【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第13話 家に女神が舞い降りた

 木曜日、俺の家、放課後。

 

「おじゃまします」

「おじゃましまーす」

「ただ……おじゃまします」

 

 日葵、朝日、千里の三人が、勉強会をするためにやってきていた。あと千里今ただいまって言いかけてたよな? お前もうただいまって言っていいよ。おじゃましますって言いづらいだろ?

 

 家に入ると、二階からどたどたと騒がしい足音が聞こえてきた。薫には昨日、放課後日葵がくるって言ったからそわそわしながら待っていたんだろう。証拠に、階段を下りてきた薫のいつもあまり動かない表情は、少しにやけていて本当に嬉しそうな顔をしている。

 

「い、いらっしゃい日葵ねーさん! えっと、おっぱい大きいお姉さんは初めまして、恭弥の妹の薫です。千里ちゃんはおかえりなさい」

「久しぶり、薫ちゃん」

「初めまして、朝日光莉です。……ねぇ、ちょっと何点かツッコみたいところあるんだけど」

「おっぱい大きいお姉さんって言ったのは俺の妹だから頭がおかしくて、千里におかえりって言ったのはもうそういうことだ」

「なるほどね。それにしても、あんた顔がいいから大体予想はついてたけど、薫ちゃんめちゃくちゃ可愛いわね」

 

 朝日が薫を見ながら言った言葉に、俺は薫の前に立って朝日の邪な視線から薫を守る。こいつめ、日葵だけでは飽き足らず薫にも手を出そうってのか? お兄ちゃん許しませんよ?

 

「……あんた私をなんだと思ってるの?」

「女に欲情するクズ。妹はやらんぞ」

「もし仮に私が女の子に欲情する美少女だとしても、薫ちゃんに手だしたらあんたと義理の家族になっちゃうじゃない。吐き気がするわ」

「俺はクズって言ったんだぞ? 何勝手に美少女に塗り替えてんだよ」

「あら、自分で言うのもなんだけど私可愛いと思うけど?」

「うん、朝日さん可愛いよ。正直未だに話してて緊張しちゃうし」

「……クズ、部屋に案内しなさい」

 

 照れてやがる。俺が何言っても照れない朝日が、千里の適当な「可愛いよ」で照れてやがる。これだから千里はずるいんだ。そういうことをサラッと言ってのけるから、女の子から可愛い可愛いって言われていても男らしさとのギャップでコロッとオトしちゃうんだ。

 日葵もその毒牙にかかったらダメだから、今のうちに千里を殺しておこうかな?

 

「兄貴、飲み物持っていこうか?」

「あぁ大丈夫だ。朝日にやらせるから」

「いいの?」

「やっぱり俺が手伝おう。朝日は俺を毒殺する気だ」

「あんたにやらせると私と織部くんを毒殺するでしょ。申し訳ないけど、薫ちゃんにやってもらいましょ」

「朝日さん。一般家庭に毒はないし、そもそもお構いなくっていう選択肢はないの?」

「図々しい女だぜ。親の顔が見てみたいな」

「プロポーズ?」

「は? キショ」

 

 朝日に床に叩きつけられ、「織部くん、案内して」という朝日の声とともに全員階段を上がっていった。毒どうこうじゃなくて俺実力で殺されんだろこれ。段々朝日の俺に対する制裁に躊躇がなくなってきてるし、俺が朝日の手によって殺される日もそう遠くはない。

 ていうかそもそも制裁に躊躇があった日なんてなかったな。

 

「薫ちゃん。四人分は大変だろうから、私も手伝うね」

「ありがとー。……兄貴も寝てないで、手伝って」

 

 全員上がっていったと思っていたが、女神が残っていた。女神は女顔悪魔と図々しいクズとは違い、薫の手伝いを申し出て、そんな薫は俺が日葵のことが好きだと知りつつさりげなくサポート。この場には女神しかいない。人間出来てるってこういうことだよな。見習えよあのクズども。

 

 ゆっくり立ち上がって、薫に対して頷く。今更日葵が俺の家にいるっていうことを意識してしまい、日葵の顔がまったく見れない。あとなんかいい匂いする。二階からは肥溜めみたいなクソのにおいがする。きっと根っこから腐った性格のクズが二匹くらいいるんだろう。

 

「三人とも、仲いいんだね」

 

 薫を先頭にキッチンまで歩いて行く。その途中、日葵が小さな声で俺に話しかけてきてくれた。夢かもしれない。

 

 仲いい、か。確かに仲はいいかもしれない。三人が三人ともに気を遣わないし、全員クズなように見えて器が大きいから大体のことは何でも許せる。本当に危ないラインは踏み越えない、心地いいところで罵りあっている感じだ。

 俺と千里もそうだが、千里と朝日も、俺と朝日も互いに波長が合うんだろう。一緒にいて居心地がいい。日葵と一緒にいると幸せの絶頂。千里と朝日なんてカスに等しい。

 

「まぁな。長い付き合いになりそうだなって思うくらいには仲いいと思う」

 

 これは本当に。あいつらを前にするとまず罵倒が先に出るが、これは本当にそう思っている。あいつらと一緒に居ない未来の自分が想像できない。というか未来の自分がそもそも恐ろしくて想像できない。俺なにやってるんだろ。俺何かできるんだろうか。頭はいいし顔もいいし運動もできるけど、クソ性格で仕事がなくなりそうだ。

 

「そっか……いいなぁ」

「いいなぁって、日葵も仲いいだろ?」

「ずっと話してなかったのに?」

 

 光莉とは仲いいけど、織部くんともあんまり話してないし。と口の先を尖らせながらぶつくさ文句を言う日葵は世界一可愛い。愛しすぎて愛しくて、愛しいから愛しい。これがどれくらい愛しいかというと愛しくて、つまり愛しさの頂点にたつ愛しさ。

 にしても、そうか。さては俺たちが仲良さすぎて寂しいってことか? でも俺ら三人のコミュニケーションって特殊すぎるから、日葵が入り込む余地がないというか、そもそも日葵って根っこからめちゃくちゃいい子だから入り込ませたくないというか、日葵を汚したくないというか。

 

 そういえば、日葵は寂しがり屋だったことを思い出す。これは入り込ませたくないって思っていても、何らかの形で四人仲良く肩を組めるような関係を築き上げるべきだろう。

 

 無理じゃね?

 

「二人とも、手伝わずにお喋りってどーいうこと?」

「あ、ごめんね薫ちゃん!」

「お前を信頼してのことだ。ほら、俺が手伝うよりもお前一人でやった方が絶対においしくなるに決まってるだろ? あと抹茶を点ててるように見えるんだが、気のせいだよな?」

「点ててる」

「結構なお点前じゃねぇか……」

 

 なんかシャカシャカシャカシャカ聞こえるなって思ったら、お前何してんの? 勉強会なのに結構なお点前してどうするんだよ。あと、お点前ってあんまり茶道で言わないらしいね。知らんけど。

 

「そういえば茶道では結構なお点前でってあんまり言わないらしーね。知らないけど」

 

 お前は確実に俺の妹だ。

 

 茶を点てている薫を「すごー……」と可愛らしい声を漏らしながら見ている日葵に笑って、棚からお茶菓子を取り出す。確か父さんが楽しみにしていたお高い和菓子だったはずだ。どうせ味もわかんねぇバカだから食っても構いやしないだろう。

 

「あ、それお父さんが楽しみにしてたやつじゃん。ダメだよ」

「千里が食ったって言うわ」

「じゃあ大丈夫だね」

 

 俺の家族は千里が大好きであり、「いつお嫁に……あ、男の子だったわね」と毎日母さんから言われるくらいだ。その後に「日葵ちゃんとはどうなの?」と次点に日葵を持ってくるポンコツっぷり。大罪である。実の母親じゃなけりゃ打ち首にしていたところだ。

 

「ふふ、相変わらず仲いいんだね」

「まー兄貴はクズだけど、優しいしね。距離が近いほど仲よくなるタイプじゃない? 日葵ねーさんもわかるんじゃない?」

「えっ……その、うん」

 

 わかってないじゃん。無理やり頷かせたみたいになってるじゃん。これが「え、そんなこと言わせないでよ恥ずかしい!」ならどれだけよかったことか。恨むぞ薫。俺は今とても悲しい。もうお前は俺の妹でもなんでもない!

 妹じゃなかったら普通に恋愛対象になってしまうので、やっぱり妹だっていうことにした。妹と恋愛するのは物語の中だけでいい。いや、現実にあってもいいけど俺たちがそうなるって考えたら吐き気どころの騒ぎじゃない。

 

「それとさ、さっきの兄貴と千里ちゃんと朝日さんが仲いいって話だけど」

 

 お盆に人数分の抹茶を置いて、薫は日葵に可愛らしい笑顔を向けた。

 

「あたしがねーさんって呼ぶのは、日葵ねーさんだけだからね?」

「な、何言ってるの薫ちゃん!」

 

 ……?

 

「本当に何言ってるんだ?」

「兄貴って頭いいクセにポンコツだよね。だからモテないんだよ?」

「はぁ!? 俺がモテてないって!? 勘違いするなよ。俺が女の子と付き合ったら薫が寂しい思いするだろうなって思うから、俺は薫のために彼女を作ってないだけであって別にモテてないわけじゃない」

「去年のバレンタイン」

「ゼロだけど? なんだコラやんのか」

「……あたしあげたじゃん」

 

 なんだこの妹可愛いな。自分のあげたチョコがカウントされてなくて拗ねてんのか。ほんと、なんで俺の妹なのにこんなにいい子に可愛く育ったんだろうか。もしかして義理の妹だったりする? もしそうでも俺驚かないぞ。だって俺の妹にしちゃいい子すぎるもん。

 

「薫ちゃん、やっぱりお兄ちゃんのこと大好きなんだね」

「……別に? そりゃ、家族だから好きなのは当たり前じゃん」

「はっはっは。ほら、もっと甘えてくれてもいいんだぞ? なんせ俺はお兄ちゃんだからな。はっはっは」

「おにーちゃん、すき」

「うわ、キショ」

「日葵ねーさん。この人でなしどうにかして」

「んー、えーっと、こら。ダメでしょ?」

「はいっ! 反省します!」

「バカじゃん」

 

 吐き捨てた薫はお盆を持ってさっさと歩いて行ってしまう。父さんが楽しみにしていた和菓子を手に、その後ろをついていき、スカートを履いている薫と日葵を気遣って俺が先頭に立って階段を上がって、自分の部屋のドアを開けた。

 

「おーい、愚民どもに恵みを……」

 

 そしてそこには、ベッドの下に潜り込んでなにやら探そうとしている朝日と、それを見てけらけら笑っている千里の姿があった。

 

「あ、ありがと恭弥、薫ちゃん、夏野さん。ほら見て。ベッドの下にえっちな本隠してるよって嘘教えたら、バカみたいにお尻振って探してるんだ。みんなで笑ってあげよう」

「お前って振れ幅大きいタイプのクズだよな。いや、部屋の主いない時に好き勝手探そうとするのもどうかと思うけど」

「ちなみに兄貴ってそういうの一切持ってないですよ。信じられないでしょうけど」

「嘘っ!? こんな性欲の化身みたいな男が!?」

 

 朝日は驚きながら失礼なことを言って、騙した千里を締め上げる。千里が俺に向かって必死に手を伸ばしてくるが、これに関しては千里が完全に悪いので無視して、座る用のクッションを人数分放り投げてからテーブルの上に菓子を置き、続いて薫が抹茶を置く。

 

「薫がなんで俺がそういうのを持ってないか知ってるのか聞きたいところだが、本当に持ってないぞ。そもそも年齢的に買えないし、あんまり興味もないしな」

「そういえば、恭弥の卒業アルバムは机の引き出しに入ってるよ」

「この流れで卒業アルバムの話をした意図を教えてもらおうか」

「へぇ。ってことは日葵の小さい頃の写真もあるのよね?」

「ちょ、光莉! 恥ずかしいから!」

「朝日、お前人の部屋の机の引き出しをよく断りも入れず開けられるな?」

 

 朝日が無遠慮に引き出しを豪快に開けて、卒業アルバムを引っ張り出す。小学校の時のやつと、中学校の時のやつ。結構頻繁に見返しては思い出に浸ったりしたもんだ。もちろん思い出に浸る目的しかない。他の目的なんかまったくない。

 

 朝日が卒業アルバムを広げ、全員でアルバムを見始める。どうでもいいけど、いつ勉強始めるの?

 俺の疑問をよそに、卒業アルバム観賞タイムが始まった。

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