷる震えながら首を全力で横に振った。本気でメスにされると直感でわかってしまったからだろう。さっきプライドどうこうの話して千里が男を取り戻してなかったら、多分メスにされていた。メスになったら本気で求婚しちゃうからやめてくれ。あと千里に近いってことは俺にも近くなるから離れて欲しい。綺麗すぎて困る。

 

「あかん。千里が可愛すぎて本気で襲うとこやった。隔離しといた方がええでそれ」

「俺も薄々そう感じてたところだったんだよ。俺たちは慣れてるからまだ平気だけど、男の職員さん千里を直視できてなかったし」

「そら無理やて。生物兵器やもん。なんやろ、この、内側から野生を呼び起こされるような感覚? 千里見てたらガーって熱くなってくんねんな」

「恭弥。僕怖くなってきたんだけど」

「大丈夫。お前は俺が守る」

「ちなみに恭弥くんも熱にやられてるで」

「恭弥!!!!!???」

 

 そんなことはないって。千里がものすごく魅力的に見えるだけで、千里をどうにかしようなんて気持ちは100%ある。さて、どこでどうしてやろうか。

 

「恭弥、正気に戻って! 君がえっちしたいのは僕とじゃないはずだ!!」

「黙れ」

「あ……」

「黙るな千里!! メスなってもうてるぞ!!」

「はっ、危なっ! 普通にきゅんってしてどうするんだ僕!!」

「くっ、今薫ちゃん呼んでくるから! それまで耐えて!」

「待って! この状態の恭弥と二人きりにしないで!」

「ごめん! おもろそうやから行くわ!」

「おい、今もしかしておもろそうやから行くわ、って言った人ですか?」

 

 春乃が笑いをこらえながら走り去っていく。千里は怒りに顔を歪ませながら俺の胸に手を当てて距離をとるように押してくるが、ただただ可愛いだけ。お前そんなことすると俺が暴走しちゃうからやめろ。大人しくしてくれるだけでいいんだ。それだけでお前から放たれる強烈なフェロモンに対抗できる。はず。

 

「ち、千里。大丈夫だ。今なんとか落ち着いてる。そのまま何もしないでくれ。じっと固まってるだけでなんとかもとに戻れそうなんだ」

「あ、恭弥!」

「嬉しそうに笑うんじゃねぇ! 『いつもの恭弥だぁ!』じゃねぇんだよテメェかわいさ自覚しろクソメスが!!」

「喜んだだけでこんなに言われる……?」

 

 腕の中の可愛いやつをどうしてくれようか。いっそ噴水に投げ込んだら……だめだ。濡れて余計いやらしくなる未来が見えた。こいつのポテンシャルどうなってんだよ。どう転んでもいやらしくなる未来しか見えない。

 かくなる上は、俺の目玉を抉り取るしかない。嗅覚が残っていると千里の匂いが入ってくるから鼻も潰して、千里の声が聞こえないように聴覚も潰そう。

 

「千里。俺の目玉を抉り取ってくれないか」

「僕が目玉を欲しがってるように見えたの?」

「じゃなくて、目玉があるからお前が見えるんだ。だったらなくせばいい」

「なるほどね。君は気が動転してるんだ。一旦落ち着こう」

「お前のせいで落ち着けねぇんだよ!!」

「そもそも君が僕を抱くからだろ!!」

「仕方ねぇだろお前が可愛かったんだから!」

「正直嬉しくないこともないけど、いきなり抱くのはおかしいだろ! それもあんな乱暴に、反論も聞かずに黙れって言ってきてさ!!」

「はぁ!!? 口で塞いでほしかっただと!? お前がそんなこと言うからこんなことになってんだろうが!」

「誰が言うかそんなこと!! とにかく僕を離してくれ! これ以上君といると変なことされそうで」

 

 口論の最中、俺と千里を同時に叩く手。感触で光莉だとわかり、「どうした?」と聞くとどこかを指した。

 その先を見る。日葵がいた。めちゃくちゃ綺麗だけど、なんかめっちゃ気まずそうな顔してる。

 

「君が僕を抱くとか、仕方ねぇだろとか、全部聞こえてたわよ」

「あぁ、そうですか……」

「日葵、めちゃくちゃ恥ずかしがっててね。恭弥がなんて言ってくれるかなぁとか、変なところないかなぁとか」

「……」

「……」

「……ほら、私も付き合ってあげるから。誤解解きに行きましょ」

「愛してると言わせてくれ」

「また別の機会にね」


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