【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第151話 守るべきもの

「おはよーって、立ったまま寝とる……」

「おはようございます冬音さん、でいいんですよね?」

「うん、そやけど恭弥くん、なんで立ったまま寝とるん? 武士?」

 

 俺の布団に潜り込んでいる優姫さんを指さすと、冬音さんは「あぁ……」と納得してから俺をよしよししてくれた。おい、俺に母性で攻撃してくるな。うっかりバブッちゃったらどうするんだ。

 

「ちょっと待っててくれよママ。今優姫さん以外を起こすから」

「既に特殊性癖持ってるん? 教育大間違いしてるやん」

「それはそう」

 

 そもそも親に教育してもらった覚え何てまったくないし、薫の教育も俺が……いや、薫も自分自身で知識と教養と倫理を獲得してたな。どうやら氷室家は独り立ちが早い一族らしい。

 冬音さんを待たせるわけにはいかないので、千里と学人を起こすことにする。まず千里。学人が千里の寝姿を見たら性癖が壊しに壊されてしまうからな。俺ですらもうやばい。なんでこいつ絶秒なラインで浴衣はだけてんだよ。太もも胸元ちらりじゃねぇんだよなんでこいつ一切毛ぇ生えてないの? 男性ホルモン死滅してんの?

 

「おい千里。起きろ。大人の色気を携えた黒髪版の春乃がきたぞ」

「えっちすぎる……」

「冬音さん。どうやらあなたは寝言ですらえっち判定を受けるほどえっちらしいです」

「そんなこと聞きに来たわけちゃうんやけど……ええで起こさんでも。もしかしたら起きてるかなーって思ってきただけやし」

「そうですか……じゃあ俺と一緒に寝ましょう。あぁ間違えた。俺と一緒に寝ましょう」

「どうやら本心みたいやな」

 

 腕を組んで首を傾げる俺を見て、冬音さんは声を抑えて笑う。おかしいな。俺は『お一人にさせるのも申し訳ないですし、書置きか何か残して俺とその辺ぶらつきませんか?』って言おうとしたのに、いつの間にか人妻と一緒に寝ようとしていた。俺は悪くない。どっからどうみてもエロいって思わされてしまう冬音さんが悪いんだ。

 

「話し声で起こすのも悪いし、ちょっと出えへん?」

「はぁはぁ、いいんですか」

「人妻にその反応するって倫理観ぶち壊れとんか」

「あの両親の息子に倫理観を期待しないでください」

「威張るな」

 

 冬音さんはメモ帳を取り出し、さらさらと綺麗な字で『恭弥くん借りていきます。起きたら連絡頂戴なー』と書いて優姫さんの枕元……に置くと見せかけて、千里の枕元に置いた。大正解。優姫さんだけがそれを見てしまったら、「私の恭弥くんを!!!!!???」と意味のわからない妄言をぶちかましながら、女の尊厳を捨ててまでも俺を狙いに来るに違いないし。

 

「ほな、恭弥くんが用意済ませたら行こか」

「もう済ませてます。一睡もできなかったので」

「一瞬も油断できひんかったってことやな……」

 

 気の毒そうに見られながら、俺と冬音さんは部屋を出て、「プレイボーイよ。プレイボーイ」と女将さんに噂されながら旅館を出た。

 

 まだ朝だからか近くの店は開いておらず、ただ静けさと気持ちのいい日差しがそこにあるだけだった。

 

「ごめんな? こんなおばさんの相手させてもうて」

「興奮するので大丈夫ですよ」

「そうなると私が大丈夫やないんやけど」

「それに、おばさんって見た目じゃないですし。めちゃくちゃお姉さんじゃないですか」

「それだけ言うてくれとったらなぁ……」

 

 でも、ありがとうな。と言って冬音さんはふわりと笑う。ダメだ。春乃が母性と更なる色気を獲得して俺に殴りかかってきている状態だこれ。最強じゃん。向かうところ敵なし。冬音さんの旦那さん羨ましすぎんだろ。既に呪い殺されてんじゃねぇの? 冬音さんを嫁にできる幸せ以上の幸せなんてこの先見つけらんねぇだろ。

 

「そういえば、学人が迷惑かけへんかった? や、面倒見てもらってる時点で迷惑はかかってるんやろうけど」

「迷惑なんて思ってないですよ。賢い上に優しいし、波長も合う」

「それは不安やな」

「さっき俺が起こそうとしてたやついるでしょう? あいつ千里って言うんですけど」

「千里くんな。実際見るのは初めてやけど、えらい可愛らしい子やなぁ」

「あいつのせいで性癖歪んだ可能性があります。腹を切ってお詫びしますね」

「自然な流れで切腹しようとすんな。まぁええよ。自分がどの道進むかを決めるのは学人次第やし、別に悪いことちゃうやろ。どこの誰を好きになっても、ちゃんと好きって思ってたらそれに間違いなんてあらへんよ」

 

 うちの母親と代わってくれねぇかな……。なんだこの完璧な人。どうせ身体能力も高いだろうし、頭もいいだろうし、綺麗だし優しいしカッコいいし非の打ちどころがないどころの騒ぎじゃねぇよ。冬音さんと比べたら母さんは非そのものじゃん。

 

 ただ、冬音さんがこういう人で助かった。学人の性癖が歪んでしまったかもしれないってところが一番気になってたし、申し訳ないって思ってたから。一日会わなかっただけの息子が、いきなり『女の子みたいな男の子』を好きになってるって地獄以外のなにものでもないだろうし。俺の息子がそうなってしまってたらまず間違いなく千里を血祭りにあげる。

 

「でさ、正直春乃のことどう思ってるん?」

「どうって」

「好きか好きか」

「こういう時は二択を迫るものですよ普通」

「私からしたら、あんな子に好き以外の感情向ける方が不思議やし」

 

 確かに、と頷くと、冬音さんは嬉しそうににこにこ笑う。これ、やっぱり春乃から色々聞いてるんだろうなぁ。どこまで聞いてるかわからないけど、きっと少しだけ聞いていても大体の察しはついてるんじゃないかと思う。

 

「やっぱり幼馴染の子が一番好きなん?」

「はい。昔からずっと変わりませんよ」

「あちゃー。やっぱそうやんなぁ。ちなみに、えっちなことに興味ある?」

「俺を父さんと一緒の手順で堕とそうとしないでくれます?」

「春乃からそういう風に迫られて断りきる自信ある?」

「春乃はそういうことしないでしょう」

「ふーん」

 

 冬音さんが更に嬉しそうににこにこ笑う。なんだこの人可愛いな。姪が褒められてこんなに嬉しそうにするって、冬音さんの家族幸せが過ぎないか? そりゃ春乃もあんな子になるって。聖人振り切ってる。国会がこの人たちの家系だけになれば日本どころか世界中が平和になるに違いない。

 

「わかってると思うけど、覚えといてな。誰かを選ぶってことは、誰かを選ばんってことやから」

「それでずっと悩んでるんですよ。全員いい子で、好きだからめちゃくちゃ苦しいんです」

「いっぱい悩んであげてな。きっと恭弥くんやったら、選ばれへんかった子も納得するやろうし」

 

 くしゃくしゃと俺の頭を撫で、微笑む。これが母ってやつか……。破壊力すごいな。一生頼りにしちゃいそうだ。麻薬じゃんもう。一回摂取したら忘れられないやつじゃん。

 

「いた!」

 

 俺が冬音さんという母性の麻薬と格闘していると、俺の努力を一切無駄にするかの如く、俺の耳を激甘ボイスが貫いて、麻薬への抵抗が一切消え失せてしまった。はい、おっきな赤ちゃんのできあがり。あとで冬音さんの連絡先を聞こうと思う。こんなに頼れてカッコよくて綺麗な人はいないから。

 

 声がした方を向くと、走ってきたのか頬を紅潮させている千里。軽い身支度は整えてきたらしく、寝ぐせは見当たらない。

 

「このタイミングで走ってくるって、ヒロインか何かなん?」

「俺もそう思ってました」

「冬音さん、はじめまして。織部千里です」

「はじめまして。岸部冬音です。恭弥くん、このドチャクソ可愛い子って持って帰ってもええやつ?」

「俺のだからだめです」

「ヒロインやんけ」

 

 千里、俺を睨みつけて『せっかく冬音さんにあんなことやこんなことしてもらうチャンスだったのに』ってアイコンタクトしてくるな。お前睨んできても可愛いだけだってことそろそろ自覚した方がいいぞ。

 

「学人くん起きたので、戻りましょう。『秋野さんは俺が抑えておくから、早く!』って今抑えてくれてますし」

「あかん! 息子の貞操が散らされてまう!」

「流石に五歳児をどうこうなんて」

「恭弥くん、男の子ならわかるやろ。小さい頃のお姉さんの破壊力。抗う力も何もない時に、無理やり性をいじくられたらどうなるか!」

「なんて羨ましいんだ!!!!!!!!」

「恭弥!! 僕たちもぜひしてもらおう!!」

「なるほど。ドアホやねんな」

 

 不名誉な称号を与えられた俺たちは、学人の貞操を守り抜くべく走り出した。

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