【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

15 / 192
第15話 薫のことが大好きな人たち

「今日と明日ご両親いないの? じゃあ泊まりで勉強会しない?」

「はは。何mmがいい?」

「恭弥。流石にゴムは生々しすぎるよ」

 

 スーパーで聖さんと別れ、そのまま俺の家へ集まり、両親が今日明日いないことを知った朝日からとんでもない提案がぶちかまされた。思わずゴムのmm数を提案してしまったのも仕方ないというものだろう。

 流れるように俺をビンタした朝日は、日葵と千里に「どう?」と首をちょこんと傾けて聞いていた。お前そんな可愛い仕草できるのな。朝日なのにドキッとしちゃったじゃねぇか。

 

「僕は薫ちゃんがよければ全然いいよ」

「薫は普通にいいって言うだろうな。あいつ寂しがりだし、人多い方が好きなんだよ」

 

 薫の部屋の方からドン、と壁を叩く音が聞こえた。余計な事言うなってことか。でも事実じゃん。小さい頃は俺の後ろをちょこちょこ歩いて、俺がいなくなったら泣き出すくらい寂しがりだったじゃん。はぁ、あの頃の薫は可愛かったなぁ。今も可愛いけど。

 

「日葵は?」

「え、えっと、いいのかな? 一応私たち男女で、その」

「いくらこのクズが性欲の化身でも手は出さないわよ。ヘタレだし」

「誰がヘタレだコラ。手ぇ出すぞ」

「朝日さん。確かに恭弥はヘタレでどうしようもないクズでゴミで呆れかえるほど男として価値がないド底辺のカスだけど、一応男なんだ。警戒はしておいてね」

「薫ちゃんと一緒に寝たら安全でしょ。こいつ、薫ちゃんには優しさしか見せないし、薫ちゃんが近くにいるのに変なことしようと思わないでしょ」

「やっぱり朝日さんは恭弥のことわかってるね」

「あの、俺がボロクソ言われたことに関してはノータッチですか?」

 

 俺何もしてないのにメタクソに言われたぞ? 一瞬気のせいだと思っちゃったくらいボコボコに言われたぞ? なんで誰も否定しないんだよ。「あぁ、そうだよね」くらいで話進めてんじゃねぇよ。何「恭弥のことわかってるね」って得意気に語ってんだよ。

 

「でも、着替えとかどうするの?」

「取りに帰ったらいいんじゃない? あ、でも私ちょっと家遠いわね」

 

 ここで俺は朝日の狙いに気づいた。

 こいつ、日葵の服を合法的に着ようとしてるな?

 

 おかしいと思ったんだ。こいつはセクハラに耐えうる性格とノリをしているくせに、貞操観念はしっかりしてるから異性の家に泊まるなんて言い出すはずがないんだ。何か目的があるに違いないと思っていたが、まさか日葵の服を着ようとしているとはな。流石策士。味方にすると頼もしいが、傍目から見るとここまで醜悪で気色の悪いものだとは思わなかったぜ。

 

「薫ちゃんに貸してもらおうかしら」

「狙いは薫だったかっ!!!!!」

「うわ、こわっ。何よあんた」

「お前なんかに薫を渡すか! 俺は今のところ薫の相手に考えてるのは千里しかいないんだ! 親友と愛する妹が結婚して、生まれた子どもを俺が抱いて泣くってところまで計画してるのに、それをお前みたいな胸がデカいだけのクズに壊されてたまるか!」

「何をどう勘違いして暴走してるか知らないけど、殺すわね」

 

 俺は殺された。

 

 薫がめちゃくちゃ壁を叩いている。あいつ、千里とどうこうっていう話題を出すとめちゃくちゃ恥ずかしがるからな。肉親以外で一番距離の近い異性だし、やっぱり何か思うところはあるんだろう。千里はへらへらして「幸せそうだねぇ」とのほほんと言っているが。

 

「それで、日葵はどう?」

 

 ボコボコになった顔面を鏡で整えていると、朝日が日葵に再度聞いていた。本音を言えばぜひ泊まってほしいが、緊張でどうにかなりそうな気もする。よく考えれば俺の部屋に日葵がいるってだけでもとんでもないことなのに、うちに泊まるだって? ここが人生のゴールですか?

 

「……恭弥、今日泊まってもいい?」

「もちろんです!!」

「欲望が隠しきれてないね。気持ちが悪い」

「相変わらず気持ちの悪い顔ね。ママのお腹の中から出直してきなさい」

「ばぶばぶー。恭弥ちゃんでちゅー」

「グェォォオオオ」

「光莉、女の子が出しちゃいけない声出しちゃってる」

 

 俺の渾身の赤ちゃんものまねで朝日を倒してやった。大金星である。俺に失礼なこと言うからそうなるんだ。代償にこの部屋にいる俺以外の人全員が真っ青な顔をしていて、薫の部屋から物音が聞こえなくなったが安いものである。

 

「朝日さん。二度と恭弥にあんなことさせないでほしい」

「ごめんなさい……まさかあそこまで気持ち悪いと思わなかったの」

「そ、そうかな? 可愛かったよ、恭弥」

「まずはその青い顔を治してから慰めてもらおうか」

 

 安いものといいつつ、あんまりな反応に結構なショックを受けていた。千里と朝日に青い顔をされてもなんのダメージもないが、日葵に青い顔をされるとかなりのダメージだ。もしかしたら可愛いと思ってくれるかもと思ってやったのに、やはりダメだった。そりゃ高二男子の赤ちゃんものまねなんて気持ち悪いに決まって……。

 

 千里なら可愛いんじゃね?

 

「じゃあ千里は赤ちゃんになるとして、今から着替え取りに行くか?」

「私はそうしようかな」

「あ、なら薫ちゃんに服借りていいか聞いてきてもいい? 下着は別で買うけど」

「あぁ、俺がまとめて聞いてくるわ。ちょっと待っててくれ」

「あれ、なんで僕が赤ちゃんになることに誰も触れないの?」

 

 日葵と朝日と赤ちゃんを部屋に置いて、隣の薫の部屋に移動する。妹だとはいえ女の子。しっかり二回ノックして「誰の部屋がトイレなの」と不機嫌そうな顔の薫がドアを開けてくれた。

 

「いいか?」

「いいよ。サイズ合うかな?」

「あいつ胸デカいくせに背は低いから大丈夫だろ。ったく、慎みもてよな。下品ったらありゃしねぇ」

「悪かったわね」

「それにしても朝日ってめちゃくちゃ可愛いし綺麗じゃね? 俺初めて見た時求婚しそうになったもん。二人でじっくりゆっくりチューリップを咲かせようかと思ったね」

「それ球根。焦りすぎて面白くないわよ」

 

 流石の朝日でも薫の前では表立った暴力は働かないらしく、俺の頬をビンタした。表立った暴力働いてんじゃねぇか。

 

「やっぱり服貸してもらうのに本人が頼まないのは、って思ってね。ごめんね薫ちゃん。嫌なら言ってくれていいから」

「あ、いえ。見てられない顔で汚い人なら嫌ですけど、朝日さんすっごく綺麗で可愛いですし、いくらでも」

「氷室、薫ちゃんめちゃくちゃいい子ね」

「お前は薫が思いっきり区別してたのを聞き逃してるぞ」

 

 俺だってそりゃきったないやつに服貸すのは嫌だけど、わざわざ口に出して言うことか? 薫はまともに育ったが如何せん正直すぎる。かと思えばはっきりしないところもある。あれ? もしかしてまともじゃなくないか?

 いや、ここは普通の女の子だと思っておこう。これくらい普通だ。朝日に比べりゃ可愛いもんだ。朝日はおかしい。クズ。ハハハ。

 

「そういえば気になったんですけど、朝日さんって兄貴と千里ちゃん、どっちの方が好きなんですか?」

「何でそんなこと聞くの? 友だちとしてならどっちもで、男してならどっちも好きじゃないけど」

「朝日。お前のその素直なとこめちゃくちゃ好きだわ俺。今俺はとてつもなく感動している」

「なによ、気持ち悪いわね」

 

 俺なんてついさっき朝日のことをクズって言って心の中で笑っていたのに。俺の方がクズじゃねぇか。朝日は友だちとして俺のことが好きって言ってくれたのに。

 薫は朝日の言葉を聞いて「えっと」と言葉を詰まらせた後、小さな声で話し始めた。

 

「兄貴がこんなんだから、日葵ねーさんが離れていった時兄貴と仲のいい女の人って全然いなくて。『あんな社会不適合者もらってくれる女の子いるのかしら』って母さんも心配してて」

「おい待て。母さんそんなこと言ってたの? 俺息子だぞ?」

「だから、ちょっと安心したんです。日葵ねーさんがまた遊びにきてくれるようになったのもそうだけど、兄貴のことちゃんとわかってくれてる朝日さんがいてくれたのが。安心していいんだって思えて」

 

 俯きながら話した薫を、朝日が急に抱きしめて撫でまわし始めた。目を白黒させる薫を強く抱きしめながら、朝日が俺を見る。

 

「この子、私の妹の朝日薫っていうの。よろしくね」

「鮮やかに戸籍変更してんじゃねぇよ」

「だって、めっちゃくちゃいい子じゃない? あんたの妹がこんな風に育つわけないもの。私の妹しかありえないわ」

「俺が兄貴でもお前が姉貴でも、薫はこういう風に育ってただろうよ。俺とお前はそんな変わんねぇし」

「誰がクズよクズ。クズはクズらしく部屋の隅の埃でも食べてなさい」

「あ、この前兄貴が千里ちゃんに言ってたのと同じセリフ」

「嘘よ……」

 

 目から光を失い、朝日はその場に跪いた。そんなにショックなの? 俺と同じセリフ言ったこと。それはそれで俺もショックなんだけど。

 それにしても、薫マジでいい子だよな。朝日の言う通り俺の妹がこんな風に育つわけねぇよ。反面教師みたいなことだろうか。それにしては俺とちょくちょく似ているところはあるから、薫の根っこがめちゃくちゃいい子なんだろう。こんな妹を持てて俺は幸せだ。

 

「ね、薫ちゃん。私のことも光莉ねーさんって呼んでくれない? お願い」

「え、えっと……どうしよう、兄貴」

「呼んでやったらいいんじゃね? 減るもんでもないだろ」

「だめ!」

 

 何を躊躇しているのかと不思議に思って、今回は朝日に加勢してやっていると、俺の部屋から日葵が飛び出してきて薫を抱きしめた。

 

「ねーさんって呼んでもらうのは私だけなの! 光莉はだめ!」

「ずるい! 私も薫ちゃんからねーさんって呼ばれたい! だって可愛いじゃない! 私一人っ子だから下の子欲しかったの!」

「恭弥と結婚すれば、薫ちゃんからねーさんって呼んでもらえるよ?」

「冗談やめなさいよ。氷室と結婚するくらいならこれから一生全裸で生活した方がマシよ」

「それ以上に俺と結婚することは恥ずかしいことなのか?」

 

 流石に全裸で生活するよりはマシだろ。マシだよね? みんなも何か言ってやってよ。目を逸らしてないでさ。

 

「にしても、薫めちゃくちゃ人気だなぁ」

「そりゃあね。可愛いし美人だし、性格もいいし人気にならない理由がないよ」

「……」

「あ、薫ちゃん赤くなってる! 織部くん、もっと薫ちゃんを褒めて!」

「光莉、薫ちゃんはおもちゃじゃないんだから。やめてあげよう?」

「薫」

「!!」

 

 千里が薫を呼び捨てにすると、薫は顔を真っ赤にして部屋へ逃げ込んだ。けらけら笑っている千里の頭を殴り、一言。

 

「あんまうちの薫をいじめんなよ」

「はは、ごめん。可愛くてつい」

「なら仕方ない」

「薫ちゃん可愛いものね。仕方ないわ」

「もう、三人ともひどいよ?」

 

 ひどいのはこいつだ。これで好きだからからかってるとかならいいんだが、千里にそういう気持ちは一切ない。ないはず。

 

 ないよね?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。