更に短めでお茶を濁しに濁します。
「お前女の子みたいだな。ウケる」
「は?」
僕の高校生活は最悪な形でスタートした。自己紹介で「氷室恭弥です。座右の銘は勇往邁進。好きな四字熟語は縦横無尽。好きなことわざは井の中の蛙大海を知らず。一花咲かすか基礎から学ぶか急がば回るか泣かすか笑かすか。今韻踏みました。あ、間違えました。妹が大切です。よろしくお願いします」とどこから間違えていたのかもわからないし意味不明すぎてもはや名前すら間違えてるんじゃないかって疑わしくなる氷室くん(暫定)のデリカシーのない一言によって。
確かに僕は女顔だ。とてつもなく女顔だ。特殊能力を持った人じゃ無ければ、私服を着た僕を見れば100%女の子だって間違えるくらい女顔だ。だからって初対面なのに正面切って「女の子みたいだな。ウケる」はなくない? こんな女顔コンプレックスに決まってるだろ。
「いや、悪い意味じゃないんだ。ただ面白いなと思って」
「やってやろうか」
「え? いいんですか?」
「君とは二度と口を利かない」
やってやろうかをセックスと勘違いするやつとは話もしたくない。自己紹介がまともじゃなかったから嫌な予感はしてたんだ。やっぱりまともじゃない。まともオブまともで可愛い夏野さんを見習うといい。爪の垢どころか体中舐めまわせばいいんだ。
「待て、言い方が悪かったのか? あなた様は女の子のようで大変おかしく思います? あんたは女の子みたいでめっちゃおもろいおもてます? 思わせてもろてます?」
「……」
「そうか。二度と口を利かないんだったな」
そうだ。だからどっかいけ。どっか……なんで机の上に乗ってるの? なんで僕に向かってM字開脚してるの?
「これならどうだ?」
「本当に義務教育終えたの? 人とのかかわりが絶望的に下手くそな自覚ある?」
「いや、俺ちゃんとした友だちいたことねぇからわかんねぇんだよ」
「だろうね」
「は? だろうね? そんな失礼なこと言ってくるやつは友だちになってもらうしかない」
「やだよ。僕じゃなくてもいいでしょ」
「いやだ!! 俺は織部と友だちになるんだい!!」
僕と友だちになりたいならどうかM字開脚をやめてほしい。君のせいでめちゃくちゃ注目されてるんだけど。元々女顔だから目立つのに、無駄に顔のいい氷室くん(暫定)が僕の目の前でM字開脚してるせいで余計注目が集まってる。
これ以上は耐えられない。僕は氷室くん(暫定)を置いて席を立った。
「とにかく、もう話しかけないでね」
「あ、おい待て、俺M字開脚してるから動けねぇんだよ!」
じゃあやめろや。
激カワマブマブプリティエンジェルを見つけた。私は今日から勝ち組だ!!
「こんにちは! 私は朝日光莉。あなたのお名前は?」
「わ。こんにちは! 夏野日葵って言います。よろしくね!」
夏野日葵。夏野日葵。夏野日葵。三回言ったら願い事が叶いそうなくらい尊くて可愛くて美しい名前だ。きっと偉い人に「夏野日葵です」って自己紹介したら「何!? 国民栄誉賞です!』と言って国民栄誉賞をもらえることだろう。
なんなのこの可愛い生き物? ほんとに同じ人間? いや天使。夏野さんは天使。だから私と同じ人間じゃない。いや、神? こんなに可愛い子が天使なんていう枠で収まるわけがない。こんにちは神様。私たちを作り出したのはあなただったんですね。
「ごめんね。可愛いなーって思ったから話しかけちゃった」
「可愛いなんてそんなそんな……。朝日さんの方が可愛いよ! 私も可愛いなーって思ってたし」
夏野さんから可愛いと言われた衝撃でその場に倒れこむ。視界の端に映ったイケメンが「わかるわかる」と頷いているのが気になるけど、「朝日さん!?」と慌てている夏野さんを安心させる方が先だ。首はね起きをして立ち上がり、「大丈夫よ!」と笑顔を見せる。これで安心してくれるだろう。
「恭弥みたい」
「恭弥?????????????」
今夏野さんの口から男の名前っぽいのが出なかったか? 気のせい? 私の気のせい? はっ、もしかしてあの「わかるわかる」って頷いてたイケメン? そうに違いない。光莉ちゃんレーダーがビビビビビビビ。光莉ちゃんレーダーは夏野さんに関することならなんでもわかるのである。
「や、ち、違うの! えと、その、今のは……聞かなかったことにしてください……」
「じゃあお友だちになりましょう! うふふ! 恋バナ楽しいね!」
「ひぃ」
今脅えた気がするけど気のせいよね???
めちゃみじかくてすみまセンター返し。