【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:とりがら016

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第152話 夏場に道端で気絶してるとこうなる

 強烈なキャラクターの優姫さんと賢すぎる5歳児の学人と、ドチャクソエロい人妻の冬音さんに別れを告げて自分の街へと戻り、「薫ちゃんに会いたい」とほざいた千里を仕方なしに連れて帰宅。

 

「ところでなんで千里が血祭りにあげられてるんだ?」

「あぁ。薫が千里のことを愛していることがわかった」

「なるほどな」

 

 千里を愛しているらしい薫は千里が血祭りにあげられている状況に慣れているのか、紅茶を飲みながら「おかえり」と一言。それは俺に対して? 千里に対して? それとも俺と千里がいる日常に対して?

 

 流石の恭華でも家で巫女装束は着ないらしく、Tシャツ短パンとラフな格好をしている。これで血が繋がっていなかったら思わず求婚してしまうくらい油断しすぎでドエロイが、血が繋がっていてしかも双子。むしろ「汚ぇもん見せてんじゃねぇよハゲ」と言ってしまいそうになる。

 

「汚ぇもん見せてんじゃねぇよハゲ」

「言ってるぞ」

 

 どうやら言ってしまったらしい。というか「言ってるぞ」って俺の考えてることわかるってこと? 双子かよ。双子だったわ。

 

「父さんと母さんは?」

「私のために毎晩ご馳走どころの騒ぎじゃないご飯を作ってくれるんだ。その買い出し」

「太っちゃうからやめてって言ってるんだけど、悲しそうな顔するから……」

「薫は太っても可愛いから大丈夫だろ」

「はぁ、わかってないな。そう言われても太りたくないのが女の子なんだよ。なぁ薫?」

「好きな人に好きって思ってもらえたらそれでいいかな」

「千里はどこだ?」

「お前のせいで血まみれだけど」

 

 恭華は自分が千里を血祭りにあげたことを忘れてるのか? 今も廊下で血だまり作って倒れてるじゃん。多分あと数分後には血だまりもなくなって傷一つない千里が平気で喋ってるだろうけど。あいつ人間じゃねぇって。

 

「ところで恭弥。お前は大層妹を大事にするそうだが、私は?」

「ところで恭弥。お前は大層妹を大事にするそうだが、私は? って聞こえたけど聞き間違いか?」

「おい薫。失礼だとは思うが恭弥に持病は?」

「バカ」

 

 薫にバカって言われてしまった。気持ちいいぜ……。

 

 薫と恭華を見て、ふむと頷く。薫のことだからあんまり心配はしていなかったけど、仲良くやれているみたいだ。まぁ恭華ってほぼ俺だし、違うところって言えば性別くらいだし、仲良くやれないはずがない。薫は世界一って言っていいくらい俺の扱いに慣れてるからな。

 

「妹を大事にするっていうか、薫を大事にしてる。恭華はほら、なんか自分でなんでもできそうだし」

「でも恋愛下手でめちゃくちゃ初心だよ。兄貴以上に」

「それに関しては頼らないでくれ」

「頼るつもりもないし頼れるとも思ってない」

「わかる」

「何してるの?」

 

 うんうんと恭華と頷き合っていると、綺麗さっぱり傷がなくなった千里が話しかけてきた。薫をちらりと見るとなぜかほわほわした空気を醸し出している。はぁ。わかりやすいところも俺に似ちまったか……。

 

 恭華とアイコンタクト。殺す? 殺す。

 

「兄貴。ねーさん」

「おうなんだ薫! 別に千里を殺そうとなんてしてないぜ!」

「そうだ薫。私たちを殺人鬼か何かだと思ってるのか?」

「じゃあ僕の首に伸びている手の説明をしてもらおうか」

「殺すためだけど」

「バカだなぁ千里は」

 

 千里は俺たちの手を掴んでおろし、男に手を掴まれたからかびっくりして頬を赤くしてしまった恭華を見て鼻で笑ってから薫の方に歩いて行った。そして薫の隣に座って、俺たちを見て一言。

 

「君たちは矛盾って言葉の意味を覚えた方がいい」

「前調べたけど、難しくてよくわからなかった」

「じゃあ道徳を学ぶといいよ」

「同じことを何度も言わせるな」

 

 あいつほんとうに仕方なくねぇか? あぁ、仕方ないやつだ。と恭華とアイコンタクトをとり、やれやれと首を横に振る。その間に千里は薫とにこにこしながら会話していてムカついたので今からあいつの靴にうんこをしてやることにした。ふふ、あいつもまさか靴じゃなくて足でうんこを踏むとは思わないだろう。

 

「恭弥。お前は薫に『靴にうんこをした兄の妹』という十字架を一生背負わせる気か?」

「目が覚めたぜ。ありがとな恭華」

「兄貴はうんこみたいなものだよ」

「恭華。聞き間違いか? 今薫が俺のことをうんこって言ってくれたような気がしたけど」

「ずるい! 私も言ってほしい!」

「薫ちゃん。今すぐここから逃げよう」

「私勉強するから。千里ちゃん、お願いしていい?」

「喜んで!!」

 

 俺たちが薫にうんこと言われたいがあまりに大暴れしていると、いつの間にか薫と千里がいなくなっていた。は? もしかしてあいつ、兄と姉がいる家でえっちなことするつもりか? そんなことしたら恭華が恥ずかしさと怒りで死んじゃうだろ。

 

「……」

 

 まずい。もう顔が真っ赤になっている。「りんごみたいで可愛いね」と言ったら落ち着くか? いや、怒りの矛先が俺に向いて俺がりんごみたいに真っ赤にされてしまう。血で。

 

「チッ、仕方ねぇ!」

 

 俺は恭華の手を引いて、家を飛び出した。このまま想像と妄想で恭華が死ぬ、もしくは俺が死ぬくらいなら千里に幸せな時間をプレゼントした方がまだマシだ!!

 

 恭華を連れて家を飛び出し、しばらく歩いて。やっと落ち着いてきたのか、恭華が「すまん。取り乱した」とTシャツを脱ぎながら謝ってきた。取り乱してる取り乱してる。

 

「何こんなとこで脱ごうとしてんだ!!」

「あつい」

「よく見ろ、ここは道端だぞ! こんなところで脱いじゃったらもうその、すごいだろうが!」

「あれ、恭弥? 隣にいる可愛い子誰?」

「あぁ井原! 今は取り込み中なんだ! ちなみにこいつは」

「私は氷室恭華。恭弥の妹で、最近こっちに越してきた。二学期から同じ高校に通うからよろしくな」

「よろしく! 俺は井原蓮!」

「脱ぐほど取り乱してるのに自己紹介できる精神状態なの……?」

 

 いつの間にかちゃんと着てるし。あれか。俺の前だからふざけてもいいやってやつ。そうだよな。流石に他人の前で脱ぐなんてことしないよな。どっちにしろ俺のせいでめちゃくちゃラフな格好のまんま外出ちゃったから、恭華めちゃくちゃ恥ずかしそうだけど。井原の目全然見れてねぇし。

 

「……? あぁそっか! ごめん!」

 

 井原は首を傾げた後、急いでと言った様子で目を逸らした。首もボキッと鳴っていた。

 

「どうした?」

「いや、なんか家でごちゃごちゃがあって思わず飛び出してきたって感じじゃね? だから恭華がゆるーいカッコしてんだろ? なら見んのは失礼かなって!」

「恭弥。もしかしていいやつか?」

「びっくりするだろ? いいやつなんだよこいつ」

「サンキュー! あ、そういや新作のケーキあんだけど、うち寄ってかね?」

「着替えてから行かせてもらおう」

「あ! じゃあ持ってくぜ! 家で待っててくれよ」

 

 じゃあまた後でなー! と手を振って走り去る井原。なんであんなにいいやつなのにモテないんだろう。まぁいいやつすぎるからか。顔も悪くねぇのになぁ。俺には大差で負けるけど。

 

「恭弥。いくら渡してるんだ?」

「井原がいいやつ過ぎるからって賄賂渡して友だちやってもらってるってか? あんまり俺を舐めんなよ。井原は誰にでもいいやつだ」

「舐めていて正解だった」

「あ、お前さっきからずっとブラ紐見えてたぞ」

 

 

 

 

 

「あれ、恭弥なんで死んでんの?」

「……ん? 井原か。おはよう」

「おうおはよう! なんだ、眠たかったから寝てたのか!」

 

 早とちりしたぜ! と言いながら伸ばしてくれた井原の手を掴んで起き上がる。おかしいな。俺はさっきまで恭華と一緒にいたはずだけど……。

 

「おはよう恭弥。おかえり」

「おうただいま日葵。悪いな井原」

「いいって! ケーキ持ってきたし、行こうぜ!」

「おう」

「うん」

 

 日葵と井原と並んで家に向かう。何やら頭が痛い気もするけど、道端で寝てたらそうもなるかと納得して、日葵を見た。

 

 心臓が爆発した。

 

「日葵!!!!!!??????????」

「わ! びっくりした!!」

「なんで日葵がここに!!!???」

「なんでって」

「俺が呼んだんだよ! 恭弥帰ってきたんなら誘っちまおうって思って!」

「一億円をプレゼントさせてくれ」

「恭弥がいんならそれ以上の価値あるし! っつーことでこれからも友だちでいてくれりゃあ万事オッケー!」

 

 俺は今この瞬間、一生をかけて井原を幸せにしようと決意した。こんないいやつが幸せにならないならそんな世界なんていらない。

 

「恭弥、ごめんね? 急にお家行くことになっちゃって」

「日葵ならいつでも歓迎だ。むしろ住んでくれ」

「え」

 

 しかし頭が痛いしぼーっとするなぁ。心なしか熱い気もするし。夏だから仕方ないだろ。あぁ、地面も熱い。あれ、なんで地面の熱さを感じてんの俺?

 

「っべ! すげぇ熱じゃん! すぐ運ばねぇと! 夏野ケーキ持って! 俺恭弥抱えっから!」

「え、私が恭弥を……あっ、えっと、わかった!」


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