【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第14話 スーパーでのごちゃごちゃ

「お、(ひじり)さん」

「あ、恭弥くん」

 

 土曜、近所のスーパー。今日も日葵とその他が勉強をするために家にくる上、今日明日は「子どもがきたらゆっくり休めないから、二人でどっか行くか!」「いいわね」というナチュラル畜生両親が旅に出ていないため、飯の材料と適当なお菓子を買いに来ていた。薫は連れてくると色んなところを連れまわされて、薫が可愛くて服を買ってあげてしまいそうになるので置いてきた。

 

 そうしてスーパーで買い物をしていると、見知った顔を見つけた。

 

 織部聖。あの女顔の親友である大学二回生の千里の姉。千里によく似ていて、というより千里が聖さんに似ているのだが、かなりの美人だ。日葵には負けるが。

 

「結構久しぶりだねぇ。恭弥くんが二年生になってから初めてじゃない?」

「ですね。そっちの家に遊びに行くことあんまりないですし。あ、千里をいつもお世話してます」

「千里がいつもお世話になってますって言われたとしても、『いえいえ』って普通は言うのに、自分から言うの?」

 

 口元に手をあてて、上品にクスクス笑う聖さん。なんだろう、兄弟の中にクズがいるとまともに育つ法則でもあるんだろうか。俺の妹の薫もそうだし、聖さんもそうだし。

 それにしてもほんと千里に似てるなぁ。これで千里に似た性格だったらヤバかったぞ俺。日葵か聖さんかで悩む自信がある。単体の力なら日葵の方が上だが、聖さんを選べば千里がついてくる。

 

 俺が選べる立場なのかって? 口に出さなきゃ気持ち悪い妄想も犯罪じゃないんだよ。

 

「すみませんね。いっつも千里借りちゃって」

「いいわよ。今日も勉強会するんでしょう? ほんと仲いいのね。付き合ってるって言われても信じちゃったもの」

「ほんとに違いますからね。いやマジで」

「ふふ。わかってるわよ」

 

 あー、やっぱ年上の女の人って包容力がすげぇや。おっぱいは同じ位大きいのに、朝日とはえらい違いだ。なんだよあのクズ。無駄にデケェ乳ぶら下げやがって。クズはクズらしく貧相な胸でコンプレックス抱えときゃいいんだよ。

 

「あれ、氷室? そっちの人は……もしかして、織部くんのお姉さんですか?」

 

 聞こえてきた声に顔を背ける。噂をすればというやつか。いや、噂なんてまったくしてないし、俺の中で悪口言ってただけだけど。

 

 恐る恐る声の方を見てみると、見慣れたクズが外行きの笑顔を浮かべていた。

 

「こんにちは。織部くんの友だちの朝日光莉っていいます」

「千里の姉の織部聖です。よろしくね」

 

 おっぱい同士が向かい合って頭を下げ挨拶を交わす。ふむ、こうしてみると立派なもんだなぁ。制服じゃあんまりはっきりわからないが、私服となるとなんともまぁ、うん。俺は日葵一筋だが、やっぱり立派なもんがあったら目が行ってしまう。男の子だし。

 

「おいおっぱい。あと少しで約束の時間だけど、今買い物してて間に合うのか?」

「えぇ。いつもお邪魔するだけじゃ悪いから、お菓子かなにか買っていこうと思って。……今私のことおっぱいって言わなかった?」

「は? そんなはずないだろ。おっぱいさんからも何か言ってあげてくださいよ」

「一応おっぱい呼ばわりでも上下関係はしっかりしてるのね」

 

 朝日に締め上げられている俺を、聖さんはうふふと笑いながら見ている。ぜひ助けてほしい。仕方ないじゃん。目の前に立派なもんぶら下がってたら男はそれに脳を支配されてしまうんだ。決して俺が悪いんじゃない。二人がそんなものを持っているのが悪い。

 それより、朝日ってマジでいいやつだな。千里なんてうちにくるのが当たり前になりすぎてお土産なんて買ってきたことないぞ? 

 

「騒がしいと思えば、恭弥か。朝日さんはともかく、姉さんも一緒になって何してるの?」

「千里。いや、聞いてくれよ。朝日が俺におっぱい呼ばわりされたっていいがかりつけてくるんだ」

「女性にそんなこと言うなんて、君は相変わらずクズだね」

「何言ってんだよ。お前この前ケツ振ってる朝日見て爆笑してたクセに」

「あら、そうなの? 千里」

「じゃあまた後でね。僕は他に欲しいものがあるから」

 

 華麗に去ろうとした千里の頭を掴んで、床に叩きつける。死んだか? と心配する俺をよそに、千里の頭をぐりぐりと床に押さえつけながら朝日に向かって謝罪した。

 

「ごめんなさいね。この子、心を許した相手にはとことん失礼になっちゃうの。直しなさいっていつも言ってるんだけど」

「あぁ、いえいえ。私たちなりのコミュニケーションってやつですから、大丈夫ですよ」

「あらあら。ハワイでいいかしら?」

「弟と相性のいい女の子見つけたからって新婚旅行の行き先を勝手に提案しないでくださいよ」

 

 聖さんは千里のことが大好きで、心配性。女の子みたいな見た目をしていて、基本的に優しいが心を許した相手にはとことん失礼という二クセ三クセある千里に、彼女ができるかどうか、結婚できるかどうかをものすごく心配している。千里が俺と遊び始めて、初めて聖さんに会ったときも「ついに……」って反応してたし。

 聖さんは朝日を見て気に入ったようだが、今のところ俺はないと思っている。よくて友だち以上恋人未満。それが千里と朝日の関係を表すのにぴったりだ。息はめちゃくちゃ合うし、美男美女でお互いのことをよく理解している。更にどっちも頭がよくて、将来の心配もまったくない。

 

 お似合いすぎてビビる。

 

「朝日、結婚式には呼んでくれよ?」

「織部くんとはしないけど、まぁ私が誰かと結婚するってなったら普通に呼ぶわよ? 友だちじゃない。このクズ」

「おいよせ、普通に友だちとか言われると照れるじゃねぇか」

「恭弥。君は今罵倒されたことに気づいてないの?」

「お前は早く頭を上げろよ。すげぇ見られてるぞ」

 

 おでこを赤くしながら埃を払い、周りを確認する千里。まったく、千里が騒ぐからめちゃくちゃ見られてるじゃねぇか。俺はおとなしくしてたってのに。

 

「あれ、夏野さん?」

「あら、千里のお友だち?」

 

 は? 日葵がいるわけないだろと千里の視線の先を見ると、そこには本当に日葵がいた。勉強会のメンバーが同じ時間、同じ場所にいるなんて偶然にもほどがある。どうせなら日葵と二人がよかったけど。お前らなんでここにいんの? 俺と日葵の時間を邪魔するんじゃねぇよ。

 

 声をかけられた日葵は、なぜか呆然として俺たちを見ていた。その表情が少し悲しそうに見えて、かと思えば俺たちに辛うじて聞こえるくらいの声でぽそりと呟いた。

 

「……恭弥が、ハーレム築いちゃった」

「日葵。私がこいつのハーレムの一員に見えるの? ぶっ飛ばすわよ氷室」

「なんで俺がぶっ飛ばされるんだよ」

「はは。でも恭弥なら二股くらいはしそうだよね」

「三股……」

「おい夏野さん。もしかしてハーレムの一員に僕も入ってるの?」

 

 朝日が「聞き捨てならないわ」と日葵を引っ張ってきて、騒がしい一団に日葵が加わる。「私ハーレムの邪魔にならない?」と脅えた様子の日葵に「千里の姉の織部聖です。よろしくね」とのほほんと自己紹介する聖さん。

 

 収拾つかねぇなこれ。

 

「日葵。俺がハーレム作るようなやつに見えるか? 俺は意外にも一筋だっての」

「自分で意外にもって言っちゃダメでしょ」

「ちなみに私は作るように見えるけど、あんたがクズだから作れないって思ってるわ」

「あら、私は恭弥くん好きよ? ちょっとわんぱくだけどいい子じゃない」

「好きなんですか!!?」

 

 日葵が珍しく大声を出して聖さんに詰め寄る。あれか、「こいつだけはやめておいた方がいいですよ」ってことか? 最近やっと普通に話せるようになったのに、日葵はまた俺と距離を取るのか。クソ、これが「うそ、こんな綺麗な人が恭弥のこと好きなんて。私焦っちゃう!」みたいなことだったらすごい嬉しいのに。

 

「えぇ。だって私と恭弥くんが結婚したら、千里と恭弥くんが兄弟になるでしょ? 楽しそうじゃない」

「はは、冗談がすぎますって。聖さんは素敵な人ですけど、俺好きな人いますもん」

「好きな人いるの!?」

「夏野さん、恭弥から離れて。恭弥が死ぬ」

「はい、おとなしくしなさい」

 

 いきなり近くに来た日葵にびっくりしてドキドキして鋼のように動かなくなった俺を、千里と朝日が日葵を俺から引きはがすことで救出してくれる。

 危なかった。あのままだったら俺うっかり告白してフラれるところだった。それでトチ狂って千里か朝日に告白するところだった。

 

「聞いてないー……何年も話してないからそりゃ聞いてないだろうけど」

「あのね日葵。氷室の言うことは全部戯言なの。無視しておきなさい」

「そうだよ夏野さん。恭弥は生身で誠実に喧嘩売ってるとんでもないクソ野郎なんだから、その場逃れの嘘に決まってるじゃないか」

「恭弥くん、お友だちなのよね?」

「俺も今心配になってたところです」

 

 ふざけてんのかこいつら。俺がまだクソだってあんまり知らない日葵にあることあること吹き込みやがって。その場逃れの嘘っていうこと以外は全部本当じゃねぇか。俺のことを理解してくれていて嬉しいぞ、俺は。

 それにしても、日葵も恋バナみたいなやつが好きなのか。誰が誰を好き、みたいな話に盛り上がる可愛らしい女の子なんだな。朝日はその辺りまったく興味ないけど。つづちゃんのゴシップ癖で「この人とこの人が噂になってるんです!」と聞かされても「ふーん。日葵が誰かと付き合ったってわけじゃないなら興味ないわ」と一蹴していた。多分朝日は日葵が誰かと付き合ったら、その日葵の相手を殺すと思う。

 

「……まさか二人のどっちかが恭弥と付き合ってるとか? それで私を必死に止めてるの?」

「誰があんなクズと。顔と頭と運動神経がいいくらいのクズじゃない」

「僕らは親友だからね? さっきから普通にハーレムの一員にしたりしてるけど、僕は恭弥の親友だから」

 

 朝日、お前罵倒してるつもりだろうけどめちゃくちゃ褒めてるぞ。超優良物件じゃん俺。競争率も低いし、狙うなら俺しかないだろ。朝日に狙われても困るから日葵にぜひ狙ってほしい。狙ってくれたらすぐに契約成立させるのに。

 

「恭弥くん、ここは恭弥くんが何か言わないと収まらないんじゃない?」

「んー、じゃあ僭越ながら」

 

 このまま騒いでいてもお店の迷惑になるので、俺が男らしく一言ズバっと言ってやろう。そう決意して、日葵の前に立つ。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「緊張してんじゃないわよこのポンコツ!」

「清々しいくらいに役立たずだね」

 

 日葵の前に立って何か言おうとした俺は、緊張して何も言い出せなかった。だって日葵可愛いし! 緊張するだろ! 好きな子が目の前にいるんだぞ!? 流れで話しかけるのはいけるけど、改めて話しかけるのは無理なんだよ!

 

 結局俺たちは店員さんの「他のお客様のご迷惑になりますので……」の一言で気まずさを感じながらスーパーを出て行った。

 

 お前らのせいだからな? と言った俺に白い目が浴びせられたのは言うまでもない。

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