【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第116話 拉致

 朝起きた。隣を見た。千里がいた。同じベッドの中に千里がいた。

 

「可愛い」

 

 可愛かった。

 

 いやいや、待て待て。千里が隣にいたことが衝撃的すぎたことと千里が可愛すぎたことが重なって言語能力が著しく衰退していた。なんでこんな状況になってるんだ? とりあえず布団を上げて自分の下半身を見てみるが、脱いでないしちゃんと服を着ている。なんかカピついてるわけでもない。なんだカピついてるって初めて言ったわ俺。

 冷静になれ。まずなんで千里が隣にいるか、考えられる可能性はなんだ?

 

 一つ。俺と千里がおセックスをしたから。これはない。さっき俺が自分で下半身を見て証明した。俺と千里がおセックスをしていたら、俺は絶対全裸で千里を抱きながら寝てるはずだ。今まで我慢してきた分を一気に発散するに違いないからな。

 

 二つ。千里が寝ぼけて俺のベッドに入ってきた。これはありそう。昨日俺の方が早く寝たし、千里が夜更かしして寝ぼけたまま俺のベッドに入ってきた可能性が高い。なんだ千里、そんなに俺と寝たかったのか? ふふ、可愛いやつめ。

 

 三つ。俺が寝ぼけて千里のベッドに入った。これもない。確かにこれは俺が寝たベッドだし、ベッドの位置が入れ替わっていない限りありえない。

 

 つまり、千里のうっかりさんでこんな状況になったんだな。ふっ、証明完了だぜ。このままじゃ俺が偉すぎて官僚にでもなっちゃうんじゃないかな???

 

「ん……」

「おはよう。起きたか?」

「おあよー」

 

 ぽやぽやしながら舌足らずに挨拶した千里に微笑んで、少しぼさついている髪を手櫛で梳いてやる。柔らかいなこいつの髪。撫でさせてくれって土下座したくなるくらい手触りいいじゃん。もしここに羅生門のババアがいたら確実に千里の髪をウィッグにしようと襲い掛かってたな。あれってそんな話だったっけ?

 

「……あれ? なんで恭弥が隣にいるの?」

「はは。お前が寝ぼけて俺のベッドに入ってきたんだろ?」

「???」

 

 千里が困惑したまま自分の下半身を確認して、ひとまず安心したように息を吐いた。起きてからやることがほとんど一致しているのは親友として誇らしい。同時に同じことを心配していることに危機感を覚える。だってお互いその可能性があるって思ってるってことだからな。あの三人も俺が千里を選んだらなんとなく許してくれそうだけど、薫が泣いちゃう。それはだめ!

 

「え、だってきのう、恭弥が僕のベッドに寝ぼけて入ってきたから、僕が元々恭弥が寝てたベッドに移動したんだよ」

「そんなまさか。俺寝相そんなに悪くねぇぞ?」

「息荒かったから、多分いやらしい夢見てたんだと思う」

「そりゃ千里の方行くわ」

 

 千里がどたどたと音を立ててベッドから転げ落ち、ものすごい速さで這いつくばりながら俺から距離をとった。そして自分のスマホを掴むと、一目散に電話をかける。

 

「助けて朝日さん! 恭弥に犯される!」

『日葵も連れて行くわね』

「混ざる気か畜生めが! 二度と僕に近寄るな!」

『ちなみにもうドアの前にいるわ』

 

 そして、ドアをドンドン叩く音が聞こえる。光莉のことだから千里の早とちりだってわかってると思うけど、もしかしたらこの機に乗じて日葵を交えていやらしいことをしようと考えているかもしれない。あいつは油断ならない変態だから、用心してかからねぇと。

 ドアの前まで移動して、ドアスコープから外を見る。水着姿の日葵を掴んだ光莉がいた。

 

「なにしてんだテメェ!!」

「これなら開けてくれると思ったから」

「ついに性犯罪に手を染めやがったか! 早く中に入れ!」

「大声を出してあげてもいいのよ」

「おい千里。ストリップショーをお見せしろ」

「それで朝日さんが喜ぶわけないでしょ」

「どんちゃんどんちゃん!」

「見ろ。どんちゃん騒ぎするほど楽しみにしてる」

「あの、早く入れて……」

 

 光莉とともに天を仰ぎながら二人を部屋の中に入れる。何もやましいことは考えてないんだ。ただちょっとね。

 

 誰も見ていないかどうか部屋から少し顔を出して確認して、人影が見えないことにひとまず安心してドアを閉める。振り向くと、夏らしい装いの半袖短パンの光莉に、よく見れば紺色の、もう見た目がいやらしい下着みたいな感じの水着を持っている日葵。あと服を脱ぎ始めた千里。ストリップショーしなくていいよ。

 

「どういうことか説明してもらおうか」

「恭弥聞いて! 朝起きたらね、春乃が水着くれてね、わーって喜んでたらね、今までの水着と比較したいから一回着てみてって光莉に私が今着てる水着渡されてね、着替えた瞬間拉致されたの!!!」

「死刑囚の言い分も聞こうか」

「罪状決まるの早すぎでしょ。違うのよ。なんかね。えーっと、その、日葵の恥ずかしい姿が見たかったの」

「何も違うことがない。死刑」

「夏野さん。朝日さんに嫌いって言ってあげて」

「……! それは、嘘でも言えないかな」

「あんたたち。今から私と日葵がセックスするから出て行きなさい」

「お前が出て行けアホンダラ」

 

 アホンダラは俺の言うことを聞かず、千里を連れて「じゃあ出て行くわねー」と言った。あれ? 言うこと聞いてるじゃん。なんで千里連れてくのかがわかんないけど。流れるように千里の水着も持ってるし。何? 新手の泥棒? 三世代目の方?

 

「じゃ、日葵。せっかくならここで着替えさせてもらいなさいよ。あとで海で集合ね」

「え?」

「それじゃ」

「待って! もしかして今からいやらしい雰囲気なるってこと!?」

 

 とてつもなくデリカシーのないことを言いながら、千里は光莉に連れられて部屋から出て行った。

 ……もしかして光莉、日葵を俺と二人きりにさせようと無理やり? いやそんなはず、だって光莉にとってメリットなんか一切ないし、なんなら日葵に嫌われるリスクすらある。いや、日葵が人を嫌うことなんてほとんどないけどさ。

 

「……」

「……」

「も、戻るね? 光莉にはあとで言っとくから」

 

 俺と目を合わせて顔を赤くした日葵は、すぐに目を逸らしてドアの方へ向かった。

 

 その日葵の肩に手を置いて、俺の方を向かせて引き留める。日葵の素肌に触れた瞬間死ぬかと思うくらいの緊張が体を縛り付けてくるが、日葵に悟られないよう頬の内側を抉れるくらい強く噛んで正気を保ち、目を丸くする日葵に言い訳を始めた。

 

「や、あの、その。そのまま出るのはちょっと心配っつーか、水着姿で水着持ってホテルの廊下歩くって、変なやつに捕まったらどうすんだよ?」

「でもここで着替えるのもちょっと悪いかなって……」

「着替えるくらいなら別にいいって。海行くときは服貸すから、むしろ着替え終わるまで俺が出てくわ」

「え、一緒にいてほしい、な……」

 

 日葵を見ると、『思わず言ってしまった』という顔をした後、爆速で俺から顔を逸らして、ぴゅー、と音が聞こえてきそうな勢いで俺から見えないところまで離れていった。

 

「き、着替えるから! こっちこないでね!」

「お、おう」

 

 いつもはだらけている俺の胸の鼓動を鳴らす太鼓の達人が、まったく戦闘能力のない戦車の歌の譜面を演奏するくらいの勢いで働き始める。なんだあの可愛い生き物。真正面から照れ顔見せられる側の気持ちになってみろよ。いや、見せていただく側の気持ちになってみろよ。死ぬぞ軽く。可愛すぎて。俺が出てくわって言った瞬間しゅんとした表情で「一緒にいてほしい」って世界平和ここにありかよ。世界中に響くスピーカーがあればもう今この時点で戦争はこの世からなくなってたわ。

 

 心を落ち着かせるために深呼吸。日葵の残り香が鼻から入ってきた。自分で自分の頬を殴る。さっき抉るように噛んだ方の頬を殴ってしまい、痛みに悶絶。これくらいでいい。これくらいしないと俺は緊張と興奮でどうにかなりそうだ。もうどうにかなってるのか? 鏡を見る。うん、今日もカッコいい。

 

「もう、いいよー」

「おっけ」

 

 あくまで平静を保ちつつ、戦場に赴く武士の面持ちで一歩一歩歩いて行く。この先にいるのはこの世の頂点。この世の美。ぱっと見た感じいやらしい雰囲気の水着だったから、覚悟しなければならなぁあああああああああああああ。

 

 春乃とほとんどお揃いの、谷間とお腹と背中がぱっくり空いたレオタード型の水着。めっちゃくちゃ恥ずかしそうに体を隠している日葵が真っ赤。俺は変なことを言わないよう咄嗟に自分の膝を思い切り叩き、痛みで興奮を誤魔化した。日葵といると俺の体がもたない。

 

「……ねぇ、派手すぎない? これ……せっかくもらったから着たいけど、恥ずかしい……」

「超似合ってる。でも心配だな……絶対男どもに見られるじゃん」

「……恭弥は、私が他の男の人に見られるの、いや?」

「ん? めっちゃ嫌。今俺以外の世界中の男の目をどう潰してやろうかと考えてるところ」

「そっか」

 

 どうしてやろうか。まず手始めに千里からいくとして、父さんはあぁ見えて母さん一筋だから大丈夫。問題は海にいる俺たち以外の男だ。ただでさええちえちビームを放つ春乃と聖さんがいるのに、そこに単純な強さを持っている光莉と、清純さ満点なのにえっちな水着を着ている日葵まで合わさったら注目を集めて仕方がない。

 

 ……これは上着を着てもらうしかないな。だって見られるの嫌だし。

 

「俺の上着貸すから、これ着て行ってくれ」

「いいの?」

「俺が着て行ってほしいんだよ。もちろん似合ってないってわけじゃないぞ。むしろめっちゃ似合ってる」

「……ふふ。そっかそっか!」

 

 俺の上着を受け取った日葵は、それをぎゅっと抱きしめて嬉しそうにくるくる回りだした。なんで嬉しそうにしてるんだろう。あれ? 俺気が動転してて変なこと言っちゃった? 変なこと言ってないよな。念の為後で千里に確認しよう。あいつはいつも俺を肯定してくれるからきっと大丈夫だ。

 

 ……あれ? なんかさっきまでの俺の発言、日葵が好きみたいに聞こえね???

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