【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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先週更新できなかったこと、ここに深くお詫び申し上げます。一生の不覚です。


第137話 許嫁

「ところで、氷室は誰を選ぶんだ?」

「は?」

「いや、聞き方が悪かった。誰とセックスするんだ?」

「なお悪いんだよクソ教師」

「ダメよセンセ。こういう時は『誰と愛し合うの?』って聞かなきゃ。その方が素敵でしょ?」

「そもそも聞いてほしくないんですけど」

「誰とって、夏野さんと朝日さんと岸さんのこと?」

「井原は具体化してんじゃねぇよぶっ飛ばされてねぇのか」

「いやだけど」

「喧嘩売ってんのか?」

 

 井原は本当に不思議そうな顔をしていたので許してやることにした。俺はアホには優しいんだ。

 

 奢ってくれるからとほいほいついてきたものの、聞かされたのは担任が俺の両親と同級生で、ロメリアさんとも知り合いで、つまり俺の両親と担任とロメリアさんが同級生っていうとんでもなくヤな感じの事実。なんかこう、ロメリアさんはまだいいんだけど担任が両親と同級生ってのがいやだ。どうりで俺と千里が付き合ってるみたいなことを連絡してきたはずだぜ。クソ教師め、根絶やしにしてやる。

 

「いやな、流石にあそこまでわかりやすいと気になってしまって。悪い、聞き流してくれ」

「うそ。そこまでわかりやすいですか?」

「聞き流せって言っただろうがぶっ飛ばすぞ」

「ロメリアさん。この社会不適合者なんとかしてください」

「あなたも周りから見たらこう見えるのよ」

「嘘だろって顔してるけどマジだぜ!」

 

 なんだかんだで一番まともな気がしている井原が言うならそうなんだろうか……確かに不本意すぎて脳が一つ増えるくらいこの教師と似ているって言われることは多々あるが、そんなに? 俺流石に教師になったら生徒に対してぶっ飛ばすぞなんて言わないって。多分。うそ。ムカついたら言っちゃう。でも言っていい相手は見極めて言うよ? ほんとだよ?

 

「センセが気になっちゃうのも無理ないわ。あたしたちが学生の頃にソックリだものね」

「正確には、当時俺はそれを知らなかったんだけどな。氷室の両親に色々あったって教えてもらっただけだ」

「さて、俺はここで帰らせてもらうとしますか」

「え、聞かなくていいの? 面白そうじゃね?」

「両親の学生時代の話なんて聞きたくないに決まってるだろ」

「俺は聞きたいけどなぁ。父ちゃんと母ちゃん好きだし!」

 

 なんだなんだ。ここで俺が帰ったらまるで俺が両親のことが嫌いみたいになるじゃねぇか。

 まぁ知ったこっちゃない。高校二年生男子にとって両親の学生時代の話、それも色恋となると吐きたてのゲロくらい敬遠するべきものだ。流石に帰るのは失礼だから、俺の天才的な頭脳で説得することにしよう。

 

「先生。少しいいですか」

「氷室の両親も高校二年生のときに色々あったって言ってたな」

「聞く耳持たねぇじゃん……」

 

 そして俺は、聞きたくもない両親の学生時代の話を聞かされることになる。そういえば聞きたくない聞きたくないって言ってるけど、海行ったときなんか自分で聞こうとしてた気がするなってことを思い出して途中から全力で楽しんでいた。井原に「なんか旅行行きたくないって騒ぐけど、実際に行くとめちゃくちゃ楽しむ子どもみてぇだな!」と言われた。

 

 ムカつく!!!!!

 

 

 

 

 

「あれ」

「あら」

「わ」

「お」

 

 神奈川県某所。自然に囲まれた大きめの村。母方の祖父母の家があるここに帰省していた僕はふらふら散歩していると、見知った人を三人、同時に発見した。

 

「日葵ー!!! 会えて嬉しいわ!! 嬉しいわ会えて!! ここは敢えて嬉しいわ???」

「むぐぐ」

「……はぁ」

「おい。光莉の胸に埋もれる日葵を見た後、私を見てため息を吐いた理由教えてもらおか」

「自分の胸に手を当てて……あぁ、ごめん。ないね」

「よし、殺したる」

 

 田んぼの中っていうのは案外気持ちがいいらしい。僕は今身をもって知った。

 

 まさか帰省して田植えされることになるとは思っていなかった僕は、この場に物足りなさを感じながら体を引き抜いて周りを見た。

 

 見つけたのは、夏野さん、朝日さん、岸さん。恭弥を除いたいつも通りのメンバー。なんでここにいるんだろうと一瞬考えて、そんなはずないよなと笑いながら聞いてみることにした。

 

「みんなも帰省?」

「うん」

「そうよ」

「せやで」

 

 どうやらそうらしい。僕はため息を吐いた。

 

 僕ほど頭が回って想像力も豊かな人間だと色んな事が考えらえる。恭弥以外の四人の帰省先がここで、更に恭弥の両親は学生時代に何かあったみたいで、それも今の僕らと似たような状態だったらしくて。

 

 流石に僕らの両親がそうだったとは思えないけど、帰省先が同じだってことはなるべくしてこうなってるって思ってしまっても仕方ないと思う。

 

「ちなみに、みんな毎年ここにくるの?」

「ん-、毎年ではないかな? 小さい時に一回と、片手で数えられる程度?」

「私も日葵と同じよ。日葵と同じ」

「そんな強調せんでもええわ。私も日葵と同じ」

「あー!! 春乃が私の日葵を取ろうとしてる!! 殺すぞ」

「ガチの殺意向けてくんなや。のどかな風景台無しにする気か?」

 

 なんか、僕の予想が当たっている気がしてきた。こんな予想はよそうかな? ふふふ。面白くない。

 

 僕が考えたのは、僕たちは小さい頃会ってたんじゃないかっていうベッタベタな恋愛漫画展開。まさか現実にそんなこと起こらないよねなんて思うことなかれ。超人的破壊力を誇る胸デカお化けと、超人的身体能力を誇る胸ナシお化けと、どう見ても女の子にしか見えないお化けがいる。僕だけシンプルお化けじゃねぇかふざけんな。

 

 つまり、僕らの存在の時点で現実からはかけ離れている。だからどれだけ漫画のような展開が起こっても「まぁそうだよね」と受け入れる土台ができてしまっているのだ。

 

「あはは。もしかしたら小さい頃、僕たち会ってたかもしれないね」

「私と日葵は確か会ってたわね。間違いないわ」

「え、そうなの?」

「そうよ。永遠を誓い合ったのも確かその時。さぁ私と永遠の夜を誓い合いましょう」

 

 夏野さんにキスをしようとした朝日さんが、容赦なく岸さんに田植えされてしまった。一応女の子なんだけど、岸さんには関係ないらしい。

 

「ん-、でもほんまに会ったことあるかもな! そう考えた方がおもろくてええし」

「でも会ったことあるなら覚えてそうだけど……」

「確かに。岸さんは関西弁だろうし、みんな可愛いから忘れようがないもんね」

「わ。ふふ、なんか照れちゃうね。ありがと」

「!!!!!!!!!!!」

「田んぼの中で叫んどるな」

 

 夏野さんが可愛すぎて田んぼの中から叫び、田んぼから抜け出した朝日さんはおっぱいをばるんぶるん揺らしながら走って夏野さんに飛びついた。

 

 避けられた。

 

「あぁん! 私を避けるなんていけずな人! 私はこんなにも愛してるっていうのに……」

「ちょっと、その、汚れてるから」

「心もな」

「おい絶壁。今余計な一言を足したわよね?」

「余計な一言突きつけながら言うてくんな」

 

 うん、会ったことないな。恭弥は小さい頃から完成されてたっていうし、朝日さんもどうせ小さい頃からこうだったんだろう。そんなインパクトのある子どもと会ったことがあったら絶対覚えてるはずだし。

 

「そういえば小さい頃きたときは恭弥と一緒だったなぁ」

「ん? 恭弥くんも帰省先ここなん?」

「えっと、ちょっと言いにくいんだけど、唯一絶縁されてない親戚がここにいるらしくて……」

「きっととんでもなくろくでなしでクソ野郎なんでしょうね」

「何で朝日さんは会ったこともない人をそうボロクソに言えるの?」

「むしろ恭弥と血縁関係にあってそう思うなって言う方が無理でしょ」

「一理あるな」

 

 うんうんと頷く巫女装束を着たキリっとした女の子が言うように、恭弥の血縁関係でまともなのは薫ちゃんだけだ。そもそも血縁関係を恭弥の家族しか知らないんだけど、その3/4があれでは一理あるとしか言えない。まともな人は絶縁するに決まっている。悪い人たちじゃないんだ。ただ、悪い人たちじゃないってだけなのが問題ってだけで。

 

「ところで久しぶりだなぁ日葵。元気だったか? 恭弥のアホに何もされてない?」

「あ、自然と溶け込んでたから誰の知り合いかと思ってたら、夏野さんの知り合いだったの?」

「???」

「千里。この首の傾げようを見て日葵の知り合いだと思う?」

「どうやら不審者らしい。すぐに通報してあげよう」

「待て待て! まぁ待て! 待て待て待て!」

「待ってほしいなら弁解せえや」

 

 ……なんか、似てるなぁ。誰にとは言わないけど、ものすごく似てる。兄妹だって言われても信じる。むしろ疑う方が難しい。髪質も似てるし、目も似てるし、まさに女版って感じだ。薫ちゃんがこうならなくてよかったと本当に心の底から思う。っていうかなんで巫女装束なんだこの人。

 

 巫女装束の女の子は「全員変わりないようでなによりだ。うん」と一人納得したように頷いている。

 

「なぁ、私ら会ったことあるん? なんとなーく心当たりというか、そうなんやろなーって感じすることはあるんやけど」

「私の名前を聞けばピンとくるだろう。私の名前は氷室(ひむろ)恭華(きょうか)。恭弥とは将来を誓い合った仲で、所謂許嫁というやつだな」

「えぇ!? うそ!!?」

「嘘」

「近くに山があるからちょうどいいわね」

「確かうちに大きな袋があったはずだよ」

「私を殺す手筈を整えるのはやめてくれ」

 

 冗談じゃん、冗談。と何も悪いことをしていませんよみたいな顔をしながら涼し気にいう女の子……氷室さんに容赦なくビンタをかました朝日さんは、「感触ほぼ一緒よ」と僕にいらない報告をしてきた。一緒っていうのは、まぁ恭弥とってことだろう。

 

 恭弥の名前が氷室さんの口から出てきたってことは、十中八九血縁関係にある。両親のどちらかの御兄弟の娘さんだろう。いとこの存在は知らないって恭弥も薫ちゃんも言っていたのが気になるところだが、恭弥が小さい頃一回だけここにきたことがあって、以降はまったく帰省しなかったってだけだろう。

 

「てか、会ったことあるってことに対してはピンときてへんけど」

「あぁ、あれな。ピンとくるだろうってなんか言ってみたいなって思って。えーっと、私らが4歳? 5歳? くらいの時に一回だけ会ったことがある。そんときは恭弥もいたな」

「ちょっと待ちなさいよ。あんたみたいな変な子と会ったことあるなら絶対覚えてるはずよ」

「だから私は光莉のこと覚えてたんだろうな」

「氷室さんが一瞬で地に沈んだ……」

「さ、ここで話すのもなんだし、うちに案内するよ」

「そのまま喋るんだ……」

 

 どうやら、氷室さんの家は山の中にあるらしい。家というより多分神社だろう。ますますなんで覚えてないのかが不思議だけど、このカス、間違えた。氷室さんが教えてくれるだろうし、のほほんと構えていればいいかな。

 

 僕の、僕たちの帰省は、一人の女の子の登場によりかき回され始めた。氷室家本当にいい加減にしてくれ。

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