【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第153話 熱暴走

「ねーさん。兄貴と一緒に出て行ってねーさんだけ帰ってきて、めちゃめちゃな熱出した兄貴が井原さんに背負ってもらって日葵ねーさんと一緒に帰ってきたんだけど、どういうことか説明してもらえる?」

「話すと長くなる」

「いいよ」

「私が道端で気絶させた」

「簡潔で助かるよ」

 

 恭華さんが今僕の目の前で薫ちゃんにグーパンチをもらっていた。いいなぁ。

 

 僕が薫ちゃんの部屋で勉強を見ていた時、恭華さんが一人で帰ってきて「まぁ恭弥が怒らせたから一人で帰ってきたんだろう」とのほほんと思っていたら、井原くんと夏野さんが大騒ぎしながら「恭弥が倒れた!」って言って突撃してきた、というのが事の顛末。罪人は恭華さん。プリティ裁判長は薫ちゃん。証人は井原くんと夏野さん。勝者は僕。

 

 恭弥は今自分の部屋で涼みながら寝込んでおり、夏野さんが見てくれている。流石に病人に手を出さないだろうと判断、したかったけどそれはもう不安なので井原くんも部屋にぶち込んでおいた。あの聖人の前では夏野さんも妙な動きはできまい。

 

「あのね、兄貴は色々人間やめてるけどそれでも熱は出るし風邪も引くの。一歩間違えたら死んじゃうんだよ?」

「そうだよ恭華さん。人は殺しちゃダメなんだ」

「私はそのレベルの倫理観から叩きこまれなきゃいけない段階なのか?」

「実際そういうことしちゃったんだしごちゃごちゃ言わない」

 

 はい……と薫ちゃんの前で正座してしょんぼりしている恭華さんを見てうんうんと頷く。怒ってる薫ちゃん可愛い。僕も叱ってほしい。後ろからいきなり抱き着いて「わっ、もう、ダメだよ?」って言ってほしい。

 

「きゃっほー!!! タマランチ会長卒業証書授与!!!」

「ところで千里ちゃんにも何かした?」

「あいつはいつもあぁだろ」

「あぁごめん。気持ちがよくて」

「ちょっと黙ってて」

「はい」

 

 なぜか僕まで正座してしまった。僕何も悪いことしてないのに。いや、今までのことを含めるなら数えきれないほど心当たりあるけど、少なくとも今日は悪いことをしていないはずだ。ただ妄想が暴走してしまっただけで。

 

「あれ? 千里も怒られてんの?」

「あれ、井原くん? 性犯罪者の見張りはいいの?」

「性犯罪者?」

「日葵ねーさんのことですよ井原さん」

「そうだぞ井原。あいつはあぁ見えてちゃんと恭弥の影響を受けてるからな」

「そうよ井原。日葵と恭弥を二人きりになんてセックスの代名詞よ」

「まーまー。流石に日葵でも病人とセックスはせんやろ」

「ちょっと待て」

 

 いつの間にか怪人おっぱい(捻りなし。でもおっぱいは捻りたい)と怪人胸はないのにお色気えちちちビームが僕の隣にいた。どこから聞きつけた? こいつらがいると恭弥がゆっくり休めないこと確定じゃないか。

 薫ちゃんがこの二人を呼ぶなんていうヘマをするわけないし、井原くん……も報せはするかなーとは思うけど、案外めちゃくちゃ気を遣えるから「人を呼ぶのは違うっしょ」って連絡してないと思うし、恭華さんもこの二人の……というか朝日さんか。朝日さんのおかしさをわかってるから呼ばないはず。

 

「二人はどうしてここに?」

「日葵から大慌てで連絡があって」

「『恭弥が燃えた』言うてな」

「めちゃくちゃ慌ててるね……」

「それで隣から『落ち着け!』って井原の声が聞こえてきたものだから、日葵の隣に立つべきは私だと思って飛んできたわ」

「私は光莉を止めるためにきた」

「ありがとう」

 

 思わず岸さんの手を握ると、薫ちゃんから睨まれてしまった。ふ、可愛いハニーだぜ。そんなに嫉妬しなくても、僕は君だけのものなんだから安心していいよ。

 

 ……恭弥なら心読んで僕の気持ち悪い思考にツッコんでくれるけど、今いないから空しいだけだな。やめよう。

 

「朝日さん、岸さん。兄貴のとこ行くのはいいけど、絶対に静かにしてね」

「え!? 一緒に寝ていいの!?」

「やっぱり無理そうだから行かないで」

「聞いた? 千里。行かないでって言われたってことはつまり薫ちゃんは私の妹よ」

「よろしくお姉ちゃん」

「はぁ、はぁ」

「本当にダメそうだなー」

 

 井原くんは氷枕と冷えピタ飲み水と看病の準備をしながら冷静に朝日さんが「ダメ」だと判断する。井原くんに言われるなら本当にダメなんだろう。朝日さんもそう感じたのか、「じゃあ部屋に行ってくるわね」と階段の方へ向かっていった。

 

「あかんで」

「わー!! 離しなさい!! このままじゃ日葵が恭弥に添い寝して『えへへ』って顔赤くしながら微笑んじゃう、は? かわいい」

「病人が増えたな」

「ねーさん。兄貴と顔似てるんだし、朝日さんの欲望を満たしてあげたら?」

「薫。姉を軽く売れるほどたくましくなってお姉ちゃんは嬉しいぞ。あと双子だから仕方ないけど顔が似てるはやめてくれ」

 

 顔が似てるのは嫌なんだろうか。似てるって言っても男の子と女の子の違いはあるし、並べても普通に違いわかるし、気にすることないと思うんだけどなぁ。違いって言ってもイケメンか美人かってくらいだけど。

 まぁでも一緒の服装で髪型も揃えたら仲良くない人は一瞬首を傾げるくらいには似ているのは事実。でも性格は恭弥の数倍可愛らしいからやっぱり似ていないかもしれない。

 

「なぁ千里。いつの間にかめちゃくちゃ人きてるけどどうしたんだ?」

「あ、恭弥。みんな君を心配してきてくれたんだよ」

「それはありがたいな」

「ところでどうしてもう平気な顔して下りてきてるの?」

「日葵が看病しながら眠りこけたから、可愛すぎてすべてが回復した」

「わかる」

「だろ?」

 

 ふっ、と笑い合う恭弥と朝日さん。あれ、恭弥本当に大丈夫なのかな? 流石にあの熱がこの短時間で全部引くってことはないと思うけど……まぁ恭弥だし、そういうこともありえるのか。

 

「ところで朝日、今日も可愛いな。せっかく引いた熱もお前を見てるだけでまた燃え上がってきそうだぜ」

「ぇ……」

「薫ちゃん!!」

「ダメ!! 日葵ねーさんが幸せそうな顔して気絶してた!!」

 

 気持ちの悪いことを囁いて朝日さんを真っ赤にさせた恭弥がおかしいと判断した僕は薫ちゃんの名前を呼ぶと、流石妹というべきかすでに夏野さんの状態を確認しにいっていたらしく、結果『ダメ』だということらしい。クソ、夏野さんも囁かれてノックダウンさせられたのか!!

 

「はいはい。恭弥くんまだ熱引いてないみたいやから大人しく寝に行こう、なっ!?」

 

 頭から煙を出してノックダウン寸前の朝日さんを庇いながら恭弥の前に立った岸さん。しかし、恭弥が岸さんの腰に手を回してぐっと引き寄せ、耳元でそっと何かを囁いた。

 

 岸さんが顔を真っ赤にして膝から崩れ落ちた。

 

「岸さーん!! クソ、こうなったら僕が行くしかない!!」

「やめた方がいいよ千里ちゃん」

「あぁ、やめた方がいい千里」

「一番ダメだろ千里」

「君たちなんか嫌いだ!!! 僕は行くぞ!!」

 

 薫ちゃん、恭華さん更には井原くんにまでクソザコ認定された僕は憤慨しながら恭弥へ突進する。今に見てろ。僕が恭弥の親友だって証拠を見せつけてやる!!

 

「お、千里。今日も男らしいな」

「え、そう? えへへ……」

「こうも期待通りに役立たずだと清々しいな」

「あんな可愛く照れてるのに男らしいは無理あるでしょ」

「しゃあねぇなぁ。ちょっと行ってくる!」

 

 ちょっと引いててくれよ、な? と爽やかスマイルで僕をどかせた後、井原くんが恭弥の前に立った。あれ? あんまり聞こえてなかったけど僕ボロクソ言われてなかった? いや、そんなはずはない。だって僕は恭弥曰く男らしいらしいから。ふふ、やっと僕の男磨きが花開く時が来たみたいだね……!

 

「なぁ恭弥。ちょっとおでこ貸してみ?」

「取れると思うか?」

「ハハ! ちげーって。ちょっと手ぇ当てさせてくれって意味!」

 

 井原くんが恭弥のおでこに手を当てる。その瞬間、恭弥が口を開いてぺらぺらと井原くんを褒め始めた。

 

「なぁ井原。お前ってほんといいやつだよな。チャラチャラしてるように見えてめちゃくちゃ誠実だし、ふざけてる感じだけど普通にイケメンだし運動神経いいし、唯一の欠点であるバカっていうところも長所になり得るくらいいいやつだ。お前が友だちでよかったよ、俺は」

「ん? サンキュー恭弥。俺もさ、恭弥と友だちになれて嬉しいぜ。恭弥といるとおもしれぇし、他じゃ味わえないスリル? ってのが感じられるっつーか。できればさ、高校だけじゃなくて大学、そんで大人になってもずっと友だちでいようぜ」

「千里ちゃんが倒れた……」

「恐らくこれでもかと親友ムーブを見せられて自信が喪失したんだろう」

「僕の時より長尺で褒めてる……」

「違った。みみっちいだけだった」

 

 いやだって、誰が何と言おうと僕は恭弥の親友だし、それは揺るがない。そんなことより僕より長尺で褒めたのが許せない。だってそれ、僕に褒めるところがないみたいじゃないか! そりゃさ、井原くんはものすごくいい人で非の打ちどころがない素晴らし友だちだから……仕方ねぇわこりゃ。

 

「つかやっぱ熱あんじゃん! ほら、さっさと寝に行くぞ」

「でもせっかくみんながきてるんだし」

「恭弥がいりゃあみんないつでもどこでもきてくれるって! それにさ、熱あんのに無理されるより、元気な恭弥と遊びてぇから。ちゃんと寝て治して、そん時またいっぱい遊ぼうぜ!」

「……ほんとにいいやつだよなぁ井原」

「ん? そうか? サンキュー!」

 

 恭弥と井原くんは笑い合いながら階段を上がっていった。なんだあの気持ちのいい人間。ほんとに僕と同じ人類か? もしくは僕が人類じゃないのか? 僕含め恭弥にノックダウンされた役立たず三人衆はどんな顔してればいいんだ?

 

「あかん……耳から犯された。クセになる……」

「恭華さん。薫ちゃんの教育に悪いから目と耳塞いどいて」

「四つ同時に塞げって? 私はアシュラマンか」

「ちなみにすごく身近に教育に悪い人たくさんいるから、今更だよ」

 

 まったく恭弥は仕方ないなぁ。とため息を吐いていると、薫ちゃんにじとっと睨まれてしまった。え? かわいい。

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