『さて、水鉄砲殺し合いもいよいよ決勝戦です!』
『これに勝った方がペアチケットを手にできます。4番チームはメンバーを一回戦からそのまま固定で、5番チームはイケメン以外メンバーを変え、イケメンとどう見ても女の子なのに実は男の子らしいけどまぁ可愛いから女の子でいいか! という結論になりそうなメスを加えました!』
「千里がすべてを諦めた顔してもうた……」
「言い返せねぇしな」
昼休憩が終わり、決勝戦。水鉄砲殺し合いなんていう物騒なネーミングへと姿を変え、ついにロメリアさんチームと戦う時がきた。ロメリアさん以外の二人は金髪と銀髪のオカマさん。金髪の方は赤いルージュをつけていて、銀髪の方は青いルージュをつけている。顔がめちゃくちゃ似てるから恐らく双子か兄弟かのどっちかだろう。ちなみにガタイはものすごくいい。
「あの人ら片手でバンバン重いライフル撃ってくるからなぁ」
「俺らにとってのピストルと一緒だぜあれ。どうするよ千里」
「今思ったんだけどさ。別に勝たなくてもよくない? どうせペアチケット貰えるんだしさ」
「はぁ。勝負事で負けてもええって考え方してるからメスやねん」
「あんまり言ってやるな。こいつはもう根っこからメスになっちまったんだよ」
「さぁ勝てる作戦を君たちに伝えよう」
光莉の次くらい、もしかしたら光莉よりも扱いやすいかもしれない。というか基本的に俺と千里と光莉は扱いやすい。ノリがいいというか、そうした方が面白いだろうなって言う方に絶対転がっていくから。もう自分の意志なんてないに等しい。光莉なんて日葵に言われるがまま行動するしな。
三人で身を寄せ合って千里の作戦を聞く。ふむふむ。なるほど。
「正面からやりあっても勝てねぇからって……」
「しょうがないでしょ。多分あの人たち本物の銃扱ったことありそうだし。どう見ても一般人じゃないもん」
「私と恭弥くんは運動できるいうても、光莉ほど規格外なわけちゃうしなぁ」
「あれは運動ってか戦闘力だしな」
実際、一回戦二回戦と光莉は近づいて撃つしかできなかったし。壁の後ろから覗き込んで狙い撃つみたいなことは一切できないはずだ。あいつバカだし。待ってる間に「しゃらくせぇな」とか言って進軍するに決まってる。気持ちはわかる。
対して、光莉と同じくとんでもない戦闘力を見せたロメリアさんは、徹底して狙い撃つ。他のオカマさんが縦横無尽に駆け回って相手チームをかき乱し、隙を見せた瞬間に撃ち殺すスタイルをとっていた。仕事人すぎてカッコよかった。それに比べてうちの光莉ときたら……。
日葵はいるだけで俺たちの活力になるからよし。ヒーラーみたいなもんだ。常時自動回復型の。
『それでは、お互い準備はよろしいでしょうか』
『泣いても笑っても喚いても漏らしても最後の試合です! よーい、始め!』
スタートの合図と同時に三人で動き出す。俺と日葵と光莉で組んでいた時とは違い、明確な目的を持った、統率の取れた動き。俺と春乃で千里を挟み、守るようにして移動していく。そして向こうの足音が聞こえた瞬間にハンドサインで方向を報告。徹底して向こうに場所をバレにくくしながらの移動。
まず、俺たちにとって厄介なのがロメリアさんの存在。多分あの人は離れたところからでも正確に相手の位置がわかる耳を持っている。じゃなきゃ遠くからの狙撃なんてできない。もしくは双子のオカマさんが戦い始めた瞬間に大体で相手の位置を把握しているかのどちらかだ。
どちらにせよ、相手に見つかる、位置を把握されるのは避けたい。
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
だからこそやる。俺が叫び声をあげると同時に春乃が跳躍して俺の肩に乗り、更に跳躍。そして空中から双子のオカマの片方を狙い撃ちして、その間に俺と千里でもう片方のオカマさんを狙いに行く。
「いやんっ! やだぁ!!」
「あはんっ! 油断しちゃったん!!」
千里の考えた作戦。それは『わざと死ぬほど位置をバラして意表をつき、春乃の運動神経に任せた狙撃前提の大博打』。もはや作戦ですらない。
俺が大声を出して壁の向こうから注目を集め、その瞬間に春乃が跳躍して目線を上へ外す。そこから運動神経任せの狙撃と意識が上へ行っている間に俺と千里でもう一人を挟んで撃ち抜く。声的に春乃はやってくれたんだろう。マジでおかしくねぇか? 空から索敵して撃ち抜くってのを一瞬でこなしたんだぞ。光莉に並ぶバケモンだろ。
俺が春乃の化け物加減に恐れおののいていたのも束の間。春乃の着地地点に戻ると、ゼッケンを濡らしている春乃がそこにいた。
「……ロメリアさん?」
「ロメリアさん」
「マジかよあの人……」
どうやら、空にいる春乃を狙い撃ちして見事当てたらしい。あの人絶対本物の銃使ったことあるって。いや、それを言ったら春乃も怪しくなっちゃうんだけど。
「とにかく、これで2対1だ。二人で動いて挟めばいくらロメリアさんが相手でも勝てるはず……」
「あら、楽しそうな話してるじゃない?」
ロメリアさんの声が聞こえた瞬間、千里に飛びついて回避行動。ロメリアさんの姿を探す前に行動しなければ、最悪どっちかがやられるかもしれない。「どこだ!?」なんてバカのやることだ。あの人相手ならその間に死ぬってマジで。
砂の上を転がってさっき俺たちがいた位置を見ると、砂に穴が空いていた。あれ、ロメリアさんが使ってるのって水鉄砲ですよね……?
「あたしをいいオトコが挟んでくれるなんて、とっても刺激的……。でもごめんなさい。あたし、挟まれるより入れる方が好きなの」
「……千里、太陽をバックにしたロメリアさんが一瞬マジでカッコよく見えたのに、あの言動で全部恐怖に塗り替えられちまった」
「この世に直接的な表現してくるオカマより怖いものって存在するのかな……」
ロメリアさんは、白い板の上に乗っていた。一人でどうやって乗ったのかとか、ライフルを一丁ずつ右手と左手に持ってるの化け物すぎねぇかとか色々言いたいことはあるが、とにかく2対1なら勝てるなんてのは甘い考えだったってことだ。
「春乃ちゃんの狙撃、千里ちゃんの作戦、恭弥ちゃんの判断、全部欲しいわぁ……。ね、あなたたち全員あたしのところにこない?」
「狙撃ってやっぱあぶねぇことしてんじゃないですか」
「やだ。忘れて?」
腕が一瞬動いたのを見て射線を切れるところに移動する。移動しながら千里とアイコンタクト。どうする。あの化け物なら俺たちが構えた瞬間に撃ってくるだろ。春乃がやられたのが痛い。春乃なら構えながら避けて撃つくらいのことはできたはずなのに、いやまぁ俺もできると思うけど、撃ち合いに持ち込まれたら確実に負ける。俺は大人に片足を踏み入れた少年だからそれくらいわかる。
「さ、どっからでもかかってきなさい! あたしがあなたたちの心ごと撃ち抜いてあげる!」
隙がないから無理です。クソ、千里なんとか考えてくれ! このままじゃ俺たち風穴開けられちまうよ!
「恭弥、よく聞いて」
「どうした、いい作戦思いついたか!」
「僕たちが束になって朝日さんに立ちむかうところを想像してほしい」
「したぞ」
「勝てた?」
「無理だった」
「つまりそういうことさ」
千里が撃ち抜かれた。
「千里テメェ!! 諦めた上に俺を置いていきやがったな! 先に楽になってんじゃねぇよ! おい、千里!!」
「あとはあなただけよん」
真上から声が聞こえた瞬間、ピストルの栓を開けて真上に投げながら横っ飛び。転がって勢いを殺しながら白い壁の後ろに移動して、千里から一瞬で奪い取ったライフルを構えて白い壁からロメリアさんの方を覗き込む。
「こんにちは」
目の前にいたと脳が理解する前に引き金を引いて壁を蹴り、三角跳びして壁の上に乗ってそのまま壁から壁へと跳んで移動する。なるほど、こうやって乗ってたのか。案外できるもんですね。へへ。まぁ俺が天才だからなんですけど。
ちくしょう。運営の人がゼッケンは水に濡れたらスケスケになるって言うからちょっと期待してたのに。スケスケ春乃とスケスケ千里を堪能する暇もねぇじゃん。あ、違うんです。千里のスケスケを堪能するつもりはなかったんです。ただ今口がすべっただけです。
いつまでも壁の上にいると狙撃されて終わりなので、砂の上に降りる。今の砂の上に降りた音で位置は把握されただろうから、耳を澄まして音が聞こえた方にライフルを構える作業に入る。見えた瞬間ドカンだ。ぶち殺してやる。
「っぶね!?」
なんて息巻いていると上から水が飛んできた。俺の大体の位置を把握してちょうど当たるように空に向かって撃ったんだろう。とんでもねぇや。なんだあの人。引き金引く音聞こえてなかったら終わってた。
「で、きますよね!」
「あら、バレてた?」
跳んで避けた後、無我夢中で体を捻って無理やりロメリアさんがくるであろう方へライフルを向けると、運よく向けた方にロメリアさんが現れてお互いにライフルを突き付け合う状況になった。もっとも俺は砂の上に仰向けで寝転がっていて、ロメリアさんは俺を見下ろしている状態だからもう負けたようなもんだけど。
「ほんといい動きするわね。今すぐに欲しいくらい」
「俺ほとんど意識ありませんでしたよマジで。無我夢中で動いてたって感じです」
「恭弥ちゃん、一つの分野突き詰めたら頂点に立てるんじゃない? それくらい才能あ……?」
ロメリアさんがなんかべらべら喋っていたので、遠慮なくライフルを撃つと命中。ロメリアさんの肉体がスケスケになり、俺はここで初めてスケスケゼッケンをゆっくり見れた。
「……ここは、ゆっくり語り合うところじゃないの?」
「勝ちゃ勝ちなんですよ」
『……決着ぅ』
『あのイケメン、絶対物語の主役にはなれないタイプですよね』
イケメンで頭よくて運動神経いいなんて完全に主役だろ。わかってねぇなぁ。