『ビリビリクイズのルール説明です! クイズが出題されてから30秒回答時間が与えられ、見事正解すれば1ポイント! 不正解ならビリビリが体を襲います!』
『早押しにしたら答えないチキン野郎が出てくるのでこの方式にしました!』
「この運営法律に違反してたりとかしねぇのか……?」
物々しい機械を取り付けられた俺を含めた参加者全員が不安そうな顔をしている。唯一不安そうにしていないのは俺に猛烈なアピールをしてきた金髪のオカマさんくらいだ。潜り抜けてきた修羅場の数が違うんだろう。ビリビリがきても全然効かなさそうな顔と体してるし。
ただ、いくらビリビリが効かなくても正解しないと意味がない。そして俺は頭を使う競技には自信がある。というか体を動かす競技も自信がある。向かうところ敵なしじゃね? 俺。
俺の勝ちは決まったな、と安心していると、俺の隣の回答席に座っている金髪のオカマさんがずっと俺を見ていることに気づく。目は合わせないようにしよう。目を合わせた瞬間俺の身にとんでもない不幸が訪れるに違いないし。
「あなた、結構やりそうね」
話しかけてきやがった。流石に話しかけてくれた人を無視していいなんて教育を受けてないから、オカマさんの方を見て小さく会釈する。
「アタシはロメリア。ただのオカマよ。よろしくね」
「氷室恭弥です。よろしくお願いします」
「恭弥ちゃんね。覚えたわ」
バチンと綺麗なウインクを決めるロメリアさんに微笑みを返し、正面に向き直る。ステージの下で俺を見ている四人から心配そうな目で見られていた。日葵と春乃はともかく、千里と光莉が心配そうな目で見てくるって相当だろ。大丈夫。なんか声色的にこのオカマさん、ロメリアさんいい人そうだし。
『それでは準備はよろしいでしょうか! いいですね! では第一問!』
『13枚の、大きさが均等なコインと天秤があります! そのうちの1枚だけ重さが違います! その1枚を見つけ出すのに、最低何回天秤を使えばいいでしょうか! 理由も含めてお答えください! では30秒! お手元のフリップにどうぞ!』
「こういうタイプのクイズ大会で論理クイズかよ」
考えながらフリップに書き出してそれを合計30秒でやれって? それならそんな書けなさそうな問題出すんじゃねぇよ理由も含めてってことは考えるの必須じゃん。でもこれ多分手を止めたら書ききれないじゃん。どうしようどうしよう!
まぁこれ結構有名な問題だし、そもそも知ってるから書けるんですけどね。
『はい30秒! 正解者は4番チームと5番チーム! 他はビリビリ!』
『スイッチィ!!! オン!!!!!!』
俺とロメリアさん以外の悲鳴がステージから響き渡る。大丈夫かよほんとに。もしかして何かしらの生贄が欲しいからこの場にいる参加者で用意しようとしてない? 気のせい? もしくはこの極限状態で最高のパフォーマンスを発揮できる天才を発掘しようとしてる? じゃあ俺とロメリアさん長い付き合いになりそうじゃん。
「あら、結構有名な問題だと思ったんだけど……」
「俺も小学生の時やりましたよこれ。結構解くのに時間かかった記憶あります」
「小学生だもの。仕方ないわ」
言葉の裏に『大人ならすぐわかって当然よね?』と込められている気がして、俺は苦笑するかと思いきや「大人ならすぐわかってほしいですね」と本音を言ってしまった。ステージの下で日葵が目を逸らしたのを見てすぐに失敗を悟ったが、日葵はまだ学生だしセーフセーフ。ていうか日葵なら何が何でもセーフ。日葵なら最終的に世界が許してくれる。
『では生きているうちに二問目に行きましょう! 二問目! この表をご覧ください!』
お兄さんが取り出したパネルには、『は=6 1 す=3 3 の=5 5 け=?』と書かれている。
『? に埋まるものは何でしょう! それでは30秒どうぞ!』
「恭弥ちゃん。もう書けたでしょうしお喋りしましょ」
「ロメリアさん。俺に天才同士の会話を仕掛けてきてどうするつもりです?」
『2 4』と書いたフリップを伏せて、ロメリアさんの方を見る。ロメリアさんは綺麗に頬杖をついてにこやかに俺の方を見ていた。カンニングってことでビリビリ流れねぇかな。
「ちょっとあなたに興味があって。可愛い女の子三人と可愛い男の子一人と一緒に参加する、カッコいいオトコノコ。興味が出ないオカマがいると思う?」
「俺はオカマの思考回路知らないんですけど……」
「釣れないわねェ」
『はい、30秒経ちましたー!』
『正解者は4番チームと5番チーム! 他のチームはビリビリが尾を引いて書けなかったようですね! ではビリビリどうぞ!」
ならやめてやれよ。フリップに書かれてるミミズみたいな線が見えないのか? あれ答えわかってたけど書けなかったタイプのあれだろ。可哀そうに。一問目不正解だからそんなことになるんだよバーカ。
はっ! 俺は一体なにを……?
『ちなみに、次のクイズが始まる前に回答権を放棄すればビリビリは回避できます! はい、4番チームと5番チーム以外放棄ですね!』
『しぶといチームが2つありますね! では第三問!』
「しぶといって言っちゃってんじゃん」
マジで殺すことが目的……いや、そもそも待てよ。5人チーム参加でペアチケットが用意されていて、この理不尽レベルのビリビリ。もしや優勝者を出さないようにしてる? 優勝者を出さないようにして、司会の二人が余ったペアチケットをゲットしようとしてる?
『あなたは30メートルもある穴に落ちてしまいました! そこから出ようとしますが、1時間に3メートル上ることができ、しかしその後すぐに2メートル落ちてしまいます。あなたは何時間後に上り切ることができるでしょう!』
『28時間後』と書いてフリップを伏せる。そもそも30メートルある穴に落ちたら死ぬだろと思ったが、落ちて上がることができてるってことは落ちても無事な状態で上がれる環境と道具があるってことだろう。危ない危ない。変な屁理屈で場を変な空気にするところだった。
「問題が簡単になったわね」
「適当にネットから拾ってきたんじゃないですか?」
「結構聞いたことあるようなものばかりだものねェ。もうちょっと楽しいクイズだと思ってたのに」
『はい30秒! 当然のように正解! ムカつく!』
『ほんとはあと二問くらいあったのですが、このままではポイントが開きすぎるため他チームにも3ポイント進呈して第一競技を終わりたいと思います!』
「いい加減にしろよクサレ運営コラ」
「まぁまぁ落ち着いて恭弥ちゃん。怒ってもいいことないわ」
立ち上がって運営に文句を言ってやろうとした瞬間、背後からロメリアさんにねっちょり羽交い絞めにされた。がっしりした肉体が俺に張り付いてくるのを感じ、寒気とともに関節を外しながらロメリアさんの拘束から抜け出した。
ロメリアさんは「ウブな子ね」と微笑んでいる。初心だけどそういうことじゃねぇんだよ。ただ身の危険を感じただけだよ。
「ふふ。ここから先も楽しみましょうね。それじゃ」
それだけ言って、ロメリアさんは手をひらひら振って去っていった。なんだったんだあの人……。
色々もやもやしたままみんなのところに戻ると、単純に喜んでくれている日葵、笑って出迎えてくれた春乃、面白くなさそうに白けている千里と光莉がいた。
「恭弥すごいすごい! やっぱり頭いいんだね!」
「結構知ってる問題ばっかだったからな。まぁ??? 知ってなくても??? 解けてたと思うけど???」
「素直に頷いときゃええのに」
「素直っちゃ素直だけどね。それにしても面白くない。恭弥がビリビリして死ぬのを期待してたのに」
「ほんとよね。期待を裏切られてショックだわ」
「お前らは俺が死ぬのを期待してたのか? そっちのがショックだわ」
俺とロメリアさん以外死にかけてるけど。最後運営の標的が俺とロメリアさんになったからビリビリ喰らわなくて済んだけど、あれ以上続けてたらマジで危なかった気がする。あのビリビリ、コメディの住人じゃなきゃ耐えられない出力だっただろ。俺か光莉か千里にしか耐えられない。
「というか何よあの運営。2チームがとびぬけたら面白くないからっていうのはわかるけど、何も全チーム同じポイントにしなくてもいいじゃない」
「でも次は絶対勝てるし、その次も絶対勝てるし、問題ねぇだろ」
「またポイント調整入らんかったらええけどなぁ」
「流石にそんなにやっちゃったらクレームの嵐だろうから、ポイント調整は最初だけじゃない?」
どうかなぁ。あの運営かなりのバカっぽいし、平気で『なんか気に入らないので今回の優勝者はなしとします!』って言いそうだ。もうそこまできたら面白いから許してあげようと思う。正直ペアチケットは使い道に困るし、それでもいい気がしてるしな。楽しむ場を設けてくれただけありがたいって思うことにしよう。
「次の競技は殺し合いだっけ?」
「えぇ。待っててね日葵。かならず敵の首を献上するわ」
「武士か。日葵好きすぎて武士の忠誠の誓い方してるやん」
「喜ぶかと思って……」
「どういう見積もりしてんだよ」
首で喜ぶ現役女子高生がこの世のどこに存在するんだ? 流石の俺でも日葵がそれで喜んだら引く……うん、引く……かも、しれない。断定はできない。もしかしたら「え!? 首で喜んでくれるの!?」って狩りを始めるかもしれない。
日葵が普通の子でよかった……。
『さて、少し休憩を挟んで第二競技へ参りましょう!』
『できればみなさん4番チームと5番チームを狙ってくださいね!』
「光莉」
「潰す」
濡れた。