【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第140話 昔話

 あれは、私たち5歳の頃。

 

「あれ? お前俺に似てね?」

「あれ? お前私に似てね?」

「ドッペルゲンガーって見ちゃうと死ぬらしい」

「ヤバ」

 

 帰省、というより今考えれば私を取り返しに恭弥たちはここへきていて、田舎すぎるから暇していた恭弥と私がバッタリ出会った。恭弥の後ろにはまだ小さい薫とおどおどしていた日葵がいて、思わず二人とも連れて帰ろうと思ったことを覚えている。

 

「おい日葵、薫。俺はどうやら死ぬらしい」

「え、死んじゃやだ……」

「おにーちゃんしんじゃうの?」

「おいテメェ。よくも俺の可愛い幼馴染と妹を泣かせやがったな」

「歩行者同士の当たり屋は聞いたことねぇよ」

 

 ん? とても5歳とは思えない? 私もそう思う。まぁあれだろ。私たちはおかしいからな。氷室の5歳はこんなもんだ。親がイカレすぎてて自分がしっかりしないとっていう意識が早々に植え付けられる。でも親の影響はしっかり受けるから大人びたクソ野郎が育つってわけだ。御見それしましたか?

 

「ところでせっかく会ったから自己紹介しよう。俺は氷室恭弥。俺の後ろにいる可愛いのが幼馴染の日葵で、ちっちゃくて可愛いのが妹の薫」

「氷室? 偶然だな、私も氷室なんだ。氷室恭華」

「名前まで似てんじゃん。キショ」

「思ってもそういうこと絶対言うなよ社会不適合者のゴミが」

「やまびこでもしてんのかテメェ」

 

 え? 可愛いって言ってくれてたのって? 言ってたぞ。いや、どっからどう見ても可愛いじゃん日葵。うん、可愛い。いやだから可愛いって。……もしかして私が恭弥に似てるからって可愛いって言ってもらうことが快感になってる? 本人に言って貰えばいいのに……。

 

 ただ、その可愛いのも人見知りだったようで、恭弥の後ろから少し顔を出して私を見ては引っ込んで、薫は暇になったのか恭弥の手をにぎにぎして背中に顔をすりすりしていた。可愛すぎて舌が五枚になるところだった。どういう感情表現なのかって? 知るかバカ。

 

「巫女装束ッて、神社の娘さんだったりすんの?」

「元神社をぶち壊したところに住んでる」

「神への冒涜じゃん。気が合いそうだな」

「神への冒涜で気が合いそうだって言ってくるやつと気が合いたくないんだけど」

「まぁまぁ、同じ氷室だし一緒に遊ぼうぜ。どんな家畜になりたい?」

「一回辞書で『遊び』って言葉調べてみろ。家畜なんて単語一切登場しないから」

 

 この時くらいから薫が前に出て私をじっと見るようになった。不服だが私と恭弥が似ていたからだろう。こてんと首を傾げて「おねーちゃん?」と言ってくれた時は可愛すぎて誘拐しようとして恭弥に殴り飛ばされた。薫は楽しそうだった。日葵は慌てていた。

 

「お、なんか可愛い子いんじゃん」

「おい待て。よく見ればちんちんついてるぞあいつ」

「なんでよく見ればわかるんだよ恭華。氷室家のお家が知れるぜ」

「お前も氷室だぞ」

 

 最初の餌食……最初に会ったのは千里だった。おいしそうな香りを振りまいて、普段優しくて穏やかなはずの老人たちが揃って欲情しかけているところに私たちが割り込み、「おまえ、うまそうだな」と声がかけたのがきっかけ。

 

「どうも。俺はこいつと忌々しい関係性かもしれないから名前を捨てることにした男だ。つまりお前も名乗らなくていい。さぁ遊ぼう」

「え?」

「おじいさんたち、ダメですよ! この子泣いちゃってるじゃないですか!」

「ほんとにダメですよ。5歳ぐらいと70以上のジジイはシャレになんねぇって」

 

 老人たちの勢いに泣いてしまっていた千里を日葵が庇い、薫が千里の頭を撫で、恭弥が千里を誘拐したことで犠牲者が増えた。あ、私は氷室に関わった人間のことを犠牲者って呼ぶことにしてるんだ。おい、なぜ一斉に頷く。そんなことないよってフォローしろ。だから私に犠牲者って呼ばれるんだぞ。

 

「どこからきたの?」

「Tokyo」

「オリンピック開催決定みたいに言うな」

「へー! 僕もなんだ。もしかしたら帰ってからも会えるかもね。ふふふ」

「二人とも、先に帰っておきなさい」

「俺とこいつはこのメスをブチ犯すことにしたから」

 

 もちろん本当にブチ犯していない。ほんとだぞ。だってまだ5歳だったし。そういう問題じゃない? じゃあどういう問題なんだよ答えてみろ。私は逆ギレが得意なんだ。気をつけろ。

 

 当時はブチ犯すっていう単語は私と恭弥にしかわからなかったから、日葵は「私たち抜きで遊ぶの……?」と悲しそうな顔をして、薫は「みはりが必要でしょ」と息巻いて……おい待て薫意味わかってんじゃねぇか。これは恭弥に教育方針について聞く必要がある。何? 親じゃなくて恭弥に聞くのかって? 氷室家の親がまともな教育してるはずねぇだろ。

 

 この時はまだよかった。おかしいのが二人に、まだ毒されていない純粋が二人、少し怪しいけどまぁまだ純粋かな? が一人。保護者が子どもを連れてるくらいの感覚だったしな。

 

 次に会ったやつが問題だった。

 

「キュピーン! ワーオ、かわいこさーん!」

 

 流石にまだ胸は出ていなかったが、それ以外はもう既に完成されていた光莉が現れた。氷室家でもないのにこのおかしさはまともじゃないと戦慄したことを覚えている。

 

「そこの顔が同じの邪魔者二人。そこの明らかなメスを連れて去りなさい」

「俺は今ここで少年法撤廃に動き出そうと思う」

「私たちの目の前に明らかな犯罪者がいるからな。数年でムショから出てこられても困る」

「はぁーん? あんたたちが誘拐犯なんでしょ。私にはすべてお見通しよ。今から人気のないところに連れて行っておいしくいただくつもりなんだっていうことが、ね!」

 

 多分氷室家の方がマシだと思えるくらいのイカレっぷりに、私と恭弥は頷き合って光莉を縛り上げ、袋叩きにしようとしたとき。「はぁはぁ、悪くないわね……」と興奮した光莉を見かねて現れたのが、イケメンオーラをこれでもかと輝かせ、私たちの手から光莉を奪い去った春乃だった。

 

「こら、いじめたらあかんやろ!」

「あ、そういえば自己紹介してたっけ? どうも、氷室恭弥と申します」

「氷室恭華です」

「氷室薫です」

「な、夏野日葵です」

「織部千里です!」

「朝日光莉よ」

「なんでこのタイミングで……? もしかして特殊なお遊戯やった? 邪魔してもうた?」

「うちの一族では誰かを縛り上げてから名乗るのが礼儀なんだよ」

「ドブみたいな礼儀やな。私は岸春乃。なんかほっとけんから勝手についてくで」

「いやん! 突いて食うだなんて、大胆!」

 

 せっかく助けてもらった光莉は気色悪いことを言って春乃に捨てられていた。日葵が助けなかったら芋虫みてぇに地面這いずり回ってやがて死んでいただろうに。日葵に感謝しろよ。先に私が反省しろっていう正論は言ってくるな。私は正論が大嫌いなんだ。

 

 そんなこんなで、私、恭弥、薫、日葵、千里、光莉、春乃の7人が揃い、私の家に行くことになった。この時、私は既に恭弥の両親と会っており、家に来た両親に対して帰らないと言った後。おじいちゃんとおばあちゃんは私が恭弥と薫を連れてきたもんだからびっくりしていた。二人は恭弥と薫を大層可愛がったが、二人の前から離れた後に「なれなれしいジジイとババアだな」とノンデリカシー発言をかましてきたから、血のつながりがあるとは思っていなかったんだろう。……いや、あいつなら血のつながりがあっても言うか。

 

 私たちが遊んだのはこの日だけ。次の日には全員帰ってしまい私だけが残され、恭弥から『また迎えに来る』っていう手紙をもらって既に12年。あいつはいつ私を迎えに来てくれるんだか。

 

「ちょっと待て」

「なんですか?」

「迎えに来るって手紙貰ったって、なんで?」

「恭弥は賢くないわけじゃないから、おじいちゃんとおばあちゃんの態度と、私と恭弥があまりにも似ていたことからある程度の察しはついたんだろ」

「で、『迎えに来る』っていう手紙を書くのがカッコいいんじゃね? って思って書いたってことね」

「氷室光莉か?」

「なってもいいならなるわよ」

 

 光莉が日葵と春乃に睨まれた。ウケる。

 

「しっかし、なんであの恭弥がこんなにモテるのかね。千里に日葵に光莉に春乃。美少女四人から好きになってもらう器じゃないだろ」

「僕を美少女とカウントした不届きものは君か?」

「うん」

「はっきり頷いてんじゃねぇよ」

 

 だって似たようなもんだろ。千里だって種類は違えど恭弥に惚れてることは間違いないんだし。

 私からすれば信じられない。恭弥が女の子から好意を持たれてるってこと自体が信じられないのに、それも複数。恭弥がモテてて私がモテないのは、この近くに同年代の男がまったくいないからだ。決して私が普段巫女装束を着ている頭のおかしい美少女だからってわけじゃない。

 

「クソ、ムカついてきたな。千里千里、セックスする? そうすりゃ私もモテたことになんだろ」

「多分君、手握ったくらいで顔真っ赤にするでしょ。申し訳なくてセックス何てできるわけないじゃん」

「今もめちゃくちゃ顔真っ赤やしな」

「あざとすぎない? 今時の女子高生がセックスって言ったくらいで顔真っ赤にするってあり得ないわよ」

「うるさい! そういう機会ないんだから仕方ないだろ!」

「僕が教えてあげよう」

「有罪」

 

 日葵が千里にスマホの画面を向けたので覗き込んでみると、ちょうど薫にビデオを送ったところだった。なんかスマホずっと向けてるなーと思っていたが、どうやら撮っていたらしい。

 

「……これもしかして、一歩間違えれば僕が女装した恭弥に言い寄ってるように見えない?」

「そこまで似てねぇよ」

「ちゃんとつくものついてるものね」

「やっ」

 

 みんなが一斉に私を見る。私の胸には光莉の手が置かれていて、私は口を手で押さえて涙目になり、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えていた。

 

「……恭弥ばりのクズで生娘ってどんなギャップよ。萌え萌えキュンって感じね」

「も、揉みながら言う、な!!」

「夏野さん夏野さん。これは流石に僕悪くないよね?」

「見ちゃダメだよ」

「千里の顔が絶望の色で染まってもうた」

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