【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第131話 起床

 長い夢を見ていたようだ。気づいたら家に帰ってたし、日葵から「なんかごめんね……」っていう内容のメッセージがしこたまきていて、千里からは「あの日の夜、薫ちゃんと……いや、なんでもない」っていうメッセージがきており、光莉からは「故」というメッセージがきており、春乃からは「一応言うとくけど、全体的になんもなかったで」というメッセージがきていた。

 とりあえず日葵には「今起きた。ありがとうございました」と返し、千里には「故」と返し、光莉には「プチトマト」と返し、春乃には「ありがとう。ちょうど千里から意味深なメッセージ送られてきたところなんだ」と返した。こう見てるとやっぱり常識人が誰かわかりやすいな。

 

 ベッドから起き上がって時間を確認する。俺が眠ったであろう日の翌日の8月9日、午後9時。全員帰った後だろうな。旅行最終日一緒に楽しめなかったことが心残りだが、それ以上に幸せなことがあったからいいだろう。日葵とデートだぜデート。一生ご飯を食べられないか日葵とデートかなら俺は日葵とデートを選ぶね。それくらい幸せなことだ。別にご飯を食べられなくても生きられるように体を作り変えればいいしな。

 

「あ、おはよう恭弥。起きた?」

「おう。悪いな、寝ちまって」

「寝ながら動いてたから大丈夫だよ」

 

 少しぼーっとしていると部屋に千里が入ってきて俺に近寄り、俺の髪を整え始める。一瞬妻になってほしいなと思ってしまったが思い直すこともなくやはり妻にしようと思う。日葵が本妻で千里が妻その2くらいでいいんじゃねぇの? ほら、性別は男だから別枠で迎え入れるみたいな。無理?

 

「寝ながら動いてたって」

「うん。今日の朝ごはんも昼ごはんも夜ご飯も食べてたよ」

「化け物かよ」

「うん」

「化け物なの?」

 

 さらっと化け物認定され、納得がいかないまま部屋を出る。流石に風呂は入ってないだろうと思い風呂場へ向かいながら、着替え持ってきてないけどまぁ家族と千里しかいないしいいかと開き直って風呂場の扉を開けるとそこに春乃がいた。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……えっと、閉じるかなんか言うかしてくれへん?」

「あ、綺麗な体ですね」

 

 ものすごい勢いで扉を閉められ、ドアに手をかけたままだった俺はその勢いにやられて廊下をごろごろ転がった。

 

 起き上がる。千里が爆笑している。

 

「おい、知ってただろお前」

「いや、知らなかったよ。流石の僕も女の子の恥ずかしいところをわざと見させようなんてこと考えないさ」

 

 まぁ確かに、こいつはクズだがそんなことは絶対しない。そんなことをしていたらちょうど下着姿になっていた春乃を見せてくれてありがとうございますとお礼をじゃなくて、なんて最低なことをするんだと「いけないぞ」と頭を軽く小突くところだった。

 

「……っていうかなんでいんのお前ら」

「やっと気づいたわね」

「千里。メスゴリラ連れてくんなよ。家がクサくなるじゃねぇか」

 

 光莉がどこからともなく瓶を取り出し、俺の頭に叩きつけた。おい、ちょっとした冗談に殺人級の制裁してんじゃねぇよ。相手が俺でやったのが光莉だったからゴミも怪我もなく済んだけど、相手が一般人だったらシャレになんねぇぞ。

 

「待て、悪かった。俺は光莉がもしメスゴリラだったらドラミングの度におっぱいがむにゅむにゅでえっちだなって言いたかったんだ」

「それならそう言いなさいよ。確実に仕留めてたのに」

「ぼ、ぼくは何も言ってないよ!」

「千里も同じことを思っていたらしい」

「地獄を見せてやるよ」

 

 バトルモノアニメのゲームに出てくる敵キャラの必殺技のときのセリフみたいなものとともに俺たちは地獄を見せられた。どれくらい地獄だったかと言うと、給料日に給料を全部抜き取られ、給料と同じ金額の枚数のうんちを拭いたトイレットペーパーが支給されるくらい地獄だった。めちゃくちゃ伝わりづらくて誇らしく思っている。

 

「まったく、相手が優しい春乃だったからよかったものの、私が見られてたら殺してたわよ?」

「見てねぇのに殺されてんだけど」

「僕も何も言ってないのに……」

「思うだけで罪なのよ」

 

 じゃあ俺光莉の前で迂闊に何も考えられないじゃん。ほぼ以心伝心だから変なこと考えたら一発で殺されるし。こうなったら心の中では光莉のことを褒め千切ろうかな? えーっと、胸がデカい、優しい、胸がデカい、強い、胸がデカい、面白い、胸がデカい、気が合う、胸がデカい、めちゃくちゃいいやつ、胸がデカい。

 

「おい、胸がデカいんだよお前!!」

「千里、何で私が怒られてるかわかる?」

「胸がデカいからって言ってるじゃん」

「いくら私のおっぱいが大きくて魅力的すぎて他のことが考えられないからって、そんなに怒らなくても……」

「ははは。おもしろいおもしろい」

 

 気づけば俺は庭にいた。千里も余計なことを言ったのか俺の隣に植えられており、土の中でこんにちは。適当なタイミングでお互いに土の中から抜け出すと、縁側に日葵と薫が腰かけて俺たちを見ていた。

 

「やばいぞ千里。俺たちが伝統的な日本庭園と勘違いされていた可能性がある」

「女の子二人の夢を壊しちゃったってこと……!?」

「バカ二人がなんかほざいてる」

「よかった。いつも通りの恭弥だ」

 

 今ので安心される俺って普段どう思われてんの? カッコいいとかより先に頭がおかしいがきてるんじゃね? 正解。日葵は俺のことをよく見てくれている。

 

「よう日葵。いきなり倒れて悪いな。実は千里に毒を盛られてたんだ」

「嘘だよ」

「おい!!!!!! 話を合わせろよ!!!!!!!!」

「合わせてほしいなら小声で言いなよ」

「兄貴、あんまり冗談言わないで。日葵ねーさんばか……あほ……どじまぬけ……純粋なんだからすぐ信じちゃうでしょ」

「薫ちゃんって夏野さんのことを慕ってるんだよね?」

「薫は身内には遠慮ないからな」

 

 つまり薫が暴言を吐いてくるとそれは信頼の証ということだ。それが信頼の証っていうところに氷室家の血筋を感じて俺はとても嬉しい。

 薫が暴言を吐く相手は家族と千里と日葵。めちゃくちゃ仲良しであまり暴言を吐いていないのはゆりちゃんに対してくらいだろう。ゆりちゃんといるときの薫はなんかお姉さんというか、「支えてあげなきゃ」っていう雰囲気を感じる。

 

 目を丸くして「じょ、冗談だったの……?」と恐る恐る千里を見る日葵に「冗談だぞ」と答えると、あからさまにほっとした表情で胸を撫でおろした。純粋すぎるだろ。普通毒盛られたって聞いて信じるやつが……いや、千里なら盛るな。むしろ水に毒を盛るとしたら水:毒が1:9になる割合で盛りそうだ。もはや毒に水を盛っている状態。

 

「あ、そうそう。なんでここにいるのかってまだ聞いてねぇぞ俺」

「夏野さんが恭弥のご両親に泊まりたいって言ってね。最終日倒れた……? ままだった恭弥がかわいそうだから、一緒にいたいって」

「千里ちゃん。兄貴なら途中から死んでたから聞いてないよ」

「あれ? それ織部くんが言ってたんじゃなかったっけ」

「千里ちゃんが殺された……」

 

 日葵が泊まりたいと言ってくれたことが嬉しすぎて昇天し、徳を積んでそうな人たちと「やっぱ俺地獄行きですよねー」と談笑していると日葵の口から実はそれを言っていたのは千里だということがわかり、怒りに身を任せて復活した俺は怒りに身を任せて千里に怒りを身に任せた。怒りに身を任せられた千里は怒りに身を任せた姿になって薫につんつんされている。道端に落ちてるうんちをつつくみたいに。

 

「ったく、ややこしいこと言いやがって」

「数分前の自分の発言を思い出して」

「そういえば日葵、父さんと母さんは?」

 

 薫に痛いところをつかれた俺は日葵に質問することで見事に話を逸らして見せた。これが年の功。悪いな薫。俺が大人すぎた。後二年くらいしたら俺と同じ景色が見れるだろうさ。

 

「あー、えーっと、ん-」

 

 ただ、なぜか父さんと母さんがどこにいるか聞かれただけのはずなのに、日葵は答えにくそうに視線を泳がせている。まさか死んだか? ありえる。俺が葬式で「両親は幸せ過ぎて死んでしまいました……」と涙する光景が目に浮かぶ。普段から「母さんを愛しすぎて死んじゃったどうしよう!!!!???」と困り果ててる父さんを見てるし。母さんも「その時は一緒よ……」ってうっとりしてるし。はじめてそれを聞いた小一の時、ゲボを吐き過ぎた記憶がある。

 

「病院? かな?」

「気を遣ってくれたんだな、ありがとう。あいつら子どもできたかどうか確認しにいきやがったな」

 

 気が早いだろ。昨日か一昨日ヤったなら三週間後とかじゃないとわかんねぇんじゃねぇの? 二人産んでるのになんでわかんねぇのかな。多分待ちきれなくて行ってるんだと思うけど、両親があんなだと思うと恥ずかしくて死にたくなる。

 薫も恥ずかしいようで、遠い目をして抜け殻のようになっていた。中三の娘がいる親のすることじゃねぇよ……。

 

「ちなみに男の子なら翔夜、女の子なら葵にするって言ってたよ」

「生き返って早々気分を悪くしてきたお前に、土の味を教えてやろう」

 

 知ってるよ、と言われたので俺も、と返すと、意気投合して仲良しになった。

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